デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
7款 帰一協会
■綱文

第46巻 p.674-676(DK460172k) ページ画像

大正13年2月21日(1924年)

是日、当協会例会、東京帝国大学山上御殿ニ於テ開催セラレ、栄一出席ス。アメリカ合衆国シカゴ大学植物学教授ジェー・コールターノ講演アリ。後、現代ノ精神状態ニ関シテ種々意見ノ交換ヲナス。


■資料

集会日時通知表 大正一三年(DK460172k-0001)
第46巻 p.674 ページ画像

集会日時通知表  大正一三年       (渋沢子爵家所蔵)
弐月廿一日 木 午後四時 帰一協会例会
             コールター氏講演会(帝大旧御殿)


帰一協会書類 (一)(DK460172k-0002)
第46巻 p.674-675 ページ画像

帰一協会書類 (一)           (渋沢子爵家所蔵)
拝啓
陳ば来る二月廿一日(木)帝大教員会議室(旧御殿)に於て本会例会を開きたく、今回は米国の名ある植物学者にして近日支那の学術巡察を遂げて帰途立ち寄りたるCoulter氏を迎へて講演を仰ぎたく、同氏は予て国際関係に尽力しつゝある人なれば、尊台の曲げて御出席あらむ事を希望し予め御報知致し置き候へば、二月廿一日午後二時より同七、八時位迄の間はこのために御割愛の程御願申上候 敬具
 - 第46巻 p.675 -ページ画像 
  二月七日○大正一三年
                       帰一協会
    渋沢栄一殿


帰一協会記事 五(DK460172k-0003)
第46巻 p.675-676 ページ画像

帰一協会記事 五             (竹園賢了氏所蔵)
    二月例会  帝大教員会議所(旧御殿)二月廿一日(木)午後四時より
本月○大正一三年二月は米国植物学者ジエー・コールター氏を迎へて講演を聞く、会員に発送の案内状左の如くである
 拝啓益々御多祥奉賀候、陳ハ当月例会は来る二月廿一日(木)午後四時より帝大教員会議室(旧御殿)に於て開き、米国シカゴ大学植物学教授ジエー・コールター氏を迎へてその講演を聴く所存にて候氏は御案内の方もこれあるべしと存じ候が、これ迄既に数ケ所の大学に総長として令聞ある教育家にして、兼て国際問題に多大の関係ある学者にて候、この程支那の旅行を卒へその帰途立寄られたるを機とし、氏の旅行に関する所見を拝聴する筈に候へば、何卒多数御出席の程希望致候
 定刻を過ぐる事卅分にして開会した、コールター氏は支那旅行に関する所見は未だ纏りたる考なきを以て「新精神」と題して『大戦後人の心が共同と云ふ事を重んずる傾向を生じ、科学の方面でも競争的研究を避けて共同奉仕の精神に基いて進むやうになつた、この新たに興つた精神を一層発揮し、次代に来る人類をこの方面に導くのは教育の任務であるから、教育は今迄の如く単に智識の伝授でなく、真に命のある人を造る事を目標としなければならぬ、それには自己的精神を追ひ出して、犠牲的共同奉仕の精神に導き、国を越へた人と人との真純な交りを呼び、単なる意気投する者同士の集りでなく、意見を異にする人とも提携して進み得る世界を造る教育を施さねばならぬ、これ新精神を培ふ唯一の方法で、やがて人類の幸福を齎す所以である』と述べ、七時に至つて食卓を開き、談話の内に食事を終へた
 コールター氏退出後、残留の諸氏は左の如き意見の交換をした
矢吹氏
 今晩の講演の骨子たる共同と奉仕と云ふ事は賛成なるも、この事は凡そ是迄史上に見ゆる宗教ならば殆どいづれもこの精神を持たないものはない、されば寧ろ今の世のモーレーを何に求めるかと云ふことが吾等の眼目ではなからうか、とて昨今行はるる思想善導、文部大臣宗教家招待等の非なるを指摘された
姉崎氏
 今日の思想善導や仏教家の説教は、その態度が、君子は風民衆は草であるとする貴族的善導法で、これが或場合には却つて世の反感を招くものである、これに反し現代の青年は自分の覚信《(確)》がないものはやらないと云ふ純真な心の一面がある、上に立つ人の指導法はこの青年の心に酬ゐられないのである
渋沢氏
 現代の青年のみならず一般に現代人は、云ふのみで決して行はないと云ふ大欠点がある、考へは如何に純でも、頭で考へて少しも実行
 - 第46巻 p.676 -ページ画像 
を伴はない処に不健全がある
野口氏
 仏教の立場よりは性悪性善共に具有することを許すのであるが、それを如何に導けば仏になれるか、それが吾々の今の問題である、と
穂積氏
 我国の忠君愛国は今迄で未熟なものであつた、これから真の忠君愛国を鮮明にしなければならぬ、縦には親子孫の共同の奉仕、横には社会並に皇室との共同奉仕を明瞭にし、法律も亦今や共同の法律であると云ふ精神から考へられねばならない、真に共同が行はれるためには勿論明瞭なる各自の人格がなければならぬ、然らざれば互に尊重し合ふ事は出来ない、財産の方面でも共同と云ふ態度、即ち社会の財産を自分が保管して居るのである、と云ふ考へでなければならぬ
午後九時散解した、余程活気ある会合であつた
 当日の出席者左の如し
 アキスリング氏     アームストロング氏
 姉崎正治氏       今岡信一良氏
 井上雅二氏       尾高豊作氏
 コールター氏(講演者) 渋沢栄一氏
 田中次郎氏       田村新吉氏
 頭本元貞氏       時枝誠之氏
 野々村金五郎氏     野口日主氏
 花房太郎氏       福岡秀猪氏
 穂積重遠氏       マツケンジー氏
 間島与喜氏       山内繁雄氏
 矢吹慶輝氏       尾島真治氏
            以上二十二名