公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第4巻 p.529-538(DK040054k) ページ画像
明治29年7月19日(1896年)
株主総会ヲ開キ、予メ営業継続後ニ於ケル株式会社第一銀行ノ取締役監査役ヲ選挙ス。栄一頭取ニ上任ス。
第一銀行五十年史稿 巻四・第八一頁(DK040054k-0001)
第4巻 p.529 ページ画像
第一銀行五十年史稿 巻四・第八一頁
営業継続の件は六月廿六日大蔵大臣の許可を得たれば、七月十九日株主臨時総会において、予め営業継続後即ち株式会社第一銀行の重役を選挙せるに、渋沢栄一・西園寺公成・三井八郎次郎・佐々木勇之助・熊谷辰太郎は取締役に、須藤時一郎・日下義雄は監査役に当選し、渋沢栄一は更に取締役の互選を以て頭取に上任せり。
株式会社第一銀行第一期営業報告書 〔明治二九年下期〕(DK040054k-0002)
第4巻 p.529 ページ画像
株式会社第一銀行第一期営業報告書 〔明治二九年下期〕
株主総会
七月十九日株主臨時総会ヲ開キ、五月十七日臨時総会ノ決議ヲ経タル当銀行営業継続ノ件ハ、営業満期国立銀行処分法施行細則第一条ニ拠リ、其十九日東京府知事ヲ経テ大蔵大臣ニ出願シ、爾後大蔵省ノ内示ニ依リ、定款第二条但書末文「払込ミタルモノトス」ヲ「払込ムヘキモノトス」ト訂正シ、同第十四条通常総会云々ノ「通常」ノ二字ヲ削除シ、遂ニ六月廿六日ヲ以テ満期後私立銀行トシテ営業継続ノ認可ヲ得タリ、此ヲ以テ九月廿五日満期ニ於テ、同細則第八条ニ拠リ諸勘定ヲ為スヘキハ勿論ナレトモ、七月一日ヨリ満期マテノ利益ハ、其際之ヲ配当スヘカラサルモノト、同省ヨリ指令セラレタルヲ以テ、十月ニ於テハ総会ヲ開カス、其利益金ハ之ヲ継続後ノ計算ニ繰込ミ、継続後ノ利益ト共ニ明年一月総会ノ決議ヲ経テ、配当スヘキ等ノ事ヲ報告ス次ニ定款第廿一条ニヨリ頭取取締役監査役等ノ報酬額ヲ求議シ、頭取ハ年俸四千弐百円、取締役監査役ハ均シク年俸八百円ニ決定ス
次ニ取締役監査役ヲ撰挙シ、取締役ニ渋沢栄一・西園寺公成・三井八郎次郎・佐々木勇之助・熊谷辰太郎、監査役ニ須藤時一郎・日下義雄投票多数ナルヲ以テ、皆其上任ヲ承諾ス
〔参考〕第一銀行五十年史稿 巻四・第八二―一〇二頁(DK040054k-0003)
第4巻 p.529-538 ページ画像
第一銀行五十年史稿 巻四・第八二―一〇二頁
国立銀行としての本行の地位
抑々本行が始めて開業免状を下付せられしは明治六年七月二十日にして、爾来二十有三年の久しき間経済上枢要の機関となり、金融の疎通
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を図り産業の発達を助けたること尠からず、其資産信用共に国立銀行中に於て卓然群を抜き夙に模範銀行の名あり、且東京同盟銀行の幹事として其牛耳を執れるのみならず全国各銀行団よりも泰斗と仰がる。此を以て財政経済上の重要問題起る毎に政府は先づ之を本行に謀り、銀行団また本行の指導を待ちて動くを常とす、かくて隠然銀行界の盟主となれり、国立銀行としての本行が如何に重要なる地位を占め、又如何に威望の高かりしかは想像に余りありといふべし、今や紙幣発行の特権を失ひ普通銀行に変形するに至りたれども、本行が商業銀行として産業の発達に努力したるは創業以来の方針なれば、本行の信用と勢力とは国立銀行たると普通銀行たるによりて変ることなく、経済界の重鎮たるは旧に仍りて依然たり、要するに本行は国立銀行として最も能く其任務を尽し、また能く其終りを完くせりと称するを得べし。本行が国立銀行時代における営業成績を示さんが為に、前章を承けて明治十七年以降営業満期の際に至るまでの各種統計を掲げて、参考に供せんとす。
○中略
(年) (季) (払込資本金) (積立金) (銀行券流通高) (貸出金) (預金) (有価証券) (金銀) (経費) (純益金) 二九 上 〃(二、二五〇、〇〇〇) 一、七五〇、〇〇〇 七六九、七八五 一三、六二八、〇五二 一一、八四四、七一六 二、三四一、六一二 二、七一六、九五一 六八、八七九 二二七、九〇五
創業以来の重役支配人
本行は創業以来健全なる発達を遂げて国立銀行中の盟主となり、斯界の覇権を握るに至れるは、要するに行員の上下一致して業務に精励し、株主もまた当事者を信頼して十分に手腕を振はしめたるによれり、然れども重役の経営宜しきを得るにあらざれば、孰ぞ斯く優良なる成績を挙ぐることを得ん、今や創業以来営業満期の際に至るまでの重役支配人の姓名を挙ぐること左の如し。
第一期
頭取 三井八郎右衛門
同 小野善助
副頭取 三野村利左衛門
同 小野善右衛門
取締役 斎藤純造
同 行岡庄兵衛
第二期
頭取 三井八郎右衛門
同 小野善助
副頭取 三野村利左衛門
同 小野善右衛門
取締役 三井三郎助
同 斎藤純造
同 永田甚七
同 行岡庄兵衛
第三期
頭取 三井八郎右衛門
- 第4巻 p.531 -ページ画像
副頭取 三野村利左衛門
取締役 斎藤純造
同 三井三郎助
同 永田甚七
第四期
頭取 三井八郎右衛門
副頭取 三野村利左衛門
取締役 三井三郎助
同 斎藤純造
同 永田甚七
第五期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井八郎右衛門
同 三野村利左衛門
同 永田甚七
同 三井元之助
同 西園寺公成
同 斎藤純造
第六期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井八郎右衛門
同 三野村利左衛門
同 永田甚七
同 三井元之助
同 西園寺公成
同 斎藤純造
第七期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井八郎右衛門
同 三野村利左衛門
同 三井元之助
同 西園寺公成
同 斎藤純造
支配人 永田甚七
第八期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井八郎右衛門
同 三井元之助
同 西園寺公成
同 斎藤純造
支配人代理 永田甚七
第九期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井八郎右衛門
同 三井元之助
同 西園寺公成
同 斎藤純造
支配人 永田甚七
- 第4巻 p.532 -ページ画像
第十期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井八郎右衛門
同兼支配人 永田甚七
取締役 西園寺公成
同 斎藤純造
同 中山信彬
第十一期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井八郎右衛門
同兼支配人 永田甚七
取締役 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
第十二期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同兼支配人 永田甚七
取締役 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
第十三期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同兼支配人 永田甚七
取締役 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
第十四期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
同兼支配人 永田甚七
第十五期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
同兼支配人 永田甚七
第十六期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
- 第4巻 p.533 -ページ画像
同兼支配人 永田甚七
第十七期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第十八期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第十九期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第二十期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第二十一期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第二十二期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第二十三期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
- 第4巻 p.534 -ページ画像
取締役 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第二十四期
頭取 渋沢栄一
取締役 三井高福
同 西園寺公成
同 斎藤純造
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
第二十五期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
支配人 佐々木勇之助
(備考)三井 斎藤両名ハ死去
第二十六期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 三井高朗
同 須藤時一郎
支配人 佐々木勇之助
第二十七期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 三井高朗
同 須藤時一郎
支配人 佐々木勇之助
第二十八期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 井口新三郎
支配人 佐々木勇之助
第二十九期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 井口新三郎
支配人 佐々木勇之助
第三十期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
- 第4巻 p.535 -ページ画像
同 須藤時一郎
同 井口新三郎
支配人 佐々木勇之助
第三十一期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
支配人 佐々木勇之助
第三十二期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
第三十三期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
第三十四期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
第三十五期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
第三十六期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
第三十七期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
- 第4巻 p.536 -ページ画像
取締役 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第三十八期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第三十九期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井源右衛門
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第四十期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第四十一期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第四十二期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第四十三期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
- 第4巻 p.537 -ページ画像
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第四十四期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第四十五期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
同 熊谷辰太郎
第四十六期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
第四十七期
頭取 渋沢栄一
取締役 西園寺公成
同 三井八郎次郎
同 須藤時一郎
同 三井元之助
支配人 佐々木勇之助
渋沢栄一は明治九年始めて頭取の任に就きたれども、其以前には総監役の名によりて頭取の実務を執れること上文に言へるが如し、頭取は夙に慶応明治の交欧洲に遊びて銀行業を視察する所あり、帰朝の後大蔵省に出仕し、租税正より累進して三等出仕に昇り、大蔵少輔事務取扱となり、銀行条例の制定に与れるのみならず、本行の創立も其指導監督の下に成れり、幾もなく野に下りてより、常に本行の首脳として外は政府及び同業者と折衝し、内は万般の事務を総理し、本邦創始の新事業を開拓して天下に模範を示せる事多し、且頭取は智能卓絶八面玲瓏の美質を具へ、大蔵省の官吏として維新の大業を輔翼せる手腕は識者の斉しく認識せる所にして夙に世上の重望を負ひたり、本行が此人によりて統率せられしは誠に幸福なりといふべし、斯くて本行の経営は概ね頭取の画策に出でざるはなく、能く世運の発達に順応して後
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れず、殊に彼の小野組の破産の如き、官金の引揚の如き、並に皆創業後基礎いまだ鞏固ならず、信用なほ薄弱なる際に起り、処置一歩を誤らば本行の運命また図り知る可からざるものありしに、幸に厄難を脱却し来りて今日の盛運を致せるもの、蓋し頭取の賜なり、本行の頭取に負ふ所極めて大なりといふべし。而して取締役たりし三野村利左衛門・永田甚七・西園寺公成・斎藤純造・須藤時一郎、支配人たりし佐々木勇之助・熊谷辰太郎等、皆一代の選なり、就中佐々木支配人は早く英人「シヤンド」に就きて銀行学を講習し、創業の際より行務に従ひしが、慧眼なる渋沢頭取は其の俊秀の士たるを看破し、誘掖教導して其才を養はしめたれば、身を帳面方の卑職より起して、次第に驥足を展べ、明治十四年以来支配人の重任に膺れり、其人となり誠実明敏にして臨機応変の才に富み、其頭取を輔けて業務を視るや常に内外の形勢を注意し、其施設する所一糸乱れざるの概あり、当時渋沢頭取は各種の事業に参与し、帝国文化の発達に力を傾けたれば、内助其人を得ると否とはたヾ本行に至大の関係あるのみならず、頭取の活動をも拘束し、文化を阻碍せること多かりしならんに、明達なる頭取に配するに慎敏なる佐々木支配人を以てせるは、誠に其宜しきを得たるものなりき、顧ふに頭取が明治大正年間の偉人なるは天下の定評なり、而して頭取の偉大なるだけ佐々木支配人の功績が之に掩はれて世に知られざりしは余輩の常に遺憾とする所なり、故に此に之を表明せんとす