デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

7章 行政
2節 内務行政
3款 帝都復興審議会
■綱文

第48巻 p.436-458(DK480136k) ページ画像

大正12年11月24日(1923年)

是日栄一、総理大臣官邸ニ於ケル当会ニ出席ス。政府提出ノ議案ニ対シ種々反対意見アリ、栄一之ヲ調停センガタメ協議会ヲ開カンコトヲ提議ス。山本総理大臣ノ取計ヒニヨリ特別委員会ヲ設クルコトニ決シ、栄一同委員会ノ閣外委員ノ一人ニ指名セラル。


■資料

竜門雑誌 第四二三号・第六四頁大正一二年一二月 ○帝都復興と中庸の要(DK480136k-0001)
第48巻 p.436 ページ画像

竜門雑誌 第四二三号・第六四頁大正一二年一二月
○帝都復興と中庸の要 左は青淵先生談として十一月十七日発行の国民新聞に掲載せるものなり。
 帝都復興基礎案の発表を見たが、総額七億七千万円との事である。而して其計画に依る幾多の重要なる諸件に付ては今之を批評するのは早計と思はれる。又港湾にせよ、又都市計画の第一線より第四十六線に至るが如き、又公園に於ても夫々専門家の講究を待つ事が大であるし、日本の帝都復興案の具体化は又官民一致に依らねばならぬ事は勿論であるが、要するに百年の大計をして其実あらしむると否とは、官民共に其責を負はねばならぬ故に、現在日本の国力から見て、妥当なる措置を執る事が肝要である。無暗に縮少して其実効果の乏しきに於ては、大震後の千載一遇の機会を逸する事となるべく、計画の過大なる時は是亦国民の負担を重くして復興の名に背く事とならうから、望むらくは各種専門家に於ても一層の審議を凝し凡て中庸を忘却せぬ様に切望する次第である。


渋沢子爵親話日録 第一 自大正十二年十一月至同年十二月 高田利吉筆記(DK480136k-0002)
第48巻 p.436-437 ページ画像

渋沢子爵親話日録 第一 自大正十二年十一月至同年十二月 高田利吉筆記
                    (財団法人竜門社所蔵)
○十一月廿一日
△朝大石正巳氏飛鳥山へ参邸、政府の帝都復興計画ハ放漫に失すれば
 - 第48巻 p.437 -ページ画像 
審議会に於て大に緊縮的修正を加へざるべからすとて御同意を求めらる
○下略


帝都復興審議会書類(DK480136k-0003)
第48巻 p.437 ページ画像

帝都復興審議会書類           (渋沢子爵家所蔵)
謄写版)
  大正十二年十一月二十二日
             帝都復興審議会幹事長
                   子爵後藤新平
    (宛名手書)
    渋沢委員殿
      通知
明後二十四日午前十時会議相開カレ候ニ付、麹町区永田町内閣総理大臣官舎ニ御参集相成度候
                (付箋)
                [議案ハ明日御送付可仕候


渋沢子爵親話日録 第一 自大正十二年十一月至同年十二月 高田利吉筆記(DK480136k-0004)
第48巻 p.437 ページ画像

渋沢子爵親話日録 第一 自大正十二年十一月至同年十二月 高田利吉筆記
                   (財団法人竜門社所蔵)
○十一月廿三日 (新嘗祭)
○上略
△次に大橋新太郎氏参邸、復興審議会の事につき意見書を提示す、審議会ハ廿四日に開かるへきにより、御意見の趣ハ其際提議せんと答へらる
○中略
△東京日々新聞記者松岡正男氏参邸、復興審議会の事に関して御談話を請ふ
○下略


渋沢栄一書翰 大橋新太郎宛(大正一二年)一一月二四日(DK480136k-0005)
第48巻 p.437 ページ画像

渋沢栄一書翰 大橋新太郎宛(大正一二年)一一月二四日
                   (大橋新太郎氏所蔵)
拝読 昨朝ハ態と尊来種々御懇示被下忝奉存候、右御提案ニ関し今日更ニ詳細之来諭遂一了承仕候、井上君ヘハ尚御打合可被下趣何卒充分領意候様御説明相成、老生も全然御同意之旨御申通し被下度候、又伊東氏ニも御談話有之候由、今日審議会にて会見之筈ニ付篤と打合可申と存候、只遺憾なるハ和田氏之病気欠席ニ御坐候、老生も其中往訪之積ニ候
右不取敢拝答如此御坐候 敬具
  十一月廿四日
                      渋沢栄一
    大橋賢契
       研北


渋沢子爵親話日録 第一 自大正十二年十一月至同年十二月 高田利吉筆記(DK480136k-0006)
第48巻 p.437-438 ページ画像

渋沢子爵親話日録 第一 自大正十二年十一月至同年十二月 高田利吉筆記
                     (財団法人竜門社所蔵)
○十一月廿四日
△午前十時総理大臣官邸に於ける帝都復興審議会に委員として出席せ
 - 第48巻 p.438 -ページ画像 
らる、政府提出の議案に対し、伊東・加藤・高橋・江木等の委員諸氏より種々の反対意見続出して議まとまるへくも見えざれば、子爵ハ之を融和調停せん為、一時本会議を中止して協議会を開かんことを提議せられしに、閣臣を除きたる所謂閣外の委員ハ悉く同意せしも、議長たる総理大臣の希望により特別委員会を開かるゝことに決定す
○中略
△御帰邸後報知・時事・万朝等の新聞記者参邸、審議会議事の模様を質問す、差支なき限り談話せらる


帝都復興史附横浜復興記念史 復興調査協会編 第一巻・第一六八―一八七頁昭和五年五月刊(DK480136k-0007)
第48巻 p.438-448 ページ画像

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帝都復興審議会速記録 大正十二年十一月(DK480136k-0008)
第48巻 p.448-458 ページ画像

帝都復興審議会速記録 大正十二年十一月 (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    帝都復興審議会速記録 大正十二年十一月二十四日午後ノ分
      午後一時二十分 開議

○上略
子爵後藤幹事長 チヨツト御答ヲ致シテ置キマス
簡単ナ事デアリマス、此「行政官庁ノ執行スル事業ノ費用ハ国ノ負担トス」ト言フコトニ就テハ、最前ノ御話ノ如ク趣意ハ同シコトデアツテ、解釈ガ違ツテ居ルノデアリマス、予算ガ無ケレバ執行ハ出来ナイノデアリマスカラ決シテサウ云フコトハ出テ来ナイ訳デアリマスノデ是ハ御安心ナツテ宜シイト思ヒマス、其レカラ此ノ芝浦ノ築港ノコトニ就テ御話ガアリマシタガ、是ハ帝都復興ニ必要デアル、不可分デアルト云フコトノ意志ハ私ノ弁明ガ徹底シナイカラノコトデアリマス、有謂材料―帝都復興ノ為ニ来ル所ノ有謂材料ニ対シテ賃金ノカカルコトヲ避ケルト云フコトハ是ハ復興ニ対シテノ急務デアル、又後ニ至レバ帝都ガ復興シテ経済上ノ復興能力ヲ助ケルト申上ケタノヲ、其レヲ帝都ノ復興ヲ助ケル為ニヤルノダト斯云フ風ニ御解釈ニナツタ様デスガ、是ハ急務デアルト云フコトハ帝都復興ノ事業ヲ為スニ急務デアルト云フ予備ノ手段トシテ、二ケ年間ニ成功シテ三ケ年間之レヲ利用スル許リデモ必要デアルト云フ急務ノ理由ヲ申上ケタ訳デアリマス、サウシテ此ノ事柄ハ元計画シタモノトハ違ヒマスケレドモ、是ハ又後ニ細目ニ入ツテ攻究スル場合ガ出マシタナラバ、其時ニ申上ル様ニ致シマス、
其カラ土地買収費ニ就テ、伊東伯爵カラ沢山ノ金ガ要ツテ予算ガ倍加シテ来ルデアラウト云フコトノ説デ有リマシタガ、此ノ事ハ其ノ用地費ト云フモノノ最高ハ幾等、最低ハ幾等ト云フ計算ヲシマシテ、サウシテ此ノ平均額ヲ採ツテ、又用地費ノ三割ト云フモノハ其ノ移転費等ヲ積ツテ居ルノデアリマスカラ、更ニ其場合ニ詳シク申上クル様ニ致シマセウ、加之土地区劃整理法ヲ行ヘバ此ノ金額ハ是ヨリズツト減ルト云フコトハ、是ハ皆様ガ既ニ御諒解ニナツテ居ルカモ知リマセヌガ之ニ対シテ能ク御諒解ヲ乞ヒタイモノデアリマス、
ソウシテ土地区劃整理法ト云フモノガ場所ニ依ツテ是ヲ行フ様ニシ、収用法ト併用スル様ナ方法ニナツテ居リマスケレドモ、評議会ニ於テハ之ヲ全然全部ニ行フコトガ地主ニ取ツテモ利益ナルガ故ニ必要デアルシ、復興院ニ於テモ都合上宜シイト云フコトニ実際研究ノ上、各実地ニ臨ミ方々歩テ見タリシテ是ハ研究セラレテ居ルモノデアル、土地区劃整理法ヲ実行スルニ至レバ、此ノ金額ハ更ニ是ヨリ以上ニ昇ボス事ハ無イト云フコトハ証明サレテ居ルモノデアリマスカラ、唯収用法ノ値段一方ヲ考ヘテ憂慮サレマシタナラバ、其レハ或ハ伊東伯爵ノ言ハレマシタ如ク、又江木君ノ云ハレマシタ様ナ意味ハ全然ナイトモ申
 - 第48巻 p.449 -ページ画像 
サレマセヌガ、玆ニ土地区劃整理法ト云フモノハ、地主其他ノ希望ニ依ツテ行フコトガ全然出来ルモノデアルト云フ前提ハ、決シテ無理ナル前提ニ非ラザルコトヲ、評議会ニ於テモ夫々研究シテ居ル所デアリマス、
其レカラ下谷デ高イ地所ガ売レタト云フコトガアリマスガ、現在ニ於テ又ハ将来ニ於テ或場所ヲ除クノ外ハ、地価ハ非常ノ騰貴ヲスルモノデナイト云フコトハ、一定ノ公論モアル所デアリマスカラ、左様ニ心配スルモノデハナイ、殊ニ土地区劃整理法ノ補助アルニ於テハ、全然此ノ金額ハ昇ラナイ様ニ処理スルコトガ出来ルト云フコトヲ当局ニ於テ実際上カラ考ヘタコトデ、決シテ空論デ無イト云フコトヲ申上ゲマス、其レカラ河川ノコトモアリマスガ、是レハ少シ誤解ノアル様デアリマスカラ実際上ニ就テ申上グルコトガアラウト思ヒマス、
次ニ空軍防止ノコトハ参与会ニ於テモ評議会ニ於テモ専門家ノ議論ガアリマシテ、色々ノ意見ガアリマシタ、併シナガラ此ノ計画ノ中ニドウシテ入レテドウスルカト云フコトハ到底出来ナイモノデアル、唯一部ヲ言ヒマスルト此ノ地下鉄道ノ場合ニ於テ、其地下鉄道ニ避ケラレル様ニシ、若クハ穴倉ヲ沢山増スト云フコトガ必要デアルト云フコト位ヨリ外ニ何等意見ガ出マセヌ、然ルニ若シ江木君ニ於テ其辺ニ就テ此点ガ欠ケテ居ル、斯ウスレバ良イト云フコトガアリマスレバ、之ヲ参与会並ニ評議会ニ於テ攻究ノ至ラヌ所ノモノヲ補フニ足ルモノデアリマスカラ、承リマシテ修正スルニ吝ナラザルモノデアリマス、唯此事ハ全然等閑ニ附セラレテ居ルカト云フコトデアリマスナラバ、凡ソ此ノ事ヲ申上ケテ置カナケレバ、参与会並評議会ニ於テ夫々攻究サレマシタコトノ経過ヲ私ハ玆ニ報告スルノ義務アルト存シマスカラ、此事ヲ一言申上テ置キマス、
江木委員 此ノ法案第五条ニハ明カニ「復興事業ハ勅令ノ定ムル所ニ依リ行政庁之ヲ執行ス」トアリマス、予算デ極メル論ハ……
子爵後藤幹事長 法文ノ所ハ後デ願フコトニスレバ良カラウト思ヒマス、是ガ本議題ニナリマシタナラバ明瞭ニ申上ルコトガ出来ヤウト思ヒマス、従ツテ其ノ杞憂ヲ抱カルル必要ハナカラウト云フコトヲ申上ケテ置キマス、
江木委員 空軍ノ事ハ、サウスルト穴ヲ掘ツテ隠レテ居ルヨリ仕様ガナイト云フノデアリマスカ、再考スル手段ハ無イノデアリマスカ、
子爵後藤幹事長 是ハ一言申上ケマス、ソレハ攻究ノ結果サウ云フコトニナリマシタノデ、其レハ環状通路ヲ大キクシテ、サウシテ之ニ対シテ自動車砲車ノ自由運転ヲスルトカ云フコトハ夫々専門家ノ間ニ御説ガアリマシタ、併シナガラ結局其等ノコトハ別題トシテ、今日其設備ヲ復興計画ノ中ニ入レルト云フコトハ穏当デナイ、此ノ設備ノ中ニ入ルベキモノハ地下鉄道ニ対シテ其等ノ工夫ヲシテ置クコトガ、或ハ必要デアラウト云フコトノ話モ有リマシタ、其レデ結局建築物其他ノモノニ対シテ、航空軍ノ防禦ノ設備ヲスルト云フコトノ条項ヲ玆ニ明カニ示シテ置クト云フコトヨリ外ニ途ハナイト云フコトニナリマシタ左様御承知ヲ願ヒマス、
大石委員 大抵伊東伯ト江木君ノ御説デ吾々ノ考ヘテ居ル処ハ尽キタ
 - 第48巻 p.450 -ページ画像 
様ニモ思ヒマスガ、尚此処デ申上ケタイ点ガアリマス、
此ノ復興審議会ト云フモノハ申ス迄モナク、此ノ震災ニ付テ起ツタ重要事件ヲ審議スルト云フ官制ニモナツテ居ルシ、其重要事件ト云フ中ニハ今モ段々御話ニナルヤウナル御希望ノコト、或ハ御希望カラ進ンデハ外交ノコト、財政経済ノコト皆重要ナル事件デ、而シテ審議会ガソウ云フ重大ナコトニ関与スルモノデアルト吾々ハ心得テ居ルガ、然ルニ今日迄審議会ニ掛ケラレタルモノハ僅ニ「バラツク」ノ供給令ト云フ様ナモノデ、其後何等此ノ会議ニハ御諮問ニナツテ居ラナイ、サウ云フ処ヨリシテ遂ニ今日ノ様ナ議論ガ起ツタノデアラウト思フ、斯ウ云フ事柄モ重要ナ事件デアツテ、而シテ此ノ協議ニ上ボスベキモノデアルト云フナラバ、前以テ今日迄ニ沢山機会ハアル、其レニナゼ御諮リニナラナイカト考ヘテ居ル、又是レガ僅ニ「バラツク」位ノ問題デ一向サウ掛ケル必要ハナイト云フ御考ヘナラバ、此会ハ余リ必要ナモノデハナイ、御廃シニナツテモ良カラウ、畢竟スルニ此ノ機会ニ将ニ出ントスル問題ハ中々重要ナ問題デアル、サスレバ此ノ議会ニドウカ之ヲ通過サセナケレバナラヌト云フコトハ、此ノ復興院ノ委員モ皆其見当デ以テ今日熟議サレテ居ルガ、私ハ考フルニ今日斯云フコトヲ未ダ質問ニモ這入ラヌト云フ間ニ於テ、既ニ諸君ノ御意見ノ在ル所ニ向ツテ見レバ、中々一朝一夕ニ済ミサウナ事トモ思ハヌ、或ハ之ヲ早ク鵜呑ニスルト云フ御考ヘナラバ別問題デアルガ、是ハ国家ノ大事デアル、容易ニ決スベキ問題デナイ、然ルニ今日迄斯云フ重要ナルコトノアルニ拘ラズ、更ニ審議会ニ掛ケナイノミナラズ、今日迄此ノ問題ガ殆ンド震災以来九十日――三ケ月ノ間玆ニ之レ位ノ問題デスラ決シナイト云フノハドウ云フ訳デアル、私ハ考ヘル、此ノ財政・経済、日本ノ民力ト云フモノヲ基礎ニシテ法案ヲ立テナイト云フノハ間違デアル、日本ノ民力・財力ヲ基礎ニシテ法案ヲ立テルノガ当然デアル、之ヲ何遍モ何遍モ案ヲ立テハ取消シ案ヲ立テハ取消スト云フ様ナ事ノ間ニ今日既ニ九十日ノ日数ヲ経テ居ル、サウ云ヒバ其レハドウモ斯云フ場合ハ一朝一夕ニ決セラレナイト云ハルルカモ知ラヌ、然ルニ今日迄世間ヲ煽動シテ、サウシテ莫大モナイ註文ヲ出シテ来タ、国家ヲ真ニ憂ヒ国ノ安危ヲ考フル所ノ識者ノ議論ニ値シタ法案ト云フモノハ私ハ無イト考ヘル、今日迄又種々ナル案ヲ立テラレテ、立テハ取消シ、立テハ取消スト云フコトヲシタト云フコトハ世間周知ノコトデアル、初メ六十間道路ニスルト云ヒ、次ニハ四十間ノ道路ニスルト云ヒ、段々変ツテ来テ居ルト云フコトヲ見ルモ、実ニ是レハ無責任ノ事デアル、国家財政ノ上カラ割出シテ相当ニ責任ヲ以テ案ヲ立テルナラバ決シテ取消ノ必要ハナイ、多少ノ修正ハアツテモ取消ノ必要ハナイ、其レヲ取消サナケレバナラヌト云フノハ、一国ノ重大事件ニ対シテ思慮ガ足リナイカラデアル、国家ノ経済ヲ土台ニシテ立テタ案デナイカラデアル、而シテ諸君ハドウ考ヘテ居ラルルカ、「バラツク」ヲ建テ罹災民ヲ置テアルカラ是デ足リルト思ツテ居ラルヽカ、私ハサウ考ヘナイ、「バラツク」ヲ建テテ此間ノ罹災民ヲ放任シテ在ルト云フコトハ政府モ亦此ノ審議会モ容易ナラヌ責任ヲ持ツテ居ル、此ノ「バラツク」ニ居ル罹災民ハ恰モ商売ヲ奪ハレ職業ヲ禁セラレテ居ルト同様ノ結果ヲ
 - 第48巻 p.451 -ページ画像 
持ツテ居ル、実ニ「バラツク」ニ居ル人々ノ今日ノ怨声ト云フモノハ諸君ハオ聴キニナラヌカ、大厦高楼ノ内ニ居ツテ贅沢ナ暮シヲシテ居ル人ハ聴エヌカ知ラヌガ、吾々ハ貧民同様ノ生活デアルカラ此ノ声ガ能ク聴ヘル、是レハ此儘ニシテ職業モ出来ズ、工場ヲ持ツテ居ル者ガ工業ニ従事スルコトガ出来ナイ、土地ノ売買モ出来ナイト云フヤウナ状態ニ置テ安閑トシテ居ラルルカ、昼夜兼行シテモナゼ其ノ案ヲオ立テニナラナイカ、サウシテ此等ノ事モ今日迄審議会ニ御諮リニナツタナラバ、本会議ノ賢明ナル諸君ハ必ラズヤ是レヲ急カレル方法モアラウ、又御忠告申ス道モ有ツタデアラウト思フ、既ニ先達モ吾々同志共デドウモ政府ガ始メカラ此ノ事ヲベンベントシテ居ルト云フコトハ、洵ニ見ルニ忍ビザル聴クニ堪ヘザル状態デアル、曩ニ会議ヲ開カレタ際ニ於テモ、或ハ一週間或ハ十日間ノ内ニハ其ノ図面モ御示シ下サルト云フ御約束モアツタガ、余リ長イカラ催促ヲ仕様デハナイカト云フ話ガ起リマシタ、其処デ私ニ其ノオ使ニ往ケト云フコトデアツタカラ私ハ総理大臣ヲオ訪ネシテ其ノ事情ヲ委シク御話シタ、総理大臣ガ云ハルヽニハ如何ニモ尤デアル、是ハ会ヲ開ク事ニシヤウ、斯言フ御話デ其際帝都復興院ノ総裁ニモ話シテ呉レト云フ御話デ在ツタカラ、私ハ帰ツテ其儘ヲ話シタ、処ガ多少首ヲ傾ケテ居ツタケレドモ、先ツ開クガ宜シイト云フコトニ其処デ御話ガ決ツタ、其レデ明日カ明後日カニハ開ク斯云フ御話デ在ツタカラ帰ツテ居ツタガ、其ノ翌朝ノ手紙ヲ以テ昨日御話アツタガ都合ガアツテ開カヌト云ツテ来タ、其レハ御都合ニ因テ開カヌト云フコトハ御自由ナ話デアル、是等モ唯会ヲ開イテ理窟ヲ言ヒタイト云フヤウナ人ハ一人モ無イ、国家ヲ憂フル余リニ如此御催促ヲ申シタ訳デアル、所ガ其レ以来何等ノ音沙汰ナシ、私ハ諸君ヲ代表シテ往ツテ居ルノダカラシテ、ドウモ是ハ黙シテ居ル訳ニハ行カヌトハ心得テ居ツタケレドモ、ドウモ開カヌト云フ丈ケノ事デアルカラ更メテ諸君ニ御挨拶ハシナカツタト云フコトハ今日謝シテ置キマス、ソウ云フ都合デ此ノ会ヲ開カヌト云フ事デアリマシタカラ私ヲ使ニ立テタ諸君ニオ詫ヲ申シテ置キマス、サウシテ此ノ復興審議会ニ御諮リニナルベキコトデナイカト思ハレル点ハ御諮リニナラヌ、其レハ何ンデアルカト云ヘバ、復興ニ関スル重要ナルコトハ審議スルト云フコトハ官制ニモアル、総理大臣ガ諮ツテ見様ト思ヘバ諮ル、諮ルマイト思ヘバ諮ラヌ、唯自由自在ニ御勝手ニナサルト云フナラバ其レデモ宜カラウカ知ラヌガ、是レハ大概常識ト云フモノカラ見テ、斯如キモノヲ諮ルベキモノデアルカ諮ルベカラサルモノデアルカト云フコトハ決シテナケレバナラヌ、私ハ常識論デアルガ更ニ御諮リニナラヌガ随分此ノ間ニハ算ヘ上テ見レバ大キナ問題ガ四ツ五ツアル、一国ノ財政経済ニ大影響ヲ持ツ問題モアツタノデアル、是等モ一応将来ノ為ニドウナサルカ御考ヲ承ツタラ吾々モ一通リ考モアリモスルガ、尚御注意ノ点ハ必ラス申上ル、其レカラ此ノ復興予算ト云フモノニ就テ御両名カラ頗ル精密ナル御話ガアツタガ、全然私ナドハ同意デアル、デ此儘デ唯案ヲ玆テ議シテ宜シイカ悪イカト云フコトハ問題デハナイ、実ハ議会ヲ通過シテ此ノ事ヲ早ク行ハレタイト云フノデアル、所ガ議会ガ通過シサウモナイト云フコトガ確ニ是ハ見エテ居ルト私ハ思ウテ居
 - 第48巻 p.452 -ページ画像 
ル、此儘デ出シタナラバ通過シナイト思フ、玆ニ考フベキモノハ社会ニ二ツノ潮流ガ成立ツテ居ル、一ツノ潮流ハ金ヲ沢山使ヘ姑息ナコトデハイカヌ斯云フ潮流ガ一ツアル、此ノ潮流ハ誰ガ作ツタカ是ハ私ガ強ク申サヌガ、実ハ初メニ大キナ計画ヲ出シタト云フコトガ作ツテ居ル、此ノ潮流ガ最初八十億モ六十億モ使ヒソウナ案ヲ出シタカラ斯云フコトニナツテ尚金ヲ使ツテ呉レ、未ダ其レデハ足ラヌ、モツト完全ナ案ヲ樹テ呉レ、百年ノ案ヲ樹テ呉レ、是ハ果シテ国家ノ責任ヲ持ツテ居ル人ノ肯ハルル案デアルカ無イカト云フコトヲ考ヘルト、斯ノ如キ案ヲ出シテハ潰レルニ決マツテ居ル、潰ルレバ我々ノ本意ニ背ク、ドウカ潰レヌ案ヲ出シタイト云フノデアル、而シテ是ハ国家ノ為ニ最モ必要ナリト云フ所ノモノハ早クスベシ、延ヘラレルモノハ成ルタケ後ヘ延ベヤウ、斯云フ趣意デアル、其所デ斯云フ場合ニモ段々御話ガアル様ニ、破壊サレテ居ルモノハ何ニカト云フコトヲ顧ミテ見タラ分ル、此震災火災ニ因ツテ破壊サレテ居ルモノハ即チ国防・交通機関、或ハ教育、或ハ此間ニハ精神ノ堕落、斯云フノヲ即チ恢復スルト云フ事ガ、一番今日ハ重大ナル問題デハナイカ、実ハ東京市ノ市区ヲ改正スル様ナコトハ政治家ノ眼カラ観レバ何ンテモナイ、如此コトハ一種ノ俗吏ニ委ネテ置テモ出来ルカモ知レヌ、又現ニ玄人筋ノ人ノ説ヲ聴テモ如此案ヲ立テルニサウ暇ハ要ラヌ、少シ気ノ利イタ者ガ三人五人集ツタラ一週間ニ確カニ出来ルト言フコトヲ、是ハ多少責任ノアル技術ノアル人モサウ云フテ居ル、又此ノ出来テ来タ案ト云フモノハ如何ナル干係デアルカ、段々諸君ノ御話ノ通リデアラウト思フ、其レハ是ヲ拵ヘルニハ中々容易ナラヌカラ三ケ月モ半年モ掛ルト云ヘバ其レハ「リーゾネーブル」ナ話デハナイ、常識ノ欠ケタ話デアル、此ノ百日ノ間何ヲシテ居ツタカト云フ問題、ドウモ吾々カラ見タル所デハ甚ダ「プロダクチーブ」ナ此所ニ持ツテ来タ案ガ、諸君ガ直ニ賛成ヲスルト云フモノヲ作ツタカ何ウカト言ヘバ、恐ラクハ閣員ノ外ノ諸君ニ於テ今伊東君カラ述ヘラレ江木君カラ述ヘラレタ所ハ、大概私ノ見タル処ニ賛成セラレタ論デハナイカト思フ、サウ云フ案ヲ拵ヘルニ既ニ百日ニ近イ日数ヲ費シテ居ルト云フナラバ、此ノ帝都ノ罹災民ヲドウシテ救フカ、今日怨声ヲ放ツテ居ル所ノ此罹災民ト云フモノニ満足ヲドウシテ与ヘルカ、是レハ又此ノ案ヲ作リ直スカ、若シクハ案ヲ新タニ立テ直スカ、其レハ政府ノ御勝手デアル、又日数ヲ何十日費スト言フコトニナツテ御覧ナサイ、ドウナリマスカ、国ノ計画ト云フモノハ決シテ手習草紙デハアリマセヌゾ、幾度モ書直スト云フ事ハ国家ガ許サヌ、是レハ一人一家ノ問題デハナイ、国ノ全部ニ関スルソウ云フコトヲ為サレテ是レデ天下ニ向ツテ責任ノ立ツモノデアルカ、立ツモノデナイカ、是レハ考ヘナケレバナラヌ、吾々ハ上陛下ニ対シ奉リ下ハ国民ニ対シテ、此ノ委員ノ席ニ連ツテ甚タ無責任ナリト云フコトヲ言ハレテモ実ニ罪ヲ謝セナケレバナラヌ、ト思ツテ居ル、デ私ハ或ハ細目ニ入ツテ質問スルトカ何ントカ云フ事ノ必要ヲ見ナイ、大概解ツテ居ル、然レドモ是ハ諮問機関デアル、諮問機関デアルカラサウ云フモノノ言フ事ハ、馬耳東風デオヤリナサルト云ヘバ其レハ御勝手デアル、吾々ハ苟クモ是レニ向ツテハ委任ヲ持タナケレバナラヌ位置ニ居ルト
 - 第48巻 p.453 -ページ画像 
思フカラ、老婆心デ斯ノ如キ事ヲ申シテ置ク、是レダケデアル、
子爵青木委員 本会ニ御提出ニナリマシタ案ニ就テ皆様方カラ色々御質問ヤ御意見モ御座イマシタ、大分政府ノ支持セラレマス案ト根本ニ於テ大懸隔ガアル様ニ私ハ思フノデアリマス、尚又各員ノ御趣意モ略略吾々ニモ解リマシテ吾々ノ御同感ノ所モアルノデアル、就キマシテハ今日之レヲ玆ニ御決定ニナルト云フコトニナリマスト吾々モモウ少シ考慮ヲシタイト考ヘルノデアリマス、尚又只今大石君カラ御話ノ審議会ノ審議ノコトニ就キマシテモ只今迄ニ随分此ノ会ニ諮詢セラルベキ事件ガ多々アツタカト思フ、単ニ都市計画ノミデアリマスルナラバ是レ丈ケノ重要ナル機関ガ必要デアルヤ否ヤト云フコトモ大イニ疑フ処デアルノデアリマス、其等ニ就キマシテモ今少シ考慮ノ時間ヲ御与ヘヲ願ヒタイト存シマス、今日ハ大分時間モオ掛リニ成ツタ様デアリマスカラ、此ノ位デ此ノ会ヲオ閉ヂニナリマシテ、尚考慮ノ余地ヲ御与ヘ下サイマシテ、次会デ御決定アランコトヲ私ハ希望致シマス、
子爵高橋委員 今朝来伊東伯其他ノ御意見ヲ拝聴致シ私モ大体ニ於テ御両君ノ御意見ニ同意スル処ガ多イノデアリマス、此ノ大震災火災後ニ於キマシテ一番緊急ノ施設トシテ必要ナルモノハ、此ノ罹災民即チ市民ノ生計ノ道ニ於テ安定セシムルコトガ第一デナケレバナラヌト考ヘマス、此ノ計画ニ依ツテ見マスト云フト、第一ニ考ヘネバナラヌ所ニ御考ヘヲ費サレタルコトガ薄クテ、唯道路、或ハ堀割ト云フヤウナ形ノ上ニ於テノ計画ニ重キヲ置カレテ居ル様ニ見ユル、予テ聞テ居リマスルガ倫敦ノ大火ノ時ニ第一ニ矢張リ市民ノ生計ノ道ヲ復活サセタイト云フコトヲ主トシテ居ル、サウシテ案ヲ樹テル、例ヘバ一等道路ハ四階ヲ建テル、二等道路ハ三階ヲ建テル、三等道路ハ二階ヲ建テル其レデ地区ヲ決メタ、建築地ヲ決メテヤツタラ後ハ自分ノ力デ家ヲ建テタ、従テ商業ハ復活シタ、其レカラ後ハ市民ノ富ノ増殖ニ従ツテ段段拡張モセラレ改良モセラレタ、幸ニ今日ノ都市計画法ナルモノハ全然技術トシテ行ハレ、而シテ中央地方ニ分レテ委員会ト云フモノガ組織セラレテ居ル、土地収用法モアル、市街建築法モ行ハレテ居ル、而シテ都市計画ニ就テハ相当研究シテ相当ノ知識ヲ具ヘタ機関ガアル、ソレニ依ラスシテ新ニ復興院ヲ設ケラレ、サウシテ此ノ計画ヲ為サシメタ、所ガ復興院ノ評議会デ決定シタモノガ「オーロンチック」ノモノデハナイ、官制ニ依ツテ法律ヲ動カス訳ニハ行カヌ、何ノ為ノ復興院ノ評議員会ノ決議デアルカ、又審議会ニ於テ是ヲ議シテ見タ処デ議会デ通過シテ見タ処デ、矢張リ都市計画法ヲイジラナケレバ中央地方ノ計画委員会ニ掛ケテ、内務大臣ガ之ヲ確定シテ内閣デ執行スルヨリ外方法ガ無イ、寧ロ斯云フコトニ依ラズシテ現在行ハレテ居ル法律ノ下ニ、早ク市民ノ生計ノ道ヲ復活サセルト云フコトニ著手セラレタナラバ宜カラウト実ハ考ヘテ居リマス、総テ良ク外国ノ例ガ新聞ナドニ出マス、第一震災ノ前ニ於テ市区改正ニシテモ容易ニ行ハレナイ、ソレト云フモノハ第一ニ先ツ故障ト為ルモノハ我国ノ小売商売人ノ組織ト、外国ノ小売商売人ノ組織ト違フ、小売商売人ハ銀座ノ店ニシテモ日本橋通リノ店ニシテモ家族ハ勿論婢僕迄皆其処ニ住ツテ居ル、外国ノハ会社ニシテモ個人ニシテモ遠クカラ朝店ニ通ツテ来テ、夜ニナレ
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バ帰ツテ行ク、其所ガ違ツテ居ル、サウ云フ実際カラ考ヘマスルト道路ノ事モ公園ノ設備モ普段ノ状態ヲ能ク観テ、其レニ適応スル様ナ設備ヲシナケレバナラヌ、強チ外国ノ例ニ拠ル訳ニハ行カナイ、ソレカラ市内ノ改正ニ於テモ、今度ノ焼跡ノ市街ノ形ニ付テ一番大切ナル基礎トナルモノハ上下水道ノ設備デアリマス、是レナドハ従来ノ通リ市ニ任シテモ、市ガ災害ニ因テ富力ノ減殺サレナイ以前ニ於テスラ遅々トシテ進マナカツタ、然ルニ今度斯様ナ計画ヲシテ道路ヲ開クニシテモ、上下水道ガ之ニ伴ツテ往カナケレバ能ク其効ヲ為サナイノデアリマス、何レノ国ニ往ツテモ新ニ市街ヲ計画スルニハ上下水道ヲ先以テ計画スル、其レカラソノ災害後ニ私ナドノ考ヘニハ兎ニ角民心ヲ安定サセナケレバナラヌ、又衣食ノ途ヲ得セシムルヨリ仕方ガナイ、其レニハ通信・電話・運輸斯云フ様ナモノヲ早ク復活サセナケレバ、今日ノ状態ニ於テ市民ノ苦情ハ何ニカト云フト、電信ヲ出スニモ四時過キハ受附ケナイ、市中用達ヲスルニモ電車ガ復旧シナイカラ自動車カ自転車デ往カナケレバナラヌ、ト云フ有様デアル、是迄交通機関ヲ利用シテ生計ヲ立テ居ツタ者ガ其ノ途ヲ断タレテ困ツテ居ルガ、斯様ナ事ニハ御頓着ハナイ、電話ニシテモ焼ケタ交換局ヲ前ノ儘ニ加入者ヲ纏メタ上デヤラウトスレバ費用モ余計掛ルカラ、応急ノ設備トシテ二百何十カ三百カ纏メタモノヲ拵ヘレバ早ク便利ニ出来ル筈デアル、又金融ノ干係ニ付テモ此頃ハ現金取引ノミデ信用ハ殆ンド無クナツテ了ツタ、故ニ従来直接ニ東京ヘ来タ物ハ、今日ハ大阪ト名古屋ニ品物ヲ送リ、サウシテ名古屋ナリ大阪ナリノ商人ガ自分ノ金デ以テ自分ノ計算ト危険ヲ以テ物ヲ持ツテ来ルカラ、其物品ノ代価ハ高クナルニ決ツテ居ル、サウシテ漸ク家ガ建チサウニナツテ、従来ノ如クニ地方ト商売ガ出来ル時分ニハ地方トノ関係ガ薄クナツテ、新ニ又商売ノ道ヲ開ラカサナケレバナラヌコトニナル、故ニ当局ニ於テハ此点ニ付テハ重キヲ措カレテ、一刻モ早ク生計ノ途ヲ開クコトノ御施設ガナケレバナラヌト私共ハ考ヘテ居ル、
其レカラ新規ニ道路ヲ拡ケタリ造ツタリスル予算ナドヲ見マシテモ、唯一時要ル丈ケノ金デ三十間ナリ二十四間ノ道路ヲ拵ヘマシテモ、此ノ修繕トカ維持ハ誰ガスルカ、皆市民デアル、国道ト雖モ府県税デアル、其等ノ費用ハ果シテ市民ノ負担ノ力ニ合フヤ否ヤ、サウ云フコトモ略ボ考ヘナケレバナラヌ、其レカラ今日御諮問ニナリマシタ第三ノモノハ能ク通読シテ見マスルト云フト、今日存在シテ居ル道路計画法ト変ツタコトハ余リナイ、唯実質ニ於テ変ツタト認ムルモノハ、第三ニ於テ国ノ行政庁ニ於テ執行スル復興事業ニ要スル費用ハ国庫ノ負担トスト云フコトガアリマス、其上ニ持ツテ来テ之レニ加ハワツタノガ其一部ハ事業地ノ属スル公共団体ヲシテ分担セシムル、国ノ仕事ト雖モ其ノ事業ニ関係スル公共団体ニ分担サセルコトガアル、其レカラ第三ニ公共団体ノ負担ハ――行政庁ニ於テ執行スル復興事業ニ要スル費用ハ公共団体ノ負担トシ、其一部ハ国庫ノ負担トシテ補助スルト云フノデアツテ、実質ニ於テ重要ナ違ヒハ殆ンドナイ、其他ハ先ツ大抵文章ガ変ツタ位デ今日ノ都市計画法ト変リハナイ、而シテ此ノ予算ニ付テ変ツタ点ヲ見ルト、国ノヤル仕事ニ就テ東京市ニ二億幾等ヲ分担シ
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テ居ル、而シテ一方公共団体ノ費用ニ対シテ補助スル金ハ六千万円デアル、東京市民ハ六千万円ノ補助ヲ貰フ代リニ二億何千万円ノ分担ヲサセラレルノデアル、有難迷惑ニ相違ナイ、サウ云フ点ニ付テ、其他細目ニ至レバ沢山疑義ガアリマスカラシテ御尋ネモシタイノデアリマスガ、大体論ニ於テ既ニ伊東伯・江木君ノ御両人カラ充分意見ヲ述ヘラレタノデアリマスカラシテ、吾々ハ大体ニ於テ此ノ御両君ノ仰セト御同感デアリマス、就キマシテハ此ノ事ノ議会ヲ満足ニ通過シテ、一日モ早ク市民ガ安定ヲ得ルヤウニシタイト云フコトガ希望デアル、ドウカ両委員ノ述ベラレタ所ヲ御考慮ニナツテ、更ニ御修正ニナル事ヲ私ハ希望致シマス、却ツテ其方ガ議会ノ通過モ良カラウカト思ヒマス願クハ政府ニ於カレテ両委員ノ言議ニ付テ充分ニ御考慮ヲ願ヒタイノデアリマス、
議長(伯爵山本総裁)此ノ場合ニ於キマシテ一言申シマス、今日ハ午前・午後ヲ通シマシテ長時間ノ御質問御希望玆ニ御意見ヲ併テ承リマシタノデアリマス、
今日ハ散会致シマシテ、又此ノ次ニ開クベキ時日ヲ取極メタイト思ヒマス、
子爵加藤委員 私ハ第一ニ御断リ申シマスガ都市計画ハ丸デ門外漢デアリマシテ、何等ノ知識モ持チマセヌノデ案ノ中デ解ラナイコトモアリマスカラ数多ノ質問ヲ致シタイノデアリマスガ、唯今其ノ場合デモ有リマセヌ、唯今高橋子爵カラ述ベラレタコトモアリマスシ、其前ニ各委員カラ述ベラレタコトモアリマスガ、之ヲ審議スルコトニ致シマスルト今ヤ議会ノ開会モ目捷ノ間ニ迫ツテ居リマシテ、而モ此ノ審議ハ鄭寧ニ致セバ中々二ケ月ヤ三ケ月ノ間ニ出来ルモノデナイ、又復興院ニ於テモ時日ガアレバ特別委員ヲ御設ケニナツテ審議セラルルノモ宜シイデアリマセウガ、最早先ガ詰ツテ洵ニ切詰メタコトデアリマス吾々ハ空シク時間ヲ費シテモナラヌノデアリマス、何レ議会ニ御出シニナツテ調査ヲ求メラレナケレバ実行ガ出来ナイノデアリマスカラ、唯今迄ノ処デ閣外ノ委員ノ意嚮モ略分カリマシタデセウシ、私モ同列ノ諸君ガ述ベラレタ所モ一々同感デアリマスカラ、又内閣諸公ノ委員ノ意嚮ノ大体ハ知リ得ベキ便利ガアルト思ヒマスカラ、此辺デ御止メニナリマシテ、後ハ御参酌ニナリマシテ尚御定ニナルナリ、或ハ其儘デ御提出ニナルナリシテ、何分時日ガアリマセヌカラ青木子爵カラノ御説ノ通リニシテ、他日御開キニナルコトハ又時日ガ延ヒルカト思ヒマスカラ、大体ニ就テ先ニ述ベラレタ委員ノ意見ヲ採用スベモノハ採用シ、採用スベカラザルモノハ採用シナイデ案ヲ定メラルベキ事ヲ希望致シマス、
  (「賛成ト呼フモノアリ」)
子爵渋沢委員 重要問題ニ付キ各委員ノ考ノ種々変ツテ参リマスコトハ已ムヲ得ナイヤウニ思ヒマス、私共モ此ノ委員ヲ仰付ケラレマシタ頃カラシテ此ノ問題ハ甚タ面倒ニナリハシナイカト云フコトヲ苦慮致シタノデアリマス、恰度帝都復興院ノ為サレ方ガ二ツノ合ハスベカラザルモノヲ合ハシタヤウニ思ハレマス、一方ノ罹災民ニ対シテ成ル丈ケ早ク事業ノ安定ヲ得サセタイ、一日モ早クニト云フ希望ヲ持ツタノ
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デアリマス、又帝都ヲシテ完全ナル帝都タラシメタイト思フヨリ、充分ニ評議シテ良イ上ニモ良イコトヲ考ヘタイト思ヒマス、必ラス時モ掛リ金モ掛ル、時ト金ノ掛ル方ト、金ヲ減シ又早クヤリタイト云フ方ト二ツ一緒ニヤラウト云フノデアリマスカラ、枘鑿相容レズ、火ト水ト相戦フヤウナ有様ガ生ズルノハ已ムヲ得ナイト思ヒマス、今日私共ノ考ヘテ居ル中ニモ、伊東サンナリ江木サンナリ又其ノ他ノ委員ノ御意見ノ成程サウト思ハレル所モアリマスガ、左レバト云ツテドウシテモ此ノ場合相当ナ処置ハ為サラナケレバナラヌト思ヒマスガ、此処デ行当ツテ唯此ノ議論ノ為ニ甚シキハ議会モドウナルカト云フコトデアルト、詰リ申スト罹災者タル東京・横浜等ノ市民ガ政治上或ハ有力ナル方々ノ意見ノ為ニ宙ニ吊リ下ケラレル有様ニナリハシナイカト云フコトヲ深ク憂フルノデアリマス、皆様モ御憂ヘニナルガ私共モ年寄ノ故ニ尚更之ヲ憂フルノデアリマス、就キマシテハ此案ニ対スル段々私共ニモ多少愚見ヲ申上ケタイト思フ点モ御座イマスガ、ヨリ以上伊東伯ナリ江木君・加藤君・高橋君ノ御説ガ御座イマスガ、何ウデ御座イマセウカ、一日モ早クモウ一遍会ヲ御開キニナツテ討論会デナク之ニ対スル反対ノ御意見ガアルナラバ是ハ斯ウシタイ、アヽシタイト云フコトヲ成ルベク御聴取ニナツテ、サウシテ或ル部分ハ御修正下サツテサウシテモウ一応立案シテ下サル様ナ御考ヘハナイモノデ御座イマセウカ、サモナケレバ加藤サンノ仰シヤル様ニナリハセヌカト恐レルノデスケレドモ、唯是レデ審議会ハ済ンデ了ツタト云フコトハ一般ニ対シテ甚タ心苦シイモノニナリハシマイカ、今日迄ニ行掛リマシタモノデスカラ、例ヘバコノ案ニ付テ此ノ点ハ斯ウアリタイト云フコトハ多数ノ議決デ無ク寧ロ個々懇談的ニ評議シテ見テ、サウシテ幾分ノ御修正ノ廉ガ其処デ協定シ得ラレタナラバ、成ル丈ケ早ク明後日ニモ御修正下サツテモウ一遍提案スル、可成ハ此処デ協議シ得ルモノデナケレバ議会ヘ出シテモ如何アリマセウカ、サウ云フ工夫ガ出来ヌナラバ已ムヲ得マセヌガ、私共老人ノ御用ニ足ラヌ者カラ考ヘマスト、ドウゾ成ル丈ケサウ云フ風ノ取纏メヲ着ケタイ様ニ考ヘマスノデ、且此ノ方法ニ付テハ私共モ、斯クモナスツタラ行ハレハシナイカト云フ和田氏ノ意見ト少シ違フ様デスケレドモ、私ハ実施ニ付テハ寧ロ中間設備ガ或ハ要リハシナイカト思ヒマス、是等ハ更ニ此ノ問題ニ付テ自分等ハ斯ウナツテ宜カロウト思フト云フコトヲ申上ケタイト考ヘマスガ、根本ニ於テ余リ程度ガ違ヒ過キルカラモツト低クシタイ、此ノ法律デハイカヌト云フ法律ニ精シイ御方ヤ計算ニ精シイ御方ガ、其等ノ説ヲ余リ議論的デナク協議的ニ御相談ナスツテ、サウシテ大方針ガ其処ニ稍協定シマシタナラバ御改正下サルコトニ吝カナラズ致シマシテ、更ニ修正案ヲ両三日中ニ御提出下サルト云フ様ナコトニハ出来得ヌモノデハ御座イマセウカ、可成サウアリタイト希望致シマス、サウ云ウ折合論ノヤウナ事ヲ申上クルノデスガ、元々此問題ガ面倒ナリト云フコトハ識者ヲ待タズシテ知リ得ルコトヽ思ヒマスノデ、今日此ノ場合ノアルコトハ決シテ怪シムベキコトデハナイ、若シ一方ニ偏スレバ一方ニ対シテ反対意見ノ出ルコトハ尤モナルコトデアリマスカラ、少シ折合フタ考ヲ致シマセヌト、詰リ之ハ抜キモ差シモナラヌ様ニナツテ、其
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ノ苦シミハ皆我国ニ居ル人々ニ与ヘル様ニナリハシマスマイカ、其処ヲ御考ヘ下サツタナラバ少シ御忍ビ下サル御考ガ当局ノ御方ニモ、此ノ委員ニ列スル吾々ニモ有ツテ然ルベキカト思ヒマスノデ、其折衷説ノヤウナ折合論デ頗ル老人ノ意気地ナシノ意見デハ御座イマスケレドモ唯一言愚存ヲ申上マス、
議長(伯爵山本総裁) 此間五分間ノ休憩ヲ、
伯爵伊東委員 只今渋沢子爵カラ御述ヘニナリマシタノハ至極穏当ノ事デアリマス、今日ハ先ツサウ云フ事デ渋沢サンノ御述ヘニ成ツタ様ニ懇談会ニナルト云フコトヲ私ハ賛成シタイト思フノデアリマス、
議長(伯爵山本総裁) 此ノ場合ニ五分間休憩致シマス、
  午后三時二十分休憩
  午后三時二十五分開議
議長(伯爵山本総裁) 其レデハ是レカラ会議ヲ開キマス、
先刻伊東伯爵並渋沢子爵カラ御意見ノ出マシタ如ク、中々此ノ問題ハ重要ナル問題デ御座イマシテ充分慎重ニ御協議スル必要ガアルト考ヘマス、此ノ場合ニ於キマシテ之ヲ再ヒ調査シ意見ヲ合ハセマスルニハ委員ヲ両方カラ指名シマシテ其レニ委シテ御修正ノ意見ガアリマスレバ、其レニ因ツテ案ヲ一ツ作リタイト思ヒマスガ之ニ大体御同意ヲ希望シマス、サウスルト其数ハ或ハ少数ノ方ガ宜シイカ多数ノ方ガ宜シイカ、ソレデ内閣側カラ三名若クハ五名、アナタ方ノ方カラ同シ数ヲ御出シ下サルト云フコトニ致シタイト思ヒマス、若シ是レヲ議長ニ其指名ヲ御一任ニナリマスレバ此ノ場合ニ於テ申上ゲタイト考ヘルノデアリマス、
伯爵伊東委員 今同列ノ御話ニ願フハ両方五名位ヅヽトシテ、総裁閣下ヨリ御指名ヲ願ツタラドウカト思ヒマス、
議長(伯爵山本総裁) 其レデハ御報告致シマス
  閣外ノ方ヨリハ
               伯爵 伊東巳代治君
               子爵 高橋是清君
               子爵 加藤高明君
                  江木千之君
               子爵 青木信光君
               子爵 渋沢栄一君
  閣内カラハ
               子爵 後藤新平君
                  井上準之助君
                  岡野敬次郎君
               男爵 田健次郎君
                  犬養毅君
両方デ十名《(マヽ)》ト為リマス、御苦労ナガラ委員長ハ伊東伯ニ御願ヒイタシマス、
(「議事ノ模様ヲ秘密ニスルト云フコトハ随分吾々ガ人カラ恨マレルノデスガ……」「サウデス、中々実行出来ルモノデモナシ、又秘密ニスル必要モ無イト思ヒマス、」
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  「マア其辺ノ処デ良イデセウ」ト言フモノアリ)
議長(伯爵山本総裁) 是デ散会致シマス、
  午后四時三十二分散会、