デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

大正5年1月9日（1916年）

是月四日、栄一、第三回米国旅行ヨリ帰国ス。是日三島毅、之ヲ祝シテ詩ヲ贈ル。

文事来簡一　　大正五年一月九日　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　　　　　大井町鴻塚絵原村荘《（別筆）》ヨリ来ル
新禧目出度申納候、過日は御無難自米国御帰朝御健康之御容体悴ヨリ承リ大ニ安堵仕候、実は老人之冷水ニ付御滞在中も懸念仕候処、折々牛島より御様子を承り如何と奉存候事ニ御坐候、斗も角八秩近キ御老体ニテお国ノ為ニ尽スモノ朝ニ大隈アリ、野ニ閣下アリ、御苦労之事ト奉存候、病夫閑臥□ニ多謝仕候事ニ御坐候、御帰国之御悦兼テ彼地御尽力ヲ謝シ
　拙詩ヲ得候ニ付別箋笑正ニ入レ申候　草々頓首不尽
　　一月九日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　三島毅
　　　　青淵男　閣下
　附啓　拙老先年より府下大井町即大森之近傍ニ小別荘所有致居候テ長男ニ留守為致居候処、長男も追々年ヲ取リ改心シ孝養致呉候様様子モ見ヘ、又都下より少シ暖気ニ付過日以来此地ニ参リ静養仕居申候、東ニ海波ヲ望ミ、西ニ富岳ヲ遠見シ、如絵画景色アリ、荏原郡故ニ同訓ヲ用ヒ絵原村荘ト名ケ相楽居申候、御同安可被下候也
　　八日　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　毅
（別箋）
　彼我両民相擠排
　久違四海兄弟詞
　喜君緩頰融和説
　日米同盟将啓基
　丙辰新春青淵渋沢男自米遊還贈此以贈聞周遊中現解彼我両民□轣頗
 - 第57巻 p.473 -ページ画像 
有尽力故及
　　　　　　　　　　　　　八十七老友　三島毅拝草