デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2018.12.20

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

2章 交通
2節 鉄道
27款 東京市ノ市街鉄道
■綱文

第9巻 p.412-419(DK090048k) ページ画像

明治32年7月24日(1899年)

栄一、東京商業会議所ヲ代表シ、東京市ノ市街鉄道ヲ有力ナル私設会社ニ特許シテ、速ニ敷設セシムベキ旨ヲ内務大臣侯爵西郷従道ニ建議ス。


■資料

東京商業会議所月報 第八四号〔明治三二年八月〕 【同月同日○明治三十二年…】(DK090048k-0001)
第9巻 p.412 ページ画像

東京商業会議所月報  第八四号〔明治三二年八月〕
同月同日○明治三十二年七月二十四日東京市内交通機関ノ義ニ付内務大臣へ建議書ヲ進達ス(建議書ノ全文ハ参照ノ部第四号ニ掲載ス)

 - 第9巻 p.413 -ページ画像 

東京商業会議所月報 第八三号〔明治三二年七月〕 【○参照第四号 明治三十二年…】(DK090048k-0002)
第9巻 p.413-416 ページ画像

東京商業会議所月報  第八三号〔明治三二年七月〕
○参照第四号
 明治三十二年七月二十二日臨時会議ノ決議ニ基キ、同月二十四日附ヲ以テ内務大臣ニ進達シタル東京市内鉄道ノ義ニ就テノ建議全文ハ左ノ如シ
    東京市内鉄道ノ義ニ付建議
東京市ハ帝国ノ首府ニシテ戸口ノ多キコト世界有数ノ一大都会タルニ関ラス、交通機関ノ一タル市街鉄道ノ実況如何ト顧ミレハ才カニ旧式ノ馬車鉄道ノ市内一部ノ交通ニ便スルアルノミ、数年来各種鉄道ノ敷設ヲ計画シテ出願セシモノ数十件ノ多キニ及ヘリト雖モ未タ一モ許否ヲ決セラレス、而シテ其出願セシモノ亦区々小部分ノ設計ニ属スルモノ多シ、苟クモ是クノ如クニシテ時日ヲ空過スルアラン乎啻ニ百五十万市民ヲシテ交通ノ不便ニ困マシムルノミナラス、延テ商工業ノ発達ヲ阻害スルコト将サニ測ラレサルモノアラントス、改正条約已ニ実施セラレ外人ノ来テ雑居スルモノ漸ク多カラントスルノ際ニ於テ、市内交通ノ不便現時ノ如クンハ帝都ノ面目ヲ奈何スヘキヤ、今ノ計ヲ為スモノ区々タル小規模ノ設計ヲ排却シ、新ニ確実有力ナル私立会社ヲ組織セシメ之レニ特許シテ速ニ其敷設ニ着手セシムルヲ急務トス、仍テ本会議所ハ別紙意見ヲ具シテ閣下ニ建議ス、願クハ之ヲ採納セラレンコトヲ、若夫原動力及方式ノ如キ技術上ノ問題ニ至テハ専攻技術家ノ間自ラ得失ノ定論アラン、之ヲ審按シテ決定セラルヽコト蓋シ容易ナリト信ス、閣下幸ニ裁断ヲ賜ヘ
右本会議所ノ決議ニ依リ建議仕候也
  明治三十二年七月二十四日
            東京商業会議所会頭 渋沢栄一
   内務大臣 侯爵 西郷従道殿
    東京市街鉄道ニ関スル意見
第一 東京市街鉄道ハ全然民有事業ト為シ、確実ナル私立会社ニ之レカ敷設ヲ特許スヘキ事
    理由
 東京市街鉄道ヲ市有ト為スト民有ト為ストノ可否ニ就テハ近来之レヲ論議スルモノ少ナカラス、欧米各国ニ於テモ市街鉄道問題ノ起ルヤ其可否得失ヲ討究シテ議論二派ニ分レタルモノヽ如シ、而シテ各国都府カ実践シ来リタル跡如何ヲ考査スレハ致ル所民有ニ係ルモノ多ク全然市有ニ属スルモノハ殆ト稀ナリ、現ニ百万以上ノ人口ヲ有スル英ノ倫敦ノ如キ、仏ノ巴里ノ如キ、独ノ伯林ノ如キ、米ノ紐育ノ如キ総テ民有ナラサルハナク、中ニ就キ只纔ニ倫敦ニ於テ市街鉄道ノ小部分ヲ市有ト為セル一異例アルニ過キス、其市有ト為セル軌道ニ至テモ初メヨリ市有タリシニハアラスシテ、或ハ合意中途ニシテ市有ニ変シ、或ハ期限満チテ後市有ニ帰シタルモノナリ、既ニ発達進歩シタル欧米都府ノ実況是ラノ如クナルヲ観ルモ民有ノ利ニシテ市有ノ不利ナルヲ知ルヘキナリ、特ニ我東京市ノ如ク始メテ市街鉄道ヲ完備セントスル創業ノ場合ニ在テハ速成ヲ期スルニ於テ最モ
 - 第9巻 p.414 -ページ画像 
民有ヲ利ナリトス、欧米各国中小都市ニ至テハ全然市有ニ属セシムルモノナキニアラサルモ皆不良ノ成績ヲ示シ、市有トシテ好結果ヲ得タリト称スルモノハ一ノ英国「グラスゴー」市アルノミ、同市ノ如キモ初メハ民有ナリシモ期限満チテ後市有ニ帰セシナリ、而シテ其比較的好結果ヲ得タルハ民有営業中私立会社ヨリ市ヘ納メタル利益ヲ積立テ置キ、市有トナリタル際総資本ノ半額以上ヲ消却減少シタルニ起因スルモノタリ、顧フニ我東京市ハ市区改正事業ト云ヒ水道事業ト云ヒ、将タ築港事業ト云ヒ、莫大ノ資本ヲ要スル事業眼前ニ横ハレリ、此際更ニ数千万円ノ資本ヲ要スヘキ市街鉄道ヲ市有ト為スカ如キハ市ノ経済上ニ於テモ其管理上ニ於テモ策ノ得タルモノニアラス、宜シク確実有力ナル私立会社ニ向テ全然之ヲ特許シ速ニ其敷設ニ着手セシムヘキナリ、或ハ軌道ノ所有ト営業トヲ分離スルノ可否ヲ論議スルモノナキニ非ラサルモ、発達セル方今ノ原動力ニ至リテハ二者相須テ改良進歩セシムヘク、決シテ分離スヘカラサルモノナルヲ信ス
第二 特許会社ヲシテ普通納税ノ外特ニ市ニ対シ総収入金ノ割合ニ応シテ其百分ノ四、乃至百分ノ十、或ハ純益金ノ百分ノ八、乃至百分ノ二十ヲ納メシムヘキ事
    理由
 特許ヲ得テ市ノ公道ヲ使用スル以上ハ特別ノ義務ヲ負フヘキハ自然ノ理ナリ、欧米各国ノ実例ヲ見ルニ市ト会社トノ関係ハ種々ニシテ各州各市其趣ヲ異ニスト雖モ、或ハ契約ニ依リ或ハ法律ニ依リ会社ヲシテ特別ノ義務ヲ負担セシムルニ至リテハ殆ント其軌ヲ同フシ、之ニ負担セシムル義務ノ多少ハ免許年限ノ長短若クハ土地ノ状況ニ依リテ其数ヲ異ニスルカ如シ、今試ニ採テ以テ我標準ト為スヘキニ庶カラント認ムル数例ヲ表示スルハ左○第四一五頁ノ如シ
 以上諸例ヲ参酌シテ之ヲ我国財産ノ程度並ニ会社収利ノ程度ニ照セハ、我東京市ニ在テハ会社ヲシテ其総収入金ノ百分ノ四乃至百分ノ十、或ハ純益金ノ百分ノ八乃至百分ノ二十ヲ市ニ納メシムルモ決シテ過当ニアラサルヘキヲ信ス、而シテ此特別税トシテ会社ヨリ納ムル巨額ノ金員ハ年々之ヲ市街道路全躰ニ充テ道路ノ改良ヲ図ルヘキナリ
第三 会社ニ対スル特許年限ヲ三十ケ年トシ満期後更ニ一期間継続スルヲ得セシメ、会社ニ於テ継続ヲ望マサルカ又ハ再度ノ期限満ツルトキハ、現在セル軌道其他ノ建設物ヲ評価シ相当市価ヲ以テ市ニ買上クルコトアルヘシト定ムル事
    理由
 特許期限及ヒ期限後ノ処分ニ付テハ欧米各都市其軌ヲ一ニセスト雖モ、我国従来ノ状況ニ照ラスニ三十ケ年ヲ以テ一期トシ、更ニ一期間継続スルヲ得セシムルニ於テハ長短宜シキヲ得ルニ庶カルヘシ、而シテ期限後ハ相当市価ヲ以テ市ニ買上シムルコト最モ適当ナリ、仏国巴里ノ如ク期限後ハ無代価ヲ以テ市有ニ帰セシムルノ例ナキニ非サルモ、軌道ノ如キ土地ニ附属スルモノヲ無代価ヲ以テ市有ト為スハ理ニ於テ当ヲ失スルノミナラス、無代価市有ト為スノ制ハ交通

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  以下p.415 ページ画像  国名都府名                     免許年限                        特別義務ノ甲種                                                   同乙種 独国伯林市                    四十年間(原動力ヲ電気ニ変更ノ為メ九年間増加契約)  一 一ケ年金壱千五百万マークニ至リテ百分ノ八                                   軌道間並ニ軌道外二―六時間道路ノ他ノ部分ト同様ニ仕上且ツ修繕ヲナスコト尤モ市ニ於テ修繕スルトキハ其費用ヲ負担セシムルコト                                                     一 漸次収入ノ増加ト共ニ増額ス                                                     一 一ケ年金六百万マークノ総収入ニ対シ百分ノ四 米国 マサツチユーセツ州ボストン市        無年限                        無条件                                                      軌道間及軌道外各一尺五寸ノ築路及改良共会社ノ負担トス 米国 ニユーヨーク州バファロ市          無年限                        総収入百五十万弗以内 百分ノ二                                          会社ハ軌道間並ニ軌道外二尺ノ守成ヲ負担スルモノトス                                                     総収入二百万弗以内  百分ノ二半                                                     総収入三百万弗以内  百分ノ三 カナダ州モントリオール市             三十年                        総収入百万弗以内百分ノ四                                             会社ハ其車道修繕後ハ市内ノ築路ノ義務ヲ有セス市ハ市内公共保安ノ為メ築路ノ義務ヲ有ス                                                     総収入二百万弗以内百分ノ八                                                     総収入三百万弗以内百分ノ十二 米国 ニユーヨーク州ロチエスター市        九十九ケ年                      会社ハ一車毎ニ五弗及ビ千九百〇五年迄ハ総収入ノ百分ノ一及千九百五年以後ハ総収入ノ百分ノ二ヲ市ニ納ムルモノトス   会社ハ軌道間及軌道外二尺ノ修繕及維持ヲ要スルト雖モ新道ヲ築路スルコトヲ要セス カナダ州クエベツク市               三十年                        認可後三年ノ後ヨリ向フ廿二年間総収入ノ百分ノ四其後ハ総収入ノ百分ノ五ヲ市ニ納ムヘシ                会社ハ軌道間及軌道外二尺ノ間適当ノ方法ヲ以テ敷石シ及其維持ヲ要シ又冬期其部分ノ氷雪ヲ排除スヘシ 米国 ロードアシランド州《(イ)》パウタケツト市 二十年                        初メノ五年間ハ総収入ノ 千分ノ五                                         会社ハ市内共有地道路及鉄道ニ使用スル高地並ニ軌道外一尺五寸ノ整頓及維持ヲ負担スルモノトス、注意市内乗客賃銭ハ五仙トス                                                     第二 同        千分ノ十                                                     第三 同        千分ノ十五                                                     第四 同        千分ノ二十 米国 ウーンアツケツト市ロードアイランド州    二十ケ年                       会社初年総収入ノ    百分ノ一                                         会社ハ車道ニ使用スル市街ノ部分整頓及維持ヲ負担スルモノトス                                                     二年目         百分ノ二                                                     三年目ヨリ以後     百分ノ三 米国 ニユーヨーク州大ニユーヨーク市       二十五年但其後尚二十五年間継続スルヲ得ルモノトス   千八百八十四年以後ニ築造スル線路ハ人口百二十万以上ノ都府ハ五ケ年間総収入ノ百分ノ三其後ハ百分ノ五トス」其他ハ法律ニヨリ百分ノ三以上ヲ取ル可カラサルモノトナリ居レリ   軌道内及軌道外一尺五寸ノ築路及修繕ヲナスヘシ 



 - 第9巻 p.416 -ページ画像 
 機関ノ発達ヲ妨クル弊ヲ生シ易シ、現ニ巴里ノ如キ其市街鉄道ハ期限ニ近ツケル為メ毫モ修繕改良ヲ施スナク全市ノ受クル不便少カラサルモノアリ、我東京市ハ宜シク会社ヲシテ安ンシテ事業ノ改良発達ヲ図ルヲ得セシムルノ方針ヲ採ルヘキナリ
第四 市内線路ヲ撰択シテ五期ニ区分シ一期ヲ二ケ年トナシ、向フ十ケ年ヲ期シテ完成セシムルコトヽ定メ、市区改正事業ヲシテ之ニ伴ハシムヘキ事
    理由
 市街鉄道ヲシテ迅速ニ竣工セシムル為メ其線路ヲ五期ニ区分シ、交通上最モ緊急ニ敷設セシムヘキ線路ヲ撰ヒテ第一期線トナシ、以下順次撰択シテ其期ノ線路ヲ定メ市区改正事業ヲシテ之ニ伴ハシメラレンコトヲ要ス、蓋シ市区改正事業ニシテ今日ノ如ク遅緩ヲ極ムルニ於テハ、最要交通機関ノ一タル市街鉄道ハ容易ニ其完備ヲ期スヘカラス、是レ特ニ二者相須テ進マシムルヲ必要トスル所以ナリ


東京経済雑誌 第四〇巻第九八八号・第一七二―一七三頁〔明治三二年七月二二日〕 〇市街鉄道に対する東京商業会議所の意見(DK090048k-0003)
第9巻 p.416-417 ページ画像

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冊子版の『渋沢栄一伝記資料』をご参照ください。

〔参考〕東京市会史 第二巻・第二四四―二四七頁〔昭和八年三月〕(DK090048k-0004)
第9巻 p.417-419 ページ画像

東京市会史  第二巻・第二四四―二四七頁〔昭和八年三月〕
▽市内交通機関ニ関スル意見書提出ノ建議 五月十八日ノ会議ニ於テ藤田藤一郎君外二十九名ヨリ提出ノ左ノ建議ヲ上程セリ。
  一 市内交通機関ニ関シ内務大臣ニ意見書提出ノ建議
  右提出候也
   明治三十二年五月十七日
            藤田藤一郎  峰尾勝春
            町田朝太郎  利光鶴松
            後藤亮之助  細井栄三郎
            横山富次郎  曲木如長
            今泉勝平   村上耕一郎
            安川繁成   田中新兵衛
            中鉢美明   木村荘平
            小笠原寿長  伊東勅典
            大貫実    杉原栄三郎
            中沢彦吉   磯部武者五郎
 - 第9巻 p.418 -ページ画像 
            石井義正   名子新七
            久徳猶行   秋虎太郎
            河原伊平   今井喜八
            五味卯三郎  中島行孝
            山本新平   西沢善七
    東京市会議長 須藤時一郎殿
      市内交通機関ニ関スル意見書
  本市ニ於ケル交通機関ハ一トシテ視ルヘキモノナキヲ以テ、曩ニ本市ハ自ラ進テ市街鉄道ノ布設権ヲ出願セリト雖モ、未タ其許可ヲ得ス。今ヤ内地雑居ノ期目睫ノ間ニ迫リテ、本邦ノ首府タル本市ニ文明的交通機関ノ設備ヲ欠クハ市ノ面目ニ関スルヲ以テ、速ニ之カ採納アランコトヲ希望ス。又本市交通機関トシテ営業セル馬車鉄道ハ、其動力ヲ馬匹ニ仮ルヲ以テ道路ヲ損壊スルコト甚タシク、加之糞尿ノ散乱等到底避ケ得ヘカラサルカ故ニ、啻ニ交通衛生上害アルノミナラズ、市ノ外観上不体裁タルヲ免レス。況ヤ他ニ進歩セル交通機関ノアルアリテ、馬車鉄道ノ如キハ全ク旧時代ノ物ニ属セリ。依テ曩ニ許可セラレシ各馬車鉄道ニ対シテハ、速ニ適当ナル動力変更ヲ命ゼラレンコトヲ希望ス。
  右二項、本会一致ノ決議ヲ経、謹テ意見書ヲ提出候也
   明治三十二年五月十九日
               東京市会議長 須藤時一郎
    内務大臣 公爵 西郷従道殿
    追テ馬車鉄道ニ対シ動力変更ヲ命セラレントスルトキハ、本会ニ諮問アランコトヲ望ム。
劈頭高山権次郎君《(姓太字)》ハ延期ノ動議ヲ提出シテ曰ク、議員半数改選ノ期目睫ノ間ニ迫レル今日斯ル重大問題ヲ議決セントスルハ穏カナラズト。横山寅次郎君《(姓太字)》ハ之ヲ駁シテ曰ク、此意見書ハ要スルニ曩日市会ノ議決ヲ経、目下政府ニ稟請中ナル圧搾空気鉄道ノ認可ヲ促シ、併セテ道路ノ保全ヲ計リ、市ノ外観ヲ美化シ、公衆衛生ヲ保護スル等ノ点ヨリ、現在馬車鉄道ノ動力変更ヲ望ムニ在リテ、皆是レ本市ノ利益ヲ計図スル誠意ニ出ヅルモノトス、誰カ之ヲ不可ナリトセンヤト。斯テ延期説ト即決説トニ対シテ賛否ノ両論アリタルガ、採決ノ結果、延期説ハ少数ニテ成立セズ。城数馬君《(姓太字)》ハ、第一項ト第二項トハ事件ノ性質全然異ルモノナレバ、之ヲ分離サレタシト望ミ。利光鶴松君《(姓太字)》ハ、事件ノ性質ハ異ナルニ相違ナキモ、彼此相関聯シテ離ルベカラザルモノナルニ依リ、之ヲ分割シテ議題ニ供スルハ不可ナリ、殊ニ本会ハ未ダ曾テ建議ヲ分割シテ議決シタルコトナク将来ニ悪例ヲ貽スモノナリト反対シ。分割説ニ就テモ賛否ノ議論アリタルガ、採決ノ結果、分割説ハ少数ニテ成立セズ、全案ヲ一括シテ審議スル事ニ決セリ。玆ニ於テ城君《(姓太字)》ハ、然ラバ意見ヲ陳述スベシ、本建議提出者ノ真意ハ蓋シ第一項ノ勢力ニ依リテ、第二項ヲ通過セシメント欲スルニ在ルナランモ、昨年七月川崎電気鉄道敷設ニ関シ東京府知事ヨリ諮問アリタル際、本会ハ是ニ対シ、市内交通機関ハ本市自ラ敷設スル企望ヲ有シ即今之ガ調査中ナルニ因リ、今日ニ於テハ私設会社ニ許可セラレザルヤウ致シタシト答申
 - 第9巻 p.419 -ページ画像 
シ、其後市内交通機関トシテハ空気圧搾鉄道ヲ適当ト認メ、之ヲ採用スルコトニ決議シタルニアラズヤ、然ルニ本意見書第二項ニハ、「適当ナル動力」ナドト甚ダ曖昧ナル記載ヲ為セルハ、何ノ故ゾヤ。本員ハ此ノ第二項ヲ以テ、府知事ニ対シテ為シタル答申ト矛盾スルモノト断言スルヲ憚カラズ。加之、馬車鉄道ニ向テ動力変更ヲ命ジナバ、会社ハ必ズ資本ノ増加、軌道ノ改善等ヲ理由トシ、営業年限ノ伸長ヲ出願スルニ相違ナシ、是レ会社ニ利益ヲ与フルモノニシテ、同時ニ本市自ラ経営セント欲スル交通機関ハ、到底全市ニ普及セシムル期ナキニ至ラントテ、第二項削除説ヲ主張シ。石垣元七君《(姓太字)》ハ、馬車鉄道ノ動力変更ヲ至当ナリトテ、建議ニ賛成シ。加藤住兵衛君《(姓太字)》ハ、過般本会ニ馬車鉄道乗車賃減額ノ議アルヤ、会社ハ或ル意味ニ於テ某議員ニ或ル物ヲ贈リシモ、某議員ハ之ヲ返却シタリト聞ク、本建議ニ関シテハ万々左様ナル醜汚ノコトナシトハ信ズルモ、問題ハ同一ノ会社ノミナラズ動力変更ハ会社ニ至大ノ利益ヲ与フルモノナルニ依リ、既往ノ事実ヲ一言シテ満場ノ注意ヲ望ムト述ブルヤ。五味卯三郎君《(姓太字)》ハ、建議者中ニ一人ノ怪ムベキモノナキコトヲ断言ス。思フニ加藤君ハ故ラ微妙ノ口吻ヲ以テ、名ヲ注意ニ藉リ、暗ニ反対サレシモノナラント駁シ、関幸太郎君《(姓太字)》ハ城君ノ説ニ賛成シテ、此ノ建議ニ対シテハ単ニ表面ノミニ着眼セズ、其裏面ヲ深察シ、以テ杜撰ノ決議ヲ為ス勿レト論ジ。小笠原寿長君《(姓太字)》ハ、加藤君ノ言ハルヽガ如キ醜行為アル議員ハ、当市会ニハ断ジテ之ナキヲ明言スト述ブ。斯テ第二項削除説ヲ採決シタルニ、少数ニテ城君ノ削除説ハ否決セラレ、建議ハ原案通可決セリ。