デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

9章 其他ノ公共事業
5節 祝賀会・表彰会
2款 時事新報社発起義勇表奨会
■綱文

第49巻 p.370-371(DK490128k) ページ画像

明治44年7月(1911年)

是月二十日、時事新報一万号ニ達スルヲ以テ、同社ハ記念事業トシテ、義勇表奨会ヲ発起ス。栄一評議員トナリ、在任歿年ニ及ブ。


■資料

青淵先生職任年表(未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編 竜門雑誌第五一九号別刷・第一五頁 昭和六年一二月刊(DK490128k-0001)
第49巻 p.370 ページ画像

青淵先生職任年表 (未定稿) 昭和六年十二月調 竜門社編
               竜門雑誌第五一九号別刷・第一五頁
               昭和六年一二月刊
    明治年代
  年 月
四四 七 ―時事新報発起義勇表奨会評議員―昭和六、一一。


竜門雑誌 第二七八号・第四三―四四頁明治四四年七月 ○時事新報の義勇表奨事業(DK490128k-0002)
第49巻 p.370-371 ページ画像

竜門雑誌 第二七八号・第四三―四四頁明治四四年七月
○時事新報の義勇表奨事業 時事新報社に於ては本年七月二十日を以て正に一万号に達したる紀念事業として義勇表奨会を発起し、青淵先生には其評議員を嘱託されたりといふ、因に同会の規定及び青淵先生賛同の趣旨は左の如くなりと云ふ。
    義勇表奨会規定
第一条 義勇表奨会は日本国民中義勇行為を為したる者に対し賞金及び賞牌を贈与して其行為を表奨するを目的とす
第二条 表奨す可き義勇行為は左の如し
 一、自己の危害を顧みず一身を賭して他人の生命財産を救護したるもの
 一、前項の目的を達せんとして自己の生命を失ひ又は負傷罹病したるもの
 一、其他経世上並に人道上特に顕著なる行為
第三条 表奨す可き本人が生命を失ひたる場合には其遺族に賞金を贈与す
第四条 職責上当然の行為に属し且つ公私に於て賞与救恤の設あるものに就ては、特に其顕著なる行為に限り之を表奨す
第五条 義勇資金は発起者並に賛助者の寄附義金を以て之を設置す、但五百円以上の寄附は十個年以内の年賦を以てするも差支なし
第六条 義勇資金の支出は毎年凡そ一定せる金額内に於てし、其残余金は毎年これを積立て十個年末に至り義勇資金基本金に充つるの計画とす
第七条 本会は名誉信用ある若干名の評議員を嘱託し、授賞者並授賞金額は評議員の審議に依て決定するものとす
    義勇表奨事業に就ての青淵先生の意見
忠孝は我国の精華にして洋学者たると漢学者たるとを問はず、忠孝の道を尊重するの念に於ては敢て異なる所ある可らず、勿論忠孝の外部に現はるゝ形体若しくは忠孝に対する褒め方感じ方に於ては、古今東
 - 第49巻 p.371 -ページ画像 
西によりて多少差異あるを免れず、雪中に筍を掘るが如き今日の観念よりして果して孝行と看做すを得るや否やは疑問なり、左れば未開時代の忠孝と文明の今日に於ける忠孝とは、其形態に於て異なるは自然の数なれども、然も忠孝の素質に於ては古今東西を通じて決して変ることなし、忠孝の道の忽にすべからざる所以なり、而して忠孝と相対して涵養すべきは義勇的精神にして、今回貴社にて義勇行為を表奨する目的を以て義勇表奨会設立の挙あるは、洵に慶賀に堪えざる次第なり、唯だ此事業は一時の際物、例へば御祭りの煙火の如きものに非ずして永久的事業なれば、根気能く気長く目的の遂行に力を致されんことを望むのみ、幸に貴社の如き有力なる新聞にて真面目に事に当らるるに於ては成功疑ひなかるべし。



〔参考〕時事新報発起義勇表奨会書類(DK490128k-0003)
第49巻 p.371 ページ画像

時事新報発起義勇表奨会書類       (渋沢子爵家所蔵)
義勇表奨会の件に関し別紙を以て稟申仕候間御審議相成り度く、此段御願に及び候也
  昭和四年七月二十四日
                   時事新報発起
                       義勇表奨会
    (宛名手書)
    渋沢栄一殿
(別紙)
    第五十九回義勇表奨会稟申の件
昭和四年七月十六日午後三時頃、小松川町中平井一五九四コンパス製造業春山七五三方徒弟石川員君(一四)は、荒川放水路に於て水遊中の小松川第一小学校高等科第一学年生森田信之(一三)が突然放水路に押流され泥深き個所に沈み将に溺死せんとしたるを、勇敢にも渦巻く水中に飛込み信之の足を掴んで引き上げ、必死となりて陸に泳ぎ着いて危く救助することを得たり
時事新報発起義勇表奨会は石川員君の勇敢なる行為に対し金五拾円と賞牌(銀)を贈つてこれを表奨せんとす
   ○右ハ標題綴込中最終ノモノナリ。