デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

2部 実業・経済

8章 政府諸会
1節 諮問会議
5款 臨時国民経済調査会
■綱文

第56巻 p.591-595(DK560133k) ページ画像

大正7年9月21日(1918年)

是日、総理大臣官邸ニ於テ、当会第一回会議開カレ、会長寺内正毅ヨリ当会設置ノ趣旨ニツキ訓示アリタル後、議事規則案ヲ可決ス。栄一出席ス。


■資料

臨時国民経済調査会要覧 第二五頁 大正八年七月刊(DK560133k-0001)
第56巻 p.591 ページ画像

臨時国民経済調査会要覧  第二五頁 大正八年七月刊
一、本会ニ於ケル会議ハ会議(総会)・特別委員会・小委員会及起草委員会ノ四種トス
 (一) 会議
 イ 第一回会議ハ大正七年九月二十一日首相官邸ニ於テ開会シ、寺内内閣総理大臣ヨリ本会設置ノ趣旨ニ付訓示セリ、後議事規則案ヲ配付シ全会一致ヲ以テ之ヲ可決セリ、又同月廿日仲小路農商務大臣ヨリ提出シタル諮問案ヲ(米価調節ノ制度ヲ樹ントス、其ノ可否如何)配付セリ


集会日時通知表 大正七年(DK560133k-0002)
第56巻 p.591 ページ画像

集会日時通知表  大正七年        (渋沢子爵家所蔵)
九月廿一日 土 午前十一時 首相ヨリ御招待(臨時国民経済調査会ノ件)(首相官邸)


臨時国民経済調査会要覧 第三―二〇頁 大正八年七月刊(DK560133k-0003)
第56巻 p.591-595 ページ画像

臨時国民経済調査会要覧  第三―二〇頁 大正八年七月刊
    臨時国民経済調査会議事規則(大正七年九月二十一日決定)
第一条 会議ノ日時及場所ハ会長之ヲ定ム
第二条 会長ハ会議ノ議長ト為リ議事ル整理ス
第三条 会長・副会長共ニ事故アルトキハ、会長ニ於テ指名シタル委員臨時議長ヲ代理ス
第四条 会議ハ委員三分ノ一以上出席スルニ非サレハ之ヲ開クコトヲ得ス、但シ予メ特ニ議決ヲ経タル場合ハ此ノ限ニ在ラス
第五条 議席ハ予メ抽籤ヲ以テ之ヲ定ム
第六条 会議ハ之ヲ秘密トス
第七条 発言セムトスル者ハ議長ノ許可ヲ受クヘシ、発言ハ議席ニ於テ起立シテ之ヲ為スヘシ
第八条 議事ノ整理上必要アルトキハ議長ハ発言ヲ止メ又ハ議事ヲ中止スルコトヲ得
第九条 議事ハ過半数ヲ以テ之ヲ決ス、可否同数ナルトキハ議長ノ決スル所ニ依ル
第十条 採決ハ起立ニ依ル、但シ議決ニ依リ記名投票又ハ無記名投票
 - 第56巻 p.592 -ページ画像 
ヲ用フルコトヲ得
第十一条 委員建議ヲ為サムトスルトキハ予メ三名以上ノ同意ヲ以テ建議案ヲ提出スルコトヲ要ス
第十二条 会長必要ト認ムルトキハ委員ヲ数部ニ分チ、又ハ特別委員ヲ段《(設)》クルコトヲ得
第十三条 議事録ハ幹事之ヲ作成スヘシ
○中略
    第三 寺内内閣総理大臣訓示
大正七年九月二十一日第一回会議ノ際、寺内内閣総理大臣ノ訓示シタルモノ左ノ如シ
 世界戦局ノ我財政経済界ニ齎シタル影響ハ頗ル深甚ナルモノアリ、一面ニ於テ海外貿易ノ発展ハ正貨ノ流入ヲ饒カニシ、戦争ニ基ク船腹ノ欠乏ハ却テ我海運界ノ活動ヲ促シ、諸般ノ工業蔚然トシテ勃興シ、其ノ結果概ネ良好ナリト雖、此等ノ一時的好調ハ他面ニ於テ漸次社会ノ根底ヲ動カシ、物価ノ騰貴、貧富ノ懸隔、奢侈ノ流行トナリ、就中米価ノ狂騰ハ竟ニ国民生活ノ困難ヲ来タシ、不幸ニモ過日ノ騒擾ヲ惹起スルニ至レリ、熟々将来ノ趨勢ヲ忖度スルニ、戦争ノ終局漸々近ツクニ従ヒ、世界ノ経済界ハ更ニ一層ノ変動ヲ見ルヘク其ノ影響必然東洋ニ波及シテ我工業界及経済界ニ一大恐慌ヲ与フルノ虞ナシトセス、蓋シ交通自在ノ今日ニ於テハ世界ノ一方ニ現ハレタル総テノ風潮ハ、必ス全世界ヲ振蕩セサレハ已マサルノ趨勢ニ向ヒツツアレハナリ、惟フニ戦後ノ世界列国ハ鋭意内政ノ整理ニ従事スルト共ニ、極力海外ノ発展ヲ図リ、以テ戦時ニ於ケル自国ノ創痍ヲ癒治スルニ努力スヘク、将来世界ノ唯一市場タルヘキ東洋ハ最モ激烈ナル商戦地ト化スヘキコト火ヲ観ルヨリモ炳カナリ
 曩ニ設置セラレタル経済調査会ハ、戦局ニ対スル当面ノ政策ヲ調査考覈シテ其ノ要領ヲ得タリト雖、未タ曠古ノ変局ニ伴フテ発生シタル国民経済並社会的方面ニ渉リテハ之ヲ査覈スルニ至ラス、是レ今回新タニ国民経済調査会ノ創設ヲ必要トシタル所以ナリ、国民経済調査会ノ調査審議スヘキ事項ハ頗ル広汎ニシテ、世界ノ大勢ニ順応シテ戦時並戦後ニ於ケル各般ノ国民的経済及社会的問題ノ根底ニ溯リ、我帝国ノ被ルヘキ危険ヲ未然ニ予防シテ国民将来ノ生活ヲ安泰ナラシムルル方策《(衍)》ヲ講セサルヘカラス、今ヤ西比利亜ニ於ケル独墺勢力ノ浸潤ハ既ニ極東ノ平和ヲ擾乱シ、我帝国ハ為ニ兵ヲ極東露領ニ出シ、聯合与国ト協調シテ専ラ安寧秩序ノ恢復ニ努力シツツアリト雖、西比利亜ノ政情全ク安定スルノ日ハ前途尚遠シ、此ノ内外多事ノ時局ニ際シテハ、上下一致、確乎不抜ノ決心ヲ以テ万難ヲ排除シ、勤倹努力以テ興国ノ大計ヲ企図セサルヘカラス、然ルニ人心ノ趨ク所動モスレハ軽佻浮華ニ流レ奢侈游惰ヲ事トシ、敵愾ノ気風漸ク消磨セントスルノ傾向アルハ寔ニ痛歎ノ至リニ堪ヘサルナリ、若シ夫レ自然ノ趨勢ニ放任シテ顧慮スル所ナクムハ、戦後ニ於ケル国民経済ハ惨憺タル情態ニ陥リ、終ニ生存競争ノ敗者タルヲ免ルルコト能ハサルニ至ラム、委員諸君ハ深ク思ヲ玆ニ致シ、国民生活上ニ関スル物価問題、其ノ他之ニ関聯スル社会的問題ヲ調査審議シ、此
 - 第56巻 p.593 -ページ画像 
ノ興国ノ機運ニ際シテ国民経済ノ基礎ヲ確定シ、将来ノ福祉ヲ増進セシメラレムコトヲ希望ス
    第四 諮問事項
大正七年九月二十日仲小路農商務大臣ノ本会ニ提出セル諮問事項左ノ如シ
      諮問事項
左ノ綱領ニ依リ米価調節ノ制度ヲ樹テムトス、其ノ可否如何
      米価調節綱領
第一 激甚ナル米価ノ騰落ヲ防止センカ為メ予メ其ノ最高最低ノ価格ヲ定メ置クコト
第二 米価カ予定シタル最低価格ヲ下ルトキハ、政府ニ於テ之ヲ買入レ、又ハ資金ノ貸付其ノ他適当ノ方法ニ依リテ政府ニ於テ之ヲ貯蔵シ、以テ其ノ低落ヲ防止スルコト
第三 米価カ最高価格ヲ超ユルトキハ、政府貯蔵米ノ売出、外米ノ輸入其ノ他適当ノ方法ニ依リテ不足数量ヲ供給シ、以テ米価ノ騰貴ヲ防止スルコト
第四 米価調節上必要アルトキハ米以外ノ主要食糧ニ付相当ノ措置ヲ為スコト
第五 外国米ノ専売ヲ為スコト
第六 米価審査会ヲ常置シ、調節ス可キ米穀其ノ他主要食糧品ノ価格ノ限度制限ニ付諮詢スルコト、以上ノ目的ヲ完フセンカ為メ左ノ立法ヲ必要トス
      米価調節法ノ要項
第一条 主務大臣ハ米価ノ変動ヲ調節スル為メ左ノ事項ヲ為スコトヲ得
 一 米其ノ他ノ主要食糧品ノ買入、交換又ハ売渡ヲ為スコト
 二 指定シタル条件ニ依リ米其ノ他ノ主要食糧品ノ保管・買入・交換又ハ売渡ヲ為ス者ニ対シ補給ヲ為スコト
 三 米其ノ他ノ主要食糧品ノ寄託ヲ受ケ又ハ他人ヲシテ寄託ヲ受ケシメ、之ニ対シテ証券ヲ発行スルコト
 四 米其ノ他ノ主要食糧品ヲ工業原料又ハ飼料ニ使用スルコトヲ制限又ハ禁止スルコト
 五 米其ノ他ノ食糧品ノ輸出入ヲ制限又ハ禁止スルコト
第二条 主務大臣ハ戦時其ノ他ノ事変ノ場合又ハ国民生活上緊要ナル場合ニ於テハ左ノ事項ヲ為スコトヲ得
 一 米其ノ他ノ主要食糧品ノ売買価格ヲ制限スルコト
 二 補償金額ヲ定メ米其ノ他ノ主要食糧品ヲ収用シ又ハ其ノ指定シタル者ヲシテ収用セシムルコト
 三 米其ノ他ノ主要食糧品ノ所有者ニ代リ之ヲ管理又ハ処分スルコト
第三条 主務大臣ハ公益上必要ト認ムルトキハ、倉庫業者ニ対シ、其ノ定メタル保管料ニ依リ米其ノ他ノ主要食糧品ノ寄託ヲ受クヘキコトヲ命スルコトヲ得
第四条 主務大臣ハ調節ヲ為スヘキ米其ノ他ノ主要食糧品ノ価格ノ限
 - 第56巻 p.594 -ページ画像 
度及価格ノ制限ニ付米価審査会ニ諮問スルコトヲ要ス
 米価審査会ニ関スル規程ハ勅令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 本法ニ於テ主要食糧品トハ米ノ外雑穀・甘藷・馬鈴薯及其ノ加工品ヲ謂フ
第六条 本法ノ施行ニ関シ必要ナル事項ハ主務大臣之ヲ定ム
 本法中主務大臣ノ職権ニ属スル事項ハ地方長官ヲシテ之ヲ行ハシムルコトヲ得
第七条 本法施行ニ関スル経費ニ付テハ特別会計ヲ立テシム
第八条 罰則
      外国米専売法ノ要項
第一条 外国米ハ政府ノ専売トス
第二条 外国米ハ政府、政府ノ指定シタル者又ハ政府ノ許可ヲ受ケタル者ニ非サレハ之ヲ輸入又ハ移入スルコトヲ得ス
第三条 政府ヨリ売渡シ又ハ政府ノ許可ヲ受ケテ輸入若ハ移入シタル外国米ニ非サレハ之ヲ所有シ、所持シ、譲渡シ、質入シ又ハ消費スルコトヲ得ス
第四条 外国米ハ政府又ハ政府ノ指定シタル外国米元売捌人若ハ外国米小売人ニ非サレハ之ヲ販売スルコトヲ得ス
 外国米元売捌人及外国米ノ販売ニ関スル規程ハ命令ヲ以テ之ヲ定ム
第五条 外国米小売人ハ政府ノ定メタル価格ヲ以テスルニ非サレハ外国米ヲ消費者ニ販売スルコトヲ得ス
第六条 本法ノ施行ニ関シ必要ナル事項ハ主務大臣之ヲ定ム
第七条 罰則
      理由
凡ソ社会経済上最モ必要ナル国民生活上ノ基礎タルヘキ重要食糧品ニ付テハ、勗メテ其ノ価格ノ平準ヲ保タシムルニ在ル、然ルニ我国民ノ重要食糧品タル米穀ハ、全ク世界的ニ非スシテ其ノ性質局地的ナルカ上ニ、歳ノ豊凶其ノ他経済上ニ変動ヲ伴ヒテ鋭敏ナル影響ヲ受ケ、往年米穀一石ノ価十一・二円ニ激落シ、為ニ農家ハ非常ナル苦病ヲ感シ終ニ農村荒廃ノ惨状ヲ呈スルニ至ルヘシトシテ、之レカ救済ノ為メ世上囂々タリシニ、未タ一・二年ナラスシテ奔騰ニ次クニ暴騰ヲ以テシ一石三十円以上ニ及ヒ、一般需要者ハ非常ナル困難ヲ感シ、今ヤ国民生活上実ニ容易ナラサル関繋ヲ有スルニ至レリ
我国ニ於ケル米穀ハ国氏生活《(民)》ノ根柢ヲ為セル物資ナレハ、其ノ価格ノ変動ニ因リテ労働賃金ニモ、将タ又俸給諸給与ニモ移動ヲ来シ、其ノ他各種ノ物資材料一トシテ之カ影響ヲ受ケサルモノナク、実ニ社会経済上ノ一大根柢ヲ為セルモノナルニ、其ノ根柢ニ於テ如斯浮沈常ナキ大動揺ヲ見ルコト我経済組織ニ於テ是程大ナル欠陥ヲ有スルモノハアラサルヘク、今日此ノ有事ノ日ニ於テ不安ヲ感スルコト全ク制度ノ確立セサリシニ起因スルモノナレハ、今ニ於テ将来ニ渉ル根本的制度ヲ樹立スルコト洵ニ緊要欠ク可カラサル所ナリ
唯タ玆ニ最モ注意ヲ要スルハ、世上其ノ必要ヲ感スルヤ所論往々極端ニ走セ、直ニ米穀ノ官営若クハ専売ノ唱道スルモノアリ、其ノ趣旨ニ至テハ固ヨリ採ルヘキ所アルモ、斯ルコトハ何分ニモ三百年来因習シ
 - 第56巻 p.595 -ページ画像 
来リタル我社会組織ノ全般ニ渉ルヘキ更革ナレハ、一朝ノ故ヲ以テ直ニ行ハルヘキ所ニ在ラス、依テ我カ現在ニ於テ行ハレ得ヘキ最善ニシテ最モ効力アリト認ムヘキ見地ニ於テ将来ノ制度ヲ樹テ置クコト極メテ妥当ノ措置ナリトス、依テ前記綱領ニ於テ米価調節ノ政策ヲ確立スルノ必要アリト認ム