デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

1章 金融
1節 銀行
1款 第一国立銀行 株式会社第一銀行
■綱文

第4巻 p.460-472(DK040044k) ページ画像

明治20年3月(1887年)

明治十六年以来同行行務ノ改善ニ努力シ、是月申合規則ヲ改正セルヲ始メトシ、明治二十五六年ニ至ル迄ニ定款諸規則ノ制定及改正・協議役ノ新設、全国支店長会議ノ開設・支払保証事務ノ開始等、金融機関トシテノ完全ナル発達ヲ期ス。


■資料

第一銀行五十年史稿 巻四・第一五―二九頁(DK040044k-0001)
第4巻 p.460-463 ページ画像

第一銀行五十年史稿 巻四・第一五―二九頁
    行務の整理
明治十六年国立銀行条例再度の改正より日清戦役の頃までの間は、経済界の波瀾尠からざれども、之を概観せんに概ね不況の時代なりき、されば本行の営業も次第に困難を覚え、二十五六年の交に至りて其極に達したるが、戦後に及び始めて好況に向へること上文にいへるが如し、而してかゝる不況時代にありても、営業の堅実を旨とせる本行は幸に其打撃を受くること多からざるのみならず、なほ且時勢に順応して業務を改善し顧客の利便を図ると共に、金融機関としての完全なる発達を期することを怠らざりき。
本行は創業以来既に十余年の歳月を閲して著しき進境を示したれば、之に伴ひて諸規則の改訂を要するもの亦尠なからず、是に於て明治十六年三月改正せる申合規則を二十年三月再び改正し、営業上行員の服膺すべき心得を始め、役員の配置・役員の権限・各課事務の章程を掲記せり、二十三年四月の改正には、本支店の支配人以下は何等の名義を以てするも他の銀行会社の営業に関係し、又は其役名を帯ぶることを得ずといへる一条を増補せり、蓋し職責を重ぜんが為なるべし、又定款については二十二年一月その一部を改正して純益金中一万五千円を紙幣消却元資積立金となすことを規定せり、これ十六年度より既に実行し来れる処なれども、いまだ定款に載せざりしなり、此外十九年
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には慰労金給与規則・公債掛事務取扱規程・帳面方貸付掛事務取扱規程・検査掛規程・出納方事務取扱規程を定め二十年には役員積立金規則・支店役員職務規程等を制定し処各種の内規ほぼ完成を告げたり。
明治十九年十月大阪西京両支店に協議役を置き、熊谷辰太郎を以て之に補す、即ち協議役執務規程を制定せり、この規程によるに「協議役は大阪・西京両支店の事務を整理し、営業の進捗を図る為め大阪支店に在勤せしむるものとす、但西京支店へは毎月両三回出張して其事務を協議すべし、協議役は両支店の事務整理上に付ては之を監督して、諸般の行務を正確ならしむるの権任を有するものとす、協議役は両支店の事務上に付意見あらば両支店主任に指示して之を履行せしむることを得、支店の営業上協議役と其店の主任と意見を異にすることあるときは、其趣を本店へ具状して其決裁を請ふべし、両支店の支配人病気其他の事故にて出勤せざる時は協議役に於て其事務を代理すべし、但西京支店は協議役の見込を以て代理の員を置くことを得」とあるにて其職掌を知るべし、これ関西支店の事務日を逐ひて発達せるがゆゑに分区監督の必要あるによれるなり、尋で二十四年七月取締役の互選を以て監督一人を置き、検査課を専当して検査に関する一般の行務に任ぜしむ、後の所謂常任監査役これなり、此時初めて其任に就きたるものを須藤時一郎とす、同じ頃熊谷は大阪より帰りて本店の支配人となる、時に佐々木勇之助もまた支配人たり、爾来二十八年までの間二人の支配人を並置せるは、蓋し事務の繁忙を加へたるが為めなり。
本行が全国支店長会議を東京に召集せるは、明治十九年三月を以て始めとなす、是より先東北地方の開拓せらるゝに及び、仙台・盛岡等各支店の設置せらるゝや、相呼応して金融を疏通するの必要ありしかば各支店間において会合を催したることあり、爾後支店の数増加するに従ひ、ますます会合の必要を感ずるに至りしかば、遂に支店長会議の召集となりたるなり、此時の主要なる議題は、各支店間交渉の事務を改良する事、各出張所事務の取締を完備する事、荷為替事務を拡張する事の三件にして、役員の貯金及び慰労金の制を定むる事、支店相互間に臨時検査を行ふ事、陸羽支店会設置の事も亦議に上れり、翌二十年三月更に第二回の支店長会議を開く、此時の議題は割引手形・及荷為替手形等の取付方に於て寛厳の得失を推案審議の事、各支店諸勘定の検査法を簡便にし、且検査表並に諸報告諸計表等を省略する方法を審議の事、本支店各課の主任者をして時々交替せしむるを必要となすに付、其良法を審議の事、送金手形支払済の分取締方の諸件なりき、爾来毎年一回若しくは二回東京に招集し、以て今日に及べり、今繁を避けて一々之を註せず。
更に営業上の施設を考ふるに、本行が諸省及府県の為替方として国庫金出納事務を取扱へることは、前章に述べたりしが、其後幾多の変遷あり、即ち十六年一月政府は日本銀行をして国庫金を取扱はしめんとし、現在其事務に鞅掌せる為替方は各銀行の営業満期に至り漸次之を同行に委託することに定めたり、よりて同行は政府の命令に基き、各地に国庫金取扱所を設け、十九年また現金支払所を置きたるにより、本行の仙台支店の如きは、早く明治十六年を以て其取扱へる国庫金出
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納事務を同行に引渡し、更に同行国庫金取扱所の代理店を引受けしが尋て其他の各支店も漸次之に倣へり、かくて二十年二月に至り政府は国庫金取扱所及び現金支払所を廃して新に国庫金出納所を置き、其事務を統一すると共に、大蔵省の金庫局においては中央金庫の出納を掌り、其他は悉く挙げて之を日本銀行に委任する事となり、国庫の制度始めて完備す、爾来本行の各支店は日本銀行の代理店としてなほ国庫事務を掌るの外、旧によりて地方税の取扱に任じたり、本行はまた此機会に行員引負金に関する処分を行へり、蓋し官金出納事務を取扱へること既に久くして、其間本行出張員中引負を生じたるもの数名に及び、金額も九万五千二百余円に達せしかば、頭取以下の重役は監督不行届の責に任じ別段積立金及び慰労積立金中より之を償却すべきことを株主総会に謀りたるに、株主等は事の玆に至れるは、必ずしも重役の責任なりといふべからず、蓋し已むを得ざる結果なれば、別段積立金中より償却を行ひ、なほ不足の分は年を逐ひて漸次に補給支弁すべしと決議せるがゆゑに、重役もまた其意を諒とし総会の決議に従ひて処分せり、蓋し慰労積立金といふは他日重役の功労に酬いんが為の繰込積立金にして、実は其都度分配すべきを特に積立置きたるに過ぎざれば、株主等既に重役の全責任にあらざるを承認せる以上、之を支出するは穏ならざるを以てなり。
明治二十年七月東洋汽船会社が汽船パートリツチ号購入の際、同社長浅野総一郎と同船長の代理者たるアダムソンベル商会の代員ヂヨーヂサイムトムソンとの間に締結せられたる約定書に対し、本行は始めて支払保証を為せり、これ実に此種銀行事務の嚆矢なり、尋で二十三年古河市兵衛の為に、香上銀行及び正金銀行に対し又支払保証を為したり、爾来進んで之が取扱に任じたりしかば、支払保証の事も日に添ひて発達するに至れり、是より先き日本銀行の成立するや、銀行業者中より同行割引委員を選出せしが、本行の頭取もまた其任に膺る、幾もなく政府の手形条例公布せられしかば、明治十六年二月本行は為替手形約束手形の流通を拡張せんが為に、三井銀行・第三国立銀行・第百国立銀行等と契約して、相互間に金融上の都合に従ひて為替手形を振出し、日本銀行の再割引を得ることゝなしたり、其方法は甲は乙に向けて為替手形を振出し、乙は丙又は丁に割引を請求するにあり、而して此場合に甲は常に相当担保を提供すべく、且乙が日本銀行に再割引を求むる時には、其担保を日本銀行に差出すを要す、かくて日本銀行は各銀行の金融を統轄することゝなれり、なほ手形条例公布に伴ふ処置として同年三月改正荷為替手形取扱規則・荷為替取扱規則附録・改正割引手形取扱規則を定め、二十二年三月に至り更に割引手形保証品に対する副証書の式を定む、即ち左の如し。
 (其一)振出人より差入るべき分
      副証書
 一
 右ハ拙者ヨリ振出シタル約束手形金 ニ対スル支払保証トシテ差入候処相違無之候、然ル上ハ万一期日ニ至り支払相滞リ候節ハ貴行ニ於テ右保証品御売却ノ上其代金ヲ以テ御取立相成候共聊カ異議
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無之候仍而副証書如件
  明治 年 月 日 何某印
    第一銀行
        御中
 (其二)保証人より差入るべき分
      証
 一
 右ハ拙者ヨリ割引相願候為替約束手形金 ニ対スル保証トシテ差入置候処相違無之候、然ル上ハ期日ニ至リ支払人手形不渡致候節ハ拙者ヨリ弁償可致ハ勿論ニ候得共、万一相滞リ候節ハ右保証品貴行ニ於テ御売却ノ上其代金ヲ以テ御取立被成候共聊カ異議無之候仍而副証書如件
  明治 年 月 日 何某印
    第一銀行
        御中
本行が始めて小切手支払保証の制を設けたるは明治十一年なりしが、当時いまだ之を応用流通するもの尠く、爾来十余年を閲したるも、なほ予期の成績を挙ぐる能はざりしかば、明治二十五年七月更に改正を加へ、同時に横線小切手の新法をも案出して、東京・横浜・大阪・神戸・名古屋等商業隆盛の地に流通せしめんとし、内外の顧客に通知勧誘を試みたり、即ち本行において支払保証を為したる小切手は、最早振出人の信用手形にあらずして、保証銀行たる本行の信用手形たるがゆえに、其信用の拡大せらるゝこと極めて大なるものあり、蓋し之を以て送金手形に代用せしむるの意を含み、所謂無打歩為替の一大便法なり、又横線小切手には小切手面に朱を以て二本の横線を施し、其線内に銀行の二字を記入するときには、此小切手は銀行以外に支払はれざる小切手に変化し、万一盗難紛失等の事あらんにも、振出人又は所持人が損害を蒙るの恐なきものなり、加ふるに手形並に小切手の取立は凡て無手数料にて取扱ふことゝなしたるが故に、顧客に与へたる利便少きにあらず、此を以て大に世上の歓迎する所となり、次第に広く流通せるのみならず、同業者中之に倣ふものも亦多し、今其書式を示せば左のごとし。
○図略ス
明治二十三年八月銀行条例及び貯蓄銀行条例の制定ありて、銀行に関する法規はほヾ完備するに至りしが、本行の従来取扱来れる貯蓄預金は、之より後乙部当座と改称し、別に規程を設けて其事務を拡張せり然れども貯蓄銀行条例公布せられたれば、小口預金の取扱は同条例に準拠すること便宜なるにより、同二十五年頭取以下の重役等七名の出資を以て、資本金十万円の株式会社東京貯蓄銀行を設立し、七月一日より開業せり、其重役は皆本行の重役之を兼任す。


慰労金給与規則(DK040044k-0002)
第4巻 p.463-465 ページ画像

慰労金給与規則             (株式会社第一銀行所蔵)
   第一条
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定款第三十九条ニ依リ毎半季賞与金中ヨリ積立タル慰労金ハ頭取役場ニ於テ之ヲ管理シ、五年以上勤続シタル者ニ限リ給与スヘシ
   第二条
此慰労金ハ等外雇人ヲ除キ十等以上左ノ表式ニ準シ現勤務中ノ等給ニ割合給与スヘシ(例ヘハ十等三ケ年九等二ケ年勤続シタル者ハ五拾四円、九等三ケ年九等上五ケ年八等二ケ年勤続シタルモノハ百五拾壱円ヲ給与スルノ率準ナリ)
(欄外朱書)明治二十年八月十六日第二条中尉労金割合ヲ訂正ス
  一等   二等    三等    四等上   四等
 四百円  百七拾円  百四拾円  百弐拾円  百円
  一ケ年分以下之ニ傚
  五等上  五等    六等上   六等    七等上
 九拾円  八拾円   六拾円   五拾円   四拾円
  七等   八等上   八等    九等上   九等
 三拾円  弐拾五円  弐拾円   拾五円    拾弐円
  十等上下
 拾円

   第三条
此慰労金ハ左ノ場合ニ於テ之ヲ給与スヘシ
  第一 銀行営業年限満期ノ時
  第二 本人勤務中死亡シタル時
  第三 本人老衰又ハ疾病等ニテ事務ニ堪ヘサルヨリ辞職シタル時
  第四 本人過失ナク銀行ノ便宜ヲ以テ解職セシメタル時
   第四条
此慰労金ハ五年以上勤続シタル者ト雖トモ左ノ場合ニ於テハ給与セサルヘシ
  第一 本人勝手ヲ以テ辞職シタル時
  第二 過失又ハ不都合ノ行為アリテ免職シタル時
   但第一項ハ頭取取締役審査ヲ遂ケ其情万已ムヲ得サルニ出ツルト認定スル者ハ第二条定額ノ全数或ハ幾分ヲ給与スルコトアルヘシ
   第五条
行員中不幸ニシテ五ケ年未満中ニ死亡シ、其生前勉励衆ニ超ヘタルモノハ頭取取締役ノ考案ヲ以テ第一条慰労積立金ノ内ヨリ祭粢料ヲ給与スルコトアルヘシ
   第六条
行員中水火其他非常ノ変災ニ遭遇シタル時ハ、頭取取締役ノ考案ヲ以テ第一条慰労積立金ノ内ヨリ手当トシテ適宜給与スルコトアルヘシ
   第七条
頭取取締役ノ評議ヲ以テ行員中格別功労アル者ニハ第二条慰労給与ノ外ニ確実ナル生命保険会社ト契約シ金額五百円ヨリ少カラス五千円ヨリ多カラサル終身保険ヲ付シ、第三条第二項ノ場合ニ於テ其保険金額ヲ付与スヘシ
  但此保険掛金ハ第一条慰労積立金ノ内ヲ以テスヘシ
   第八条
第七条ノ保険金額ハ第三条第一項第三項第四項ノ場合ニ於テハ銀行ト
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保険会社トノ契約ヲ解キ、其保険状ハ之ヲ本人ニ付与スヘシ、但タ第四条ノ場合ニ於テハ直ニ其保険ヲ廃止スヘシ
右ハ明治十九年三月頭取取締役ノ審議ヲ以テ制定シタル者也
  明治十九年四月
                    第一国立銀行


第一国立銀行申合規則 〔明治二二年〕(DK040044k-0003)
第4巻 p.465-468 ページ画像

第一国立銀行申合規則 〔明治二二年〕
当銀行頭取取締役ノ衆議ヲ以テ決定シタル当銀行申合規則ハ左ノ如シ
   第一章 総則
第一条 凡ソ銀行ノ営業ハ丁寧ニシテ遅滞ナキヲ貴フ、故ニ頭取支配人タルモノハ常ニ之レヲ体認シテ万般ノ業務ヲ処弁スヘシ
第二条 銀行ノ信用ヲ世間ニ厚フスルハ誠実ト堅固トニアルヲ以テ、営業上寧ロ質朴ニ失スルモ危巧ニ得ルコトヲ求ムヘカラス
第三条 当銀行ノ頭取取締役支配人及各支店ノ主任タルモノハ常ニ国立銀行条例成規ノ要旨ヲ詳悉シ、当銀行ノ定款其他ノ諸規則ニ悖戻セサルハ勿論亦僚属ヲシテ悖戻セサラシムヘシ
第四条 凡ソ当銀行ニ勤仕スルモノハ雇人ニ至ルマテ質素ヲ主トシ、聊カ虚美浮華ノ行為アルヘカラス、又其得意先ニ対シテハ殊ニ敬愛ヲ尽シ毫モ其嫌悪ヲ招ク如キ挙動アルヘカラス
第五条 当銀行本支店ノ諸経費ハ毎ニ其予算ニ照準シテ専ハラ節略ヲ旨トシ苟クモ虚飾ヲ務メテ費用ヲ増加スヘカラス
第六条 当銀行本支店ノ役員タルモノ凡ソ行務ヲ処弁スルニ当ツテハ毫モ私情ニ泥ムヘカラス、又其得意先ニ対シテ自己又ハ他人ノ為メニ借用金ヲ為スヘカラス
第七条 当銀行本支店ノ役員ハ自己ノ商業ヲ為スヘカラサルハ勿論、従前仕来リノ業タリトモ己レ本主トナリテ営業スルヲ得ヘカラス
   第二章 役員配置之事
第八条 当銀行ノ役員ト称スルモノハ左ノ如シ
    本店ハ 頭取  取締役 支配人 副支配人 撿査掛
        書記  計算方 帳面方 為替掛  支払方
        収納方 鑑定方 御用方 公債掛  貸附掛
        用度方
    支店ハ 支配人 計算方 帳面方 為替掛  書記
        出納方 御用方 公債掛 貸附掛  用度方
      但シ御用取扱ナキ地ハ御用方ヲ置カサルヘシ
第九条 役員ノ配置ハ前条ニ定ムル如シト云トモ業務ノ繁閑ト其店ノ都合トニ因リ一名ニテ二三課ヲ兼任スルコトアルヘシ
第十条 当銀行本支店支配人以下ノ役員及雇人等ノ勤務年限ハ頭取取締役ノ命ニ従テ奉職スヘシ
   第三章 役員権限之事
第十一条 当銀行ノ頭取取締役ハ国立銀行条例ノ要旨及当銀行定款ノ条件ニ従テ全体ノ権利責任ヲ有スヘシ、而シテ頭取ハ専ハラ諸般ノ行務ヲ統轄シテ之レヲ指示処弁シ取締役ハ常ニ其行務
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ヲ調査シテ整粛ナラシムルコトヲ務ムヘシ
第十二条 頭取支配人ハ其日常ノ行務ニ於テハ都テ之ヲ決行スルヲ得ルト雖トモ新タニ諸規程ヲ定メ又ハ之ヲ更正廃止シ及ヒ諸官衙ヘ申牒スル文書或ハ諸取引先ニ対スル諸約定貸附荷為替手形割引等ノ事務ハ廻議案ヲ作リ取締役及撿査課長等ノ回議ヲ経テ後之ヲ施行スヘシ、但支店ニ於テハ評議帳ニ其要件ヲ記載シ支配人計算方之ニ撿印スヘシ、但シ右等ノ書類ハ号ヲ追ヒ綴リ込トナシ書記課ニ保存シ置クヘシ
第十三条 本支店ノ支配人ハ頭取取締役ノ命ニ従ツテ其店務ノ全体ニ注意シ、諸役員ヲ督励シ諸計算ヲ整頓セシメ各地往復ノ文書ヲ詳密ニシテ各店ノ事情ヲ明ニシ以テ行務ノ進捗ヲ勉ムヘシ
第十四条 撿査掛ハ毎ニ貸付金当坐貸越並ニ手形割引等ノ事務ニ注意シテ諸計算ヲ点撿精査スベシ、又各地支店ノ報告計算表等ニ不明瞭ノ廉アラハ質問推窮シテ之ヲ頭取取締役ニ具申スヘシ
第十五条 本支店ノ支配人ハ行務上ニ付テ意見アレハ、頭取取締役ニ稟議シテ其裁決ヲ乞フヲ得ヘシ
第十六条 凡ソ各課ノ役員ハ頭取支配人又ハ其課長ノ指揮ニ従ヒ、各其負担ノ事務ハ都テ其責ニ任スヘシ
第十七条 本支店共支配人以下ノ役員ハ最初任命ヲ受ケタル際其職務ヲ誠実ニスルノ証トシテ誓詞並ニ二人以上保証人アル身許引請状ヲ頭取取締役ニ差出シ雇人小使ハ支配人宛ニテ差出スヘシ
     但シ本支店支配人以下七等以上ノ役員ニシテ左ニ定ムル所ノ身元保証金ヲ差出ストキハ頭取取締役ノ考案ヲ以テ本条ノ身元引受状ヲ要セサルコトアルヘシ
        三等   金参千円
        四等   金弐千五百円
        五等   金弐千円
        六等   金千五百円
        七等   金千円
     右保証金ハ現金ヲ以テ差出シタル者ヘハ年七分弐厘ノ利息ヲ支払フヘシ、又本人ノ願ニヨリテハ公債証書若シクハ確実ナル銀行会社ノ株券ヲ以テ代用スルコトヲ得ヘシ
第十八条 諸役員ノ職務上怠慢又ハ過失等ノコトアレハ頭取取締役ハ何時ニテモ之ヲ放免スルヲ得ヘシ、若シ引負金アレハ本人又ハ証人ヲシテ之ヲ弁償セシムヘシ、但シ雇人小使ニ怠慢又ハ過失ノコトアレハ支配人ニ於テ之ヲ決行シ而シテ其事由ヲ頭取取締役ニ具申スヘシ
第十九条 当銀行本支店ノ役員雇人等ハ毎日出勤ノ時ニ支配人役場ノ出勤簿ニ押印スヘシ、若シ病気ニテ出勤シガタキ時ハ書面ニテ其趣ヲ同僚ノ者ニ報シ支配人ニ申出ヘシ
第二十条 本支店共支配人以下ノ役員病気引七日以上ニ及ハヽ医師ノ診断書ヲ添テ頭取役場ニ其由ヲ申出ヘシ、若シ三ケ月以上出勤シガタキ者ハ頭取取締役ノ考案ヲ以テ之ヲ解職シ又ハ給料
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ヲ差止ムヘシ
第二十一条 凡ソ当銀行ノ営業上ニ係ル諸約定書類並ニ諸手形類ニハ必ス当銀行ノ印章ヲ押捺シ、且ツ約定書ノ類ハ本店ハ頭取取締役支配人支店ハ支配人計算方之レニ調印シ手形類ハ頭取又ハ支配人又ハ其掛ノ中ニテ之レニ調印スヘシ
第二十二条 本支店雑費仕払方並ニ諸器具ノ調達各所ノ小普請戸締及ヒ内外ノ掃除小使ノ使役方火災盗難ノ予防等ハ別ニ適宜ノ規程ヲ設ケ用度方ヲシテ之レヲ取扱ハシムヘシ
第二十三条 宿直ハ本店ハ六等以下支店ハ主任ヲ除キ其以下ノ役員又ハ雇人ノ内ニテ便宜人員ヲ定メ交番ニテ堅固ニ相勤メ、火災其他非常ノ事ヨリ電信郵便ノ常務ニ至ルマデ該夜一切ノコトニ注意セシムヘシ
   第四章 各課小則ノ事
第二十四条 荷為換並ニ手形ノ割引ハ営業上極メテ注意スヘキ課目ニ付其取扱ノ方法ハ別ニ規程ヲ設クルヲ以テ其任ニ当ルモノハ常ニ之ヲ服膺シテ万一ニモ過失無カランコトヲ要スヘシ
第二十五条 貸附当座貸越又ハ他店トノ為換約定其他日常事務ノ取扱順序及ヒ臨時処務ノ制限等ハ時々定則ヲ設ケ各其権任ノ限界ヲ明カニスヘシ
第二十六条 本支店共政府ニ関スル金銀ノ取扱ヲ引受クルトキハ其命令書又ハ約束書ヲ遵奉シ、特員ヲ設ケ極メテ精確実直ノ取扱ヲ為サシムヘシ
   第五章 計算報告ノ事
第二十七条 本支店ノ諸勘定ハ毎日事務完了後総勘定差引残高ノ大要ヲ記載シテ之レヲ頭取役場ニ報告スヘシ、而シテ本店ハ其翌日総勘定差引残高記入帳ヲ取締役ノ撿閲ニ供シ、各支店毎土曜日ニ総勘定差引表ヲ製シ本店ノ撿査掛リヘ送付スヘシ
第二十八条 諸帳簿ノ撿査ハ定式臨時ノ二様トナシ、本店ノ定式撿査ハ毎月第三又ハ第四ノ日曜日ニ於テ支配人撿査課長立合ニテ諸勘定ヲ精査シ、其提要ヲ頭取役場ニ報告スヘシ、支店ハ毎月末日ニ於テ之レヲ行ヒ諸勘定ノ明細表ヲ製シ、翌月五日迄ニ本店撿査掛リヘ送付スヘシ、而シテ臨時撿査ハ本店ハ頭取支店ハ支配人ノ必要ト認ムル場合ニ於テ何時ニテモ之ヲ行ヒ報告手続キハ都テ定式撿査ノ例ニ準スヘシ
第二十九条 本支店共毎月実際報告並ニ半季考課状等ハ例規ニ照シ無遅滞之ヲ差出スヘシ、尤モ深ク注意ヲ加ヘ聊カモ誤謬ナキヲ要ス
   第六章 電信暗号ノ事
第三十条 電信暗号ハ業務ノ便捷ヲ資ケ他人ノ漏聞ヲ防カン為ニ制定スルモノナレハ頭取支配人ハ常ニ之レヲ熟知シテ能ク其効用ヲ達スヘシ
第三十一条 電信暗号ハ一字一点ノ錯誤ヨリ不測ノ危害ヲ生スルモノナルニ付頭取支配人又ハ為替掛等其通信ノ際尤モ謹慎ヲ加ヘテ之ヲ取扱フヘシ
 - 第4巻 p.468 -ページ画像 
   第七章 金庫ノ銷鑰ノ事
第三十二条 金庫ノ銷鑰ハ支配人出納方ノ内ニテ之ヲ預リ大切ニ監守ス可シ、尤モ其監守法ハ其店ノ便宜ニ随フヲ得ルト雖モ必ス両人ノ立合ニ非レハ開閉スルコト能ハサラシムヘシ
   第八章 月給旅費其他諸給与ノ事
第三十三条 当銀行役員ノ等級及月給旅費日当手当等ハ左ノ定則ニ準シテ之ヲ支給スヘシ
     但シ当銀行ノ役員並ニ雇員ノ月俸ハ新任昇級ノ者ハ十五日前ナレハ全月分十六日後ナレハ半月分ヲ支給シ辞職放免死亡ノ者ハ十五日前ハ半月分十六日後ハ全月分ヲ支給スヘシ、又降級者ハ十五日前ナレハ下半月分ヨリ十六日後ナレハ翌月分ヨリ各降級ノ割合ヲ以テ支給スヘシ

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 役員等級   一等      二等    三等    四等    五等     六等     七等    八等    九等   十等   等外一等   等外二等 月給     百五十円    六十円   七十円   五十円   三十五円   二十五円   十七円   十二円   九円   七円   四円     三円        増二百円    五十円   六十円   四十円   三十円     二十円   十五円    十円   八円   六円 族費[旅費]   三十銭    二十銭   二十銭   二十銭   二十銭     十五銭   十五銭   十五銭  十二銭  十二銭   十銭     十銭 一里ニ付 宿泊料      五円     三円    三円   二円五十銭 二円五十銭    二円   一円五十銭  一円  八十銭  六十銭  五十銭     五十銭 一泊ニ付 汽車汽船   上等汽車汽船賃    上等汽車汽船賃                中等汽車汽船賃          中等汽車        下等汽車 旅費     壱倍増        五割増                    五割増              汽船賃         汽船賃五割増 



     但シ旅費ハ雪路困難ノ時ニ限リ本表定則ノ五割増ヲ支給スヘシ、又諸役員中甲店ヨリ乙店ヘ転任ノ者ヘハ手当トシテ宿泊料廿日分ヲ支給スヘシ
第三十四条 諸役員中本店ヨリ転任ヲ命セラレタルトキハ家族ノ旅費トシテ五等以上ノ者ヘハ其家族一人ニ付十等ノ旅費ヲ給シ、六等以下ノ者ヘハ等外ノ旅費ヲ支給スベシ
     但シ十二歳未満ハ半額三歳未満ハ支給セス
第三十五条 天長節ニハ諸役員ヘ酒饌料トシテ五等以上ハ金五拾銭六等以下ハ金三拾銭等外小使及ヒ雇人ヘハ都テ金弐拾銭宛ヲ給与スヘシ
第三十六条 諸役員及ヒ小使ノ宿直ニ当ルモノハ其都度壱人ニ付金拾銭宛ノ割合ヲ以テ弁当料ヲ給与スヘシ
     但シ休日ノ当番タルモノモ同様タルヘシ
   第九章 非常警備ノ事
第三十七条 火災其他非常ノコトアレハ銀行ノ諸役員ハ速ニ駈付ケ、各其担当ノ書類並ニ諸帳簿又ハ諸器具等ヲ監護スヘシ、尤モ第一ニ持退クヘキ緊要ノ物品ニハ常ニ予シメ人員ヲ定メ置キ宿直ノ者ハ速ニ其処置ヲ為シ、且ツ諸倉庫戸締防火目塗等ニ至ルマテ厳重ニ手配スヘシ
第三十八条 非常ノ節駈付ケ人足ハ予テ之ヲ設ケ、合印アル外套ヲ渡シ置クヘシ、尤モ持退クヘキ物品ヘモ常ニ合印ヲ附置クヘシ
   第十章 規則更正ノ事
第三十九条 此申合規則ハ頭取取締役ノ協議ヲ以テ之ヲ更正増加スルコトヲ得ヘシ
右之通改定候事
  明治二十二年四月

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第一国立銀行申合規則 〔明治二四年〕(DK040044k-0004)
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第一国立銀行申合規則 〔明治二四年〕
   第一章 総則
第一条 凡ソ銀行ノ営業ハ基礎ノ堅固ナルト営業ノ誠実ナルトヲ以テ世間ノ信用ヲ厚フスルモノナレハ当銀行ノ役員ハ須ラク此旨ヲ躰認シ寧ロ質朴ニ失スルモ危巧ニ得ルコトヲ求ムヘカラス
第二条 凡ソ銀行ノ事務ヲ取扱フニハ深切ニシテ遅滞ナキヲ貴フ故ニ当銀行ノ役員ハ常ニ事務ノ快捷ニシテ誤謬ナキヲ勉ムヘシ
第三条 当銀行ノ役員ハ国立銀行条例成規及ヒ当銀行ノ定款其他ノ諸規則ヲ遵守スヘシ
第四条 当銀行ノ役員ハ廉直公平ヲ主トシ毫モ私情ニ渉ルヘカラス、又銀行ノ取引先ヨリ借用金ヲ為スヘカラス
第五条 当銀行支配人以下ノ役員ハ自己ノ商業ヲ為シ又他ノ銀行会社ノ営業ニ関係スヘカラス
第六条 当銀行ノ役員ハ得意先ノ営業上ニ関スルコトハ一切他言ス可カラス
   第二章 役員ノ職制
第七条 当銀行ノ役員ト称スルモノハ左ノ如シ
    本店 頭取  取締役 支配人 書記  帳面方
       貸付方 支払方 収納方 鑑定方 公債掛
       株式掛  用度方
    支店 支配人 計算方 帳面方 貸付方 書記
       出納方 公債掛 用度方
    但シ各店ノ便宜ト事務ノ繁閑トニ由リ一名ニテ二三課ヲ兼務セシムルコトアルヘシ
第八条 頭取取締役ハ国立銀行条例及当銀行定款ニ拠リ本行ノ事務ヲ管理スルノ権ヲ有シ、而シテ頭取ハ行務ヲ総轄シ取締役ハ行務ヲ監査シ各其責ニ任ス
第九条 頭取ハ日常ノ行務ヲ決行スルヲ得ルト雖トモ諸規程ヲ制定更正シ、諸契約ヲ訂結スル等ノ事ニ至リテハ都テ取締役会議ノ決議ヲ要ス
第十条 本支店支配人ハ取締役会議ニ於テ決議シタル条項ニ拠リ、店務一切ヲ処理シ、課員ヲ督励シ営業ノ進歩ヲ図リ行務ヲ整理スルノ責ニ任ス
第十一条 支店計算方ハ常ニ支配人ノ事務ヲ補助シ貸付割引荷為換等ノ事務ニ注意シ、諸計算ヲ整理スルノ責ニ任ス
    但支配人不在ノトキハ其事務ヲ代理スヘシ
第十二条 支店支配人及計算方ノ任期ハ三ケ年ト定メ、満期ニ至レハ交代セシムヘシ
    但取締役会議ノ決議ニ由リ之ヲ伸縮スルコトアルヘシ
第十三条 支店支配人又ハ計算方交代シタルトキハ速ニ現金帳簿諸証書抵当物件等詳密ノ撿査ヲ遂ケ、引継ノ事ヲ了シ一週間以内ニ正確ナル報告計表ヲ作リ本店ニ差出スヘシ
第十四条 出張所主任ハ其権限内ニ於テ店務一切ヲ整理シ主管ノ支店
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ニ対シ其責ニ任ス
第十五条 書記ハ文書ノ事務ニ専任シ図書記録ヲ整理スルノ責ニ任ス
第十六条 帳面方ハ簿記計算ノ事務ニ任シ、定規ノ式様ニ照準シテ諸帳簿諸報告ヲ正確ニ記載シ、何人ノ差図ト雖トモ不正ノ記帳ヲナスヘカラス
第十七条 支払方収納方鑑定方(支店ハ出納方)ハ金銭出納ノ事務ニ任シ、何人ノ差図ト雖トモ規定外ノ出納ヲナスヘカラス、又管守金中ニ於テ立替貸又ハ仮払等ヲナスヘカラス
第十八条 貸付方ハ諸貸付荷為換割引等ノ事務ニ任シ、其取扱ヲナスニ当リテハ必ス回議票ヲ作リ、本店ハ支配人支店ハ支配人計算方ノ撿印ヲ受ケ、其有抵当ニ係ルモノハ之ヲ査収シタル上金員ヲ貸渡スヘシ
    但本店ノ回議票ハ之ヲ頭取取締役ノ回覧ニ供スヘシ
第十九条 公債掛ハ本行所有及他方ヨリ寄託ノ公債証書株券等ヲ保管スルノ事務ニ任シ、其出入アルトキハ之ヲ帳簿ニ記入シ、支配人ノ撿印ヲ受クヘシ
第二十条 株式掛ハ本行株式ニ関スル一切ノ事務ニ任シ株式帳簿ノ記入ヲ明瞭ニスヘシ
第二十一条 用度方ハ支配人ノ指図ヲ受ケ俸給旅費雑費等ノ支払ヲナシ、家屋什器等修繕保管ノ事務ニ任シ店内一切ノ用度ヲ処弁スヘシ
   第三章 役員ノ義務
第二十二条 当銀行支配人以下ノ役員ハ新任ノ際誠実ニ勤務スヘキ証トシテ規定ノ誓詞並ニ身元引受証書ヲ差出スヘシ
第二十三条 支配人以下ノ役員ニシテ左ニ掲クル所ノ身元保証金又ハ其金額ニ相当スル公債証書若クハ確実ナル銀行会社ノ株券ヲ差出シタルモノハ取締役会議ノ決議ヲ以テ第二十二条ノ身元引受証書ヲ要セサルコトアルヘシ
    但本条ノ保証金ハ相当ノ利息ヲ付スヘシ
        三等勤仕    金参千円
        四等勤仕    金弐千五百円
        五等勤仕    金弐千円
        六等勤仕    金千五百円
        七等勤仕以下  金千円
第二十四条 支配人以下ノ役員ニシテ第廿三条ノ身元保証金ヲ差出ササル者ハ月俸ノ百分ノ五賞与金ノ百分ノ十ヨリ少ナカラサル金額ヲ毎月及ヒ毎半季本行ヘ預ケ入ルヘシ
第二十五条 支配人以下ノ役員ハ毎日規定ノ時間内必ス出勤スヘシ、若シ病気其他ノ事故ニテ出勤シ難キトキハ其由ヲ支配人ヘ届出ツヘシ
第二十六条 支配人以下ノ役員病気ノ為メ欠勤七日以上ニ及フトキハ医師ノ診断書ヲ添ヘ其由ヲ支配人ヘ届ケ出ツヘシ
    但三ケ月以上欠勤シタル者ハ取締役会議ノ決議ヲ以テ之ヲ解雇シ、又ハ給料ヲ支給セサルコトアルヘシ
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第二十七条 本店ハ六等以下支店ハ支配人計算方ヲ除キ其以下ノ役員雇員等便宜人員ヲ定メ宿直及休日ノ当直ヲナスヘシ
   第四章 処務通則
第二十八条 本支店ノ諸経費ハ予算ニ照準シテ勉メテ之レヲ節約スヘシ
第二十九条 金庫ノ銷鑰ハ内外二個ヲ設ケ支配人支払方(支店ハ出納方)各其一個ヲ管守シ両人立会ニ非レハ必ス開閉スヘカラス
第三十条 諸約定書ハ必ス社印ヲ鈐シ、本店ハ頭取取締役支配人支店ハ支配人計算方連署調印スヘシ
第三十一条 諸貸付金ノ抵当貨物ハ成ル可ク確実ナル倉庫会社ノ保管ニ付スヘシ、若シ本行ノ倉庫又ハ借庫ニ積入ルトキハ其蔵所ニ就キ品質数量等ヲ撿査シ其倉庫ニ封印ヲ為シ水火盗難等ヲ予防スヘシ
第三十二条 諸貸付金ノ抵当タルヘキ貨物ハ如何ナル事情アルモ借主ニ寄託シ、又ハ借主ノ倉庫ニ積入ルヘカラス
    但不得已場合ニ於テハ取締役会議ノ決議ヲ経テ取扱フコトアルヘシ
第三十三条 本支店ヨリ大蔵省ヘ差出スヘキ諸報告及支店ヨリ本店ヘ差出スヘキ計算表等ハ例規ニ照ラシ遅滞スヘカラス、若シ之ヲ怠ルトキハ支配人計算方均シク其責ニ任スヘシ
   第五章 撿査規程
第三十四条 本店支配人ハ毎月一回又ハ二回本店各課ノ事務ヲ撿査シ、取締役会議ニ申告スヘシ、但頭取取締役ニ於テ必要ト認ムルトキハ臨時撿査ヲ行フコトアルヘシ
第三十五条 支店支配人及計算方ハ毎月一回各課ノ事務ヲ撿査シ、正確明瞭ナル報告表ヲ作リ本店ニ差出スヘシ
第三十六条 支店支配人又ハ計算方ハ毎月若シクハ隔月所轄出張所ヲ巡撿シ、其実況ヲ本店ヘ報告スヘシ
    但元山津出張所ハ此限ニ非ス
第三十七条 頭取取締役及本店支配人ハ臨時各支店ヲ巡視シ、其実況ヲ取締役会議ニ報告スヘシ
   第六章 取締役会議
第三十八条 取締役会議ハ毎週一回(水曜日)又ハ臨時本店ニ於テ会議ヲ開キ左ニ記載スル事項ヲ評議決定スルモノトス
   第一 本支店支配人ノ処務程限ニ関スル件
   第二 本支店支配人ノ稟議ニ関スル件
   第三 本支店役員ノ任免黜陟ニ関スル件
   第四 諸規則及諸契約ニ関スル件
第三十九条 取締役会議ノ議長ハ頭取之ニ任シ、頭取出席セサルトキハ取締役代理スヘシ
第四十条 本店支配人ハ取締役会議ニ列シテ意見ヲ述ルコトヲ得、又時宜ニヨリ支店支配人ヲ参列セシムルコトアルヘシ
第四十一条 取締役会議ニ於テ決議シタル条項ハ其事柄ニヨリ本店又ハ支店ヘ令達スヘシ
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   第七章 給与規程
第四十二条 当銀行役員ノ月俸旅費宿泊料等ハ左表ニ拠リ支給スヘシ

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 役員等級   一等     二等    三等    四等    五等     六等     七等    八等    九等    十等   等外   雇員 月給     百五十円   六十円   七十円   五十円   三十五円   二十五円   十七円   十二円    九円   七円   四円   不定        増二百円   五十円   六十円   四十円    三十円    二十円   十五円    十円    八円   六円   三円 車馬賃     三十銭   二十銭   二十銭   二十銭    二十銭    十五銭   十五銭   十二銭   十二銭  十二銭   十銭   十銭 壱里ニ付 汽車壱哩     六銭    五銭    五銭    五銭     五銭     四銭    四銭    三銭    三銭   三銭   二銭   二銭 汽船壱海里 宿泊料      五円    三円    三円   二円五十銭  二円五十銭   二円   一円五十銭  一円   八十銭  六十銭   五十銭  五十銭 一泊ニ付 



    但車馬賃ハ急行又ハ雨雪等ノ為メ其賃銭定則ヨリ超過スル場合ニ於テハ実費ヲ以テ支給スルコトアルヘシ
第四十三条 当銀行役員及雇員ノ任免黜陟等ニ係ル月俸ハ都テ十五日前後ヲ以テ区別シ支給スヘシ
第四十四条 当銀行ノ役員転地赴任スルトキハ本人及其家族トモ手当トシテ宿泊料三十日分ヲ支給スヘシ
第四十五条 前条ノ転任者五等以上ノ家族ハ十等ニ六等以下ハ等外ニ準シ、旅費及宿泊料ヲ給与スヘシ
    但十二歳未満ハ半額ヲ給与シ四歳未満ハ給与セス
第四十六条 支店支配人ハ其任所ニヨリ役宅又ハ相当ノ役宅料ヲ給与スヘシ
   第八章 罰則
第四十七条 支配人以下ノ役員此規則ニ違犯シタルトキハ取締役会議ノ決議ヲ以テ免職降等罰俸等ニ処シ又ハ賞与金ヲ減削スルコトアルヘシ
第四十八条 雇員小使等ニ怠慢又ハ過失ノモノアルトキハ支配人之ヲ処分シ、其事由ヲ頭取取締役ニ申告スヘシ
  明治廿四年十月十一日改定