デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治9年12月25日（1876年）

是日栄一、瓦斯局事務長トシテ瓦斯製造竈増設ニ要スベキ耐火煉瓦石ヲ、製造主西村勝三ヨリ買上度旨、其約定事案ヲ添ヘテ府庁ニ伺出デ許サル。

瓦斯局書類　明治九年乙会計課　　　　　　　　（東京府庁所蔵）
先般雇工師ペレゲレン発見致候上州乗付村産出之粘土ヲ以製造セル堪火煉化石見本西村勝三ヨリ差出候ニ付、雇工師再応試験致候処、舶来品同種之質ニテ瓦斯竈適用品ニ付、増築之分註文致度価之儀は舶来品同価ニテ毀損無之丈は当方之益分ニ候、則別紙約定書案並雇工師ペレゲレン試験品並ニ試験説相添、此段奉伺候也
　　　　　　　　　　　　　　　瓦斯局事務長
　　明治九年十二月廿五日　　　　　　渋沢栄一東京瓦斯局事務長印
　　　　東京府権知事　楠本正隆　殿

　　　　約定下案
 - 第11巻 p.486 -ページ画像 
　　瓦斯局雇工師仏人ペレゲレン氏ノ発見セル上野片岡郡乗付村ヨリ産スル粘土ヲ以テ、西村勝三ノ製造スル堪火煉化石ヲ瓦斯局ニ買上グルニ付、左ノ約条ヲ定メタリ
一堪火煉化石三万五千個　此量百弐拾五噸半
　　　壱噸代
　　　　此代金三千〇七拾円三拾五銭八厘
一別種異形ノモノ其時々註文通リノ品此量凡拾噸
　　　壱噸代金弐拾七円六拾弐銭替
　　　　此代金弐百七拾六円弐拾銭
一火泥粉拾五噸
　　　壱噸代金弐拾三円六拾銭替
　　　　此代金三百五拾四円
　　三口合計金三千七百円五拾五銭八厘
一百個ノ内壱個或ハ二三個宛瓦斯局ニ於テ試験ヲナシ、若不安心ノ廉アル時ハ何個ニテモ試験ヲナシ、尚見本ノ質ヨリ劣リ其証拠確明ナル時ハ瓦斯局ハ此約定ヲ破ルコトアルヘシ
一前条ノ如ク惣数ヲ定ムルト雖モ、時ニ臨ミ多少ノ増減アルベシ
一此上納方ハ明治十年七月ヨリ同年九月迄ニ皆納スヘキ事　但運送費ハ悉皆売主持タルヘキコト
一最初為約定金弐千円ヲ瓦斯局ヨリ西村勝三ヘ相渡、残金ハ品物皆納ノ節可払渡事
一万一此上納期限ニ後ル、時ハ一ケ月ニ付、全金千分一ノ償金ヲ西村勝三ヨリ可相渡事
一右ノ約定ヲ破約シタル方ヨリ全金高百分ノ弐拾ヲ相互ニ可償候事前条之通約定相違無之双方署名調印致候也
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　瓦斯局事務長
　　明治九年十二月廿四日　　　　　　　買主　渋沢栄一
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　第壱大区七小区本材木町三丁目廿四番地
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　売主　西村勝三
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　引受証人

今般瓦斯増築ニハ事務長渋沢栄一ヨリ申出之趣、瓦斯工業雇教師ヘレケレン之発見ニ係ル上州乗付村産之粘土製造堪火煉化石、西村勝三より見本差出候ニ付実験被遂テ適用之品候ニ付、瓦斯竈ニ相用可然哉云々並ニ売買主約定書案相添云々之次第、別紙○上掲之通候処右申立之趣意
及ヒ約定書案共不都合無之様相見候間、御聞届相成可然哉左之案取調此段相伺候也
（割印）　案
東府納　書面伺之趣聞届候事
　　明治九年　月　日　　　　　　　　　　　　長官
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（○明治九年十二月廿五日送達）