デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

2章 交通・通信
4節 通信
1款 日本無線電信株式会社
■綱文

第52巻 p.38-42(DK520005k) ページ画像

大正12年7月27日(1923年)

是日、総理大臣加藤友三郎、官邸ニ栄一外三十余名ノ実業家ヲ招キテ午餐会ヲ開キ、逓信大臣前田利定ト共ニ挨拶ヲナシ、国際無線電信事業民営ニ関シ条件付キ許可ノ方針ヲ表明ス。栄一答辞ヲ述ブ。引続キ協議会開カレ、新タニ当会社創立ヲ決シ、栄一、創立委員選任ヲ委嘱セラル。


■資料

日本無線電信会社創立書類(DK520005k-0001)
第52巻 p.38-40 ページ画像

日本無線電信会社創立書類         (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
  ○国際無線電信事業民営ニ関シ加藤内閣時代
   国策トシテ決定シタル事項
      目次
第一、閣議決定事項
  一、民設国際無線電信ニ関スル件(大正拾弐年七月弐日)
第二、大正十二年七月二十七日首相官邸ヘ実業家招待ノ席上政府ノ方針ヲ声明シタルモノ
  二、加藤内閣総理大臣ノ挨拶
  三、前田逓信大臣ノ挨拶

    一、民設国際無線電信ニ関スル件
                   (大正拾弐年七月弐日)
通信機関ハ公利公益ヲ目的トシ、国利民福ノ増進、国防ノ遂行ニ密接ナル関係ヲ有スルモノナルヲ以テ、之レカ施設経営ハ国営ト為スコト最モ適当ナルヘシ、然レトモ国際無線電信ハ其ノ通信ノ受付・配達及機械上ノ伝送等実際ノ運行ヲ政府ニ於テ掌理スルニ於テハ、其ノ施設ノ創設・改良・維持及単純ナル機械ノ運転ハ、必スシモ常ニ政府ニ於テ専ラ掌理セスシテ民営ニ委ヌルモ不可ナカルヘシ、殊ニ国際無線電信ハ時宜ニ依リ民営ノモノヲ設ルニ於テハ、国外ニ於ケル本邦系無線電信ノ発展ヲ計リ、且ツ外国無線電信会社トノ連絡上便宜ヲ得ルコトアリ、又一面ニ於テハ多額ノ経費ヲ要スヘキ国際無線電信設備ノ創設費ニ民間ノ資金ヲ利用シ、国際無線電信設備ノ完備ヲ速ナラシムル便宜アルヘシ
無線電信ニ関スル技術ノ現在進歩ノ程度ニ於テハ、総テ中央電信局ニ於テ直接操縦スルヲ得ルヲ以テ、現今通信系統上仮令設備ハ民営トスルモ、之レカ通信ノ機上伝送及受付・配達等実際ノ運行ハ、政府ニ於テ直接之ヲ経営スル方寧ロ便宜且経済的ナリ
以上述フル所ノ理由ニ依リ、民設国際無線電信ニ関シ左記ノ方針ヲ以
 - 第52巻 p.39 -ページ画像 
テ、必要ナル法律案及予算外国庫負担契約案等ヲ次期議会ニ提出シ得ル様、其ノ準備ニ着手スルコトヽ致候
(一)無線電信及無線電話ハ原則トシテ政府ニ於テ掌理スル従来ノ主義ヲ変更スル次第ニハアラサレ共、将来計画建設セラルヘキ国際無線電信ニ付テハ、実況ニ応シ其ノ建設・改良及其ノ設備ノ維持併ニ機械ノ運転ニ限リ、之ヲ民営ニ委ヌルコトアルヘキコト
(二)通信ノ受付・配達及機械上ノ伝送等実際上ノ運行ハ政府之ヲ掌理スルコト
(三)民営許可ノ場合ニハ、其ノ設計及交信ニ関シ政府ハ統一的計画ニ基キ指示スルコト
(四)民営事業ハ単ニ本邦ニ於ケル国際無線電信ノ建設及維持ヲ為スノミナラス、必要アル場合ニハ国外ニ於ケル大無線電信ノ建設及運用ヲ為シ、且無線電信電話機器ノ製作・販売及其ノ研究・試作等ヲモ為スコトヲ目的ト為サシメ、政府ハ之レカ保護助長ヲ努ムルコト
(五)採算上已ムヲ得サル場合ニ於テハ、民営事業ニ対シ補助金ヲ給与スルコトアルヘキコト
(六)一定ノ年限経過後ニ於テハ、実費ヲ以テ民設無線電信ヲ政府ニ於テ買収シ得ルノ条件ヲ付シ置クコト
    二、加藤内閣総理大臣挨拶
                 大正十二年七月廿七日
                 首相官邸午餐会席上ニ於テ
惟フニ通信機関ノ設備経営ハ其性質上国営トナスコト最モ適当テアロウカ、国際的ノ無線電信ノ建設等ニツイテハ、適当条件ノ下ニ之ヲ民営ニ委シ得ル部分モアルヘシト考フ、殊ニ国際無線電信ハ場合ニヨリ民営ノモノヲ設クルニ於テハ、外国無線電信会社トノ聯絡上便宜ヲ得ルコトモアリ得ヘク、又一面ニ於テハ多額ノ経費ヲ要スヘキ国際無線電信設備ノ創設費ニ、民間ノ資金ヲ容レ、国際無線通信設備ノ完備ヲ速ナラシムルコトハ応急ノ一方法タルコトヲ認ム
右様ノ見地ヨリシテ政府ニ於テハ、若シ民間ニ於テ国際無線電信ノ設備ヲ企画シ、政府ノ認容シ得ル条件ノ下ニ経営セントスルニ於テハ之ヲ許可シ、又之ニ対シ必要アル場合ニ於テハ、相当ノ補助ヲ為スコトモ亦不可ナラスト考ヘテ居ル
尤モ斯ノ如キ事項ハ、議会ノ協賛ヲ経テ初メテ之カ実行ヲ期シ得ルモノナルコトハ勿論テアル
承ル所ニ拠レハ諸君ノ中ニモ此ノ点ニツキ予テ攻究セラルヽ所アリ、或ハ政府ノ考フル所ト略同様ノ御見解ヲ有セラルヽヤニ推察スルカ故ニ、幸ヒ本日御会合ノ席上ニ於テ右政府ノ所見ヲ申述ヘテ、諸君ノ御参考ニ資セントスル次第テアル。

    三、前田逓相挨拶
                 前同日、同席上
本邦対外通信設備ノ現況ハ、之ヲ英米仏等ノ諸外国ニ比シ酷タ遜色アリ、故ニ対外通信聯絡ノ増設ヲ要スル蓋シ今日ヨリ急ナルハナイ、ヨツテ政府ニ於テハ対外通信疎通ノ関係並ビニ国際的協調ノ趨勢ニ鑑ミ
 - 第52巻 p.40 -ページ画像 
且財政ノ実状ニ顧ミ種々審議考量ノ結果、元来通信機関ノ施設経営ハ性質上国営トナスコト最モ適当ナルカ故ニ、原則トシテ政府ニ於テ之ヲ掌理スル従来ノ主義ヲ変更スルノテハナイカ、国際無線電信ハソノ通信ノ受付・配達及ビ機械上ノ伝送等実際ノ運行ヲ、政府ニ於テ掌理スルニ於テハ、其建設等ハ之ヲ民営ニ委ヌルモ不可ナカルヘク、適当ナル条件ノ下ニ民営ヲ許ス方針ヲ採ラントスルニ至ツタ次第ニシテ、コノ際政府ニ於テ適当ナリト考フル条件ノ梗概ヲ説明スレハ
 第一、民営ニ許サルヘキ範囲テアルカ、通信ノ受付・配達及ビ機械上ノ伝送等実際上ノ運行ハ政府ニ於テ之レヲ掌理シ、ソノ他ノ建設・改良及ビ其設備ノ維持並ニ機械ノ運転等ハ之ヲ民営ニ委ネルコトカ出来ル
 第二、設計及ビ交信ニ関スルコトテ、コノ点ハ政府ニ於テモ統一的計画ニ基キ適当ニ指示スル所カアルヘク
 第三、民営ノ設備買収ノ点ニシテ、一定ノ年限経過後ニ於テハ実費ヲ以テ政府ニ買収スル条件ヲ附スル必要カアル
 第四、補助ノ事テ、コノ点ニツイテハ採算上是非必要ナリトセハ相当ノ補助ヲ支給スルコト亦已ムヲ得マイト考ヘテ居ル、其他必要アル場合ニハ会社事業トシテ国外ニ於ケル大無線電信ノ建設・運用ヲナシ、又ハ無線電信電話機器ノ製作・販売及ビ其研究・試作等ヲモ兼ネ行ヘハ更ニ可ナリト思惟スル。(了)


中外商業新報 第一三四三四号大正一二年七月二八日 無線電信に対する政府の方針一変 首相有力実業家を招待し民営許可の内意を開陳す(DK520005k-0002)
第52巻 p.40-42 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

中外商業新報 第一三四四五号大正一二年八月八日 対外無電会社創立委員 渋沢子推薦(DK520005k-0003)
第52巻 p.42 ページ画像

中外商業新報 第一三四四五号大正一二年八月八日
    対外無電会社
      創立委員
        渋沢子推薦
対外無線電信の民間に於ける施設に関しては曩に首相官邸に於ける懇談会の後引続き発起人会を開き、創立委員の人選を渋沢子爵にその銓衡を一任して居たが、同子は左の如く正式に創立委員として推薦した
 伊東米治郎・岩原謙三・井坂孝・東郷安・門野重九郎・中田錦吉・中島久万吉・内田嘉吉・串田万蔵・松方乙彦・藤瀬政治郎・藤田平太郎・結城豊太郎


日本無線電信会社創立書類(DK520005k-0004)
第52巻 p.42 ページ画像

日本無線電信会社創立書類         (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
                (大正拾弐年八月拾九日)
    ○創立事務の根本方針
(第一案)会社を成立せしめ、政府より条件附の命令書を得置けば、政府の方針の改変を予防し得る事
(第二案)会社の成立は之を他日ニ期し、単に願書を提出して命令書丈けを得置く事
(第三案)従来の日米電信会社通り、単に時期到来迄(即ち議会終了迄)現状のまゝにて進行するか
 以上三案中第二案を最も可能ありと信ず