デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
1節 学術
7款 帰一協会
■綱文

第46巻 p.690-716(DK460177k) ページ画像

昭和3年6月5日(1928年)


 - 第46巻 p.691 -ページ画像 

是ヨリ先日本宗教懇話会、御大典記念トシテ日本宗教大会ノ開催ヲ提唱、是日ヨリ四日間、明治神宮外苑日本青年館ニ於テ、同大会ヲ挙行ス。当協会ハ其賛助費用トシテ、金三千五百円ノ寄付金ヲ集メテ交付ス。栄一ハ金千円ヲ寄付ス。


■資料

日本宗教大会書類 【謹啓 春暖の候益御清祥奉賀候、陳者日本宗教懇話会の主催にて…】(DK460177k-0001)
第46巻 p.691 ページ画像

日本宗教大会書類            (渋沢子爵家所蔵)
                       明六
謹啓 春暖の候益御清祥奉賀候、陳者日本宗教懇話会の主催にて、本年六月五日より同八日まで、明治神宮外苑日本青年会館に於て、御大典記念日本宗教大会開催の計画有之、帰一協会に賛加並に援助方希望し来候に付、過般の例会に於て協議致候処、右日本宗教大会は、広く我国に於ける神・仏・基各宗教諸宗派の宗教家並に同志の会同を催し社会教化の為に諸宗教提携の実を挙げんとの趣旨にて、誠に機宜に適し、又帰一協会の主旨にも恰当致候に付、小生等世話人となり、同会の有志会員各位の御賛同を得て其目的を達成せしめ度と存候、何卒貴台に於ても御賛成被下、何分の御寄附被成下度懇願仕候 敬具
  昭和三年四月二十七日
                    渋沢栄一
                    森村開作
                    阪谷芳郎
                    姉崎正治
    子爵 渋沢栄一様
 尚々同寄附金に就ては万事渋沢事務所にて取扱居候間御用の節は同所へ御申越被下度候


日本宗教大会書類 【寄附金申込予想額 御大典記念日本宗教大会寄附金勧誘先氏名】(DK460177k-0002)
第46巻 p.691 ページ画像

日本宗教大会書類             (渋沢子爵家所蔵)
寄附金申込予想額 御大典記念日本宗教大会寄附金勧誘先氏名
 二〇〇                大橋新太郎氏
 二〇〇                佐々木勇之助氏
一〇〇〇              子 渋沢栄一氏
 一〇〇                田村新吉氏
 一〇〇                内藤久寛氏
 一〇〇              男 中島久万吉氏
 三〇〇                服部金太郎氏
 三〇〇              男 古河虎之助氏
 二〇〇                御木本幸吉氏
一〇〇〇              男 森村開作氏
 一〇〇                諸井恒平氏
                    田中次郎氏
      以上計拾弐名


日本宗教大会書類 【謹啓 初夏の砌に御座候処貴堂御清福奉賀候、予ねて先月中書面を以て尊慮を煩したる日本宗教大会開催の期…】(DK460177k-0003)
第46巻 p.691-692 ページ画像

日本宗教大会書類             (渋沢子爵家所蔵)
謹啓 初夏の砌に御座候処貴堂御清福奉賀候、予ねて先月中書面を以
 - 第46巻 p.692 -ページ画像 
て尊慮を煩したる日本宗教大会開催の期も漸く切迫致し、諸般の準備も着々進捗致居候に付き幸に御省慮願上候、既に申上候如く帰一協会としても出来るだけ同大会の進行を援助し、且つ経費の一部を寄贈致し度存候に付、此際特に御配慮を得度重ねて御依頼申上候、御芳志の金額御通知被下候はゞ大幸に存上候
 尚ほ同大会の事業内容、予算等に関し御質疑も有之候場合には、本会より当事者参上御話申上ぐる運びに致置候間、無御遠慮御申越被下度、早速参上可為致候、尚右に関する御通信は総て渋沢事務所宛に相願度、此段得貴意度存上候 不備
  昭和三年五月十八日
                     渋沢栄一
                     森村開作
                     阪谷芳郎
                     姉崎正治


日本宗教大会書類 【(控) 明六 姉崎正治様】(DK460177k-0004)
第46巻 p.692-693 ページ画像

日本宗教大会書類           (渋沢子爵家所蔵)
(控)                     明六
    姉崎正治様
拝啓 益御清適奉賀候、然者去一日付を以て得御意候日本宗教大会費補助寄附金の諾否未回答の四氏の内、古河男爵・中島男爵・諸井恒平の三氏は各寄附金払込有之候に付、以上三氏を加へ計拾弐名、此寄附金合計金参千五百円と相成申候、即ち別紙内訳書加封供覧致候、尚前便申上置候大橋・御木本両氏の寄附金は既に御受納済に御座候や、又右大会より各寄附金者に対し領収証御発送の手続は御取運び相成候事と存候得共、如何に可有之哉、右重ねて御報告旁申上候 敬具
  昭和三年六月九日            増田明六
(別紙)
      日本宗教大会寄附金申込芳名簿
        (但シ渋沢事務所ニテ纏メタル分)

                     イロハ順
金参百円               服部金太郎殿
                  (太丸ハ朱書)
金百円               ○大橋新太郎殿
金百円                田中次郎殿
金百円                内藤久寛殿
金百円              男 中島久万吉殿
金参百円             男 古河虎之助殿
金百円                姉崎正治殿
金百円                佐々木勇之助殿
金弐百円              ○御木本幸吉殿
金千円              子 渋沢栄一殿
金百円                諸井恒平殿
金千円              男 森村開作殿
以上合計
 金参千五百円   拾弐名申込高
  但シ○印両氏ハ払込未済ニ付差引
 - 第46巻 p.693 -ページ画像 
 金参千弐百円   拾名払込高
               以上



(増田明六)日誌 昭和三年(DK460177k-0005)
第46巻 p.693 ページ画像

(増田明六)日誌  昭和三年       (増田正純氏所蔵)
六月廿七日 水 降雨               出勤
○上略
午後五時より一ツ橋学士会館に於ける日本宗教懇話会報告会に出席した、去六月五日より一週間青山青年会館《(四日)》で開催された大日本神・仏・基三教の合同協議会があつた結果を報告されたのである。
  ○中略。
七月四日 水 曇                 出勤
○上略
本日の来訪者
○中略
4、熊崎閑田氏 宗教懇話会の主事で、大日本宗教大会の寄附金を、増田ニ於て管理分を受取の為である。
○下略


日本宗教大会書類 【(別筆) 昭和三、七、五此書状持参、熊崎閑田氏来訪、金子引渡済、但シ小切手トセズ現金ヲ交付セリ】(DK460177k-0006)
第46巻 p.693 ページ画像

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日本宗教大会書類 【領収証】(DK460177k-0007)
第46巻 p.693-694 ページ画像

日本宗教大会書類            (渋沢子爵家所蔵)

図表を画像で表示領収証

 No..........   領収証 一金参千五百円也     外利子金九円弐拾壱銭也     日本宗教大会寄附金 



    
 右正ニ領収候也
     昭和三年七月四日
        日本宗教懇話会
            会計監督 大倉邦彦 (印)
 - 第46巻 p.694 -ページ画像 
  渋沢事務所
    増田明六殿
       (割印)
    …………………………………


日本宗教大会書類 【(別筆) 昭和三年七月 日本宗教懇話会 理事今岡信一良・渡辺海旭・和田幽玄神崎一作・野口末彦五氏来状】(DK460177k-0008)
第46巻 p.694 ページ画像

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日本宗教大会書類 【(印刷物) 拝啓 炎暑酷しく御座候処愈々御清栄奉賀候 陳者昨年六月開会致候日本宗教大会の儀…】(DK460177k-0009)
第46巻 p.694-696 ページ画像

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〔参考〕東京朝日新聞 第一五一一四号昭和三年六月九日 宗教大会の成績(DK460177k-0010)
第46巻 p.696-697 ページ画像

東京朝日新聞  第一五一一四号昭和三年六月九日
    宗教大会の成績
 今度の日本宗教大会の特徴は、発企人の政府でなかつたことが一つ幹部とも名くべき人々が、少しく宗教の何物たるかを知つて居ることはその二であつた。しかも他の一方には十数年前の三教会同も同様に単に存在と重要さとを主張すべく、兼て闘志を抱いて奮つて出席した者の多かつたことは、気の毒なる次第であつた。全国から選抜せられたるお歴々にして尚かくの如し。ましてや多数の凡夫が、かつは聯盟の果して可能なるやを危み、かつはその実績の予期よりも更に貧しさに失望するのは、是非もないことではあるが、もし将来この種の運動をして、少しなりとも時世に益するところ有らしめんとするならば、まづもつてその意義を解説すべきである。全体宗教大会と云ふ語は、聞えは甚だよいけれども語弊がある。宗教は到底大会し得るものではないのである。
 各派古来の熱信者の目から見れば、自宗他宗を総括した一個の普通名詞が、有るといふことさへも忍び難い譲歩である。如何なる野心深き競争団体でも、大抵はある程度まで相手のなは張を承認するに反して、ある宗派がこれを敢てすれば忽ち論理は崩れ、内部の信仰は動揺しなければならぬ。それが単純なる握手の好意を抱いて、一堂に集まり得べしと考へることが、既に無理解の始めである。いはんや一部の論者の憂ふる如く、こんな臨時の騒々しい寄合ひに由つて、一が他を感化し席巻する陰謀あるかの如く呼号するに至つては、ほとんど自信を無視したる話である。仮に我邦現在の多数宗教が、平然として雑行雑修を看過し、説く者自ら迷ふが如き抜殻式遺物であつたとしても、これは尚外部の刺激によつて、各自の独尊を意識すべき好機会ではないか。内外の歴史を回顧して見ても、会議と討論とは大概は新派の分裂を促して居る。どこに大会の多数決をもつて、消えて無くなつた信仰があらうか。
 さういふ懸念を抱くといふことが、もはや宗教を手段視する末世の兆候といつてよいのである。然らば何のための一致を目的として今更宗教大会を開くぞといへば、これは日本の有識階級、宗教家大会とも名乗る能はざる名流たちが、現代の風潮に敏なることを意味する。世界にこの種の会合の流行することは、単にある文明国の大会ずき、若くは国際辞令の趣味発達が、その原動力であつたと解するわけには行
 - 第46巻 p.697 -ページ画像 
かぬ。平生は相論難して互に一歩をも仮借せず、各々異端の折伏をもつて最終完成と信ずる程の人々すら、尚かつ共同の事業として、起つて力争しまた防禦しなければならぬ目前の危機あることを提せいして寧ろ意外をもつて満天下の視聴を集注せしめんとするのである。この意味においては、四年前の対米抗議が、相当の重味を認められたと同じく、少なくとも一部の政治家の故意の大声によつて、理由も無く動乱して居る人心を鎮定し、能ふべくんは更に今一歩を進めて、往々狂熱に馳せ易き新奇政論の蔓延を制御し得るかも知れず、これをしも時を得たる試み、世を憂ひ国を懐ふの企てとして、特に感謝の念をもつてこの会の成功を祈るべきは当然であつた。
 然るに惜しいかな、今度の大会の参画者等は、自ら宗教家以上の宗教通をもつて任ずるにも拘らず、恐らくは群衆の心理に誘はれて、余計なる誤解と紛乱との種をまいて居る。所謂東西思想の融和は、研究としては固より可能であり、哲学としては一時成立するかも知らぬがこれが単一宗教の二葉となることは、到底見込の無いことが明白であるのに、強ひて希望の語を放つて、教主なき宗教の可能を信ぜしめんとした。その様な事をすれば怒る者は法華宗ばかりでない。次にまた無法なるは内容無き宗教教育を提げて、弱腰の文部当局を突飛ばさうとする態度である。今日青年の諸学校にもし宗教があつたら、統御の遥に容易なることは多言を要しない。然らば如何なる宗教をもつて彼等の教育に充てようかと問へば、今日はさて置き数十年の未来にかけて、果してこれに答へ得る何人があらうか。宗派の団体が自ら設立した学校すら、今頃地獄極楽を論難して居る世の中だ。国が維持し府県以下の公共団体が設立する学校において、何の力が能く教義を選定し生徒の信心を帰一するといふか。もしまた今度の大会の開会の辞の如きものを、幾つか組合せてこれを宗教教育と名けんとならば、結局はそれを主張する者の真意が疑はれることになると思ふ。
 これを要するに宗教大会は宗教家の副業の研究会である。自分たちの命名に欺かれて出来もせぬ計画に手を伸ばさぬ方が、却て社会的効果も多く、また現在無気力なる各宗派の、反省の因縁ともなることと思ふ。喧嘩をするのは彼等のまだ真面目なる証拠であらう。吾人はこれによつて早晩の革新を期待する者である。



〔参考〕中外商業新報 第一五二〇〇号昭和三年六月九日 宗教大会大混乱 あはや壇上に血の雨 喧々囂々裡に辛うじて閉会(DK460177k-0011)
第46巻 p.697-698 ページ画像

中外商業新報  第一五二〇〇号昭和三年六月九日
    宗教大会大混乱
      あはや壇上に血の雨
        喧々囂々裡に辛うじて閉会
大会以来異分子が飛込んだりして論争紛糾をつゞけてゐた御大典記念日本宗教大会は、最終日の八日に到つて俄然大混乱を呈した、その日午前九時半から各部決議事項の報告にもとづき
 総会を 開いた、先づ議事に先だち、議長キリスト教の小崎弘道氏は柴田徳次郎氏から提出の「開会式に当つて一木宮相が君ケ代を合唱しなかつたことに就いて」の交渉顛末の報告を了ると、柴田氏は緊急動議ありとて登壇を求め、既に撤回されてゐるキリスト教側からの提
 - 第46巻 p.698 -ページ画像 
案出兵反対、神社仏閣に戦利品陳列廃止の問題をむし返す、その時各階に入つてゐた赤尾敏氏以下
 建国会 真日本建設団等の数十名の者は「宗教家諸君を嗤ふ」「キリスト教排撃」等のビラを撒布し、数名は演壇に這ひ上つたり、赤尾敏氏等は幹部廿名の前で暴れ廻つたので、会場は忽ち大混乱を呈し、暴漢の退場を求める声「非国民」の叫びうづまき、収拾すべからざることになり、小崎議長は老人の事とて唯傍観するのみ、その時今岡信一良氏は司会者として議長の命に服せないものは退場せよと叫んで赤尾敏氏のために押かへされて、アハヤ壇上は
 修羅場 と化せんとしたので、臨席中の四谷署の警官数名が壇上にかけのぼつて建国会一派を引致し、漸く九時四十分に休憩を宣するに至り、九時五十分より再会、各部の報告決議があつて、平和部で守屋東女史が平和部決議案の賛成演説中、またも柴田氏が発言を求めたので混乱に陥り、喧轟の声に交つて「南無妙法蓮華経」の声も聞えるなど、この処宗教混乱会の光景を現出し、十一時廿分辛うじて君ケ代合唱裡に一先づ会を閉ぢた



〔参考〕御大典記念 日本宗教大会概要報告 日本宗教懇話会編 第一―二五頁 昭和三年八月刊(DK460177k-0012)
第46巻 p.698-713 ページ画像

御大典記念 日本宗教大会概要報告  日本宗教懇話会編
                        第一―二五頁
                        昭和三年八月刊
    緒言
 我が日本国民の最も慶賀し記念すべき、昭和三年戊辰六月五日より四日間に亘り、各方面より多年期待されてゐた日本宗教大会が、予想以上の好成績を以て、盛大に且つ有意義に挙行され、劃期的記録を作ることが出来たのは、内外の各宗教団体、並に教信徒各位の熱誠なる賛同と、之に加ふるに一般有志諸彦の後援とを得た為であることを特記し、玆に大会概要を報告するに当つて衷心より感謝の意を表し、併せて主催者たる日本宗教懇話会々員、其の他各部委員諸氏が、挙つて協同尽力された労を多とする次第である。
  昭和三年六月
                  日本宗教大会代表
                      道重信教
                      小崎弘道
                      神崎一作

御大典記念 日本宗教大会概要報告
    目次
 一、大会の発端
 二、大会の趣旨
 三、大会第一日
   会場内外の光景 来会者 総会(一)講演会(一)
 四、大会第二日
   総会(二)部会(一)懇親会
 五、大会第三日
   部会(二) 新宿御苑拝観 講演会(二)
 六、大会第四日
 - 第46巻 p.699 -ページ画像 
   総会(三)演奏会
 七、大会決議事項

御大典記念 日本宗教大会概要報告
    一 大会の発端
 御大典記念日本宗教大会は、曩に声明したる趣旨及び執行順序により、予期以上の好成績を以て終了した。即ち玆にその概要を報告する元来這般の日本宗教大会は、宗教に、思想に、政治に、教育に、社会に各宗教団体共通の問題につき、多年日本宗教懇話会が、遠くは我が国の精神界に範を示された、聖徳太子の神儒仏三道の融合により、当代の日本に新文化を開拓し給へる教旨を体し、近くは明治天皇の信教の自由を憲法に規定された叡慮を遵奉する趣旨の下に、屡々協議を重ねて、我が日本諸宗教派の提携を実現し、以て国家社会に貢献し、宗教家として世界人類の幸福の為に、聊か真理の発揚に資し、文化の進展に裨益せんことを劃策し、機会の来るを待つたのである。
 幸にも今秋を以て国民歓呼の中に、御即位の大礼を挙げさせらるゝ昭明協和の新時代に際会したので、吾等宗教家が手を携へて起つべきは、真に此の機なりと、主催者一同の意見はこゝに合致し、本会を主催するに至つたのである。
 如上の趣旨により、五月一日附を以て、本会の要項と執行順序草案とを印刷に附し、汎く大方の賛同と援助とを需めたるに、各宗派は勿論帰一協会の如きも率先して賛意を表し、神道十三教派、仏教五十六派、基督教二十三派、其の他主なる宗教信仰団体より、極めて自由に何等の拘束なく、千数百の宗教家が一堂に会し、互に胸襟を披いて意見を交換し、実際問題について協議を凝らし、その大部分は之を決議として、其の実行運動を為すに至つたのである。
    二 大会の趣旨
 日本宗教大会の趣旨は大会要項、仮執行順序、部会要項と共に、嘗て大会開催宣伝の目的で、菊判十二頁の小冊子として数千部印刷、之に参加申込書を添へ、主催日本宗教懇話会の名で、広く各方面に配布したもので、次の通りである。
    御大典記念 日本宗教大会趣旨
 宗教は文化の基礎であると共に其宝冠である。抑も人類歴史の曙光に於ては、政治も学問も芸術も、悉く宗教の母胎より発生した。斯くして生れた文化は、常に永遠清新の理想を目標として、向上の一路に不断の精進を続くる事に由つてのみ其意義がある。此所謂清新永遠の理想とは、宗教の極致でなくて何であらう。
 世界大戦の後、社会の改造と、新文化の創造とに対する熾烈な要望が、世界を挙げて起つた事は、今更喋々を要せぬ所であらう。是れ即ち旧世界と、旧文明とに行詰れる人類が、夫の永遠清新の宗教的極致を求める絶叫に外ならぬと思ふ。換言すれば最も正しく、且つ最も広き意味に於ける宗教に対する世界人類の要求は、思ふに今日ほど痛切な時代は無からう。随つて宗教家の自覚を要し、宗教真理の発揚を期する事の急なる、恐らく現代ほど痛切な時代はあるまい。吾等が今回
 - 第46巻 p.700 -ページ画像 
日本宗教大会を開き、広く我国に於ける各教宗派の宗教家、及一般信徒並に同志諸君の会同を請はんとする根本趣旨は、実に此に存する。
 由来、我国には聖徳太子が神儒仏三道の融合に依りて、当代の日本に新文化を開拓し給へる誇るべき歴史がある、而して日本の宗教史は大体に於て世界に其類稀なる諸宗教提携の寛容なる歴史である。加ふるに吾等は今秋を以て、国民歓呼の中に御即位の大典を拝せんとし、百姓昭明、協和万邦の新時代に際会した。宗教家が手を携へて起つべきは、真に今だと思ふ。起つて而して政治に教育に社会問題に、昭明協和の精神的基礎を築くべき責を尽すべきである。換言すれば、東洋文明の精華たる仏教が、吾国に於て最高の発達を成し遂げ居る事実、西洋文明の根幹ともいふべき基督教も今や可なり広く我国民の間に流伝せられ居る事実、且つ国民精神の発露として最も包容性に富める惟神の大道が儼存して諸教の協調提携に与りて力ある事実に徴して、我国の宗教界は真に世界の渇望する新文化の創造と、世界の更生とに貢献すべき、世界的大使命に目ざめねばならぬ。要するに日本宗教大会は、日本の宗教界が世界に対して有する、如上の大使命の実現の第一歩たらん事を期するものである。而して斯の如きは、吾等が御大典を記念する最も有意義な方法だと信ずる。願くば大方の賛同と援助とを賜はらんことを。
  昭和三年五月一日            日本宗教懇話会
    三 大会第一日(六月五日火曜)
      会場内外の光景
 昭和三年六月五日は日本晴れの麗はしさに、明治神宮外苑翠緑滴るばかり、その樹園に聳え建つ日本青年館正門外は午前から「御大典記念日本宗教大会々場」の大標示が掲げられ、入口には国旗が交叉された。館内で総務の指揮により各部係員それぞれ部署に就き、会員の入場を待つのであつた。階段右方より神道、中央より仏教及一般、左方より基督教所属の会員を迎へることにした。
 正午頃から来会者参集、三個所の受付では、申込名簿に照合して、会費と引換に「御大典記念日本宗教大会執行順序及議案」と題した冊子と、会員章・同徽章を交附せられて大会場の席に着き、又来賓は迎賓係の案内で、それぞれ控室に休憩、開会の時を待つた。殊に来賓及び来会者の受付接待には、松平俊子・塚本はま子、秋間為子三女史をはじめ、神仏基三教婦人団体諸姉、並に各宗教関係学生諸君の熱心なる応援により、少なからざる便宜を得たのである。かくて一時頃には来会者続々殺到して、暫らくは受付と表廊下との雑閙非常なものであつた。
      来会者
 大会参加申込者氏名については「御大典記念日本宗教大会参加者氏名簿」同追加の二冊として、開会中来会者一同に配布した通りであるが、当日の来賓及び来会者は一木宮相・阪谷男爵・平塚東京府知事をはじめ、普通会員、神・仏・基合して千三百余名、婦人会員約百名、外に主催者側の日本宗教懇話会員を加へて、千五百の多数を算した。
      総会(一)
 - 第46巻 p.701 -ページ画像 
 午後二時八分振鈴、来賓始め会員一同着席、十五分開会、奏楽、国歌斉唱の後、大会総務今岡信一良氏司会、議長及副議長選挙に就き選出方法を諮る。司会者推薦に決し、議長として道重信教氏、副議長として小崎弘道氏並に神崎一作氏当選す。依つて議長道重氏は三氏を代表して挨拶し、大会主催者の開会及歓迎の辞、来賓の祝辞及び大会会員代表の答辞等左の通りであつた。
 開会及び歓迎の辞  日本宗教懇話会理事 渡辺海旭氏
 祝辞         内閣総理大臣男爵 田中義一氏
 同              文部大臣 勝田主計氏
 同              内務大臣 望月圭介氏
 同             東京府知事 平塚広義氏
 同              東京市長 市来乙彦氏
 同       中央社会事業協会副会長 窪田静太郎氏
 同            神宮奉斎会長 今泉定介氏
 同             曹洞宗管長 杉本道山氏
 同       日本メソヂスト教会監督 鵜崎庚午郎氏
 答辞        真宗木辺派管長男爵 木辺孝慈氏
 右終つて錦秋女学校生徒、明治天皇御製を奉唱した。それより会場部長野口末彦氏プログラムの報告及び祝電の披露あり、次で、柴田一能氏記念写真に関する報告をなし、三時五十五分、道重議長閉会を宣した。
      講演会(一)
 大会中二回に亘り、教学界知名の士に嘱して、公開講演会を開催し各宗教の現勢、政治・教育・社会其他との関係及将来に対する希望等に就き講演を煩はした。先づ其の第一回として、六月五日午後七時十三分より、青山会館に於て開催した。
 最初に、ピアノ独奏があつてから、司会者野口末彦氏開会の辞を述べ、それより講演に移る。先づ河野省三氏登壇して「神道の精髄」と題する講演をなし、次に霊南坂聖歌団の合唱あり、それより賀川豊彦氏は「産業の人道化」と題し、井上哲次郎氏は「宗教の新傾向と其の意義」椎尾弁匡氏は「教育的宗教と宗教的教育」と題して何れも熱誠に講演された。斯くて講演後両陛下の万歳を三唱、午後十時半散会した。聴衆約二千数百余名、文字通り満場立錐の余地なき程の盛況であつた。
    四 大会第二日(六月六日水曜)
      総会(二)
 午前九時十五分振鈴により、来賓其他一同入場、着席、二十分副議長神崎一作氏登壇着席、総会開会を宣す。
 議長より「本宗教大会は御大典記念に因むものなれば、適当なる代表者を選び、本会を代表して天機を奉伺すべき件」提議あり。満場一致可決。
 其の前後に於て、前夜の賀川氏講演の所論に関し、質疑応答あつたが、議長は議事を進行し、稲村修道氏提出にかゝる左の建議案を諮問した。
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 一、本大会に於ける建議案及決議に就ては、各宗教各派より実行委員を挙げて其達成をはかること。
 一、各部会に入るに先立ちて、三教各別の協議会を開くこと。
 理由は提出者に於て説明ある筈なる旨を述べ、本建議案に就て、賛否を問ひ、稲村氏より其の説明あり、採決の結果賛成者多数を以て決定。
 次で、今岡総務登壇、大会進行上、予定の各部会の順序に関し提議あり、大多数之に賛成を表し、更にプログラムの件に就き、南・池田・野尻・柴田の諸氏より意見の陳述があつて後、今岡総務予定の如く会議を進行するに就いて各員の意見を問ふ。大多数賛成、依つて議長は部会に移るべきことを宣し、九時五十五分総会を終る。
      部会(一)
 部会は之を左の四部とし、各部の問題に就て、予定のプログラムに準じ、六日・七日の二日間に於て講演或は意見の発表あり、且つ各種の議案に就て討究審議し、決議した事項は之を実行することゝした。就中平和部会に於ては、二、三問題に関して種々の異論もあつたが、要するに何れも愛国の精神より発露し、真の平和を翹望する至誠より出でたるものと観察された。
  平和部会・教育部会・社会部会・思想部会
 右部会の決議は大会最終の総会の承認せること、別項(七、大会決議事項)の通りである。又各部会の会場は、日本青年館の一階講堂を第一会場として社会部、二階の会議室を第二会場として思想部、三階の西側会議室を第三会場として平和部、同東側会議室を第四会場として、教育部に当て、大会第二日より左の通り、各部同時に開いたのである。
      平和部会
 六日午前十時、新渡戸稲造氏議長席に着き、平和部会の開会を宣し直に左の講演があつた。
 日本人の信念 農学博士法学博士 新渡戸稲造
 右講演後、柴田徳次郎氏の質問あり、且つ印刷物配布の手違について、質疑釈明等があつて協議会に移つた。協議の順序は提案者の都合により予定を変更し、最初に次の議案を協議することゝした。
  一、国際教育に関する議案(提案者 野口援太郎)
 右議案につき提案者の説明があつて、柴田徳次郎氏・南拝山氏等の質問及び意見の陳述あり、それから討議の末、議長の指名により、委員七名を挙げ、原案の修正を附託することに決し、午前の議事を終ることゝなつた。
 午後一時十五分再開、国際教育に関する決議案修正委員附託につき新渡戸議長は、南拝山・柴田徳次郎・中村万作・小平国雄・中桐確太郎・柴田一能・野島勝七の七氏を委員に指名し、それから更に議事の順序を改め次の議案協議に移つた。
  二、国際聯盟に関する決議案(提出者 友枝高彦)
 提案者の説明があり、之に対する野尻祐通氏の修正意見、柴田徳次郎・来馬琢道・南拝山の三氏其他の質問応答、法学博士信夫淳平氏の
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不戦条約、並に国際聯盟に関する説明があり、それから討議を経た結果、文字の修正を主査に一任することゝし、原案賛成多数により可決(別項七、大会決議事項平和部会参照)
 それから野口総務より議事進行について、国際教育に関する七名の委員の外に、二名の主査を加へ、九名を全体の議案整理委員として調査を進むることを提議し、異議なく決定、最後に新渡戸議長の簡単なる感想談ありて四時閉会。
      教育部会
 六日午前十時部会長井深梶之助氏議長席に着き、簡単なる挨拶があつて開会を宣し討議に移つた。討議案は予定の順序を変更して、次の議案を上程した。
  一、文部省訓令第十二号を改正する要なきや、若しありとすれば其具体案如何。
 右議案につき主査大村桂巌氏の説明の後、何れも熱心なる討議があり、結局特別委員を設けて案を練ることゝし、委員には浅岡信堂・中治稔郎・浅野孝之・小谷文海の四氏に主査三名を加へ建議文作成に決定。(別項七、大会決議事項教育部会一、参照)
 次に左の意見発表があつて、午前十一時五十分休憩昼食。
 日曜学校調査会について         矢部喜好
 宗教々育の語義及び通念         大村桂巌
 学校に於ける宗教教育          小原国芳
 午後一時再会、左の討議を開く。
  二、学校に於ける宗教教育の実施案
 主査沢田五郎氏の説明ありて、約一時間に亘り会員中治稔郎・梅沢月光・石浦彦助・村田通元・山口学隆・南拝山・渡辺滋・浅野孝之・吉田清太郎諸氏の本討議案に関する意見希望等の発表があつて、次の講演及び意見発表に移つた。
 宗教教育論   広島高等師範学校教授 福島政雄
 更に次の通り宗教教育その他の問題につき講演及び意見の発表があつた。
 母性と宗教              塚本はま子
 宗教々育と神道            沢田五郎
 右意見発表後、部会第二日の討議案について準備委員として左の十氏を挙げ閉会。
 浅野孝之・諸井慶五郎・原田敏明・秋月聖憲・七里仲麿・石川角次郎・藪内敬之助・大村桂巌・小原国芳・沢田五郎
      社会部会
 六日午前十時十二分開会、部会長矢吹慶輝氏簡単なる挨拶ありて、直に次の通り議案上程協議に入る。
  一、各教宗派を通じ、二十五歳以下禁酒法の実現に努力するの件(提案者 伊藤一隆・高島米峰)
  二、各教宗派の会合より酒類の使用を廃し、良風の作興に努力するの件(提案省 同前)
  三、毎年九月一日を無酒日と定め、神社・寺院・教会に於ては、
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之に関する説教講演をなすの件(提案者 同前)
 以上三案を一括して上程、提案者高島米峰氏登壇提案の理由を説明す。それより協議の結果本案は適当なるものと認め、会員一同の申合として、之が実現に努力することに決定。次に提案者の都合により、予定の協議事項順序に前後があつた。こゝには便宜上、実際の協議順序により概要を記することゝした。
  四、宗教の立場より、社会問題研究所設置の件(提案者 杉本敦子)
 提案者の理由説明ありて協議の上、本案は極めて重要なる問題なるが故に、之を宿題とし、その実施方法としては、宗教懇話会に之が適当なる研究機関の設置希望に決定、次に左の講演があつた。
 宗教と社会事業 文学博士 矢吹慶輝
 宗教家として今後行くべき道を指導し、聴衆に多大の感銘を与へたそれから五分間休憩の後、次の協議会に移つた。
  五、癩病撲滅のため予防並に救済的施設の完成を期する件(提案者 高岡隆瑞・光田健輔・小林正金)
 高岡・光田両氏右提案につき説明。次で来会中なる法学博士窪田静太郎氏より右の件に関する講演があり、それより協議に移つた。一同は右提案の主旨に賛成し、「癩病予防の為め国立病院建設」の議を当局へ建議することに、満場一致可決。休憩、昼食の後再び開会。
  六、児童保護並に少年保護の徹底を期するの件(提案者 生江孝之・土田行学・勝水淳行)
 土田・勝水両氏登壇説明あり、右提案に基き、宗教家として少年保護事業に努力することを申合せ、更に少年保護事業の施設たる「少年審判所を全国に設置の件」を当局に建議すること、満場一致を以て可決。更に児童保護の必須事業として、「児童局設置の件」をも提議して、満場異議なく、当局に建議することに可決。
  七、陪審法中改正建議に関する件(提案者 豊山派社会事業協会)
 同協会代表川井精春氏の説明あり、本案は法律に関する問題とて、質疑応答の後、右提案に賛成者多く原案可決、但し之が建議については、特別委員を設けて審議することに決定した。
  八、不具者を興行に用ひ、営利の目的を以て、公衆の観覧に供することの禁止を其筋へ建議するの件(提案者 益富政助・畑道雄)
 益富氏の説明あり、一同異議なく原案可決、当局へ右提案の主旨を建議することに決定。
  九、社会省設置建議の件(提案者 生江孝之)
 提案者の説明ありて満場異議なく、当局へ建議することに決定。
  十、盲唖聾保護の徹底を期するの件(提案者 松岡了眼・和田秀豊)
 提案者両氏の外、真渓総九郎氏登壇説明し、一同賛成、之を宗教家各位の申合となし、これが事業の徹底に努力することに決定。十分間休憩の後、次の通り各自約七分間づゝの意見発表があつた。
 日本全国主要都市に宗教団体の提携に依り、旅行者保護の施設を完
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備するの件       吉本道堅
 死刑廃止に就て            勝水淳行
 不具者に対する職業再教育に就て    益富政助
 各教宗派は当該教宗派の社会事業に従事する教師僧侶に対して、年金又は一時金給付の途を開くの件                成実随翁
 社会事業資金聯合募集に就て  立正大学社会問題研究会
 精神病者保護に関する件        新居弁孝
 四月十一日を社会事業デーとする件   京都仏教護国団
 児童愛護デーに関する件        五十嵐喜広
 宗教団体の功労者に対し、褒章条例を適用するの件
                    来馬琢道
 右終つて矢吹部会長の挨拶あり、午後四時十分閉会。
      思想部会
 六日午前十時十分開会、主査立花俊道氏の紹介により部会長姉崎正治氏議長席に着いて開会を宣し、初めに左の通り意見の発表があつた
 日本宗教史の特異性          飯田尭一
 東西思想の接触と新文化の創造     金子白夢
 神仏分離が明治以後の思想界に及ぼせる影響
                    神崎一作
 国民思想と迷信            小林宜園
 経済主義と精神主義          立花俊道
 日本の三教国体観念の上に於て一致せよ 野尻祐通
 正午休憩の後、更に左の通り意見の発表を続けた。
 宗教対経済              西田天香
 政治と宗教              高島米峰
 国民精神作興の聖旨を徹底せしむべし  木辺孝慈
 唯物主義無神論に就て         宮崎小八郎
 唯物史観対宗教            小平国雄
 光は東方より             斎木仙酔
 日曜日を聖日とせよ          石川潔太
 心霊的全神主義の生活         堀江秀雄
 内省と実践的感化           浅岡信堂
 日本的新宗教の建設          吉田快善
 右の意見発表があつて、午後四時十分散会した。
      懇親会
 六日午後六時日本青年館二階食堂に於て懇親会を開いた。先づ食卓開始前大野雉彦氏趣味講演「青の洞門」を演じ、午後六時半食卓に着き、会員一同晩餐を共にした。それからデザートコースに入り、小崎弘道氏の挨拶に続いて、司会者益富氏の紹介により、初めに古義真言宗総務瀬川大慶氏起つて感想を陳べ、次に出雲大社教名古屋分院長千家鉄麿氏、同志社長海老名弾正氏、妙心寺派布教部長天岫接三氏、金光教本郷教会長西村伝蔵氏、文部省参与官安藤正純氏、次に日本来遊中の加奈陀ハリフアツクスのパインヒル神学校長マツキンノン博士がコーツ博士の通訳で所懐を陳べた。次に同じく来遊中の布哇ホノルル
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のバハイ教のアレキサンダー女史、日独文化協会幹事グンデルト氏、仏教女子青年会幹事出淵輝子女史、婦人矯風会長小崎千代子女史、国学院大学教授河野省三氏、女子美術学校教諭田村一郎氏、前日本メソヂスト教会監督平岩愃保氏、曹洞宗前教学部長大森禅戒氏、天理教東京支庁長増野道興氏、最後に斎木仙酔氏等各々感想・希望、又は述懐談あり、和気靄々裡に胸襟を吐露し、最後に明治天皇の御製朗読あり柴田一能氏の発声で日本宗教大会の万歳を三唱し散会した。
    五 大会第三日(六月七日木曜)
      部会(二)
 午前九時より前日に引続き、次の通り各部会を開いたのである。
      平和部会
 七日午前九時二十分、新渡戸部会長議長席に着き、簡単なる挨拶あつて開会、南拝山氏より六日の協議会で、委員附託となつた国際教育並に不戦条約に関する決議案に対し、同日委員会に於て審議修正せられた箇所及び文句を報告した。先づ別項の通りその国際教育に関する修正案(別項七、大会決議事項平和部二、参照)につき協議し、採決の結果多数を以て原案可決。
  三、不戦条約に関する決議案(提案者 柴田一能)
 右の原案につき前日九名の整理委員の手で修正した修正案を議題として議事を進め、論難答弁、慎重審議の上、遂に修正案末尾の人種差別問題に関する部分を切り離して、此際新に決議案を提案することゝし、質問応答の後、議長採決に入り大多数を以て修正案可決(別項七大会決議事項三、参照)
  四、人種の差別待遇撤廃に関する決議案(提案者 野尻祐通)
 提案者の説明あり、柳原直人氏の動議により、直に採決に入り、大多数賛成、原案可決。(別項七、大会決議事項平和部会参照)
  五、国際平和及び宗教団体に対する挨拶状送附に関する決議(提案者 今岡信一良)
 柴田徳次郎氏の質問、津荷輔主査の応答あつて後、議長採決に入り賛成者多数、原案可決。(別項七、大会決議事項平和部会五、参照)
 尚ほ津荷輔氏の提出にかゝる軍縮及び補永茂助氏の提出に係る平和日の設定に関する両議案は審議の時間不足なるを以て之を上程せざることゝし、こゝに協議会を了り、次に簡単なる意見発表があつた。
 軍縮会議に関する件          山内利太郎
 日支親善に就いて  丸山伝太郎氏代理 小原栄次郎
 最後に新渡戸議長の挨拶あり、津川弥久茂氏は出席者を代表して議長に感謝の意を表し、午後零時四分閉会。
      教育部会
 七日午前九時開会、先づ左の通り文部省への建議五問題について協議した。
  一、文部省に建議案
 右につきそれぞれ出題者の説明があり、之に対し緊張した、有益にして誠意ある修正、又は参考となるべき意見を会員より吐露し、十人の委員によつて作成の建議文決定。(別項七、大会決議事項教育部会
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二、三、四、五、六、参照)
   イ 師範教育に於て宗教科を特設すること。
   ロ 教育者の宗教信念養成の為講習会を開催奨励のこと。
   ハ 各教科書に宗教教材を増加すること。
   ニ 国定教科書編纂委員に宗教家を加ふること。
   ホ 文部省に宗教教育調査会を設置すること。
  二、児童映画デーの時間を日曜日午前以外とすること。
 出題者海老沢亮氏からパンフレツトを配附し、説明があつて、映画の効力あるも、之を行ふ時間を土曜の午後か、日曜の午後かに変更すべく当局に請願する意見多数、よつて日曜日午前以外とすることを、日本宗教懇話会より、文部省、其他の関係諸方面に交渉すること可決(別項七、大会決議事項教育部会参照)
  三、貧困児の教育援助問題と、討議問題の男女貞操問題とは、社会部の方でも討議されてゐるし、且つ社会部に属すべき性質のものであるから、その方で討議を煩はすことゝし、当部会に於ては省略し、意見発表に移つた。
 母性の宗教教育と経済思想       杉本敦子
 寄宿舎に於ける宗教々育        滝浦文弥
 宗教教育について           川又吉五郎
 右にて予定の事項を終了し、主査小原氏より宗教懇話会への建議として民間に於ても宗教々育調査会を設け、実際に各教宗派が協力して宗教々育の調査をなし促進することを提議し、採決の結果満場一致で可決。(別項七、大会決議事項教育部会参照)
 かくて主査より種々の報告あり、駒形善教氏会員を代表して部会長及主査に感謝の辞を述べ、最後に井深部会長役員側を代表して挨拶され、午前十一時五十五分閉会。
      社会部会
 七日午前九時二十五分開会、矢吹部会長開会を宣し、直に前日に引続き協議に入る。
  十一、売淫公認制度廃止に関する件(提案者 益富政助・渡辺海旭・畑道雄)
 益富氏の説明あり、次で久布白落実女史登壇、右の問題につき最近欧洲の状況視察談がありて協議に入り、右提案を其筋に建議することに決定。
  十二、釈放者に対する差別待遇撤廃の件(提案者 武田慧宏・原泰一)
 武田氏説明の後協議、刑余者保護の事業に宗教家の努力すべきことを申合せ、法律中右条項を撤廃する件を当局に建議すること満場異議なく可決。但し重要問題であるから之を委員に附記することに決定。
  十三、現に風教上忌むべき職業に従事するものを各種の名誉職に挙ぐるを得ざらしむる件(提案者 来馬琢道)
 来馬氏の説明あつて協議に入り、質疑応答、多少の論議あつたが、大多数を以て原案賛成可決、之を声明するに決定。
  十四、全国大小公園、及神社寺院教会を隣保事業等に使用し、差
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当り児童保護の施設をなすの件(提案者 長谷川良信・杉本敦子)
 提案者両氏の説明があつて、隣保事業に使用する件は宗教家各自の申合せとすること、之に児童保護施設をなすことは、其筋へ建議することに可決。
  十五、融和事業促進に関する件(提案者 益富政助・長谷川良信・畑道雄)
 提案の主旨を徹底せしむるため、特に有馬頼寧・平原光親両氏の説明を求めた後協議に入り、異議なく賛成、この事業に各自努力することを申合せ、之を以て協議事項全部を終り、次の講演があつた。
 宗教と社会事業 内務省社会局社会部長 大野録一郎
 犯罪問題について  司法省刑事局長
               法学博士 泉二新熊
 禁酒問題について  国民禁酒同盟会長 長尾半平
 教化問題について  教化団体聯合会理事長
               法学博士 松尾茂
 以上終つて矢吹部会長の挨拶があり、午後零時三十分閉会。
      思想部会
 七日午前九時十分開会、始め部会長姉崎正治氏の講演があつた。
 宗教の立場より見たる現時の思想問題
               文学博士 姉崎正治
 それから前日に引続き、左の通り意見発表があつた。
 皇国の将来を如何に指導すべきや    堤清
 皇道と万教一致            川崎清一
 宗教家の政治的進出に就て       稲村修道
 以上意見の発表は午後零時十五分終了《(マヽ)》。それより五分間休憩、左の通り議事に移つた。
  一、東西思想融和研究所設立の件(提案者 金子白夢)
 右につき提案者の説明があつて、協議の結果之を日本宗教懇話会に委託し、立案研究することに決定。
  二、日本宗教大会宣言の発表に関する件(提案者 日本宗教懇話会理事会)
 理事今岡氏提案者を代表して原案を朗読説明、審議の上委員を挙げて字句を修正し可決。(別項七、大会決議事項思想部会一、参照)
  三、社会信条の設定に関する件(提案者 生江孝之)
 提案者の説明あり、その主唱につき討議の上、日本宗教懇話会に委託して具体的成案を作製することに決定。
  四、共産主義に関する決議案(提案者 南拝山・大久保高明・柴田徳次郎)
 提案者の説明あり、理由の字句を修正して可決。(別項七、大会決議事項思想部会二、参照)
 右終つて午後零時十分散会。
      新宿御苑拝観
 七日午後一時、御苑拝観希望会員約八百名、日本青年館大講堂に集
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合、委員より拝観に関する心得につき注意あり、一同徒歩にて御苑正門前に一時半到着、ここにて整到、委員麻生正一・和田幽玄・野口末彦三氏人員の調査をなし、静粛に参入、宮内・文部両省係員諸氏の懇篤なる斡旋により右方より順路拝観、途中天幕内喫茶接待所で少時休憩、一巡の後門内天幕内に於て御下賜紅白菊桐御紋章打物御菓子を拝受し、各自退出散会した。尚ほ大会開催中は明治天皇記念絵画館の特別観覧を許され、会員は各自適宜の時間に拝観することが出来た。
      講演会(二)
 第二回の講演会は七日午後七時五分本郷区三丁目の帝国大学仏教青年会館に於て開催した。先づ司会者馬田行啓氏の開会の辞あり、次で慈光楽団によつて聖徳太子奉讚歌「光」を合唱、直に講演に入る。加藤玄智氏は「神道の世界宗教上に於ける位地」、アームストロング氏は「国民生活に於ける宗教の権威」と題して講演。それよりルンビニー合唱団「法の深山」を合唱、引続き高楠順次郎氏は「宗教融和の可能性」、海老名弾正氏は「基督教真髄」といふ題で何れも有益な講演があつた。終つて司会者閉会を宣し、天皇陛下の万歳を三唱して散会時に午後十時五十分。当夜の聴衆は千有余名で場外に溢れ、数百人は入場するを得ずして、空しく踵を廻らされたことは誠に気の毒であつたが、斯く盛大なる状況を見たのは、如何に此の大会に対し、一般より注目されたかを証するに足るものであらう。
    六 大会第四日(六月八日金曜)
      総会(三)
 午前九時十五分振鈴、開会。副議長小崎弘道氏議長席に着き、総会の開会を宣す。今岡総務議長に代つて議事を進行した。
 先づ小崎副議長より天機奉伺に関する報告があり、次に中桐確太郎氏前回の提議に関する報告があり、それから柴田徳次郎氏は平和部会の決議に関し意見発表あり、議場一時騒然たりしが、一時休憩の後再開、今岡総務より十時に文部大臣の挨拶ある旨報告あり、続いて総会に入り、井深部会長より教育部の報告、矢吹部会長より社会部の報告あり、何れも部会の決議通り承認可決。(別項七、大会決議事項参照)
 此の際勝田文部大臣臨場、一場の挨拶をなして、会員の教化事業に対する激励と希望とを陳述された。それに対し小崎議長より謝辞を陳べ、次に姉崎思想部会長より同部の報告、並に同部会より総会に提出の提案報告あり、続いて柴田一能氏は新渡戸平和部会長に代つて平和部会の報告をなし、別項決議の通りこれまた何れも総会の承認可決する所となつた。最後に小崎議長閉会を宣し、神崎総務より来会者一同に挨拶あり、終つて一同起立、国歌を斉唱し、十一時二十分両陛下の万歳を三唱し閉会。それより一同文部大臣の招待に応じ、東京音楽学校の演奏会に急ぎ参列した。
      演奏会
 八日午後零時半、上野東京音楽学校に於ける、文部大臣招待の演奏会があつたので、大会多数の会員が之に参列した。直に演奏開始、曲目は絃楽――前奏として――第十七番と短調大競姿曲より採れる「情操豊かなる緩徐曲」、次に「埃及に於けるイスラエル」(一七三八年ヘ
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ンデル作)で、独唱合唱及管絃を以て表す神事劇楽であつた。指揮者シヤールス・ラウトルツプ氏、演奏者は主に同音楽学校卒業男女同窓会員並に上級学生であつた。かくて演奏の微妙なる、音楽の興趣に一同感を深くし、午後四時三十分、柴田一能氏閉会を告げ、こゝに四日間に渉る大会を満了した。
    七 大会決議事項
      思想部会
 大会宣言外三件。
一、日本宗教大会宣言
 御大典を記念せんが為め、教宗派及国籍の異同を超越して開催された日本宗教大会は左の通り宣言する。
 思想の悪化、生活の不安、並に政治の堕落は現時の世相に於ける三大恨事である。之を善導し、解決し、且つ救済せんが為には、現社会の刷新と、新文化の創造とに待たねばならない。而して現社会の刷新と新文化の創造とは、不健全なる唯物主義の能くする所でなく最高最深の意味に於ける宗教的信念に依つてのみ、之を完成し得ることを信ずる。依つて吾等宗教者は、反省自覚協心戮力、以て昭和の聖代をして「光は東方より」の真意義を実現するに至らしめんことを期する。
  昭和三年六月八日            東京に於て
二、本大会は我国体に背反する、共産主義等の結社、及其の運動の絶滅を期す。
 理由 現代世界の秩序を威嚇せんとする共産主義・無政府主義の如きは、我が国体の精神に反し、人間心霊の尊厳を破壊するものなるを以て、吾等は此種の思想を根本的に絶滅し、以て我が民族の精神を発揮し、其の国礎を永遠に確立せざるべからず。而して此の任務は、特に吾等宗教者の上にあるを信ず。これ本案を提出する所以なり。
三、本大会は日本宗教懇話会に対して、東西思想融和研究所の設立に関する研究をなさんことを希望する。
四、本大会は日本宗教懇話会に対して、社会信条の設定に関する研究を為さんことを希望する。
      平和部会
 平和に関する決議事項左記五件。
一、国際聯盟に関する決議。
 国際間の平和は人類の福祉を増進する根本条件である。而して国際聯盟はこの目的を実現するのに最も有力な機関であることは、過去八年間の業績によつても証することが出来る。故に国際聯盟をして益々其の機能を発揮せしめ、その事業の完成を期せしめる為には、各国民が此の機関に対する鞏固なる信念と、明確な良心とに依つて一層強く之を支持することを必要とする。依つてここに左の通り決議する。
 イ、吾等は国際聯盟を支持後援して、其の目的の達成を図る。
 ロ、各国政府は国際聯盟の主義精神を以て、外交の基調とし、平和
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協力に依つて国際問題を処理せんことを希望する。
 ハ、未だ国際聯盟に加入しない国家は速かに加入する様希望する。同時に国際聯盟は、之が加入を可能ならしめる様考慮せんことを希望する。
二、国際教育に関する決議。
 真正な世界の平和と、健全な愛国の思想とは、道義的国際観念の教養に俟つべきものが多いのであるから、教育当局並に教育者は特に左の点に留意せられんことを希望する。
  道義的国際観念の養成に資する教材を、国定教科書に成るべく多く挿入すること。
三、不戦条約に関する決議。
 人類の福祉を増進し、国際間の正義を確保するには戦争を防止する途を採らねばならぬ。而して米国の不戦条約の提唱は、世界平和の促進に対して大なる力であることは、吾等の確信する処である。依つて左の通り決議する。
 日本宗教大会は、不戦条約の趣旨に賛成し、その速かに成立せんことを望む。
四、人種差別待遇撤廃に関する決議。
 各国政府は人種の差別待遇を全廃し、民族自然の発展を阻害しないことを望む。
五、国際平和及び宗教団体に対する挨拶状送附に関する決議。
 国際聯盟及び世界各国に於ける平和団体、並に宗教団体に挨拶状を送ること。
      教育部会
 文部省に対する建議事項左記六件。
一、文部省訓令第十二号の適用を左記の精神に改正せられんこと。
 一般の教育者をして特定宗教の信仰によらしめざるは、学政上必要とす。依て官立公立学校及学科の課定に関し、法令の規定ある学校に於て、宗教上の教育を施し、又は宗教上の儀式を行はんとする時は、文部大臣の許可を受くべし。
   理由 文部省訓令第十二号は宗教を拒否し、又は之を敵視するものにあらずして、たゞ単に消極的に諸種の弊害の発生を恐るるが故に発令したるものなり。宗教教育が、如何に全人教育上緊要なるかは論を俟たず。宜しく教育全体を通じて、宗教の教養に努むべきなり。然るに文部省訓令第十二号は、往々にして前述の如き誤解を生じ、宗教教育上多大の障害を来す故に、其の適用に於て十分なる改正を計ることを必要とす。
二、師範教育に於て宗教料を特設すること。
 教育力の深浅は、実に教師その人の如何にあるは言を俟たざる所なり。況や宗教教育の如き、特に微妙深遠なる精神教化に於てをや。故に師範学校に於て、人格教育上の最も根本にして中心たるべき宗教に関する理解を得しめ、更に信念を培養するの要あり。
三、教育者の宗教信念養成の為め講習会を開催奨励の件。
 宗教的信念の向上は、不断の努力に俟たざるべからず。既に実際教
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育に従事するものに対し、各府県郡市等に於て連年開催する講習会に、宗教に関するものを適宜に配置し、以て普遍的に宗教教育の促進を図る要あり。
四、各教科書に宗教教材を増加すること。
 小学校及各種中等学校の現行教科書に、宗教教材少きは、全人格の陶冶上大なる遺憾あり。故に修身・国語及歴史等に此の教材を増加する要あり。
五、国定教科書編纂委員に宗教家を加ふること。
 教科書の完全を期せんが為には、多方面より人材を集むるの要あり特に宗教々育要求の声高き今日に於て、宗教家をも之れに加へざるべからず。
六、文部省に宗教々育調査会を設置すること。
 我が国に於ける宗教々育に関する研究及び調査不備なるは、実に朝野共に遺憾とする所なり。故に文教の府たる文部省に於て、先づ宗教々育に関する調査会を設置し、大いに奨励研究促進の実を挙ぐるの要あり。
 宗教懇話会に対する建議事項左記二件。
一、同会内に宗教々育調査会を設置すること。
二、児童映画デーの時間を、日曜日午前以外とすることを、文部省及其他の関係諸方面に交渉すること。
      社会部会
 其筋に建議すべき事項左記九件。
一、癩病撲滅の為め予防並に救済施設として国立病院設置の件。
二、少年保護の為め少年審判所増設の件。
三、児童保護の為め児童局設置の件。
四、不具者を興行に用ひ、営利の目的を以て公衆の観覧に供することを禁止するの件。
五、社会省設置の件。
六、売淫公認制度廃止に関する件。
七、刑余者に対する差別待遇(法律中の欠格条項)撤廃に関する件。
八、陪審法中改正の件(但し右は更に慎重なる研究を要す)。
九、全国大小公園及神社寺院教会に差当り児童保護の施設をなす件。宗教家が各自重要問題として、之が実現或は促進に努力することを申し合せたる事項八件。
一、二十五歳以下禁酒法適用の件。
二、宗教家の会合より酒類の使用を廃する件。
三、九月一日を無酒日とし、神社寺院教会に於ては之に関する設備講演をなす件。
四、少年保護・児童保護の事業に努力する件。
五、盲唖聾者の保護に努力する件。
六、癩病撲滅の徹底を期する件。
七、神社寺院教会を隣保的事業に使用する件。
八、融和事業促進に関する件。
 本大会として声明する件。
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一、現に風教上忌むべき職業に従事するものを、各種の名誉職に挙ぐるは、教化上不適当と認む。
 研究問題として日本宗教懇話会に委託の件。
一、宗教の立場より社会問題研究の機関を必要とし、日本宗教懇話会に之が適当なる施設を備へられんことを希望す。


〔参考〕帰一協会書類(一)(DK460177k-0013)
第46巻 p.713 ページ画像

帰一協会書類(一)            (渋沢子爵家所蔵)
    帰一協会ノ件ニツキ姉崎博士来談(一月廿四日)
      要件
一、来ル一月廿九日大会ニ報告スベキ事
  一、会員増加ノ方法 現在一一九人 内海外地方二〇人
    会費現在一ケ月一円ヲ五十銭ニ低下スル事
      創立当時ノ若年モ最早老人トナリタルタメ新人ノ入会ヲスヽメ、会ノ隆盛ヲ計リタキ意味ニ於テ
      会費減少 約四百円
  二、現在幹事五名ヲ六名トスル事
    現在幹事 阪谷・穂積・森村・服部・姉崎
      新ニ矢吹慶輝博士ヲ選任スル事
      姉崎博士雑務多忙ノ為メ乍思会務ニ尽力スル事怠リ勝トナルタメ、今回矢吹博士ヲシテ専ラ思想方面ノ事ニ従事セシメタキ事、先般ノ幹事会ニテ承認スミ
  三、講演者謝礼金並ニリーフレツト刊行ノ事
    経費五百円位ノ見込、姉崎博士多忙ノ為メ従来ノ講演筆記等ノ刊行セザリシ事ハ重々申訳ナケレドモ、今後ハ大ニ此ノ方面ニモ力ヲ注グ事
    講演者ノ内会員外ノ人ニ対シ従来車代トシテ十円位ヲ支出シタリシモ、アマリニ世間ノ振合ニ比ベ小額ニツキ増加シタキ見込
  四、帰一協会調査報告書刊行ノ事
    従来森村男・団氏其他ノ支出ヲ得テ研究中ナリシモ、彼ノ震災ニヨリ材料焼失セリ、今後此ノ方面ノ研究資料ノ刊行ヲナシタキ事
  五、以上ニヨル不足額千七百円乃至二千円ハ寄付金ニヨル事
    大正十三年迄渋沢・森村両家ヨリ年額千円ツヽノ寄付ヲ受クル事ニ御約束願置キタリシヲ、今後ハ両家ヨリ五百円ツヽト致シ、其他会員有力者中ヨリ百円位ツヽノ寄付者拾名位ヲ得テ経営シタキ所存
右ハ大体幹事会ノ承認ヲ得タルモノナレトモ、大会前ニ子爵ニ申上ク可ク参上セリト
  ○右ハ年次ヲ記サザレドモ、昭和四年度ノ文書中ニアレバ是年ノモノト見做ス。渋沢事務所ニ於テ姉崎来談ノ要旨ヲ書キ留メ置キタルモノナルベシ。



〔参考〕帰一協会記事 六(DK460177k-0014)
第46巻 p.713-714 ページ画像

帰一協会記事 六             (竹園賢了氏所蔵)
一、会計報告、並に承認
 - 第46巻 p.714 -ページ画像 
  自昭和三年一月一日 至同十二月卅一日 帰一協会収支計算書
    収入ノ部
一金八百四円也         会費収入
一金参拾六円八拾六銭      預金利足
一金千七百六拾円弐拾五銭    前期繰越金
  合計金弐千六百壱円拾壱銭
    支出ノ部
一金参拾弐円七拾五銭      通信費
一金弐百弐拾四円弐拾銭     例会補助費
一金五百四拾円也        報酬及手当
一金百六拾円五拾七銭      雑費
  合計金九百五拾七円五拾弐銭
 差引残金千六百四拾参円五拾九銭
      内訳
  金千参百五拾九円弐銭     銀行預金
  金拾壱円八拾六銭       振替貯金
  金弐百七拾弐円七拾壱銭    手許在高
     〆
右之通ニ候也
  昭和四年一月
                   帰一協会幹事



〔参考〕集会日時通知表 昭和四年(DK460177k-0015)
第46巻 p.714 ページ画像

集会日時通知表  昭和四年        (渋沢子爵家所蔵)
二月廿二日 金 午後四時 姉崎正治氏来約(事務所)



〔参考〕帰一協会記事 六(DK460177k-0016)
第46巻 p.714-715 ページ画像

帰一協会記事 六             (竹園賢了氏所蔵)
    二月例会 {二月二十三日《(二)》○昭和四年 (金)五時半 日本倶楽部
講演、世界宗教会議と国際文化交換とについて。
                   友枝高彦氏
 友枝氏は、昨年九月十二日から十四日迄、三日間、ジュネーヴなる世界宗教会議に出席し、兼ねて、日独文化交換の用事を帯びて滞欧約六ケ月間、年末に帰朝せられた。宗教会議と文化交換の問題を中心として、国際問題、各国人情等について、その観察を語られた。
                        (紀要参照)
議事
 姉崎・矢吹両幹事より、先月例会に於ける協議の結果として、全会員に発せる紹介事項の回答につき左の如く報告ありました。
 一、回答総数  五四
 一、例会期日
   定例日として、毎月第三或は第四金曜と定め置く事
   (但講師其他の都合により臨時変更の場合は別として)
   「可」とするもの 四三
   「可否」何れにてもよきもの          八
 - 第46巻 p.715 -ページ画像 
   「否」とするもの               三
 一、会合時間
   (1)午後四時半―六時半(夕食前閉会但会食随意)
    「可」とするもの             三一
   (2)午後五時―七時(同)
    「可」とするもの             一三
   (3)午後五時開会(夕食後懇談)
    「可」とするもの             二一
 一、会場
   (1)学士会館   「可」とするもの    二五
   (2)日本倶楽部  「可」とするもの    二八
此の報告を中心として協議の結果、回答の多数に従い、当分左の如く定め置く事に決定した。
 期日 第三或は第四金曜日
 時間 午後四時半―六時半(夕食前閉会但会食随意)
 場所 日本倶楽部
当日出席者氏名
 アキスリング氏  麻生正蔵氏
 姉崎正治氏    岩崎直英氏
 滝沢吉三郎氏   田中次郎氏
 津田敬武氏    時枝誠之氏
 友枝高彦氏    成田勝郎氏
 野口日主氏    野々村金五郎氏
 補永茂助氏    間島与喜氏
 諸井六郎氏    矢吹慶輝氏
 下村宏氏



〔参考〕帰一協会記事 六(DK460177k-0017)
第46巻 p.715-716 ページ画像

帰一協会記事 六             (竹園賢了氏所蔵)
  自昭和四年一月一日 至同年十二月卅一日 帰一協会収支計算書 (印)
    収入ノ部
一金弐百六拾五円也       会費収入
一金弐拾九円六拾六銭      預金利息
一金五百円也          渋沢子爵寄附金
一金千六百四拾参円五拾九銭   前期繰越金
  合計金弐千四百参拾八円弐拾五銭
    支出ノ部
一金弐百参円六拾参銭      通信及印刷費
一金百五拾七円四拾五銭     例会補助費
一金七百八拾円也        報酬及手当
一金百壱円弐拾八銭       雑費
  合計金千弐百四拾弐円参拾六銭
 差引
 残高千百九拾五円八拾九銭   後期繰越金
      内訳
 - 第46巻 p.716 -ページ画像 
  金千八拾八円弐拾九銭    銀行預金
  金拾弐円弐拾五銭      振替貯金
  金九拾五円参拾五銭     手許在金
    〆
右之通ニ候也
  昭和五年一月            帰一協会幹事



〔参考〕(阪谷芳郎)日米関係委員会日記 昭和五年(DK460177k-0018)
第46巻 p.716 ページ画像

(阪谷芳郎)日米関係委員会日記  昭和五年
                     (阪谷子爵家所蔵)
五、十一、十四 フイツシャー氏、ガイ氏 帰一協会 両氏日本・支那ミツシヨンノ実況視察ノ由(日本クラブ)
五、十一、廿七 フイツシャー、ガイ等約五十人 帰一協会 伝道要否討議(日本クラブ)