デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

6章 対外事業
1節 韓国
3款 京仁鉄道合資会社
■綱文

第16巻 p.568-570(DK160091k) ページ画像

明治34年3月25日(1901年)

是日栄一、当会社ヲ代表シテ逓信省通信局長小松謙次郎トノ間ニ郵便物ノ鉄道輸送契約ヲ結ブ。韓国ニ於ケル通信業務上ノ一大革新ト称セラル。


■資料

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編 第一巻・第五〇一―五〇三頁 昭和四年一〇月刊(DK160091k-0001)
第16巻 p.568-570 ページ画像

朝鮮鉄道史 朝鮮総督府鉄道局編  第一巻・第五〇一―五〇三頁 昭和四年一〇月刊
 ○第一編 第十三章 運輸
    第一節 京仁鉄道の営業
     二、郵便物の列車逓送
 京仁鉄道の開通後三十四年三月二十五日逓信省は京仁鉄道会社と契
 - 第16巻 p.569 -ページ画像 
約を結び、同年四月一日より汽車便により郵便物の逓送を開始したるが、是れ実に韓国に於ける通信業務上の一大革新とも謂ふべく、次で損害賠償及び違約謝金徴収その他に関する事項を追加し契約を左の如く改正した。
    契約書
 第一条 京仁鉄道合資会社鉄道列車を以て郵便物(通常郵便物並に此種郵便物の運送上必要なる器具を総称す以下之に傚ふ)逓送の方法並に逓送料等に関し逓信省と京仁鉄道合資会社と契約すること左の如し
 第二条 郵便物は会社に於て会社所定の小荷物として逓送するものとす
 第三条 郵便物を逓送すべき線路・度数及列車は、会社の定むる列車発著時刻に依り逓信省之を定め、会社に通知するものとす
 第四条 郵便物は会社に於て極めて鄭重に取扱ひ、厳重に保管し、他の荷物に先ち受渡及積卸の手続をなすものとす
 第五条 郵便物の受渡に関する手続は逓信省の指定する所に拠る
 第六条 会社に於て列車の発著時刻を変更するときは、其都度遅くも実施五日前に逓信省通信局及関係郵便局に届出るものとす、但し右の期日迄に確定のものなきときは予定の時刻表を以て届出で確定次第更に本文手続を履行すべきものとす
 第七条 郵便物逓送料は一箇月金三十六円と定め、郵便物に増減あるも又逓送哩程及度数に変更を生ずるも契約期間内は之を変更せざるものとす、但し天災其他避くべからざる事変に因る場合の外会社に於て一日以上列車の運転を休止したるときは、休止日数に対する日割額を控除するものとす
 第八条 鉄道列車運転途中に於て運行を停止したるときは、其搭載せる郵便物は会社に於て便宜の方法を以て力めて速に送達先郵便局所に送達すべし、之が為費用を要したるとき、天災其他避くべからざる事変に因る場合に限り、会社の請求に依り逓信省は其実費を支弁するものとす
 第九条 第七条及第八条に拠り逓信省より会社に支払ふべき金員は当日分《(月カ)》を翌月十日迄に仁川郵便局に於て払渡すものとす
 第十条 天災其他避くべからざる事変に因る場合を除くの外、会社に於て郵便物を亡失若くは毀損したるときは、会社は該損害に対し逓信省へ賠償をなすの義務あるものとす
 第十一条 会社に於て本契約の条款に違背する行為ありたるときは逓信省は会社より一回に付金三十円以内の違約謝金を徴することあるべし
 第十二条 此の契約は明治三十四年四月一日より明治三十五年三月三十一日迄を有効期間とす、然れども逓信省の都合に因り予め会社に通知して何時にても之を解除することあるべし
 第十三条 此契約は其期間内に逓信省より何等の通知を為さず、又期間終了の一箇月前に会社より何等の通知を為さざるときは、次の会計年度中引続き効力を有するものとす、爾後毎年度同一の例に依る
 - 第16巻 p.570 -ページ画像 
 第十四条 此の契約書は二通を製し各一通を所持するものとす
  明治三十四年三月二十五日
         逓信省通信局長      小松謙次郎
        現商法施行前設立
         京仁鉄道合資会社社長 男爵 渋沢栄一