デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和3年7月10日（1928年）

是日、団琢磨、木村久寿弥太・郷誠之助・大橋新太郎・橋本圭三郎・西野恵之助等ニヨリ当会社発起人小集会開カレ、次イデ二十日、発起人総会開カル。栄一病気ノタメ出席セザルモ、創立委員長トシテ之ニ与ル。

航空輸送会社書類　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　昭和三年七月四日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西野恵之助
　　　　子爵　渋沢栄一閣下
拝啓　航空輸送会社創立ニ関スル小集会之件ニ係リ別紙写之通リ、本日貴名ヲ以テ夫々発状仕候ニ付御諒承置賜リ度、右要用奉得貴意候
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　敬具
（別紙）
（朱印）
（写）
拝啓仕候、陳者其後航空輸送会社創立事務之儀幸ニ逐次進捗致シ近々発起人総会ノ開催ヲモ仕度存候処、其以前ニ当リ発起人中数名ノ方之御集会ヲ願ヒ、左ノ件ニ就テ御意見相伺度候間、御多用中御迷惑トハ存候ヘ共来ル十日（火曜日）午前十一時三十分日本工業倶楽部迄御光来相煩度、此段御依頼申上候　敬具
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　追テ御来否同封葉書ニテ御一報願上候
　　昭和三年七月四日
　　　　　　　　　　　　東京駅前丸ビル三階
　　　　　　　　　　　　　　　航空輸送会社創立事務所
　　　　　　　　　　　　　　　　創立委員長
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　子爵　渋沢栄一
　子爵　渋沢栄一
　　　　井上準之助
　　　　団琢磨
　　　　木村久寿弥太
　男爵　郷誠之助　　　　　殿（各通）
　　　　大橋新太郎
　　　　橋本圭三郎
　　　　西野恵之助

　　　　　　左件
　一、会社創立趣意書
　二、起業目論見書
　三、定款
　四、株式ノ割当並ニ公募
　五、株式申込取扱銀行
　六、発起人総会開催日時
　　其他人事
　　　　　　　　　　以上
　追テ右一・二・三項ニ就テハ後便ヲ以テ案文御手許ニ差上可申候間予メ御覧置被下候ヘバ仕合ニ奉存候
　当日御集リ相願ヒ候ハ貴下ノ外
　　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　　　（此処ヘ御氏名入ル）
　ノ六氏ニ候
　　　○「航空輸送会社書類」綴込中ニ右別紙ト同文ノ草稿アリテ、「三、七、五子爵承認」ト加筆シ、栄一ノ印アル旨ヲ写シトリシモノアリ。
　　　　尚、栄一、昭和三年四月発病、静養シテ七月下旬ニ至リ恢復ス。

航空輸送会社書類　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（写）
　　　　　　　　　　　三、七、五、子爵承認栄一(印)
拝啓仕候、陳者予テ御配慮相煩候航空輸送会社設立ノ義ニ就テハ、目下事務所ヲ設ケソノ創立事務ヲ取急居候処、幸ニ逐次進捗致候ニ付近日発起人総会ヲ開キ候上、新会社株式ノ募集ニ着手仕度奉存候ニツキテハ、今春ノ臨時帝国議会ニ於テ議決サレ、当会社成立ノ上御交付可相成航空補助総金額並ニ其年度割額等明細承知仕置度、尚昨年貴大臣ヨリ起業目論見書等ニ就キ航空輸送会社設立準備調査委員会ヘ御諮問ノ砌、同会特別委員ニ於テ審議ノ節憂慮ノ余リ御諒解ヲ得候事項、即チ当会社ハ全ク創始ノ事業ニ属シ従テ準拠スベキ調査材料ニ乏シキニツキ、事業開始後目論見書中計上サレ居ル収入並支出ノ金額ニシテ、
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若シ万一其ノ如ク実行ヲ見ルニ至ラザル如キ場合ニ逢遇セバ、政府ハ大ニ考慮サレ援助方法ヲ講セラルベキ件ニ付テモ、此際今一応貴意承及置度奉存候間、聊カ蛇足ノ嫌ナキニ非サルカトハ存候ヘ共、愈新会社設立ニ着手ノ場合ニ付右得貴意度如此御座候　敬具
　　三年七月　日　　　　　　　　　　　　　　創立委員長名
　　　　逓信省航空局長宛
　　　○右ハ次掲ニヨレバ次ノ如ク訂正セラル。

航空輸送会社書類　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（朱印）　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渡辺）
(写)　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　(印)白石
拝啓仕候、陳者予テ御配慮相煩候航空輸送会社設立ノ義ニ就テハ、目下事務所ヲ設ケ其ノ創立事務ヲ取急キ居候処幸ニ逐次進捗致候ニ付近日発起人総会ヲ開キ候上、新会社株式ノ募集ニ着手仕度奉存候ニツキテハ、今春ノ特別議会ニ於テ議決サレ、当会社成立ノ上御交付可相成航空補助総金額並ニ其年度割額等予メ明細承知仕置度、尚昨年貴大臣ヨリ起業目論見書等ニ就キ航空輸送会社設立準備調査会ヘ御諮問ノ砌同会特別委員ニ於テ審議ノ節会社ノ将来ニ就キ御諒解ヲ得候事項ニ付キテモ、此際今一応貴意承及置度奉存候間、右二件得貴意度如斯ニ御座候　敬具
　　昭和三年七月九日
　　　　　　　　　　　　　東京駅前、丸ビル三階
　　　　　　　　　　　　　航空輸送会社創立事務所
　　　　　　　　　　　　　創立委員長
　　　　　　　　　　　　　　　子爵　渋沢栄一印
　　　逓信省
　　　　航空局長　柳谷酉三殿
（書入レ）
　備考　本書ハ去五月七日子爵承認セラレタル書面ヲ改正シタルモノニテ（改正ノ理由ハ西野氏ト柳谷局長ト本書面提出ニ関シ内議ノ節特ニ柳谷氏ヨリ前書面ニアル、憂慮ノ余リ御諒解ヲ得候事項以下ハ調査委員会議事録ニ明了ナルヲ以テ、特ニ記載ヲ省キテハ如何トノコトナリシ由）子爵ニモ同意セラレ、実印押捺西野氏ヨリ七月九日提出シタル次第ナリ明六
　　　○ココニ「五月七日」トアルハ、前掲資料ニヨレバ七月五日ノ誤リナリ。
　　　○尚、右ハ日付ヲ九日トナスモ、同文ノ他ノ写ニ七日トナシ、次掲航空局長ヨリノ回答ニモ七日トアリ。七日付ナルベシ。

航空輸送会社書類　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（朱印）
(写)
（謄写版）
空監第三八五号　　　　　昭和三年七月九日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　逓信省　航空局長
　　　航空輸送会社創立事務所
　　　　創立委員長　子爵渋沢栄一殿
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七月七日附ヲ以テ御照会ノ趣了承、右前段ニ関シテハ昭和三年五月十三日官報第四百八号、予算外国庫ノ負担トナルヘキ契約中航空輸送補助ノ項ニ就キ、又後段ニ関シテハ別冊航空輸送会社設立準備調査委員会報告書中第五特別委員長報告、並ニ第六逓信大臣諮問事項ニ対スル答申書ニ就キ御了知相成度此段及回答候也

航空輸送会社書類　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
拝啓　本日午前十一時半ヨリ工業倶楽部ニテ開催ノ当社発起人小集会ノ儀ハ団・木村・郷・大橋・橋本ノ五氏並小生出席、別紙朱書ノ通リ決議候間此段御報告申上候　匆々
　　昭和三年七月十日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　西野恵之助
　　　　子爵　渋沢栄一閣下
　　　○以下太字ハ朱書・傍線ノ部分ハ抹消シテ太字ノ如ク訂正シアリ。
（謄写版、別紙）
（表紙）
　（朱印）
　秘
　　　（議案第一号）
　　可決
　　　　　　　日本航空輸送株式会社設立趣意書

　　　　設立趣意書
天空ノ飛翺ハ太古以来、人類ノ断エサル熱望ニシテ、従来コレニ関スル幾多ノ研究ト計劃トガ繰返サレタルニ拘ラズ、容易ニソノ目的ヲ達スルコト能ハズ、空界ハ依然トシテ独リ鳥虫ノ翺翔スルニ任セラレタリシガ、千九百三年即チ今ヨリ約二十五年前ニ至リ、初メテ機関ヲ備ヘ、操縦士ヲ乗セタル航空機ノ劃時代的出現ヲ見ルニ至リ、爾来他ノ一般科学ノ進歩ト共ニ、年々ソノ発達ヲ遂ゲ、天空ノ征服ニ於テ人類ハ、ココニ漸クソノ目的ヲ達セントスルニ至リタリ。時、偶々世界大戦ノ起ルニ会シ、交戦列国ハ競フテ優越ナル飛行機ノ製出ニ努力シ、盛ニ軍事ニ使用シ、制空権ノ争奪ガ大戦ノ勝敗ヲ支配スルカ如キ著大ナル効果ヲ見ルニ至リタルハ、万人ノ認ムル所ニシテ、真ニ驚心駭目ニ値スルモノアリタリ。
戦後、機ヲ見ルニ敏ナル列国ハ、更ニコノ空界ノ最新利器ヲ応用シテ交通及ビ産業ノ発達ニ資センコトヲ期シ、相競フテ旅客・貨物、並ニ郵便物ノ輸送ニ供用セルヲ以テ、僅ニ七・八年ノ星霜ヲ経タルニ過ギザルモ、航空機ハ最モ優秀ナル交通機関タル効用ヲ発揮スルニ至リ、現今貨客・郵便物輸送上隔世的速達ノ成績ヲ示セル外、其統計ニ徴スルニ運航上ノ事故亦殆ンド稀少ナレバ、随テ是等保険率ノ如キニ於テモ最低率ヲ適用サレツヽアリ。
顧ミテ我国空界ノ現状ヲ見ルニ陸海軍ニアリテハ、夙ニ国防上ソノ研究ノ一日モ忽ニスベカラザルヲ認メ、コレガ発達ニ全力ヲ傾注サレツツアルヲ以テ、欧米先進国ニ比スルモ何等遜色アルヲ見ズ、民間航空
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界マタ熱心ナル努力ノ下ニ、数年前ヨリ或ハ新聞通信ノ上ニ、或ハ郵便飛行ニ、二・三ノ会社又ハ団体ニ於テ定期或ハ不定期ニコレガ利用ヲ見ツヽ《ナセルモ》アリ、然レドモ未ダ欧米先進諸国ノソレニ比シ多大ノ遜色アルノ状況ナリ、政府玆ニ見ル所アリ、航空輸送会社ヲ設立セシメ、之レニ補助金ヲ交付シ航空輸送ノ発達ヲ速進セントシ、昨年来航空輸送会社設立準備調査会ナルモノヲ設置シ、関係官民ヨリ委員ヲ定メ専ラ之レガ調査ヲ為シツヽ《進メタリ》アリシガ、今ヤ結了ヲ告ゲ、今春ノ特別議会マタ、今後十一年間ニ亘ル補助金約二千万円交付ノ議決ヲ為シタルヲ以テ、吾人ハ玆ニコレ等ヲ基礎トシテ新ニ日本航空輸送株式会社ヲ設立セントス。
想フニ航空界ハ、今日発達進歩ノ初頭ニアリテ、今後益々機械上ノ進歩ヲ為スト共ニ、コレガ操縦ノ技術モ、日ニ月ニ熟練ヲ加フルニ至ルベク、近キ将来ニ於テ更ニ長足ノ発達ヲ遂ゲ、益々完全ノ域ニ達スベキヤ逆睹スルニ難カラズ、本社ノ事業モ亦タ当初幾多ノ苦難ヲ経過スベキヤ勿論ナリト雖モ、将来ヲ想ヘバ、輸送路トシテハ、陸上・海上ノ輸送ニ比シテ、航空ノ輸送ハ一層平滑、安全且ツ確実ナルコトヲ一般ニ認識セラルヽノ日遠カラザルベキヲ以テ、社運ノ前途モマタ極メテ有望ナルベキヲ確信ス、翼《（冀）》クバ大方ノ諸君、吾人ノ微衷ヲ諒トセラレ、別冊起業目論見書・定款等御参照ノ上、本会社ノ創立ニ対シテ格別ノ御賛助ヲ与ヘラレンコトヲ切望ニ堪エザルナリ。
　　昭和三年七月
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　発起人（連名）
（謄写版、別冊一）
（表紙）
　（朱印）
　秘
　　　（議案第二号）
　　可決
　　　　　日本航空輸送株式会社　起業目論見書

　　　　日本航空輸送株式会社定期航空線図　○略ス
　　　○図中注記セル各地間飛行所要時間及ビ距離左ノ如シ。

　　　　　　　　　　　　　　　（飛行時間）　　　　（距離）
　　　　　一、東京大連線
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　キロ米
　　　　　　　　東京―大阪　　約二時間五十分　　　　四二五
　　　　　　　　大阪―福岡　　〃三時間二十分　　　　五〇〇
　　　　　　　　福岡―京城　　〃三時間四十分　　　　五五〇
　　　　　　　　京城―大連　　〃四時間　　　　　　　六〇〇
　　　　　　　　　計　　　　　〃十三時間五十分　二、〇七五
　　　　　一、大阪上海線
　　　　　　　　大阪―福岡　　〃三時間二十分　　　　五〇〇
　　　　　　　　福岡―上海　　〃六時間二十分　　　　九五〇
　　　　　　　　計　　　　　　〃九時間四十分　　一、四五〇

　　　　起業目論見書
一、昭和三年五月第五十五帝国議会ニ於テ、航空輸送補助ノ為メ昭和
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三年度以降十一ケ年度間ニ亘リ、総額金壱千九百九十七万円支給ノ件議決セラレ、本会社成立ノ上ハ之ガ全部ノ交付ヲ受クベキヲ以テ、コノ基礎ノ下ニ本会社ハ資本金壱千万円ヲ以テ航空機ニ依ル旅客・貨物及郵便物ノ輸送業等ヲ営ム為メ、初年度（昭和三年度、即チ三年四月ヨリ四年三月迄以下之ニ同ジ）ニ於テ会社ヲ設立シ《創立ヲナシ且諸般ノ設備ヲ整ヘ》、第二年度（昭和四年度）ヨリ定期航空ヲ開始スルモノトス
二、本会社ノ定期航空線路ハ東京大連線及大阪上海線ノ二トス
　（イ）東京大連線ハ其ノ起点ヲ東京トシ、大阪・福岡及京城ヲ寄航地トシ、大連ヲ終点トス
　（ロ）大阪上海線ハ其ノ起点ヲ大阪トシ、福岡ヲ寄航地トシ、上海ヲ終点トス
三、本会社ハ左ノ定期航空ヲ行フ
　
（イ）東京大連線
　　　　　　　　　　　第二年度　　　　　第三年度以降
　　東京大阪間　　　　一週十二往復　　　同上
　　大阪福岡間　　　　一週　六往復　　　同上
　　福岡京城間　　　　一週　三往復　　　一週　六往復
　　京城大連間　　　　一週　三往復　　　一週　六往復
　（ロ）大阪上海線
　　　　　　　　　　　第二年度　　　　　第三年度以降
　　大阪福岡間　　　　一週　三往復　　　一週　六往復
　　福岡上海間　　　　試験飛行　　　　　一週　三往復

四、本会社ハ内地・朝鮮・関東州ニ於テハ政府施設ノ飛行場、無線及有線ノ通信設備等ヲ利用シ、且ツ政府ヨリ気象其ノ他ノ情報ノ供給ヲ受ケ、上海ニ於テハ会社ニ於テ飛行場、無線並ニ有線通信ノ設備及気象観測所等ヲ設置スルモノトス
五、本会社ハ大要左ノ施設ヲ為スモノトス
　（イ）本社ヲ東京ニ、支所ヲ東京外五箇所ニ置ク
　（ロ）定期航空線路ノ起点・終点、及中間寄航地ノ各飛行場ニ事務所格納庫等ヲ設ク
　（ハ）完備飛行機約二十九機・予備発動機約三十四台、及之ヲ維持スル為メ飛行機並ニ発動機ノ部分品ヲ備フ
　（ニ）自働車・自働艇其ノ他ノ備品ヲ備フ
六、本会社ハ一切ノ設備ヲ初年度ニ於テ完備スルモノトス、但上海ニ於ケル設備及福岡ニ於ケル上海関係ノ設備ハ第二年度ニ、東京飛行場ニ於ケル設備ノ移転ハ第三年度ニ於テ之ヲ為スモノトス
　　本会社起業費並ニ其ノ支出年度別左ノ如シ
　　起業費総額　　　六、四二五、〇〇〇円
　　　　　此支出年度別

　　　　　　　　　　　　　初年度　　　　　　　　二年度　　　　　三年度　　　　　　　計
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　円　　　　　　　　　円　　　　　　　円　　　　　　　　　円
　各種建物建設費　　　　　九一四、〇〇〇　　　三三四、三〇〇　一三〇、五〇〇　一、三七八、八〇〇
　飛行機其他　　　　　三、三〇七、一〇〇　　　九六四、四〇〇　　　　―　　　　四、二七一、五〇〇
　営業用備品設備費
　自働車其ノ他ノ備品　　　二一七、〇五五　　　二三八、一四五　　　　―　　　　　　四五五、二〇〇
　雑費　　　　　　　　　　　　―　　　　　　　三一九、五〇〇　　　　―　　　　　　三一九、五〇〇
 - 第51巻 p.630 -ページ画像 
　　計　　　　　　　　四、四三八、一五五　一、八五六、三四五　一三〇、五〇〇　六、四二五、〇〇〇

七、本会社ノ創立費ハ金拾万円以内トス
八、本会社ノ株金払込時期及其ノ金額ハ左ノ通リトス

　　　初年度
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　円
　　　　　　十月上旬払込　一株ニ付拾弐円五拾銭宛　二、五〇〇、〇〇〇
　　　　　翌二月下旬払込　一株ニ付拾円宛　　　　　二、〇〇〇、〇〇〇
　　　　　　　　計　　　　　　　　　　　　　　　　四、五〇〇、〇〇〇
　　　　　第二年度
　　　　　　八月下旬払込　一株ニ付七円五拾銭宛　　一、五〇〇、〇〇〇
　　　　　翌二月下旬払込　一株ニ付五円宛　　　　　一、〇〇〇、〇〇〇
　　　　　　　　計　　　　　　　　　　　　　　　　二、五〇〇、〇〇〇
　　　合計　　　　　　　　一株ニ付参拾五円宛　　　七、〇〇〇、〇〇〇

九、本会社ノ経営スル航空線路ニ於テ、政府指定ノ郵便物ヲ輸送シ、之ニ対シ政府ヨリ報償トシテ飛行郵便附加料金ノ九割五分以内ニ相当スル金額ノ支給ヲ受クルモノトス
　　　　　　　　　　附、収支計算書

　　　　説明
一、本会社ノ資本金ヲ壱千万円トス
二、払込資本ハ左記ノ如ク払込ムモノトス

　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　円
　　　第一回　初年度　十月上旬　　　　二、五〇〇、〇〇〇
　　　第二回　同　　　翌二月下旬　　　二、〇〇〇、〇〇〇
　　　第三回　二年度　八月下旬　　　　一、五〇〇、〇〇〇
　　　第四回　同　　　翌二月下旬　　　一、〇〇〇、〇〇〇
　　　　　計　　　　　　　　　　　　　七、〇〇〇、〇〇〇

三、営業収入ハ郵便物航送料交付金・旅客運賃及貨物運賃収入ヲ計上ス、但シ初年度ハ事業未開始ニ付利子収入ノミヲ計上ス
　　郵便物航送料交付金ハ郵便特別附加料金ノ百分ノ九十五ヲ交付セラルルモノトシテ計上ス
四、政府補助金ハ昭和三年五月ノ第五十五帝国議会ニ於テ、航空輸送補助ノ為メ、昭和三年度以降十一ケ年度間ニ亘リ総額金壱千九百九拾七万円支給ノ件議決セラレ、本会社成立ノ上ハ之レガ全部ノ交付ヲ受クベキヲ以テ、此年度割金額其儘計上ス
五、支出ハ左ノ経費ヲ計上ス
　　（イ）本社費
　　　　　給料・使用人賞与・事務用経費・登録税及不動産登記料等
　　（ロ）飛行場及市内営業所費
　　　　　給料・使用人賞与・事務用経費・建物各所修繕及模様替費・各種減価償却金・機体発動機及事故機補充費・使用飛行機維持費・自働車及自働艇維持費・各種消耗品費・事故救済基金借地借家料等
六、税金ハ所得税・営業収益税及其他附加税ヲ計上ス
七、法定積立金ハ繰越金ノ内ヨリ積立ツ《前表繰越金中ニ包含ス》ルモノトス
 - 第51巻 p.632 -ページ画像 
（謄写版、別冊二）
（表紙）
　（朱印）
　秘
　　（議案第参号）
　　　可決
　　　　　　日本航空輸送株式会社　定款

　　　　定款
　　　　　　第一章　総則
第一条　本会社ハ日本航空輸送株式会社ト称ス
第二条　本会社ハ航空輸送、其ノ他航空ニ関スル業務及之ニ附帯スル業務ヲ営ムヲ以テ目的トス
　　　　本会社ハ逓信大臣ノ認可ヲ受ケ前項ニ掲クル事業ニ対シ投資ヲ為スコトヲ得
第三条　本会社ノ資本総額ハ金壱千万円トス
第四条　本会社ハ本店ヲ東京市ニ置ク
第五条　本会社ノ存立期間ハ設立登記ノ日ヨリ五十年トス
第六条　本会社ノ公告ハ官報及本店ノ所轄裁判所カ商業登記事項ノ公告ヲ掲載セシムル新聞紙ヲ以テ之ヲ為ス
　　　　　　第二章　株式
第七条　本会社ノ株式ハ弐拾万株トシ、一株ノ金額ヲ金五拾円トス
第八条　本会社ノ株券ハ記名式トシ壱株券・拾株券・五拾株券及百株券ノ四種トス
第九条　本会社ノ株式ハ政府、公共団体、帝国臣民、又ハ帝国法令ニ依リテ設立シタル法人ニシテ其ノ議決権ノ過半数カ外国人又ハ外国法人ニ属セサルモノニ限リ、之ヲ所有スルコトヲ得
　　　　本会社ノ株主タル帝国法人ハ其ノ議決権ノ過半数カ外国人又ハ外国法人ニ属スルニ至ルヘキトキハ遅滞ナク其ノ旨ヲ本会社ニ通知シ、且其ノ所有スル本会社ノ株式ヲ前項ノ資格ヲ有スルモノニ譲渡スコトヲ要ス、若シ其ノ株式ヲ譲渡ササルトキハ本会社之ヲ売却ス
　　　　前項ノ売却ニ因リテ得タル金額ハ其ノ費用ヲ控除シ残額ヲ前項ノ法人ニ交付ス
　　　　前二項ノ規定ニ依リ譲渡サレタル株式ニ付テハ第十七条《八》ノ規定ニ拘ラス其ノ名義ノ書換ヲ為スコトヲ得
第十条　株金ノ払込ハ第一回ノ払込金額ヲ一株ニ付金拾弐円五拾銭トシ、第二回以後ノ払込金額並其ノ払込ノ期日及方法ハ取締役会ノ決議ヲ以テ之ヲ定ム
第十一条　株金ノ払込ヲ遅滞シタル者ハ、其ノ払込期日ノ翌日ヨリ払込当日迄金百円ニ付一日金四銭ノ割合ヲ以テ延滞利息ヲ支払ヒ且其ノ他遅滞ニ因リテ生シタル損害アラハ之ヲ賠償スヘシ《フヘシ》
第十二条　株式ヲ譲受ケタル者ハ本会社所定ノ名義書換請求書ニ株券ヲ添ヘ之ヲ提出スヘシ、但シ本会社必要ト認ムルトキハ第八《九》
 - 第51巻 p.633 -ページ画像 
条第一項ノ資格ヲ証明スヘキ書類ノ提出ヲ求ムルコトアルヘシ、相続・遺贈其ノ他ノ事由ニ因リテ株式名義ノ書換ヲ要スルトキハ、本会社ノ必要ト認ムル証明書ヲ添ヘ前項ニ準シテ名義書換ヲ請求スヘシ
第十三条　株券ヲ喪失シタル者新株券ノ交付ヲ受ケムトスルトキハ、本会社所定ノ請求書ニ本会社ノ相当ト認ムル保証人二名以上連署ノ上之ヲ提出スヘシ
　　　　本会社前項ノ規定ニ依ル請求ヲ受ケタルトキハ請求者ノ費用ヲ以テ其ノ旨ヲ公告シ、其ノ最終ノ公告ノ日ヨリ三十日内ニ故障ヲ申出テタル者ナキトキニ限リ新株券ヲ交付ス
第十四条　株券ノ毀損又ハ種類変更ノ為新株券ノ交付ヲ受ケムトスル者ハ、本会社所定ノ請求書ニ旧株券ヲ添ヘ之ヲ提出スヘシ
第十五条　株式名義書換ノ手数料ハ株券一通ニ付金拾銭トシ、前二条ノ規定ニ依ル新株券交付ノ手数料ハ一通ニ付金五拾銭トス
第十六条　株主及其ノ法定代理人ハ本会社所定ノ書式ニ依リ其ノ氏名住所及印鑑ヲ届出ツヘシ、之ニ変更アリタルトキ亦同シ
　　　　法定代理人前項ノ届出ヲ為ストキハ其ノ資格ヲ証スヘキ書面ヲ添付スヘシ
第十七条　外国ニ住所ヲ有スル株主ハ帝国領土内ニ仮住所ヲ定メ之ヲ届出ツヘシ
　　　　前項ノ届出ヲ為ササル者ニ対スル通知又ハ催告ハ他ノ株主ニ対スルモノト同時ニ之ヲ発スルヲ以テ足ル
第十八条　本会社ハ定時株主総会終了ノ日迄三十日以内ノ期間株式ノ譲渡ニ因ル名義ノ書換ヲ停止ス
　　　　前項ノ場合ヲ除クノ外株式名義書換停止ノ必要アルトキハ予メ其ノ旨公告ス
　　　　　　第三章　株主総会
第十九条　本会社ノ定時株主総会ハ毎年五月及十一月之ヲ招集ス
第二十条　株主総会ノ議長ハ社長ヲ以テ之ニ充ツ、社長事故アルトキハ常務取締役之ニ代ハリ、常務取締役事故アルトキハ取締役ノ一人之ニ代ハル
第二十一条　株主総会ノ決議ハ法令ニ別段ノ定アル場合ヲ除クノ外出席株主ノ議決権ノ過半数ヲ以テ之ヲ為シ、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第二十二条　株主又ハ其ノ法定代理人ハ他ノ株主ニ委任シテ其ノ議決権ヲ行フコトヲ得、但シ本会社所定ノ委任状ヲ以テ其ノ代理権ヲ証スヘシ
第二十三条　本会社ノ定款ノ変更、社債ノ募集、合併及解散ノ決議ハ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第二十四条　株主総会ニ於テ決議シタル事項ハ之ヲ議事録ニ記載シ、議長及出席株主二名以上署名捺印スヘシ
　　　　　　第四章　取締役及監査役
第二十五条　本会社ニ取締役七名以内及監査役三名以内ヲ置ク
　　　　取締役及監査役ハ三百株以上ノ株主中ヨリ株主総会ニ於テ之
 - 第51巻 p.634 -ページ画像 
ヲ選挙ス
第二十六条　取締役及監査役ノ選任及解任ノ決議ハ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第二十七条　取締役ノ任期ハ三年トシ、監査役ノ任期ハ二年トス、但シ補欠又ハ増員ニ因リテ就任シタル取締役又ハ監査役ノ任期ハ其ノ前任者又ハ従来ノ在任者ノ残任期間トス
　　　　取締役又ハ監査役ノ任期カ任期中最終ノ決算期ニ関スル定時株主総会ノ期日前ニ満了スルトキハ、其ノ総会終結ニ至ル迄之ヲ伸長ス
第二十八条　取締役ハ其ノ互選ヲ以テ社長一名、常務取締役若干名ヲ互選シ、逓信大臣ノ認可ヲ受クルモノトス
第二十九条　社長ハ本会社ヲ代表シ、取締役会ノ議長ト為リ、本会社一切ノ業務ヲ統理ス
　　　　常務取締役ハ社長ヲ補佐シテ本会社ノ業務ヲ掌理シ、社長事故アルトキハ之ヲ代理ス
第三十条　取締役ハ在任中其ノ所有ノ本会社株券三百株ヲ監査役ニ供託スヘシ、其ノ株式ハ取締役退任ノ場合ニ於テ其ノ在任中ノ計算書類ニ付株主総会ノ承認アリタルトキ之ヲ返還ス
第三十一条　取締役会ハ取締役ヲ以テ組織シ重要ナル業務ヲ決議ス
　　　　取締役会ハ社長之ヲ招集シ、其ノ決議ハ出席取締役ノ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
　　　　　　第五章　計算
第三十二条　本会社ノ営業年度ハ毎年四月一日ヨリ九月三十日迄、及十月一日ヨリ翌年三月三十一日迄トス
第三十三条　毎営業年度ニ於ケル総収入金中ヨリ営業上ノ諸経費・損失及器具・機械・建物ノ減価償却ヲ控除シタル残額ヲ以テ本会社ノ利益金トス
第三十四条　本会社ノ利益金ノ処分ノ決議ハ逓信大臣ノ認可ヲ受クルニ非サレハ其ノ効力ヲ生セス
第三十五条　本会社ノ株主配当金ハ毎年四月三十日及十月三十一日現在ノ株主ニ之ヲ支払フ
　　　　株主配当金ノ支払ヲ請求セスシテ二年ヲ経過シタルトキハ其ノ配当金ハ本会社ニ帰属ス
　　　　　　附則
第三十六条　本会社ノ第一次営業年度ハ創立総会終了ノ日ヨリ昭和四年三月三十一日迄トシ、昭和三年十一月ニハ定時総会ヲ招集セス
第三十七条　本会社ノ負担ニ帰スヘキ設立費用ハ金拾万円以内トス
第三十八条　本会社発起人ノ氏名住所左ノ如シ

（朱印）
秘
議案第四号
　　　　株式ノ割当並ニ公募ノ件
総株数弐拾万株ノ募集ハ左ノ方法ニ拠リタシ
 - 第51巻 p.635 -ページ画像 
　一拾万株　発起人及賛成人ニテ引受総高
　　　内
　　　参万弐千株　　発起人三十二名ニテ引受　各壱千株宛
　　　四万株　　　　賛成人三井八郎右衛門氏・岩崎小弥太氏・安田善次郎氏及住友吉左衛門氏ヘ割当ノ総合高
　　　弐万八千株　　賛成人大倉喜七郎氏、川崎八右衛門氏・原邦造氏其他三・四十名（大阪・名古屋ノ分ヲ含ミ）ノ方ニ割当ツベキ合計高
　一拾万株　　　　　公募株総高
　　　　　　　以上
　　　（朱書）
　　　右ハ公募株数十万株ヲ十二万株ニ増加シ、而シテ賛成人四名ノ持株四万株ヲ三万株ニ、又其他ノ賛成人持株二万八千株ヲ一万八千株ニ減シタル上可決ス
議案第五号
　　　　株式申込取扱銀行ノ件
東京　　　　　三井・三菱・安田・第一・川崎第百
大阪　　　　　住友・三十四・山口・鴻池・野村
名古屋　　　　愛知・名古屋・明治
　　　　　　以上十三行ノ本支店
　右可決
議案第六号
　発起人総会ハ本月二十日（金曜日）午前十一時、日本工業倶楽部ニテ開クコト
　右可決
議案第七号
　　　　　　雑件
（一）政府補助金ノ件並ニ開業後万一収支齟齬ノ場合ニ対スル件ニツキ創立委員長ト逓信省航空局長トノ間ニ交換シタル文書ノコト
　　右承認
（二）発起人ハ別表○後掲ノ通リ定ムルコト
　　右承認
（三）公募株申込証拠金ハ一株ニ付金弐円五拾銭トスルコト
　　右承認
（四）同申込ハ拾株以上トシ且又其単位ヲ拾株トスルコト
　　右承認
（五）同申込期限中ト雖モ申込超過ノ虞アル時ハ期限中何時ニテモ締切ル場合アルベキコトヲ募集規程ニ定メ置クコト
　　右承認
（六）社名ヲ帝国航空輸送株式会社トセン説アリ如何
　　本件ハ矢張リ日本航空輸送株式会社トスル事
（七）社紋ヲ左ノ通リ定メタシ
　　　富士山ニ羽衣天人
　　右可決

航空輸送会社書類　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（写）
 - 第51巻 p.636 -ページ画像 
　　　　発起人総会開催通知状案
　　　　　　　　　　　栄一　(印)
拝啓　予テ御配慮相煩居候航空輸送会社創立事務之義、逐次進捗候ニ付テハ左記ノ通リ発起人総会相催度、暑中御迷惑トハ存候ヘ共何卒御繰合御出席被成下度此段得貴意候　草々敬具
　　昭和三年七月十二日　　航空輸送会社
　　　　　　　　　　　　　　創立委員長　子爵渋沢栄一
　　　　発起人　　　　　　殿
　追テ御出否同封端書○略スニテ折返シ御回報被下度候、尚当日ノ議案ニ有之候定款議決相成候上ハ発起人御一同ノ署名ヲ要スベクニ付、若シ御差支ニテ当日御欠席ノ御方ハ右署名ニ対スル同封委任状○略ス　御郵送置被下候ヘバ仕合ニ奉存候
　　　　　　発起人総会
一開催日時　　来七月二十日（金曜日）午前十一時
一同　場所　　東京駅前　日本工業倶楽部
一同　議案
　　第一　　設立趣意書
　　第二　　起業目論見書
　　第三　　定款
　　第四　　発起人及賛成人ノ引受株並ニ公募株
　　　　　　　　以上
　　　　（尚ホ別封書面ニテ議案ノ詳細差上候間御覧置被下度候）

航空輸送会社書類　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
（謄写版）
　　　　発起人住所氏名
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　創立委員長
　東京市麹町区永楽町二丁目一番地　　　　　　　子爵　渋沢栄一
　東京市麻布区三河台町三十一番地　　　　　　　　　　井上準之助
　大阪市南区順慶町二丁目五十一番地　　　　　　　　　稲畑勝太郎
　京都市竹屋町通猪熊東入仲之町五百十九番地　　　　　稲垣恒吉
　東京市麻布区富士見町十七番地　　　　　　　　　　　井坂孝
　名古屋市西区茶屋町三丁目三番地　　　　　　　　　　伊藤次郎左衛門
　東京府豊多摩郡大久保町大字西大久保三百五十三番地　橋本圭三郎
　横浜市弁天通三丁目五十番地　　　　　　　　　　　　原富太郎
　東京市京橋区銀座四丁目八番地　　　　　　　　　　　服部金太郎
　東京市芝区白金三光町四百六十四番地　　　　　　　　西野恵之助
　東京市麹町区上六番町四十三番地　　　　　　　　　　大橋新太郎
　東京府北豊島郡滝野川町字中里三百六十七番地　　　　大川平三郎
　神戸市東須磨字東細沢十五番地　　　　　　　　　　　川西清兵衛
　東京市赤坂区新坂町三十番地　　　　　　　　　　　　門野重九郎
　神戸市中山手通六丁目四十番地　　　　　　　　　　　鹿島房次郎
　東京府豊多摩郡千駄ケ谷町大字原宿三百四十四番地　　団琢磨
　東京府荏原郡上目黒大阪上五百五番地　　　　　　　　津村重舎
 - 第51巻 p.637 -ページ画像 
　東京市赤坂区青山南町六丁目百十五番地　　　　　　　根津嘉一郎
　大阪市東区備後町二丁目二十一番地　　　　　　　　　野村徳七
　東京市麻布区北日ケ窪町四十六番地　　　　　　　　　馬越恭平
　大阪市北区網島町四十番地　　　　　　　　　　男爵　藤田平太郎
　東京市芝区白金今里町十四番地　　　　　　　　　　　藤山雷太
　東京府荏原郡荏原町下蛇窪五百七十五番地　　　　　　藤田謙一
　東京市麹町区上二番町二十八番地　　　　　　　男爵　郷誠之助
　東京市芝区田町五丁目十六番地　　　　　　　　　　　浅野総一郎
　大阪市天王寺区小宮町十番地　　　　　　　　　　　　喜多又蔵
　東京市牛込区弁天町七十六番地　　　　　　　　　　　木村久寿弥太
　兵庫県武庫郡本庄村字深江百十六番地　　　　　　　　湯川寛吉
　東京市麻布区永坂町六十一番地　　　　　　　　　　　結城豊太郎
　神戸市兵庫住吉町堂本壱千八百二十四番地　　　　　　弘世助太郎
　東京市芝区高輪南町三十三番地　　　　　　　　男爵　森村市左衛門
　東京府豊多摩郡中野町桐ケ谷千百二十二番地　　　　　鈴木恒三郎
　　　　　　　　　　　　以上　三十二氏
　　　○以上ノ外発起人トシテ小倉常吉・最所文二ヲ加フ。

（増田明六）日誌　昭和三年　　　　　　　　（増田正純氏所蔵）
七月廿日　金　雨　　　　　　　　　　　　　　　　　出勤
朝飛鳥山邸に子爵拝訪、航空輸送会社設立事務の状況を御報告し、且同社引受株数を壱千株と決定を受け、事務処に出勤す
午後左記諸氏の来訪に接した
○中略
2宇和川武夫氏　航空輸送会社の発起人総会で決定した定款と引受株式申込書ニ子爵の御調印を請度との事
○下略