デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治34年6月25日（1901年）

是日当会社創立総会開カレ、栄一取締役ニ選挙セラル。尋イデ七月二日取締役会長トナル。

渋沢栄一　日記　明治三四年　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
六月十四日　曇
午前兜町宅ニ於テ来人ニ接ス、十一時桂総理大臣ヲ官舎ニ訪ヒ、京釜鉄道会社重役ノ事ヲ談ス○下略
　　○中略。
六月廿一日　曇
○上略　築地京釜鉄道会社事務所ニ抵ル○中略畢テ京釜鉄道会社ノ事務ヲ議了シ○下略
　　○中略。
六月廿三日　曇
○上略　十時竹内綱氏来ル、京釜鉄道会社ノ事ヲ談話ス○下略
　　○中略。
六月廿五日　曇
○上略　十一時京釜鉄道会社事務所ニ抵リ、本日総会ニ関スル事務取扱方ヲ協議ス、午後一時神田青年会館ニ抵リ、京釜鉄道会社創立総会ヲ開ク、議長席ニ在テ議事ヲ整理ス、午後五時議事畢テ兜町ニ帰ル○中略夜益田孝・馬越恭平・前島・井上及岩崎男爵等ヘ京釜鉄道会社総会ノ事ニ関シテ書状ヲ送付ス
　　○中略。
六月廿七日　曇
午前十時築地ニ抵リ京釜鉄道会社事務所ニ於テ重役会ヲ開ク、尾崎・日下・前島・室田・大三輪ノ諸氏来会ス○下略
　　○中略。
七月九日　曇
○上略　帝国ホテルニ於テ大三輪長兵衛ト会話ス、午後五時ヨリ送別会来会者ニ接見シ、食事中一場ノ演説ヲ為ス、此夜会スル者岡部長職・中村雄次郎・内田康哉・阪谷芳郎・加藤増雄、其他会社ノ重役及課長ニ至ルマテ総計二十四人ナリキ○下略
　　○右送別会ハ尾崎・竹内両常務取締役ノ韓国赴任ヲ送レルモノナリ。

渋沢栄一書翰　風間金八宛明治三四年七月五日　　　（渋沢子爵家所蔵）
（代筆）
拝啓時下逐日炎暑ニ向ヒ候処益々御清栄奉敬賀候、然ハ曩ニ貴台等発起人トシテ本鉄道ノ敷設ヲ主唱セラレ、爾来種々ノ障害アリタルニモ
 - 第16巻 p.442 -ページ画像 
拘ハラス絶ヘス大ニ尽力セラルヽ所アリタル為メ、今日玆ニ本会社ノ成立ヲ見ルニ至リタルハ国家ノ為メ会社ノ為メ御同慶ノ至リニ堪ヘス依テ株主一同ヲ代表シ謹テ謝辞ヲ呈シ度如此ニ御坐候　草々敬具
　　明治三十四年七月五日　　京釜鉄道株式会社
　　　　　　　　　　　　　　　　取締役会長　渋沢栄一
　　　　風間金八殿
　　　　　　　　侍史

東京経済雑誌　　第四四巻第一〇八八号・第四〇頁明治三四年七月六日
○京釜鉄道創立総会　去る二十五日創立総会を神田青年会館に開けり出席株主四、二一五人株数六六、五四二個にして、席定まるや創立委員長渋沢栄一氏議長席に着き、創立総会を開く旨を告げ、書記をして明治二十九年六月同社発起以来の経過を報告せしめ、創業費四八、六八二円七銭四厘の承認を求め、満場異議なく之を承認し、次に定款改正の議案も異議なく原案を可決して、夫より重役の選定に関し種々議論ありたる末、議長の指名に一任することゝなり、議長は直ちに取締役に渋沢栄一・尾崎三良・竹内綱・日下義雄・前島密・大倉喜八郎・大三輪長太郎《（大三輪長兵衛）》・室田義文・閔泳喆の九氏を、監査役に大江卓・井上角五郎・中山文四郎《（マヽ）》・小野金六の四氏を指名し、満場異議なく之を可決したる上、尚ほ重役の報酬は取締役社長一、二〇〇円乃至一、五〇〇円、常務取締役二、〇〇〇円乃至三、〇〇〇円、取締役五〇〇円乃至八〇〇円、監査役三〇〇円乃至五〇〇円と可決確定し、最後に商法第一三四条の規定により、株金払込其他の調査委員に北垣国道氏推選せられ、氏は直ちに該報告及会計の調査を為し、毫も違算なき旨を報告する処な《（あ）》り、之にて議事全く終りを告げたり

朝鮮鉄道史　朝鮮総督府鉄道局編　　第九一―九二頁大正四年一〇月刊
　○第一期　第二章　京釜鉄道
　　　　第二節　京釜鉄道株式会社
○上略
　六月二十五日午後一時東京神田美土代町青年会館ニ創立総会ヲ開ク総株数十万株総人員五千九百五十三人ノ内、出席株数（委任状トモ）七万二千八百六十八株此ノ人員四千百八十七人ニシテ、先ツ創立ニ関スル事務報告ヲ承認シ、仮定款ニ少許ノ修正ヲ加ヘタル上原案ヲ可決シ、次ニ役員ノ選挙ニ移レリ、重役ノ員数ハ当分ノ内取締役九名、監査役四名ヲ置クコトト為シ、之カ選挙ヲ行ヒタル結果、渋沢栄一・尾崎三良・竹内綱・日下義雄・前島密・大倉喜八郎・大三輪長兵衛・室田義文及ヒ閔泳喆ハ取締役ニ、大江卓・井上角五郎・中山文樹並ニ小野金六ハ監査役ニ当選セリ、右ノ外第一回定時総会ノ期日ヲ定メ、第二回株式募集ニ関スル処置ハ之ヲ重役ニ一任シテ創立総会ヲ終リ、玆ニ京釜鉄道株式会社ハ成立セリ、而シテ会社ハ同月二十九日ヲ以テ其ノ設立登記ヲ為シ、重役ハ七月一日附ヲ以テ就任ノ認可アリ、七月二日ノ重役会ニ於テ取締役会長ニ渋沢栄一ヲ、常務取締役ニ尾崎三良・竹内綱・日下義雄ノ三名ヲ互選シ、会社ノ機関亦整頓スルニ至レリ○下略

 - 第16巻 p.443 -ページ画像 

京釜鉄道株式会社定款　　明治三四年刊
　　　　京釜鉄道株式会社定款○摘録
第一条　本会社ハ京釜鉄道株式会社ト称シ、韓国政府トノ合同条約ニ依リ、日本政府ノ命令ヲ遵奉シテ設立スルモノトス
第三条　本会社ハ本社ヲ東京市ニ置キ支店ヲ韓国京城ニ置ク、但シ時宜ニ依リ韓国釜山其ノ他必要ノ場所ニ出張所ヲ設クルコトアルヘシ
第四条　本会社ハ韓国ニ於テ左ノ鉄道ヲ敷設シ交通運輸ノ業ヲ営ムヲ以テ目的トス
　一、京釜線　韓国京畿道京城ヲ起点トシ忠清道ヲ経テ同国慶尚道釜山ニ至ル
　一、京仁線　同京城ヲ基点トシ同道仁川ニ至ル（明治三十六年十月三十日改正認可）
第三十一条　本社ノ重役ハ左ノ如シ
　取締役　十名以内（内取締役会長一名、常務取締役三名以内）
　監査役　五名以内
第三十八条　本会社ノ業務ヲ監視セシムル為メ政府ハ京釜鉄道株式会社監理官ヲ置クモノトス
第四十九条　本社ノ会計ハ一箇年ヲ二期ニ分チ、毎年一月ヨリ六月迄ヲ前半期トシ、七月ヨリ十二月迄ヲ後半期トシ、毎期総益金ヨリ一切ノ諸経費及損失ヲ控除シ其残金ヲ以テ純益トシ、其配当案ヲ具ヘ株主総会ノ議決ヲ経テ定ムルモノトス○以下第五十一条マデ略ス