デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

3章 商工業
2節 蚕糸・絹織業
3款 帝国蚕糸株式会社(大正九年設立)
■綱文

第52巻 p.386-390(DK520041k) ページ画像

大正9年9月25日(1920年)

是ヨリ先、欧洲大戦ノ終局ニ伴フ財界不況ニヨリ苦境ニ陥リタル本邦蚕糸業救済ノタメ、再ビ前年同様ノ会社ヲ設立スルコトトナリ、是日、東京市内幸町蚕糸業同業組合中央会ニ於テ、当会社創立総会開カル。


■資料

大正九、十年第二次蚕糸業救済の顛末 河杉信勇編 第一一八―一二五頁 大正一三年一二月刊(DK520041k-0001)
第52巻 p.386 ページ画像

大正九、十年第二次蚕糸業救済の顛末 河杉信勇編
                     第一一八―一二五頁
                     大正一三年一二月刊
 ○中編 第五章 帝国蚕糸株式会社の成立と其の行動
    一、会社の成立
○上略
 会社の発起人は、九月二十五日午前九時より東京市麹町区内幸町二丁目蚕糸業同業組合中央会に於て、其の創立総会を開きたり、○中略
  取締役 十五名
   浅田徳則○外一四名氏名略ス
  監査役 五名
   渋沢義一○外四名氏名略ス
 重役は直ちに会議を開きて社長に浅田徳則氏を、副社長は之を欠員として、専務取締役に若尾幾造・尾沢琢郎両氏を挙げ、原富太郎・今井五介両氏は専ら社長の職務を補佐することに委嘱せられ、又た左の諸氏を会社の評議員に嘱託することに決し、午後六時三十分散会せり
○中略
      定款
 第一条 本社ハ糸価調節ノ為メ生糸ノ買入及其売渡ヲ為スヲ以テ目的トス
 第二条 本社ハ帝国蚕糸株式会社ト称ス
○中略
 第五条 資本金ハ金壱千六百万円トシ、之ヲ拾六万株ニ分チ、壱株ノ金額ヲ金壱百円トス
○中略
 第弐拾四条 本社ハ本定款ノ条項ノ外、商法並ニ農商務大臣ノ命令ニ準拠スルモノトス
○下略


帝国蚕糸株式会社顛末 農商務省農務局編 第一―七頁 大正一三年三月刊(DK520041k-0002)
第52巻 p.386-390 ページ画像

帝国蚕糸株式会社顛末 農商務省農務局編 第一―七頁 大正一三年三月刊
    一 帝国蚕糸株式会社設立経過
 欧洲大戦ノ終局ト共ニ世界経済界ハ漸ク戦時ノ好況ニ対スル反動時代ニ入リ、我邦経済界モ亦大正九年春財界大変動ニ依リ一般産業界ハ
 - 第52巻 p.387 -ページ画像 
多大ノ打撃ヲ受ケタルカ、就中本邦重要物産ニシテ輸出貿易品ノ大宗タル蚕糸ハ、其ノ蒙リタル打撃ノ程度最モ劇シク、糸価ハ低落ニ次クニ低落ヲ以テシ殆ト底止スル所ヲ知ラサラムトシ、大正九年一月ニハ最高四千三百五十円ナリシモ同年七月ニ至リ千百円ノ低値ヲ表スニ至リ、為メニ蚕糸当業者ハ孰レモ其ノ生産費ヲスラ償フ能ハス、一般財界ノ不況金融ノ梗塞ハ一層当業者ニ苦痛ヲ与ヘ、殊ニ全国二百万ヲ算スル養蚕家ノ窮状ハ悲惨ヲ極メ、蚕糸業ノ経営殆ト困難ノ極ニ達セリ玆ニ於テ相当ノ処置ヲ施ササレハ国家経済上将タ亦外国貿易上ニ及ホス影響甚大ナルノミナラス、農村ノ衰頽、農民ノ不安ハ、延テ社会問題ヲ惹起スルナキヤヲ保シ難キ虞アリ、玆ニ於テ蚕糸業者ハ夫々鋭意自衛善後ノ策ヲ講シ、夏挽操業ノ開始ヲ延期シ、横浜出荷及生糸取引ヲ制限シ、操業ノ時間短縮又ハ休止ヲ企図スル等ノ挙ニ出テタルカ、此等経過ハ大要左ノ如シ
 横浜蚕糸貿易商同業組合ニ於テハ、横浜在荷ノ増加ヲ扼止スル目的ヲ以テ、左ノ事項ヲ決議シ、大正九年五月三日組合名ヲ以テ全国ノ関係者ニ対シ勧告書ヲ送リ、夏挽操業ヲ例年ヨリモ二週間延期セムコトヲ慫慂セリ
      決議事項
一 三日ノ売買値段(千八百円)以下売止ノ事
二 取引所ノ立会ヲ出来得ル限リ停止シ置ク事
三 輸出為替ヲ円滑ナラシムル為正金銀行ニ交渉スルコト
四 生糸市場入荷ヲ調節スル為メ新糸挽キ初メ期日ヲ各地共二週間延期スルコトヲ製糸家ニ勧告スル事
然レトモ未タ当業者ノ自覚ヲ促スニ至ラサリシヲ以テ、更ニ五月二十五日左ノ事項ヲ決議シ、同月二十六日附ヲ以テ其ノ決議ヲ当業者ニ通告セリ
      決議事項
一 新糸操業開始ハ全国ヲ通シ六月廿五日迄トス、但シ長野県以外ハ十日間以内ノ日数ヲ繰上ケテ操糸スルコトヲ得
二 六月十一日ヨリ七月五日迄ハ新古糸ヲ問ハス絶対ニ荷受セサルコト
 但シ先約定品ハ、横浜貿易商同業組合ニ届出テ其ノ承認ヲ受ケタルモノハ此ノ限リニ在ラス
三 前条項ノ実行ヲ期スル事、但シ違背セシ場合ハ取引ヲ拒絶スル事アルヘシ
 然ルニ当業者ハ各其ノ利害ヲ異ニスルヲ以テ、此ノ決議ヲ直ニ一斉ニ実行シ難キ事情ノ存セシノミナラス、一方海外経済界ノ不況ハ横浜市場ニ其ノ影響ヲ及ホスコト益々甚シク、在荷ノ滞積弥大ナルノ形勢ヲ呈セルヲ以テ、蚕糸業同業組合中央会ハ六月三日協議会ヲ開キ
一 政府ヨリ標準糸価千七百円(上一番)維持ノ目的ヲ以テ在荷ヲ処理スル為メ、帝国蚕糸組合又ハ新ニ作リタル(シンジケート)ニ対シ、之レニ必要ナル補償金ノ支出ヲ請フ事
二 繭価ヲ維持スル為メ、政府ニ対シ日本銀行及其関係銀行又ハ産業組合ヲ通シテ低利資金八千万円以内ノ融通ヲ求ムル事
 - 第52巻 p.388 -ページ画像 
三 蚕糸業者ハ協力シテ当面ノ事態ニ処スル為メ、左ノ事項ヲ処理スル事
 (イ)養蚕家ハ成ルヘク製糸家ニ交渉シテ生繭預ケ入レノ方法ヲ執ル事
 (ロ)製糸家ハ預ケ入レニ対シ正量取引又ハ相当ノ内渡金ヲナス事
 (ハ)預ケ入レ実行困難ナル場合ニ於テハ、養蚕家ハ成ルヘク養蚕組合ニ依ルカ、又ハ大字若クハ一村聯合シテ産業組合又ハ農業倉庫ト交渉シ其産繭ヲ乾燥シ、之ヲ入庫シテ金融ヲ図ル事
四 製糸家ハ養蚕家ニ対シ乾燥繭及其貯蔵ノ依頼ニ応スル事ヲ決議シ横浜蚕糸貿易商同業組合ハ更ニ六月二十六日有志会ヲ開キ、左ノ事項ヲ決議シ、夫々当業者ニ通告シ、以テ飽迄モ滞荷ノ増嵩ヲ止メムトセリ
      決議事項
一 荷受制限期間ハ大正九年七月十一日ヨリ十二月末日迄毎月三割減トシ、各製糸家諸氏ニ対スル査定額ハ実行委員ニ於テ之ヲ算定シ、各取引店ヨリ通知スル事
一 本決議当日(六月二十六日)迄ニ於テ締結セル先売約定品ニ関シテハ、其荷受引込共ニ実行委員ノ承認ヲ得ルモノトス
一 本決議当日(六月二十六日)現在ノ定期売繋キニ係ルモノハ、必ス其実物ヲ引渡ス数量ニ限リ前項ニ準スルモノトス
一 本決議施行後ニ於ケル先売約定ハ荷受制限ノ範囲内ニ於テ締結スルモノトシ、定期売繋キニシテ実物ヲ引渡スヘキモノモ亦之ニ準スルモノトス
一 本決議ノ実行ヲ期スル為メ委員若干名ヲ設ケ、之レカ委託ヲナスモノトス
 然レトモ内外市況ハ益々不振ニ向ヒ、加フルニ当業者ノ自制未タ猶ホ遺憾ノ点尠カラス、斯業ノ前途転タ暗澹タラムトセシヲ以テ、此際全国蚕糸業者ノ大会ヲ催シ結束ヲ固ムルノ要ヲ認メ、横浜蚕糸貿易商同業組合発起トナリ当業者ニ通知ヲ発シ、遂ニ八月十日ノ横浜大会ヲ見ルニ至レリ、又一方蚕糸業同業組合中央会及大日本蚕糸会モ亦此ノ機ニ於テ組合員又ハ会員ノ歩調ヲ整フルノ要ヲ認メ、製糸部会ヲ招集シ横浜大会ト連絡ヲ取リ、大会開催ノ前日(八月九日)(一)十月二十日ヨリ十二月末日マテ一切横浜ニ出荷ヲ為サヽルコト及(二)何等ノ名義ヲ以テスルモ定期取引所ニ於テ売繋ヲ売買両者共ニ控フルコト等ヲ決議シ、翌日横浜大会ニ於テモ同様ノ事項ヲ決議セリ
 以上ノ如ク当業者ハ漸次大勢ノ非ナルヲ覚リ、各其ノ利害ヲ度外シテ努力スル所アリシモ、未タ目的ヲ達スルニ至ラス、蓋シ生産ノ制限ハ当業者目前ノ打算ニ於テハ甚タ苦痛トスルノミナラス、之カ励行取締ノ方法至難ナルヲ以テ、往々決議違反ノ行為ヲ敢テスル者ヲ生シ、一角崩ルレハ全塁ヲ危殆瓦解ニ導クノ虞アレハナリ、玆ニ於テ帝国蚕糸株式会社ノ設立セラルヽニ及ンテ、会社重役ハ一方政府ノ督励ニ依リ、寧ロ一定期間ヲ定メテ断然操業ヲ休止スルノ実行シ易キヲ看取シ十月十五日重役会及評議員会ニ於テ各地当業者ノ事情ヲ斟酌ノ上、各地操業休止ノ期間ヲ原則トシテ三十五日トシ、夫々開始ノ期日ヲ定メ
 - 第52巻 p.389 -ページ画像 
且休止期間以外ト雖絶対ニ点灯作業ヲ廃スルコト及此決議違反者ノ生産品ハ会社之ヲ買収セサルコトヲ決議シ、之カ実行ヲ期セリ、然ルニ横浜ノ滞荷ハ毫モ減少ノ蹟ナキノミナラス、市況ノ恢復期シ難ク、却テ悪化ノ虞アリ、更ニ一段ノ生産制限断行ノ必要ヲ生シタルヲ以テ、横浜蚕糸貿易商同業組合ノ主催ノ下ニ第二回全国蚕糸業者大会ノ開催トナリ、十一月十日全国ノ当業者約七百余名ハ前回決議ヲ変更シ、操業休止期間ヲ全国一斉ニ十一月三十日ヨリ向フ七十八日間ト定メ、同時ニ横浜入荷ヲ断止シ、定期取引ヲ一層制限シ、同決議ノ委員ヲ配置シ当業者ヲ督励スル等、専ラ目的ノ貫徹ニ努力シタルカ、蚕糸業同業組合中央会モ亦之ニ鑑ミ、同日同様ノ決議ヲ為シ、両者各相援クルノ方法ヲ講セリ、今蚕糸業同業組合中央会決議事項ヲ示セハ左ノ如シ
一 全国製糸家ハ輸出地遣共更ラニ大正九年十一月三十日ヨリ大正十年二月十五日迄(長野県ハ大正十年三月二十日迄)先約定(値極メ成行共)ノ有無ヲ問ハス、全国一斉ニ操業ノ休止ヲ継続スルコト、但シ一月三十日迄ニ帝国蚕糸株式会社ヨリ申出アルトキハ休止期間ヲ延長スルコト
二 何等ノ名義ヲ以テスルモ定期取引所ニ於テ売繋キヲ為サヽルハ勿論、封印検査手続等一切ノ準備行為ヲ為サヽルコト
三 売込商ハ第一項ニ基キ一切ノ荷受ケヲナサヽルコト
四 横浜生糸売込商及輸出業者ハ本大会ノ決議ニ違反セル者ノ生糸ハ将来ニ於テ一切之レヲ取リ扱ハサルコト
五 各府県ニ調査委員若干名ヲ置キ、本大会決議事項ノ実施如何ヲ調査シ、之レヲ横浜蚕糸貿易商同業組合ニ報告スルコト
 我カ蚕糸業ノ窮状ニ対スル当業者ノ自救策ヲ講シタルコト右ノ如クナリシニ拘ラス、市況ハ漸次活力ヲ失ヒ滞荷頓ニ増加シ、一方春蚕及秋蚕ハ約三割ノ減収ヲ来シタルモ糸価ハ弥低落シテ、最高時ニ比シテ殆ト四分ノ一ヲモ維持シ難カラントスルニ至レルヲ以テ、自救ノ策ヲ樹ツルト同時ニ、政府ニ対シ救済ヲ請フ者続出シ、政府ニ於テモ固ヨリ当業者ノ苦衷ト斯業ノ前途ニ対シ同情ト憂慮トヲ為シ、先ツ養蚕家ニ対シテハ日本銀行ニ斡旋シテ一千万円ノ低利資金ヲ融通セシメ、次テ製糸家其ノ他ニ対シテモ之カ救済ノ策ヲ講スルニ至レリ
 元来這般糸価ノ劇落ハ、世界殊ニ米国経済界ノ変動ニ加フルニ、横浜市場ニ於ケル糸価ノ不安定ニヨリ彼ノ地輸入業者・機業者ノ警戒厳重トナリ、一層事業ノ緊縮ヲ助長シタル結果、遂ニ紐育ノ滞荷ヲモ増嵩セシムルニ至ラシメシニ起因スルモノナレハ、我カ生糸ノ供給ヲ調節スル為メ相当ノ施設ヲ為スニ於テハ、紐育ノ市況ハ漸次恢復シ延テ我カ横浜ニ及ヒ、糸価ノ安定ヲ保持スルニ至ルヘキハ論ナキ所ナリ、玆ニ於テ政府ハ当業者ニ対シ右シンジケートノ設立ヲ慫慂スルト共ニ設立ノ暁ニハ相当資金ノ融通ヲ為スヘキコトヲ約シタレハ、当業者ニ於テモ鋭意之カ設立ニ着手シ、大体ニ於テ曩ニ大正四年ニ設立セラレタル帝国蚕糸株式会社ノ例ニ則リ、大正九年九月二十五日創立総会ヲ開キ、定款ヲ議定シ、養蚕家・製糸家及蚕糸貿易商ヲ網羅シタル帝国蚕糸株式会社ヲ設立スルニ至レリ、会社ノ資本金壱千六百万円、株式数ハ拾六万株、株主総数二百十九名、社長一名、取締役十五名、監査
 - 第52巻 p.390 -ページ画像 
役五名ノ内容ヲ有ス
○下略
   ○栄一、当会社ノ設立ニモ関係アリタルモノト推測サルヽモ、資料ヲ欠ク。