デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
1節 綿業
4款 インド国綿糸布輸入関税引上問題
■綱文

第52巻 p.279-285(DK520021k) ページ画像

昭和5年11月5日(1930年)

是ヨリ先、国際聯盟協会ハインド国綿糸布輸入関税引上問題ニツキ之ガ阻止ニ努ム。是日栄一、同協会会長トシテ、該問題ニ関シ相互懇談ノタメ、丸ノ内中央亭ニ於テ同協会経済委員会委員ト、来日中ノイギリス国経済使節一行トノ茶話会ヲ催ス。


■資料

国際メール 第五四号・第六丁昭和五年三月一〇日 印度綿布引上問題《(関税脱)》と協会経済委員会決議(DK520021k-0001)
第52巻 p.279 ページ画像

国際メール 第五四号・第六丁昭和五年三月一〇日
(謄写版)
    ○印度綿布引上問題《(関税脱)》と
     協会経済委員会決議
 国際聯盟協会では、三月七日午後五時より協会事務所に第十四回経済委員会を開き、先づ若松委員及び宮島清次郎氏の時局問題に関する説明ありたる後、左記決議を可決した。
 「決議」=印度の綿布関税引上案の内容は全体として国際経済会議の勧告に反するものである。又そのうち英国品を除外し、他国品にのみ五分の差別的附加税を課せんとし、殊に生地綿布に対して一ポンド最低三アンナ半の税率を課せんとすることは事実上我国産品の輸入を禁止せんとするものであつて、之は日印通商条約第一条に違反すると認めらるゝのみならず、関税休戦条約の論議せらるゝ今日誠に遺憾に堪へない。故に本会は此際断乎として印度の関税引上げ殊に差別的関税の賦課に反対するものである。
   ○右決議文ハ「国際知識」第一〇巻第四号(昭和五年四月)ニモ掲載セラル。


国際メール 第五六号・第一一丁昭和五年四月一〇日 印度関税引上抗議の協会電報(DK520021k-0002)
第52巻 p.279-280 ページ画像

国際メール 第五六号・第一一丁昭和五年四月一〇日
(謄写版)
 - 第52巻 p.280 -ページ画像 
    ○印度関税引上抗議の協会電報
 印度政府が綿布関税を引上げ其他我国商品に対し差別待遇を与へんとするに対し、本協会○国際聯盟協会 は経済委員会の決議に基き、印度政府に対する抗議をボムベイ商業会議所宛打電せる処、同会議所書記長サリヴアン氏署名の翌十三日附書面を以て右電報接受を確認し来つた。


国際聯盟協会書類(五) 【写 昭和五年十月二十八日】(DK520021k-0003)
第52巻 p.280 ページ画像

国際聯盟協会書類(五)         (渋沢子爵家所蔵)

  昭和五年十月二十八日
                   国際聯盟協会々長
                      渋沢栄一
拝啓 秋冷の候愈御清適奉賀候、陳者英国経済使節の本邦来訪に際し本協会経済委員会と同使節一行との懇談の為、来る十一月五日午後四時より丸ノ内中央亭本店に於て茶話会相催候に就ては、御繁用中乍恐縮同刻御来臨被成下度、此段御案内申上候 敬具


集会日時通知表 昭和五年(DK520021k-0004)
第52巻 p.280 ページ画像

集会日時通知表 昭和五年        (渋沢子爵家所蔵)
十一月五日 水 正午   国際聯盟協会理事会(同会事務所)活動写真ノ撮影アリ
        午後四時 国際聯盟協会催英国経済使節招待懇談会(丸ノ内中央亭本店)


竜門雑誌 第五〇七号・第八一頁昭和五年一二月 青淵先生動静大要(DK520021k-0005)
第52巻 p.280 ページ画像

竜門雑誌 第五〇七号・第八一頁昭和五年一二月
    青淵先生動静大要
      十一月中
五日 国際聯盟協会理事会(同会)同会主催英国経済使節招待懇談会(丸ノ内中央亭)
   ○栄一右理事会ニハ出席シタルモ、懇談会ヘノ出欠ハ明瞭ナラズ。


社団法人国際聯盟協会会務報告 昭和五年度 同協会編 第二五頁昭和六年五月刊(DK520021k-0006)
第52巻 p.280 ページ画像

社団法人国際聯盟協会会務報告 昭和五年度 同協会編 第二五頁昭和六年五月刊
 ○五、委員会
    ○経済委員会
○上略
第二十三回 十一月五日、丸ノ内中央亭にて、本協会理事をも交へて英国経済使節と懇談す。
○下略


国際メール 第七〇号・第七丁昭和五年一一月一〇日 英国経済使節懇談会(DK520021k-0007)
第52巻 p.280-281 ページ画像

国際メール 第七〇号・第七丁昭和五年一一月一〇日
(謄写版)
    ○英国経済使節懇談会
 本協会主催の英国使節懇談会は去る十一月五日午後四時より中央亭に開催、使節側より団長トンプソン卿を初め九名の出席あり、邦人側より阪谷男・山川博士・神川教授・宮岡氏・田村氏・山田博士・頭本氏其他にて二十五名の出席あり、阪谷男開会の辞を述べ、ワイルド氏
 - 第52巻 p.281 -ページ画像 
団長に代りて謝辞を述ぶ、次で双方より発言者を指名し、大要左の如き意見が交換された。
○下略


国際聯盟協会書類(五) 【(謄写版) 経済委員会書類第百十六号(昭和五年十一月一日)】(DK520021k-0008)
第52巻 p.281-282 ページ画像

国際聯盟協会書類(五)         (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
 経済委員会書類第百十六号(昭和五年十一月一日)
    英国経済使節に対する覚書
英国経済界の有力者から成る極東経済使節一行が政府の命を受け、英日、英支間の貿易状態を調査し、併せてその改善を図る手段を講究する目的を以て今般我国に来訪せられたるに際し、我日本国際聯盟協会経済委員会が同使節一行を迎へて本日玆に相会し、諸般の経済問題に関し互に腹蔵なき意見を交換する機会を得たのは、我等の最も欣快とするところである。我等は英国経済使節一行が長途数ケ月間の視察中幸ひ健康に恵まれ、よくその使命を全うせられんことを切望する。
我が経済委員会は英国経済使節の本邦来訪の報に接し、こは我国と英国との経済上の提携を一層密接ならしむると共に、相互の理解を増進し更に国際経済の進歩に寄与し得る絶好の機会であると考へて居るので、玆に懇談会を開くに至つたのである。英国使節が来朝以来非常に多忙なる日程を有せらるゝに拘らず、御来会を得たことは我等一同が大いに感謝せんとするところである。
(一)一九二七年五月の国際経済会議閉会の辞に於て、議長チユニス氏は「国際通商は本来又は一般的に勝敗の問題にも非ず、又他に不利益を与へて自己が利益を得んとする問題にも非ずして、相互に利益を享受するものなりとの事実が必然本会議の基礎をなすものなり」と述べたが、我経済委員会は、此チユニス氏の言葉がそのまゝ日英両国間の経済関係にも適用せらるべきものであるといふことを固く信ずる。従つて日英両国の資本・技術・労働等に関して出来得る限りの提携協力を図ることが国民相互の幸福なることを痛感するのである。然し乍ら今日の状態に於ては、日英間のかゝる提携協力が未だ充分であるとは言ひ難い。日英両国の経済的提携には、猶多くの発展を図るべき余地が残されてゐると思はれるのである。
(二)我が国際聯盟協会経済委員会は、人類の福祉は各国民の協力を完全にすることによつて達成し得べく、排他的なる闘争は仮令勝者に幸福を齎らすとするも、畢竟一時的のものに過ぎないといふことを確信するものである。此の事は隣邦支那に関する諸種の国際問題に就ても亦同様であつて、今日支那を以て列国の角逐闘争場裡なりと見做す思想には、甚だ危険なるものあるを痛感せざるを得ないのである。我等は飽迄支那に於ても列国及支那の協力が単に経済的方面に於てのみならず、保健・教育・交通・宗教・風紀等の根本問題に於ても完全円満に達成せられなければならぬことを認める。これが今日の支那全国民の要求である国民的向上を計る唯一の手段であると信ずる。これが為には列国は今日一層の協調的態度をとらなければならぬと共に、他方支那自身も排外的なる行動を慎まなければ、列
 - 第52巻 p.282 -ページ画像 
国も支那も徒らに不幸を見るに終るであらうといふことを惧れる。
(三)大英帝国内には、その結合の基礎を特恵関税の設定によつて鞏固にしやうとする有力なる主張があり、現に或種の特恵関税も実在してゐるのであるが、此れが為国際経済の円満なる発展が妨げられる虞あるのである。何となれば、大英帝国内に於ては英本国は勿論、印度及海外自治領は何れも国際聯盟構成の一員として他の聯盟国と全く同等の待遇を受けて居るのであるから、英本国・印度及海外自治領相互間の関係は、恰も他の国家相互間の関係と同様に見做さるべきものであるのに拘らず、特恵関税の利益に対しては他の諸国は最恵国条款を楯にするも均霑し得ないのである。即ち特恵関税は排他的性質を有し、国際聯盟の根本精神である通商衡平待遇の精神に反するのみならず、英本国・印度及海外自治領相互間の貿易に特恵を与へんが為に外国品に新に課税し、若くは現行関税を引上ぐるが如き場合が若しありとすれば、それは関税の引下げを力説した国際経済会議の勧告及所謂関税休戦条約に反することになるのである。然かのみならず、実際の貿易関係から見ると、我国は地理的に英国の自治領及印度に接近して居て、我国と此等の地域との貿易は益々増加しつゝあるし、現在に於ても我国の輸出貿易中、全欧羅巴の占むる割合は八・一%に過ぎないが、印度は七・四%、加奈陀は一・三%、濠洲は二・五%、新西蘭は〇・一%であるから、此らの地域は総体に於て全欧羅巴よりも重要なる地位を占むる訳である。従つて英帝国特恵関税は国際通商の円満なる発展に対する障碍をなすと共に、我国に及ぼす影響は甚だ大なるものがあると言はなければならない。
(四)今年三月印度が綿布の関税引上げをなし、且その際差別関税を設定したことは我国朝野に大なるセンセーシヨンを起し、我が政府は勿論、日本商工会議所・大日本紡績聯合会・自由通商協会・日印協会等夫々英本国若くは印度に対し抗議するところがあつたが、我が聯盟協会経済委員会に於ても、本年三月七日左の決議をなし更に理事会の同意を得てその趣意を印度に伝へた。
      印度綿布引上問題に関する決議○略ス
 然るに此れらの抗議はすべて英国及印度の顧みる処とならず、綿布関税は現に実施中である。此事たる国際通商の円満なる発展を妨ぐるのみならず、日英両国間に伝統的に継続し来つた親善関係に影響を及ぼすこと少からぬものがある。
(五)我等は更に我国の周囲にありて通商関係の直接且緊密なる英国自治領及印度と我国との条約関係が、国際通商の保障として不充分であることを認めざるを得ない。
   ○本資料第三十七巻所収「社団法人国際聯盟協会」昭和五年十一月五日ノ条参照。



〔参考〕大日本紡績聯合会月報 第四六三号・第一四―一六頁昭和六年四月 ○印度綿布関税引上げに就て T・T生(DK520021k-0009)
第52巻 p.282-285 ページ画像

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