デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
7款 帰一協会
■綱文

第46巻 p.591-594(DK460142k) ページ画像

大正4年5月19日(1915年)

是日、上野精養軒ニ於テ、当協会例会開カレ、栄一出席シテ決議案ヲ議ス。六月二十九日、渋沢事務所ニ於テ当協会幹事会開カレ、栄一出席ス。


■資料

集会日時通知表 大正四年(DK460142k-0001)
第46巻 p.591 ページ画像

集会日時通知表 大正四年         (渋沢子爵家所蔵)
五月十九日 水 帰一協会例会(上野精養軒)


帰一協会録事第二(DK460142k-0002)
第46巻 p.591-592 ページ画像

帰一協会録事第二             (竹園賢了氏所蔵)
五月十九日○大正四年
五月例会 午後五時開会
出席会員左の如し
 阪井徳太郎氏   成瀬仁蔵氏
 服部宇之吉氏   中島男爵
 山内繁雄氏    佐藤少将
 本多日生氏    斎藤七五郎氏
 松村介石氏    宮岡恒次郎氏
 エツチ・コーツ氏 福岡秀猪氏
 吉田静致氏    増田義一氏
 中島力造氏    筧克彦氏
 馬場恒吾氏    下村宏氏
 塩沢昌貞氏    加藤玄智氏
 諸井六郎氏    頭本元貞氏
 渋沢男爵(食後)
当日の講演者左の如し
                   松村介石氏
尚ほ水野錬太郎氏の講演あるはずなりしも差支にて来会を得ず、為に左の講演を乞ふ
                   下村宏氏
先づ開会するや、松村氏の講演あり
基督教徒の見地より見たる欧米事情より、殊に米国青年間之宗教之傾向、次で支那人ニ対する所感を述べらる
(熱烈の言辞、昂奮せる態度)以上
八時十五分食事終り
次に下村氏の講演を請ふ、宗教素人観とも題すべしとの前置之下に、大要左の如き意味を述べらる
 - 第46巻 p.592 -ページ画像 
余は何等の信仰なしと雖も宗教の尊重すべきは之を認む。宗教は事実のものなれば応病与薬的のものならさるべからず、従て時・処に適応のものなるべし、現代にては過去に比し信仰を得る事難し、之れ人間が新らしくなりたる事と科学の進歩の為なり、又宗教の社会に権威を有せさる事も其原因の一に居る、日本殊に甚だし、而して日本の教界には人材多く去りつゝあり
余は何れの宗教を絶対に可なりと為すにあらず、只在来のものは文明の時勢に順応せしむるに在りて、此の方法を取る事早き宗教は勝利を博すべし
又目下の宗教は知識階級に其の力を有せず、而して宗教が失意の際に入用のものなりとせば、宗教の効力少きにはあらさるなきか
天理教金光教が新たに生じて三千万の信徒を有すといふ、之れ或は仏教が自らをモヂフワイすべかりし所を彼等が為したる為にはあらさるか、一つは又仏教の教理難解なるに反し、前二者の教理極めて平易なる為にもよるべく、兎角両者は新らしき日本人の要求に応じたるにはあらさるか、但し日本知識階級にも及べるかは問題なり
要するに現時は新らしき道を開くか、在来のものを改むるかの二に在り、又其の人を得る事困難なり(九時十分)
次に服部氏の発議にて議事に移る
建議案を改めて決議案としたる理由、提出の形式、幹事代表にて教育会へ送る、当局へは参考として提出、沢柳氏修正意見に就ては修正案否決、原案可決(多数)
 但し決議案中左の一句を除く(吉田氏意見)
 「一切思想の根柢」
議事了
次にコーツ氏は松村氏の講演に付き所感を述べらる、即ち米国に於ては青年の宗教心衰へたるにあらずと為しYoungmen's forwards movements for mission等の運動ある事を述へ、且つ英国、合衆国、加奈多等に於ては現に教育ある大学の青年学生は活動の中心となり、宗教上の運動を試みつゝありと 午後十時


帰一協会 趣旨、意見書、決議、宣言並規約 会員名簿並出版目録 第九―一一頁刊(DK460142k-0003)
第46巻 p.592-593 ページ画像

帰一協会 趣旨、意見書、決議、宣言並規約 会員名簿並出版目録 第九―一一頁刊
    決議
被教育者ノ心裡ニ自然ニ発現スル宗教心ノ萌芽ハ、教育者ニ於テ之ヲ無視シ、若クハ蔑視シ、因テ信念ノ発達ヲ阻礙スルコトナカランコトヲ要ス
    理由
吾人ノ此処ニ宗教心ト称スルモノハ、今日世界ニ成立シ居ル幾多ノ宗教其物ヲ言フニアラズシテ、凡ソ人類ガ個人ヲ超越スル偉大ナル或物ノ存在ヲ信ジ、此ニ対シテ生ズル敬虔ノ念ヲ言フモノナリ、或ハ之ヲ天ト称シ、或ハ神ト称シ、或ハ仏ト称シ、其他名称各々同ジカラザルト同時ニ、之ニ伴フ信仰ノ形式ヲ異ニスルニヨリテ宗教ノ別生ズト雖モ、吾人ハ此等特殊ノ形式ヲモ併セ取リテ之ヲ宗教心ト称スルニアラズ、即チ吾人ガ此処ニ宗教心ト称スルモノハ、実ニ人性ニ本具ナル宗
 - 第46巻 p.593 -ページ画像 
教心其物ノ発現ニ外ナラザルナリ、或ハ単ニ信念ト称スルモ亦可ナリ何トナレバ、凡ソ信念ハ畢竟スルニ偉大ナル或物ニ対スルモノナレバナリ
抑々宗教ト教育トヲ劃然相分ケ互ニ相侵スコトナカラシムルコトハ、我ガ国ガ明治初年学制制定以降執リ来リタル大方針ナリト雖モ、宗教ト教育トノ分立トハ学校ニ於テ現存宗教ヲ授クベカラズトイフニ止マリ、宗教其物ヲ一概ニ不必要ナリト為スニアラザルコトハ、多言ヲ須ヰズシテ明ナリ、況ヤ宗教心又信念ヲヤ、蓋シ宗教心又信念ハ人格ノ根柢ヲ成ス所以ノモノニシテ、人格ヲ確立シ之ヲ徹底セシメンニハ、個人ヲ超越スル偉大ナル或物ニ対スル信念ニ待タザルベカラザルハ疑議ヲ容レザルトコロナリ、近時我ガ国青年ノ志操軽佻浮薄ニ流レ、動モスレバ自己ノ便宜ヲ求ムルヲ知リテ国家ノ利害ヲ顧ミズ、或ハ危険ナル思想ニ惑ハサレ易キハ識者ノ夙ニ憂フル所ナリ、而シテソノ然ル所以ヲ討ヌルニ、教育者ガ概ネ物質的知識ニ重キヲ置キ、形而上界ニ何等敬虔ノ対象ヲ認メズ、人間相互ノ関係以上ニ何等ノ貴キ意義ヲ認メザルコトハ少クモ其ノ主要ナル原因ノ一ト為サザルベカラズ、此ノ如クニシテ堅実ナル国風民俗ヲ維持シ国家百年ノ長計ヲ樹立セントスルハ、到底不可能ノ事ニアラズヤ、吾人窃ニ国家ノ将来ヲ慮リ、今ニ於テ人心ヲ未ダ甚ダ壊レザルニ維持セントスルニハ、思想ノ根柢ヲ宗教心又ハ信念ニ托スルニ至ラシムルヲ以テ当務ノ急ト信ズ、然リト雖モ、所謂宗教其物ヲ直チニ学校ニ導キ入ルルノ弊ヲ思フ事亦切ナリ、此ニ於テ、宗教教育分立ノ大方針ニ乖カズシテ能ク此ノ目的ヲ達スベキ妥当ノ方法ヲ討議スルコト再三、先ヅ信念ノ発達ニ対スル阻力ヲ去ルヲ以テ最モ切実ニシテ行フベキモノト認メタリ、此レ前文ノ決議ヲ為ス所以ナリ
  大正四年六月


帰一協会会報 第六号・第二七八―二七九頁大正四年一一月 ○信念問題決議文起草委員会(DK460142k-0004)
第46巻 p.593 ページ画像

帰一協会会報 第六号・第二七八―二七九頁大正四年一一月
    ○信念問題決議文起草委員会
五月五日開会○中略
  附記(右決議文及理由書は○中略本年六月中之を印刷に附し、当局各地教育会・各学校・新聞社、主なる雑誌社及び有志の士に配布したり)


竜門雑誌 第三二六号・第七六頁大正四年七月 帰一協会の決議(DK460142k-0005)
第46巻 p.593 ページ画像

竜門雑誌 第三二六号・第七六頁大正四年七月
○帰一協会の決議 青淵先生が評議員・幹事たる帰一協会にては六月下旬左の如き決議を為し、理由書を附して、枢密顧問官・各大臣・貴衆両院議員・教育調査会員、其他各府県教育者に対し送付せられたりといふ
   ○決議並ニ理由書、前掲ニツキ略ス。


集会日時通知表 大正四年(DK460142k-0006)
第46巻 p.593 ページ画像

集会日時通知表 大正四年         (渋沢子爵家所蔵)
六月廿九日 火 午後三時 帰一協会幹事会(兜町)


渋沢栄一 日記 大正四年(DK460142k-0007)
第46巻 p.593-594 ページ画像

渋沢栄一 日記 大正四年         (渋沢子爵家所蔵)
 - 第46巻 p.594 -ページ画像 
六月廿七日 晴
○上略 成瀬仁蔵氏来リ帰一協会ノ事其他ノ協議アリ○下略
   ○中略。
六月廿九日 晴
○上略 午前十一時事務所ニ抵リ○中略午飧後○中略帰一協会ノ幹事会ヲ開ク成瀬・服部二氏来会ス、要務ヲ協定ス○下略
   ○当協会ノ第四回時局問題研究委員会及ビ六月例会ハ中止。(「帰一協会会報」第六号・第二八〇頁ニヨル)