デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

6章 学術及ビ其他ノ文化事業
2節 演芸
5款 坪内博士記念演劇博物館
■綱文

第47巻 p.442-446(DK470115k) ページ画像

昭和3年10月27日(1928年)

是日、当館ノ開館式挙行セラル。栄一出席シテ祝辞ヲ述ブ。

翌四年三月、当館後援会設立セラレ、栄一顧問トナル。


■資料

坪内博士記念演劇博物館書類(DK470115k-0001)
第47巻 p.443 ページ画像

坪内博士記念演劇博物館書類        (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
拝啓 新秋快適の候愈々御清勝慶賀仕候 陳者坪内博士記念演劇博物館設立事業に付ては深甚の御同情を蒙り、本年二月建築に着手し、爾来鋭意工を督して今回其竣成を告げ候に付き、来る十月二十七日午後一時、同館に於て開館式を挙行致すことゝ相成、一同深く感激罷在候就ては御多用中恐縮に存候へども、当日定刻までに御来臨相仰ぎ度、此段御案内申上候 敬具
 追て御来臨の節は此状御持参係員に御示し被下度候 式後第一回陳列(忠臣蔵に関する物)の御観覧をも願上候
                   早稲田大学
  昭和三年十月二十日         坪内博士記念演劇博物館
    (宛名手書)
    子爵 渋沢栄一殿
 二伸 聊か準備の都合有之候間、御来否十月二十五日までに御回報被成下度願上候
    尚当日は相成べく靴又は草履にて御来場願上候


早稲田学報 第四〇五号昭和三年一一月 坪内博士記念演劇博物館開館式(DK470115k-0002)
第47巻 p.443-444 ページ画像

早稲田学報  第四〇五号昭和三年一一月
    坪内博士記念演劇博物館開館式
 坪内博士古稀の賀と沙翁全集の完成を機として企てられた沙翁時代のフオーチユーン座に型取つた坪内博士記念演劇博物館は、昨秋一度本計画の世間に発表せられるや、学園関係者は勿論文壇・教壇・劇壇その他一般より異常なる好感を以て迎へられ、熱誠なる後援をうけ、本年二月建築に着手し、爾来鋭意工を督してをつたが、今回その竣成を告げたので、十月二十七日午後一時より、次の順序によつてその開館式を挙行した。
      順序
 一、開式          幹事 難波理一郎
 一、国歌合唱
 一、報告       実行委員長 市島謙吉
 一、式辞 早稲田大学総長法学博士 高田早苗
 一、祝辞        英国大使 サー・ジヨン・テヰリー閣下
 一、祝辞     発起人総代子爵 渋沢栄一閣下
 一、祝辞        文学博士 上田万年君
 一、祝辞             小山内薫君
 一、祝辞             中村歌右衛門君
 一、祝辞             長谷川誠也君
 一、謝辞        文学博士 坪内雄蔵君
 一、校歌合唱
 一、閉式
 当日往時舞台として使用せられたといふ正面玄関を式壇となし、前の広場を式場として、校友、学園関係者を始め劇界・文芸界・梨園界の名士約一千名参列、昨秋大隈講堂開館式以来の盛況であつた。かく
 - 第47巻 p.444 -ページ画像 
して早稲田学園の一名物たるのみならず、東洋未曾有の演劇博物館は生れたのである。
 式後製図教室に於て来賓一同に茶菓を呈し、館内陳列を観覧に供した。
 尚十月三十日以後より無料にて一般に公開をしてゐる。開館第一回の陳列は『劇に関した忠臣蔵物』で、安永・天明頃より明治に至る間の春章・写楽・春好・初代二代三代の豊国筆の錦絵約八百枚その他でその目録は別項○略ス の通りである。
  ○栄一ノ祝辞筆記ヲ欠ク。


半世紀の早稲田 早稲田大学出版部編 第三八九頁昭和七年一〇月刊(DK470115k-0003)
第47巻 p.444 ページ画像

半世紀の早稲田 早稲田大学出版部編  第三八九頁昭和七年一〇月刊
 ○第一篇 第五章 昂揚期
    第十節 三年間に於ける学園の動き
○上略
 次ぎにこれは学園内のことだが、めでたいことが一つあつた。それはかねてから坪内を記念する為めに文科の人々が主唱して一般から資金を募り、西門突当りに建造中であつた演劇博物館が竣成し、十月二十七日○昭和三年午後一時から其開館式が行はれたことである。式は難波幹事の開式辞に初まり、国歌の合唱があつた後、市島の報告、高田の式辞、デイリー大使・渋沢・上田・小山内・中村(歌右衛門)・長谷川らの祝辞、坪内の謝辞があつて、校歌合唱の裡に式を閉ぢた。此日から『忠臣蔵に関する展覧会』を開き、一般の観覧に供したが、僅か二十日間に一万人からの観覧者があり大好評を博した。
○下略


坪内博士記念演劇博物館書類(DK470115k-0004)
第47巻 p.444-446 ページ画像

坪内博士記念演劇博物館書類        (渋沢子爵家所蔵)
(印即物)
拝啓 時下益々御清昌の段賀し上げます。扨坪内逍遥博士が古稀の齢に達せられるのと、其半生の研精になれる沙翁全集の翻訳完成とを記念せんが為に発企されました演劇博物館は、大方の熱心なる御賛助により予定の如く昨秋竣工を見ましたる段御同慶の至りに堪へません。而して同館は発起人会の決議により早稲田大学に寄附され其管轄に移りました以上、将来の施設には期して見るべきものゝある事を信じて疑ひませんが、尚其発展大成を促進せしむる目的にて、別項の如きドラマ・リーグ(演劇聯盟)を兼ねた後援会を設立する事となりました。就ては公私御多端の折柄御迷惑の儀とは存じますが、何卒御賛同の上斯道の為め又世界に類例稀なる同館の為めに、奮つて御入会賜はりますやう切に願上げます。
  昭和四年三月    坪内博士記念演劇博物館後援会
                     会長 市島謙吉

      坪内博士記念演劇博物館後援会々則
    第一条 名称・事務所
本会は坪内博士記念演劇博物館後援会と称し、当分の内事務所を同館
 - 第47巻 p.445 -ページ画像 
内に置く。
    第二条 目的
本会は坪内博士記念演劇博物館に対して、設備の完整、内容の充実を援け、該館の大成を促進せん事を期す。
    第三条 事業
本会は前条の目的を達成せんが為に凡そ左の如き事業を行ふ。
  一、講演会の開催、図書雑誌の出版。
  一、演劇・映画及び演芸の寄附興行。
     其の他。
    第四条 会員
一、会員を分ちて賛助会員・特別賛助会員の二種とす。
  (イ)賛助会員は年額金五円の会費を負担す。
  (ロ)特別賛助会員は年々金拾円也、又は一時に金壱百円以上を醵出するものとす。
二、会員には左の待遇をなす。
  (イ)会員全部に本会発行の小冊子『演劇博物館』を毎号贈呈す。
  (ロ)賛助会員には催し物(興行)毎に優待券を贈る。
  (ハ)特別賛助会員には催し物(興行)毎に特別優待券を贈る。
  (ニ)本会発行の出版物を割引す。
    第五条 役員
本会に左の役員を置く、各役員の任期は三ケ年とす。
  一、会長一名。総会の推薦により之を定む。(但最初の会長は発起人に於て推薦す。)
  二、会計監督二名。会長之を嘱託す。
  三、理事十名以内。会長の嘱託により会務を処理す。理事の互選を以て理事長一名を定む。
  四、委員若干名。会長の嘱託により各種企劃の遂行を分担す。
  五、顧問若干名。坪内博士記念演劇博物館の設立に関して特に功労ありし人々の中より会長之を推薦し、諸種の企劃に就きて指導及び援助を受く。
      役員
  会長     市島謙吉
  会計監督   井上辰九郎  増田義一
  理事(理事長)長谷川誠也  池田大伍   河竹繁俊
         楠山正雄   中村吉蔵   日高只一
         山田清作   吉江喬松
  委員     飯塚友一郎  大村弘毅   小寺融吉
         高田保    武田尾吉   種村宗八
         伊達豊    永田衡吉   林和
         深沢政介   本間久雄   水谷武
      顧問
 五十嵐力    池内信嘉   石渡敏一   伊原敏郎
 上田万年   侯爵大隈信常  大谷竹次郎  尾上梅幸
 - 第47巻 p.446 -ページ画像 
 金子馬治    川村徳太郎  幸田成行   小林一三
侯爵小村欣一  子爵渋沢栄一  塩沢昌貞   白井松次郎
 砂川雄峻    高田早苗   田中穂積   坪内雄蔵
 中村歌右衛門  中村雁次郎  平沼淑郎   平田譲衛
 福沢桃介   伯爵松平頼寿  松居真玄   三上参次
 安田善次郎   山崎覚次郎  山本久三郎  山本忠興
                     (五十音順)
○下略


演劇博物館 第三号・第一三頁昭和四年七月刊 後援会記録(DK470115k-0005)
第47巻 p.446 ページ画像

演劇博物館  第三号・第一三頁昭和四年七月刊
    後援会記録
      ○
本後援会設置の計画は、昨年開館式を挙げて以来のことであつたが、規約を整頓し一般世間に発表し会員の募集を始めたのは、本年三月のことであつた。然し何にせよ本体の坪内博士記念演劇博物館設立の為に早大学園関係者を初め、学芸壇の各方面にわたつて、資金の寄附を請つたのが一昨年の六月からツイ昨年の末にまで及んでゐたのだから又もや積極的に後援会の為に賛助方を請ふことは、関係者一同が可なり躊躇し、実は大いに御遠慮し乍らも発表旁々お願ひの書面を差し出した次第であつた。――勿論、後援会に御賛成を願ふことは、単なる寄附を願ふことではありません。意義ある催し物の固定的会員、演劇聯盟に御加入を願ふのでありますが、それでも当事者一同は、そこに大いに小心翼々たるものがあつた。
 然るに、実に有難いことには、演劇博物館を理解し、同情してゐて下さる結果でありませう、後援会々員としての御申込みが、発表以来続々と増加するの状況を見て、実に感謝すべき言葉を知らなかつた。
けれども、左様に熱心な同感者が多数に居て下さるにつけて、後援会の成すべき事業の重大さは一層増した。当事者一同は、このかはらざる御厚情に報い、御期待に添ふべく今後とも極力努力する覚悟であります。
○下略