デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

9章 其他ノ公共事業
1節 記念事業
14款 其他 7. 財団法人高松記念資金財団
■綱文

第49巻 p.169-174(DK490047k) ページ画像

昭和2年5月18日(1927年)

是ヨリ先、栄一、前東京工業試験所長高松豊吉功績記念資金募集及ビ記念事業ノ発起人タリ。是日当財団設立認可ヲ受ク。栄一金五百円ヲ寄付ス。


■資料

高松博士功績記念資金募集報告書 第一―一九頁昭和二年六月刊(DK490047k-0001)
第49巻 p.169-174 ページ画像

高松博士功績記念資金募集報告書  第一―一九頁昭和二年六月刊
拝啓 益御清祥の段奉賀上候、然は予て御賛同を辱うしたる高松博士功績記念資金募集の儀今般結了し、其金額合計壱万九千参百弐拾七円に達し候に就ては、其一部分を以て記念品(別記の通)を調製し、之を同博士に贈呈し、且募集に要したる諸経費を支出したる残額(利子共)金壱万七千五百円を基本金として財団法人高松記念資金財団を設立し以て当初の目的を達成すべきことと相成、該資金は右財団理事に於て保管せらるゝことゝ相成候に付御承認被成下度、右経過並に関係書類
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及決算書類写相添此段御報告申上候 敬具
  昭和二年五月三十一日
             高松博士功績記念資金募集実行委員

    高松博士功績記念資金募集及記念事業の経過
大正十三年六月二十一日、日本工業倶楽部に於て開催せられたる高松博士慰労会の際出席されたる有志者中、同博士の功績を記念すべき事業企画の必要を唱道せらるゝ者少からざりしが、是博士に親灸せる者の等しく冀望して止まざる所なるを以て、同月二十五日小寺房治郎氏より東京市内及附近在住の鴨居武・熊沢治郎吉・佐伯勝太郎・田中芳雄・棚橋寅五郎・辻本満丸・野口寅之助・平松末吉・松原行一・水田政吉・山村鋭吉・吉武栄之進諸氏に対し、右相談会を開く為同二十八日東京工業試験所に参集あらんことを求められ、同日以上諸氏出席協議せられたる結果、記念事業を計画すべきことに意見一致せられたるも、其方法等に付きては更に講究せらるゝこととなり、其後数次集会協議の結果略成案を得るに至りたるも、尚博士の意向をも確むるの要あり、小寺氏の博士との会見に依り其御異議なきことを明にするを得たるを以て、大正十四年三月七日東京工業試験所に於て前記諸氏の会合に於て、高松博士功績記念資金を募集し、其一部を以て記念品を調製し之を博士に贈呈すると共に、其残余を以て財団法人を設立し、其保管の下に、博士の終始一貫尽瘁努力せられつゝある我国化学工業の発達振興に資するの費に充て、以て博士の功績を永遠に伝ふべきことに決し、実行委員として
  鴨居武    熊沢治郎吉  小寺房治郎
  佐伯勝太郎  荘司市太郎  棚橋寅五郎
  田中芳雄   鶴巻鶴一   辻本満丸
  内藤游    西川虎吉   野口寅之助
  平松末吉   牧田環    松原行一
  三山喜三郎  水田政吉   山村鋭吉
  吉武栄之進  井上仁吉
以上諸氏より、同五月一日知友三百余氏に発起人たらんことを委嘱し其快諾を得たりしを以て、同七月一日一千三百四十余氏に対し、高松博士功績記念資金募集趣意書を発送して其賛同を求めたり
募集事務所は之を東京工業試験所内に置き、小寺房治郎氏事務を総轄せられ、山村鋭吉氏専ら庶務及会計の任に膺り、大正十五年十一月を以て其募集を締切りたりしが、応募人員は五百五十五名、金額壱万九千参百弐拾七円に達せり
之より先、同年五月末日を以て募集金額壱万八千五百余円に達し其総金額も略予想せらるゝに至りたるを以て、同六月五日実行委員会を開き、博士に贈呈すべき記念品の選択、財団法人設立の条款並に評議員の委嘱等に関し予め協議せられたりしが、博士に贈呈すべき記念品は博士の日夕訪客に応酬せらるゝ応接室に於ける家具こそ然るべけれとの事に一決し、其調製を宮沢節一に委嘱することゝし、又財団法人の位置は東京工業試験所内とし、其の設立の条款に関しては其起草を山
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村鋭吉・野口寅之助・熊沢治郎吉の三氏に委嘱せり
昭和二年一月募集記念資金の収入全部完結せるを以て、同二月十二日実行委員会を開き、曩に起草委員に委嘱せる所の財団寄附行為及評議員の推薦等に関し協議を遂げ、同月二十五日を以て評議員三十四名を推薦し、三月二十九日迄に内三十氏の承諾を得たるに依り、同日を以て主務大臣に財団法人高松記念資金財団の設立を申請したり
実行委員に於ては財団法人設立の許可を得ば直に評議員会を開き理事の選挙を行ひ、以て事業の進行を図るべき予定なりしが、四月十日主務官庁より理事三名の人名を寄附行為附則中に掲記すべき旨通達せられたりしを以て、実行委員中の有志協議の結果次期よりは選挙により決定すべきことゝし、最初の一期間は鴨居武・小寺房治郎・高松豊吉三氏を煩すべきことゝなして(理事会に於て小寺房治郎氏理事長に選任せらる)書類を訂正提出したり、而して同五月十八日附を以て商工大臣の許可を得同二十日該許可書を受領せるを以て、同月三十日東京区裁判所淀橋出張所に於て之が登記を了せり
曩に宮沢節一に委嘱せる記念品既に完成せるを以て、五月二十七日高松博士に対し財団法人設立経過の報告を為すと共に右記念品を贈呈したりしに、博士より鄭重なる謝状に接し、玆に高松博士功績記念事業計画の完結を見るを得たり

    高松博士へ記念品贈呈状
謹啓 新緑之候益御清祥の段奉賀上候、然ば先生が多年我国化学工業の発達振興に御尽瘁被成下候に付ては有志相謀り基金を醵出し、財団法人高松記念資金財団を設立し、別紙寄附行為条款により其御功績を永遠に記念すると共に、別記目録の通記念品贈呈仕度候に付、御受納被成下候はゞ本懐の至りに奉存候 敬具
  昭和二年五月二十七日
            高松博士功績記念資金募集実行委員
                   総代 小寺房治郎
    工学博士高松豊吉殿
      贈呈記念品
 一書斎用脇置附ソフアー  壱個  代価三百五十五円
 一同 安楽椅子      壱脚  同 百五十七円五十銭
 一同 婦人椅子      壱脚  同 百三十七円五十銭
 一同 丸卓子       壱脚  同 七十八円
 一同 絨氈        壱枚  同 三百八十九円
 一客間用安楽椅子     壱脚  同 百七十五円
 一同 中椅子       参脚  同 二百七十五円
 一同 小椅子       弐脚  同 七十六円
 一同 飾棚        壱箇  同 百九十五円
 一同 大形丸卓子     壱脚  同 七十五円
 一同 小形丸卓子     壱脚  同 七十五円
 一同 半円卓子      壱脚  同 五十円
 一日本間用座卓子     壱脚  同 百六十円
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  合計十三種(十六点)      代価二千百九十八円也

    高松博士よりの謝状
拝復 晩春の候益御清祥之段慶賀之至りに奉存候、陳者老生多年本邦化学工業の発展に微力を尽し候処、先般退官に際し有志各位の御厚意に依りて多額の基金を醵集せられ、永く之を特殊研究の資に充つる為財団法人高松記念資金財団を設立せられたるは、老生の光栄不過之、尚記念として貴重なる家具拾六点目録の通り御贈与被成下洵に感謝の至りに堪へず、該品は家庭に於て永く愛用可致候、先は右御挨拶旁御礼申述度如斯御座候 敬具
  昭和二年五月二十七日         高松豊吉
   記念資金募集実行委員総代
     工学博士小寺房治郎殿
  二白、甚だ乍略儀諸君へ宜敷御礼御伝言願奉候

    収支計算書
      収入之部
一金弐万六百七拾弐円七拾四銭 収入金総額
   内訳
  金壱万九千参百弐拾七円    有志五百五拾五名醵出金
  金参拾壱円参拾参銭      高松博士慰労会残金繰入
  金四百四拾円五拾九銭     振替貯金利子
  金六百六拾七円六拾五銭    銀行預金利子
  金弐百六円拾七銭       信託預金利子
      支出之部
一金弐万弐百拾円九拾八銭   支出金総額
   内訳
  金壱万七千五百円       財団法人高松記念資金財団基金
                 (三井信託株式会社信託預金)
  金弐千百九拾八円       贈呈記念品代
  金八円九拾銭         振替貯金諸費
  金弐百四拾九円八拾弐銭    記念資金募集趣意書及報告書
                 其他印刷物諸費
  金弐拾参円弐拾七銭      帳簿諸用紙及印
  金百弐拾参円九拾八銭     郵税
  金九拾円           諸手当
  金拾七円壱銭         諸雑費
 差引金四百六拾壱円七拾六銭 財団法人ニ引継高
右之通に候也
  昭和二年五月三十一日
              庶務及会計主任 山村鋭吉

    財団法人設立許可願
今般寄附行為ヲ以テ財団法人高松記念資金財団ト称スル財団法人ヲ設立致
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度候ニ付、別紙寄附行為書相添、民法第三十四条ニ依リ御許可ヲ請ヒ候也
  昭和弐年参月弐拾九日
             東京府東京市小石川区宮下町四番地
                      鴨居武
        東京府荏原郡目黒町大字中目黒七百五拾六番地
                      小寺房治郎
    商工大臣藤沢幾之輔殿
商工省指令工第三二〇九号
               財団法人高松記念資金財団
                  設立者 鴨居武
                            外一名
昭和二年三月二十九日附申請財団法人高松記念資金財団設立ノ件許可ス
  昭和二年五月十八日
                商工大臣 中橋徳五郎

    財団法人高松記念資金財団事務所設置願
今般別紙ノ通東京帝国大学名誉教授前東京工業試験所長工学博士高松豊吉氏ノ功績ヲ記念ノ為財団法人高松記念資金財団ヲ設立致候ニ付テハ、該事務所ヲ東京工業試験所内ニ置キ度候ニ付、御許可相成度此段御願候也
  昭和二年五月二十日
        財団法人高松記念資金財団理事長 小寺房治郎
    東京工業試験所長工学博士 小寺房治郎殿 (別紙略)
工発第一八三号
        財団法人高松記念資金財団理事長 小寺房治郎
昭和二年五月二十日附願財団法人高松記念資金財団事務所ヲ当所内ニ置クノ件許可ス
  昭和二年五月二十日
         東京工業試験所長工学博士 小寺房治郎

    財団法人高松記念資金財団寄附行為
      一総則
第一条 鴨居武・小寺房治郎ハ東京帝国大学名誉教授前東京工業試験所長工学博士高松豊吉ノ功績ヲ記念センカ為、同志ノ寄附ニ成ル金壱万七千五百円ヲ以テ財団法人ヲ設立ス
第二条 当財団ハ財団法人高松記念資金財団ト称ス
第三条 当財団ハ一般化学工業ノ発達振興ヲ図ランカ為、左ノ事業ヲ行フヲ以テ目的トス
 一特殊ノ研究及調査ヲ助成スルコト
 一発明及発見ヲ奨励スルコト
 一其他当財団ノ目的達成ニ必要ナル事項
第四条 当財団ノ事務所ハ之ヲ東京府豊多摩郡代々幡町大字幡ケ谷東京工業試験所内ニ置ク
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第五条 当財団ノ事業年度ハ毎年四月一日ヲ以テ始マリ翌年三月三十一日ヲ以テ終ル、但シ初年度ハ当財団設立ノ日ヲ以テ始マル
第六条 当財団寄附行為条款中第四条以下ハ評議員会ノ決議ヲ経、且主務大臣ノ認可ヲ受ケテ之ヲ変更スルコトヲ得
○中略
      附則
当財団解散ノ場合ニハ残余資産ハ当財団ノ目的ニ適合スル財団ニ之ヲ寄附ス、設立当時ノ理事及評議員左ノ如シ
 理事  鴨居武    小寺房治郎  高松豊吉
 評議員 植村澄三郎  大島義清   鴨居武
     北脇市太郎  熊沢治郎吉  小寺房治郎
     小林久平   佐伯勝太郎  荘司市太郎
     高松豊吉   甲中芳雄   棚橋寅五郎
     辻本満丸   鶴巻鶴一   内藤游
     西川虎吉   野口寅之助  平賀義美
     平松末吉   藤野懿造   牧田環
     松原行一   三好久太郎  矢野道也
     山村鋭吉   渡辺勝三郎  井上仁吉
     水田政吉   三山喜三郎  中井四郎

    工学博士高松豊吉氏功績記念資金寄附芳名
一金壱万九千参百弐拾七円  寄附金総額(五百五十五名)
                     ○印 発起人
                     ◎印 同実行委負
○上略
      シ之部
  金五百円             ○渋沢栄一殿
○下略