デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2020.3.6

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

1部 実業・経済

7章 経済団体及ビ民間諸会
1節 商業会議所
1款 東京商法会議所
■綱文

第17巻 p.814-830(DK170063k) ページ画像

明治15年5月(1882年)


 - 第17巻 p.815 -ページ画像 

是月栄一当会議所会頭トシテ農商務省商務局長南保ヨリ諮問セラレタル商況変動ノ儀ニ付同局長ニ復申ス。


■資料

東京商法会議所要件録 第四二号・第一―九頁 明治一五年六月三日刊(DK170063k-0001)
第17巻 p.815-817 ページ画像

東京商法会議所要件録  第四二号・第一―九頁 明治一五年六月三日刊
  第十九臨時会議 明治十五年五月十六日午後七時開
    議員出席スル者 ○十三名
会頭 ○渋沢栄一ハ各員ニ向ヒ本日ハ出席議員定数未満ナレバ相談会トシテ之ヲ開クベキ旨ヲ告ゲ且ツ曰ク、本日ノ議目ハ兼テ議案(修正之分ハ其全文ヲ参考部ニ付ス)ニ登載シタル商務局ヨリ御下問アリタル商況変動之原因等ノ調査並ニ当会議所組織変更ノ件ナリ、而シテ此第一ノ件即チ商況変動原因ノ調査ハ現事本員ニ於テ起草ノ上已ニ各員ニ頒布セシガ、猶其後一二修正ヲ要スル所アリテ夫々字句ヲ加除シタリトテ先ヅ書記ヲシテ其修正案ヲ朗読セシム
時ニ益田克徳発議シテ曰ク、修正ハ只字句ノ間ニ止リ大体ノ意味ニ変更ナクバ別段ニ之ヲ朗読セズシテ可ナリ、且ツ今夕ハ出席議員定数未満ナレバ直チニ之ヲ議決スルヲ得ズ、是ヲ以テ修正案ハ更ニ之ヲ印刷シテ廻議ニ附シ各員ノ意見ヲ問フタル上之ヲ復申スル事トセバ如何
条野 ○条野伝平之ヲ賛成ス
会頭曰ク、固ヨリ修正ハ字句ニ止リ大体ノ意味ハ別ニ変更セズ、且ツ此度ノ調査ハ只事実ノ調査ニシテ特ニ討論ヲ必要トスル迄モアルマジ然レトモ物価ノ高低及其原因等表記スル所ニ就キ若シ事実ニ相違スル廉モアラバ之ヲ摘示セラレタシ
鳥海 ○鳥海清左衛門曰ク、議案中和製砂糖騰貴ノ原因ヲ説キタル所ニ於テ、其入津ノ期節八月トアルモノハ恐ラクバ誤ナラン、元来本品新古切替ノ時ハ十一二月ノ頃ニシテ其入津期節ハ一月迄ノ間ナリトス、左レバ此所ハ猶事実ヲ再調セン事ヲ要ス
会頭曰ク、物価比較表面大麦ノ相場ヲ見ルニ五割四分以上ノ低落ヲ示ス、尤此等ノ割合ハ総テ先ヅ本年ノ相場ヲ前年ニ比較シ其高低ノ差額ヲ算出シ、然シテ前年ノ相場ニ対スル割合ヲ表記シタルモノナリ、故ニ其割合ヲ本年ノ相場ニ対シテ算出スル時ハ高低ノ度稍々伸縮スルモノナキニ非ズ、是世間普通ニ云フ所ノ割合ト異ナル所ナキヤ如何ン
益田孝曰ク、例ヘバ相場五円ノ物下落シテ四円トナリタル時、及一円ニ付一斗ノ物一斗二升トナリタル時ハ世間通常共ニ之ヲ二割ノ下落ト称ス、左レバ此表面調査スル所ハ総テ世間普通ノ割合ト異ナル所ナシ
鳥海曰ク、表面砂糖ノ相場ヲ見ルニ天光ノ直段初雪ヨリ高キモノハ或ハ違算ナランカ、是亦更ニ再調セン事ヲ要ス
益田孝曰ク、石炭ノ相場ハ之ヲ昨年ニ比シテ高貴ヲ示スト云トモ、本品ノ如キ本年三月中ニ入リテヨリ非常ノ下落ヲ致シ、現ニ一月ニ比スルニ弐十円以上ノ低落ナリトス、且ツヤ石炭ノ相場ハ薪炭ノ相場ニ密接ノ関係ヲ有シ、其他機械場及諸工業ニ関係スル所少カラザレバ此等ハ他品ト特別ニシテ其比較ヲ示シタシ
 - 第17巻 p.816 -ページ画像 
会頭曰ク、石炭ノ近時非常ニ下落シタルハ人ノ詳知スル所ニシテ、其割合ハ殆ド四割ニ相当セリ、然ルニ表面比較上ニ於テ却テ幾分ノ高貴ヲ呈シタルヲ以テ理事本員ニ於テモ此疑ヲ容レ、更ニ実業者ニ就テ精細ノ調査ヲ悉クシタルニ其下落ハ三月以後特ニ甚シト云トモ、一二月中ニ在リテハ依然高位ヲ占メタレバ本年三ケ月ノ平均相場ヲ以テ之ヲ昨年同時間ノ平均相場ニ比スルニ全ク幾分ノ高貴ヲ示ス、是即チ事実ナレバ故サラニ之ヲ変更スベカラズ、左レバ此等ノ理由ハ別ニ副記シテ当局者ノ注意ヲ要スル方ナランカ
丹羽 ○丹羽雄九郎曰ク、石炭其外数品ハ其実状ヲ詳記シテ之ヲ表末ニ附スレバ可ナラン
益田孝曰ク、表面ニ〆粕ノ相場アリト云トモ、是鰯粕ノ一種ニ止ル、鯡粕ノ如キモ其需用頗ル多キモノナレバ更ニ之ヲ調査シテ上呈スル事トシタシ
山中 ○山中隣之助曰ク、本年二月頃ヨリ物価低落ノ端ヲ市場ニ示シタリト云トモ其実状ヲ現シ タルハ全ク三月以後ニ在リトス、而シテ商務局ヨリ御下問アリタル時ハ恰モ低落ノ実状ヲ呈スルノ前ニ在ルガ如シ故ニ諸物価低落ノ割合ヲ調査スルニ於テ往々石炭其他ノ品類ノ如ク不充分ノ比較ヲ呈スルモノアリ、畢竟此度ノ御下問今一ト月ノ後ニ在リタラバ能ク高低ノ実況ノ観察スルニ一層便利ヲ添フルモノアラン
益田孝曰ク、総論中米価下落ノ近因ヲ納租徴収期限ノ短縮ニ帰スルノ条アリ、蓋シ是迄此期限ハ四月迄ニシテ五月一日迄猶予ノ時間アリシガ、改正法ニ拠レバ全ク猶予ノ時間ナシ、左レバ実際ニ於テハ前後二様ノ短縮アルモノヽ如シ、且ツヤ此下落ハ前年騰貴ノ反動ニ由ルモノ亦多キニ居ルト信ズ、左レバ是等ノ事モ玆ニ附記セン事ヲ要ス、而シテ米価ノ高低実ニ農家貯蔵力ノ消長ニ関スル事本案ニ論スル所ノ如シ、抑モ明治十二年ニ米価ノ騰貴シタルハ全ク品不足ニ由ルニ非ズ、同年ヨリ十三年ニ繰越シタル全国貯蔵米ハ合テ六百万石ナリト云フ、又明治初年ノ頃一分銀三個ヲ以テ一弗ニ交換シタル時ニ米価十弗ニ上ボリタル事アリ、之ヲ今日ノ紙幣ニ換算スル時ハ殆ド二十円ニ達スルノ高価ナリ、亦以テ其高低必ズシモ全国米産ノ多少ニ関セザルヤ知ルベキナリ
於是会頭ハ書記ヲシテ修正案ニ就キ総論ヲ朗読セシメ、右終テ曰ク、近来商況ノ変動ハ宿醒ヲ帯ヒタル人ガ酒気ヤヽ醒メントスルニ当リ頭痛ニ苦シム時ノ如シ、而シテ明治十一年以来商業ノ繁盛ハ恰モ酒力ニ依リテ元気ヲ発達シタルモノヽ如シ、如此ク其元気ハ只酒力ニ倚リテ発達シタルモノナレバ酒気散ズルノ日ニ於テ復タ衰弱ヲ感セザルベカラズ、願クバ此後所謂向酒ヲ飲ムガ如キ事ナク其元気ヲ真正ニ発達セシメン事ヲ
右ノ外猶衆議ノ上終ニ本案ハ理事本員ニ於テ再調シ、第一項ヨリ第四項迄ノ答申案中物価比較表ニハ更ニ鯡粕ノ相場ヲモ調査シテ之ヲ附記シ、干鰯・〆粕・石炭・炭・薪等本年三月以後大ニ下落シタルモ其統計表ニ於テ左ノミ低落ヲ示サヾルモノハ表末ニ於テ別段実際ノ商況ヲ附記シテ当局者ノ注意ヲ促カシ、和製砂糖騰貴ノ原因ニ誤アルハ之ヲ実業者ニ質シテ修正ヲ加ヒ、第五項金利日歩高低表ノ銀目ハ通貨ニ換
 - 第17巻 p.817 -ページ画像 
算シ、第十項総論中米価下落ノ近因ヲ納租徴期限《(収脱)》ノ短縮ニ帰シタル所ハ字句ヲ加ヒテ猶其意味ヲ敷衍シ、更ニ之ヲ印刷シテ衆員ノ廻議ニ附シ其意見ヲ問フタル上之ヲ復申スルニ決ス


東京商法会議所要件録 第四二号・第二二―七五頁 明治一五年六月三日刊(DK170063k-0002)
第17巻 p.817-830 ページ画像

東京商法会議所要件録  第四二号・第二二―七五頁 明治一五年六月三日刊
 ○参考部
第一号  商務局ヨリ近来商況変動之義ニ付御諮問書
近来諸物価ノ低落甚シク商工ノ二業衰態ヲ現シ候ニ付テハ必然其会議所ニ於テ之カ原因等夫々調査相成居候事ト存候、依テ本局参考ノ為メ諸物価下落ノ原因及諮問候条左ノ問目ニ応シ或ハ其所ノ意見ニ任セ審按ヲ遂ケ至急報道有之度此段申進候也
  明治十五年四月十五日        南商務局長
  東京商法会議所会頭
    渋沢栄一殿

    諮問按
第一 低落セシ商品ハ何カ
第二 低落ハ何程ナルカ(但数ヲ以テ前年ト比較スヘシ)
第三 低落セサル商品ハ何カ(但書前同断)
第四 低落セシ原因及ヒ低落セサル原因
第五 金利ノ昂低及ヒ金融ノ景況
第六 農商家ノ景況
第七 諸製造所ノ景況(但製造及販売ノ多寡)
第八 諸職工ノ賃銭昂低及其景況
第九 商品出入ノ多寡(但販売在荷ノ多寡)
第十 舟車賃銭ノ昂低及其景況
第十一 雑況 総論 貿易衰盛ノ景況

    右ニ付答申案
近来商況変動之義ニ付去月十五日ヲ以御諮問相成候件々審案熟議ヲ遂候処、本会之所見概ネ別紙ノ通リ帰着仕候間、即チ玆ニ上呈仕候、尤御諮問案中彼此相連繋スルノ条項ハ数項ヲ合セテ荅申仕候分モ有之、或ハ事全国ニ渉リ一時精細ノ調査行届難キ条項ハ其概況ヲ挙テ略陳仕候モノモ有之、就中第一項ヨリ第四項ニ至ル迄諸物価浮沈ニ関スル諸項ノ如キ、昨年一月ヨリ三月迄ノ平均相場ヲ以本年同時間ノ平均相場ニ比シ其割合ヲ算出シテ答申仕候得共、抑モ本年一月以来商況ハ三月ニ入リテ俄然急劇ノ変動ヲ呈シ其細況ヲ昨年同時ニ対比候時ハ急漸頗ル其趣ヲ同フセザル向モ不少義ニ付、其価格之昂低等充分ニ確明仕兼候廉モ有之候得共、要スルニ其商情ノ大勢ハ即チ別紙ニ答申スル所ニ帰着仕候義ト奉存候間、各項調査論究スル所ニ就キ篤ト本会所見ノ在ル所御熟視相成度、此段別紙ヲ以復申仕候也
  明治十五年五月         東京商法会議所会頭
                      渋沢栄一
    商務局長 南保殿
 - 第17巻 p.818 -ページ画像 
(別紙)
第一 低落セシ商品ハ何カ
第二 低落ハ何程ナルカ(但数ヲ以テ前年ト比較スベシ)
第三 低落セザル商品ハ何カ(但シ書前同断)
第四 低落セシ原因及低落セザル原因
以上四項ノ問目ニ対シ答申スルニ当リ万般ノ商品ニ就キ尽ク之レカ価格ノ高低ヲ調査シ、其前年比較ノ割合ヲ精算スルカ如キハ即時ニ完成ヲ期シ難キカ故ニ、今暫ラク府下市場ニ出入集散スル重要ノ貨物ニ限リ、先ツ本年一月ヨリ三月迄三ケ月間ノ平均相場ヲ調査シ、之レヲ昨年同時間ノ相場ニ対比スルトキハ其高低ノ割合左ノ如シ

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       項目      十四年一月ヨリ三月迄平均   十五年一月ヨリ三月迄同上    高低之差             割合 品名 米                     円                                          割分厘  玄米中一石ニ付          一一・四三三         九・一六七       低     二・二六六      一・九八                     升  白米一円ニ付            六・八六七         八・五〇〇       低     一・六三三      二・三八 雑穀                     升  大麦 一円ニ付          二二・一七三        三四・一八一       低    一二・〇〇八      五・四二  小麦 同             一三・〇〇〇        一七・九五八       低     四・九五八      三・八一  大豆 同             一四・一〇八        一四・五九八       低      ・四九〇        三五  小豆 同             一一・九九四         九・一八二       高     二・八一二      二・三四 酒                     円  上方酒中 一駄ニ付       一〇五・八三三       一〇五・〇〇〇       低      ・八三三        〇八  地廻酒同 同           八五・〇〇〇        八一・六六七       低     三・三三三        三九                     目 生蝋上磨 一円ニ付        六七〇・〇九三       八一二・七二三       低   一四二・六三〇      二・一三                     目  味噌中 一円ニ付      四、四三〇・〇〇〇     五、〇五〇・〇〇〇       低   六二〇・〇〇〇      一・四〇    樽 醤油中 同               ・七八六          ・八四五       低      ・〇五九        七五 油                     円  水油阪水 十樽ニ付       一一三・七〇二       一七四・一七三       高    六〇・四七一      五・三二  石油デボス 一函ニ付        三・五〇八         三・六八七       高      ・一七九        五一                     俵 塩 赤穂一円ニ付           二・〇〇七         二・〇三三       低      ・〇二六        一三                     円 畳表引通表 十枚ニ付         三・五三三         三・六一六       低      ・〇七三        二一 砂糖                     円  初雪 一貫目ニ付           ・七一八          ・八三三       高      ・一一五      一・六一  天光 同               ・六九一          ・八二五       高      ・一三四      一・九四  番密 同               ・一五九          ・一八三       高      ・〇二四      一・五一                     杯 干鰯中 一円ニ付           二・六七五         二・九五〇       低      ・二七五      一・〇二                     目 〆粕同 同          三、四四一・六六七     四、五二五・〇〇〇       低 一、〇八三・三三三      三・一五                     目 鯡〆粕同 同         三、四五〇・〇〇〇     四、八三〇・〇〇〇       低 一、三八〇・〇〇〇      四・〇〇                     目 繰綿同 同            五七五・〇〇〇       四七六・七〇〇       高    九八・三〇〇      一・七一    匁 茶城江極上一貫目ニ付       二一一・五四八       二六八・〇一〇       高    一六・四六二        七八                     円 玉子 大玉千粒ニ付         一一・二六六        一一・九三〇       高      ・六六四        五九    円 鰹節土佐大十貫目ニ付        四四・八一三        三七・三六〇       低     七・四五二      一・六六 石炭                     円  筑前 一万斤ニ付         五二・五〇〇        五三・三三三       高      ・八三三        一六  唐津 同             五八・〇〇〇        五九・八三〇       高     一・八〇《(マヽ)》   三二 麻                     円  岡地札入最上三十貫目ニ付    一四〇・〇〇〇       一二五・〇〇〇       低    一五・〇〇〇      一・〇七  信州青卅六貫目ニ付        八〇・〇〇〇《(マヽ)》 六二五・〇〇〇《(マヽ)》 低    一七・五〇《(マヽ)》 一・一九    俵 炭 伊豆中一円ニ付          三・六〇〇         三・三三〇       高      ・一七〇《(マヽ)》  七三  以下p.819 ページ画像                      本 薪 常州松枯同           七〇・〇〇〇        七〇・〇〇〇              ……          ……                     円 鉄 備伯小割中等一束ニ付       七・五〇〇         七・七一七       高      ・二一七        二五                     円 鉛 百斤ニ付            一一・〇〇〇         九・一八〇       低     一・八二〇      一・六五                     円 銅 丁銅 百斤ニ付         三五・〇〇〇        三三・五〇〇       低     一・五〇〇        四三   荒銅南部 同          三〇・〇〇〇        二五・六七〇       低     四・三三〇      一・四四 日本紙                     円  駿河半紙六〆入一個ニ付       五・一六七         五・六〇〇       高      ・四三三        八四  美濃紙十状ニ付           一・〇〇〇         一・〇三三       高      ・〇三三        三三                     円 烟草信州生阪百斤ニ付        四一・一六七        一五・〇〇〇       高      ・八三三        五九 材木                     本  紀州杉二間尺〆一円ニ付        ・二二三          ・三〇〇       低      ・〇七七      三・四五                     枚  同一間六分板 同          七・八三三        一〇・六六七       低     二・八三四      三・六二 呉服                     円  無地郡内 一疋ニ付         八・〇〇〇         七・二〇〇       低      ・八〇〇      一・〇〇  長浜縮緬 同           一九・〇〇〇        二〇・〇〇〇       高     一・〇〇〇        五三  銘仙紬 同            一〇・〇〇〇         八・五〇〇       低     一・五〇〇      一・五〇  花色絹 同             七・〇〇〇         七・〇〇〇              ……          …… 太物                     円  桐生足利二子織 壱反ニ付      一・二五〇         一・〇〇〇       低      ・二五〇      二・〇〇  同綿銘仙 同            二・七〇〇         二・五〇〇       低      ・二〇〇        七四  地廻白木綿 同            ・五五〇          ・五〇〇       低      ・〇五〇        九一 唐物                     円  唐糸三番中百斤ニ付        五四・五二三        四五・六〇〇       低     八・九二三      一・六四  生金巾並巾中 一反ニ付       三・七〇〇         三・二九三       低      ・四〇七      一・一〇  メレンス 一碼ニ付          ・二八八          ・二四九       低      ・〇三九      一・三五 




  以上諸品ノ中石炭・薪炭・茶・材木・呉服・太物ノ如キ前表統計上ニ於テ本年ノ相場前年ニ比シテ甚タシキ低落ヲ見ザルノミナラズ、此等品類中却テ騰貴ヲ示スモノアルハ想フニ此等ノ諸商品ハ三月ニ至リテ俄カニ著シキ低落ヲ生シタルモ、一二両月ニ於テハ猶高価ヲ保チタルヲ以テ其三ケ月平均相場ニ於テハ前表ノ如キ結果ヲ呈シタルモノナリ、左レバ前表ニ於テ本年ノ相場昨年ニ比シテ較々騰貴ヲ示スモノアルモ本文ニ弁ズルガ如ク特因アルモノヽ外ハ其実際ニ於テ近時共ニ非常ノ低落ヲ致シタルモノトス、今試ニ本年一月以来今日ニ至ル迄石炭・炭両品ニ就キ其下落ノ割合ヲ示ス時ハ即チ左ノ如シ
  石炭             十五年一月      同四月     下落ノ割合
   唐津一斤万《(マヽ)》ニ付  七〇《(円)》、  四三《(円)》、    三・八六《(割)》
   筑前同           六五《(円)》、  三八《(円)》、    四・一五《(割)》
  炭
   伊豆中一円ニ付       二・五《(俵)》  四・五《(俵)》    八・〇〇《(割)》
熟々前表ニ就テ之レヲ観察スルニ貨物ノ性質ニヨリ価格変動ノ割合各一定ニ出スト雖トモ要スルニ近時銀米下落ノ際ニ当リ日用諸品ノ如キ概子皆其影響ヲ感セサルモノナシ、而シテ今下落ノ最モ著シキモノヲ挙クレハ雑穀・味噌・呉服・太物・唐物・干鰯・〆粕・材木・鰹節・麻類・鉛・銅等ニシテ、此品類低落ノ如キハ他ニ特因ノ存スルニ非スシテ多クハ皆銀米変動ノ影響ニヨルモノトス、又其価格ノ騰貴シタルモノヲ挙クレハ水油・砂糖・繰綿・茶(但シ上等品ニ限ル)・炭・日本
 - 第17巻 p.820 -ページ画像 
紙等ノ諸品ニシテ是亦銀米ノ影響ヲ受クヘキ品類ナルベシト雖トモ、特ニ前表ニ於テ其騰貴ノ状ヲ示スモノハ皆各々特因ノ存スルアリテ其価位ヲ低落スル事能ハサルニ因ルモノトス、即チ水油ハ一昨年来非常ニ下落シ、昨年一二月ノ交ニ至リテ殆ント其極度ニ達スルノ有様ナリシカ、此際産地ニ於テハ製造高ノ減少シタルヨリ爾後気配漸ク挽回シ本年一二月迄益々上進ノ勢ヲ保維シタリ、砂糖和製物ノ入津ハ其期節例年十二月ヨリ一月頃迄ナリシニ昨年産地不作ニテ、本年ノ入津高ハ昨年ニ比シテ凡ソ一割以上ヲ減シ此等ノ為メニヤ近時ニ至リ漸ク買気ヲ喚起スル処トナリ、斯クハ其価位ヲ上進シタルモノナリ、繰綿ハ昨年十分豊作ノ見込ニテ夏秋ノ交大ニ相場ヲ低落セシカ、九月十三日暴風雨ノ為メ其収穫ヲ害シ現ニ其産額ノ減少予想外ニ出テ市場ニ於テ数十本ノ繰綿ヲ求メントスルモ容易ニ之ヲ得難キ程ナレハ随テ上進ノ気配ヲ呈スルニ至レリ、且ツ本邦ノ繰綿ハ外国産ニ比スレハ其品質持久ニ耐ヘ其価格亦割ニ低位ニ居ルヲ以テ近来漸ク需用ヲ誘起シ是ノ騰貴ヲ顕シタル所以ナリ、茶ノ上等品騰貴シタルハ全ク品不足ニ由リ(中等以下ハ近時銀米ニ連レ大ニ低落セリト云フ)炭ノ上進シタルモノモ供給ノ減少セシニ係ル、其他日本紙ノ中駿河半紙・美濃紙ノ如キハ両三年前其ノ入津意外ノ多キヲ致シ一時可驚低価ヲ現出シタルカ為メ、爾来産地ニ於テハ漸ク其製造高ヲ減少シタルヨリ昨年ノ輸入随テ僅小ニシテ現ニ市場ニ販売スルモノ多クハ数年前ノ輸入ニ係ルモノナリト云フ、而シテ昨年来両品ノ在荷漸ク減少シタルヲ以テ斯クハ其ノ価位ヲ回復スルニ至リタリ、右商品ノ外前年ニ比シテ多少其価位ヲ上下シタルモノアリト雖トモ其変動ノ度ニ至リテハ、甚タ微弱ナルヲ以テ特ニ之ヲ詳説スルニ足ルモノナシ、蓋シ我国市場ノ貨物常ニ銀米ノ動揺ニ制セラルヽ事ハ既往ノ商状ニ就テ甚タ明ナリト雖トモ、前表統計上ニ於テ諸物価低落ノ割合銀米ニ準シテ甚シカラサルノ姿アルモノハ、想フニ近時銀米ノ下落急劇ニ出テ其勢三月ニ至リテ特ニ甚シク、他ノ諸物価未タ之レニ追従スル事能ハサルニ因ラスンバアラサルナリ
第五 金利之昂低及金融之景況
案スルニ近年我国ノ金利ハ都鄙一般漸次騰貴シ、嘗テ明治六七年ノ交ニ至ル迄ハ其割合年一割二分ノ利息ヲ以テ通常トシタルニ七八年頃ヨリ漸ク騰上シ、十一年ニ於テハ一時大ニ低落セシカトモ爾来再ヒ騰上ニ赴キ、近時ニ至リテハ年一割二分ヲ以テ最低トシ、其貸借金高ノ大小及抵当ノ種類ニ随ヒ或ハ一割五分乃至一割八分ニ上ホリ、甚シキハ三割以上ニ達スルモノアリ、今玆ニ昨十四年一月以来本年三月ニ至ル迄東京諸銀行貸付金利ノ割合ヲ調査スルニ、左表ニ示スカ如ク昨年一月ニ於テハ日歩五銭ヲ最高トシ、三銭三厘ヲ最低トシタルガ故ニ其平均ハ四銭二厘ニシテ、即チ年一割五分ニ相当シ、是ヨリ五月ニ至ル迄ハ例年商業閑暇ノ時節ナレバ金融随テ緩慢ニシテ其日歩ハ三銭内外ニ昇降シ即チ年一割一分ノ割合ニ出テザリキ、蓋シ此際ヲ以テ昨年中金利最低ノ時ナリトス、是ヨリ後金融漸ク逼迫ヲ告ゲ臘尾ニ及ンデ益々甚シク終ニ十二月中ノ最高日歩ハ六銭六厘六毛ニシテ即チ年二割四分ニ達セリ、而シテ本年ニ至リテハ其騰貴猶益々甚シク、一月ニ於テハ最低モ五銭ニ下ラズ最高ハ七銭五厘ニ出テ、二月ニ於テハ其日歩最高
 - 第17巻 p.821 -ページ画像 
八銭三厘三毛ニシテ即チ年三割ノ高貴ヲ呈ハシ、金融ノ逼迫殆ド其極ニ達シ貸借ノ途全ク壅塞ノ景況ナリシガ、同月下旬ノ頃ヨリ稍緩弛ノ色ヲ呈ハシ、其日歩ハ下テ六銭トナリ、復タ五銭トナリ、而シテ三月上旬ニハ五銭内外ヲ昇降セシガ是ヨリ俄然低落シ、終ニ三月下旬ニ及ンデハ二銭五厘即チ年九分迄ノ低利ヲ現スルニ至レリ、前陳ノ如ク近来金利ノ騰上シタル所以ヲ推究セバ首トシテ其原因ヲ通貨ノ制度ニ帰セズンバアラズ、蓋シ不換紙幣ノ制タル他ノ真貨ノ如ク其流通ノ消長又ハ物貨ノ増減ニ従テ自ラ伸縮スル事ヲ得サルガ故ニ、一タヒ其数増加スルニ際シテヤ勢物貨ノ呼価ヲ騰貴セザルベカラズ、而シテ物価ノ騰貴スルヤ商家ハ更ニ多額ノ資本ヲ要セザルヲ得ズ、是レ資本ノ需用ヲ繁劇ナラシメ随テ金利ノ騰貴ヲ致シタルノ遠因ナラズヤ、已ニ如此ノ遠因アルアリテ亦之ヲ助成スルノ近因アリ、今本会ガ考定スル所ニ就テ其近因ノ重要ナルモノヲ挙グレバ米価ノ下落、生糸荷物ノ渋滞、納租期限ノ短縮等即チ是ナリ、昨春以来米価下落ノ為メ農家ハ漸ク其購買力ヲ減セシヨリ各般ノ商業之ガ影響ヲ蒙ラザルモノナク、商品販売ノ途杜絶シ、随テ資本ノ流通ヲシテ漸ク壅塞シムルニ至レリ、是金融ノ逼迫ヲ致シ金利ヲ騰貴セシメタル一因ナリ、又同年中横浜生糸ノ商況ハ紛議和解以来内外ノ気配依然トシテ活溌ナラザルニモ拘ラズ、内地機場ノ不景気ナルヨリ其販路ヲ海外ニ求メンガ為メ横浜ヘ運出シタル生糸少カラズ、然ルニ爾来其相場引立タザルノミナラズ、銀貨モ亦漸ク下落シタルヲ以テ大ニ取引ヲ妨ゲ生糸ノ市場ニ蓄積スルモノ例年ニ比スレバ特ニ多シトス、之ガ為メ資本ノ流通ヲ欠キタルモノ無慮三百万円以上ニ及ベリト云フ、是蓋シ亦金融ノ壅塞ヲ助成シ金利ノ高貴ヲ促カシタル一因ナリ、次ニ政府ハ昨年度ヨリ納租徴収期限ヲ短縮セラレタルヲ以テ、地税付其大部ヲ占ムル所ノ田方税三千余万円ハ曩キニ十二月一日ヨリ四月中迄三期ニ上納シ来タリタルモノモ、此改正法ニ拠リテ十一月一日ヨリ二月廿八日迄、二期ニ之ヲ上納セザルヲ得ズ、而シテ此期限ハ恰モ新暦ノ歳末ヨリ旧暦ノ節季ニ渉リ民間貨幣ノ需用最モ繁忙ナル時節ニ際スルヲ以テ、昨年十一月下旬ヨリ金融特ニ逼迫ヲ告ゲ本年二月中旬ニ至リ非常ノ高利ヲ発シタルモノナリ、如此ク本年一・二月ノ交迄漸次騰上シタル金利モ三月ヨリ以後俄然低落シ今日ニ至ル迄依然低位ニ沈着スルモノハ蓋シ各地方ハ二月下旬ニ及ンテ漸ク半季ノ決算ヲ終リ、通貨ノ需用較々緩慢ヲ告クルニ際シ田舎ノ商業ハ依然トシテ不活溌ナルヨリ商賈ハ昨年ニ懲リテ各々春季ノ仕入ヲ見送リ、其購入スル所ノ纔カニ当用口ニ充ツルニ止マルヲ以テ通貨ノ需要緩慢ニシテ金利ノ低位ニ居ル所以ナリ
    東京金利日歩高低表


図表を画像で表示東京金利日歩高低表

       項目  最高     最低     平均  目次            銭      銭      銭 明治十四年一月   五・〇〇   三・三三   四・一七 同    二月   四・一七   三・三三   三・七五 同    三月   三・八三   三・〇〇   三・四二 同    四月   三・三三   三・〇〇   三・一七 同    五月   三・三三   二・八三   三・〇八 同    六月   三・八三   三・三三   三・五八  以下p.822 ページ画像  同    七月   五・〇〇   三・三三   四・一七 同    八月   五・〇〇   四・一七   四・五九 同    九月   五・〇〇   四・一七   四・五九 同    十月   五・八三   五・〇〇   五・四二 同   十一月   五・八三   四・一七   五・〇〇 同   十二月   六・六七   五・〇〇   五・八四 明治十五年一月   七・五〇   五・〇〇   六・二五 同    二月   八・三三   四・一七   六・二五 同    三月   五・〇〇   二・五〇   三・七五 



第六 農商家ノ景況
熟々近来民間ノ景況ヲ案ズルニ農家ハ一般米価ノ下落ヲ嘆ジ、商家ハ物貸《(貨)》ノ渋滞ニ困シミ到ル処不景気ノ声ヲ聞カザルハナク、農商ノ困難蓋シ此時ヨリ甚シキハナシ、今玆ニ一例ヲ挙テ以テ各地農商ノ景況ヲ観察センニ、明治九年ノ頃米価一石四円五十銭ノ時ニ於テハ全国米産額ヲ三千万石ト仮定シ、農家ノ得ル所壱億三千五百万円ナリシガ、明治十二年秋冬ノ頃ヨリ翌十三年ニ渉リ農家ノ売出シタル米価ヲ平均九円トスル時ハ、其得ル所二億七千万円ナリシヲ以テ之ヲ九年ノ所得ニ比スレバ全ク二倍ノ増加ニシテ、其他田畑ノ沽価モ之ニ随テ上進シタルニ当時他ノ諸物価騰貴ノ割合ハ米価ノ如ク速カナラズ、加フルニ地租据置キノ特典アリ、農家ハ暴カニ其富ヲ増進シタリ、於是ヤ頻リニ夥多ノ貨物ヲ購買シ商家モ亦其需用ニ応シテ利益ヲ獲ルノ計ヲ怠ラザリキ、是実ニ明治十二三年ニ於テ都鄙一般活溌ノ状況ヲ呈シタル所以ナリ、然ルニ昨年ヨリ本年ニ渉リ米価大ニ下落シ、米産地方ニ於テハ殆ド六円五十銭以内ニ下タリ、東京市場ニ於テモ八円五十銭内外ニ低落シタルヲ以テ先ツ農家ノ売買ヲ平均一石七円五十銭ト通算スルモ、昨年ノ収穫高ニ就キ其得ル所ハ弐億二千五百万円ニ過ギズ、之ヲ明治十二年ノ所得高弐億七千万円ニ比スレバ殆ド四千五百万円ノ減少ナリトス、之ニ加フルニ雑穀及地価ノ下落スルアリ、而シテ其日常消費スル諸物価ニ至リテハ依然其騰上ノ余勢ヲ保維セシヲ見レハ農家ノ疲弊頗ル甚シト謂フベシ、農家ノ景況已ニ斯ノ如シ、商家豈其影響ヲ受ケザルヲ得ンヤ、蓋シ明治十二三年ニ於テ各般ノ商品ハ其需用切迫ニシテ往々仕入貨物ヲ尽クシテ猶之ニ応スル事能ハザルノ状況アリ、是ヲ以テ商賈ハ十四年モ亦前年ノ如ク其商業活溌ナラン事ヲ予想シ、各自資力ヲ尽クシテ商品ヲ購入シ、農家需用ニ応スルノ準備ヲ為シタルニ農家ハ既ニ前陳ノ情勢ニ推移シテ購買スルモノ極メテ僅々タルヲ以テ其景況ハ全ク前年ノ反対ニ出デ、商估ハ空シク其商品ヲ蓄積シテ資本ノ壅塞ニ苦シミ今又物価下落ノ不幸ニ遭逢ス、商家ノ困難豈亦甚シカラズヤ、由是視之第五項ニ於テ陳述シタルガ如ク本年三月ヨリ以降今日ニ至ル迄、通貨ノ需用自ラ減少シテ為メニ金利ヲシテ低位ニ沈着セシメタルノ理由亦以テ徴スルニ足ルベシ
第七 諸製造所之景況
案ズルニ近来諸製造所ノ景況ハ概シテ萎靡ノ衰兆ヲ呈シ、今本会ガ当府下ニ就テ目撃スル所ニ拠レバ、紡績所・機場・摺付木製造所・製靴場・製革場ノ如キハ最モ不景気ナルモノトス、而シテ紡績所ノ如キハ
 - 第17巻 p.823 -ページ画像 
糸価甚ダシク下落シ、職工ノ賃銀ハ昨年十月以来概シテ一割五分ヲ引上ケタレバ、場主ハ得失相償ハサルニ困ミ、不得已休業シタル者モ亦少カラズト云フ、又機場ノ如キ近来織物ノ需用頓ニ減少シ、随テ其価位ノ低落ヲ来タシタルヨリ目下ノ現状ヲ以テセバ製造人ノ所得ハ僅カニ糸価ヲ弁ズルニ過ギズシテ、職工手間賃其他染代等ニ至ル迄尽ク皆損失ニ帰スルノ姿ナレバ、各其業ヲ廃スルヲ以テ得策トスルノ景況ヲ呈セリ、摺附木製造所ノ如キモ特ニ不景況ヲ極メ、其製造高職工之員数等昨年ニ比シテ殆ド一半ヲ減少シタリト云フ、其他製靴場・製革場ノ如キモ仕込ノ価位ハ高クシテ販売ノ直段低落セシニヨリ皆其不景気ニ苦メリ、顧ミテ洋紙・活板・麦酒等諸製造所ノ景況ヲ見ルニ他ノ不景況ナルニモ拘ラズ近時ニ至リ却テヤヽ繁盛ヲ呈スルモノハ、蓋シ此等品類ノ如キ近年内地ノ製造漸ク精巧ヲ致シ而モ其価格ニ至リテハ之ヲ輸入品ニ比スレバ却テ低廉ナルヲ以テ大ニ其需用ヲ増シ、就中洋紙活板製造ノ如キ近来文化之進度ニ随従シタルニ因ラスンバアラズ、斯ノ如ク此等一二ノ製造所ニ至リテハ幸ニ需用増進ノ気運ニ遭ヒ他ノ影響ヲ感セザルガ如キモノアリト雖トモ、其全般ニ就テ之ヲ論ズレバ幾分カ近時商業不振ノ影響ヲ受ケザルモノ蓋シ全クコレナシト断言スルモ決シテ過言ニ非ザルナリ
第八 諸職工之賃銭昂低及其景況
案スルニ府下諸職工之賃銀ハ概シテ皆前年ヨリ幾分ノ騰貴ヲ致セリ、今昨年一月ヨリ三月迄ノ諸職工賃銀ヲ以テ之ヲ本年同時間之賃銀ニ比スル時ハ則チ左ノ如シ
    諸職工人夫等賃銭明治十四年同十五年比較表

図表を画像で表示諸職工人夫等賃銭明治十四年同十五年比較表

 職名      明治十四年     平均    明治十五年     平均    比較増減          銭厘   銭厘   銭厘    銭厘   銭厘   銭厘 大工      五〇〇  四五〇  四七五   六〇〇  五五〇  五七五   増 弐割壱分 水道橋穴蔵大工 六二五       六二五   七〇〇  六五〇  六七五   増 八分七厘 鍛冶職     五〇〇  四〇〇  四五〇   五五〇  四五〇  五〇〇   増 壱割壱分 経師職          四八〇  四八〇   五〇〇       五〇〇   増 四分弐厘 家根職     五三八  四三三  四八六   五八〇  五五〇  五六五   増 壱割六分弐厘 左官職     五〇〇  四五〇  四七五   五五〇  五〇〇  五二五   増 壱割〇五厘 同土浚《コネ》 三〇〇  二五〇  二八五   三五〇  三〇〇  三二五   増 壱割四分 石工職     七〇〇  六二五  六六三   七五〇  七〇〇  七二五   増 九分三厘 瓦職      四五〇  三七五  四一三   五〇〇  四〇〇  四五〇   増 九分 同手伝          二三〇  二三〇   三五〇       三五〇   増 五割弐分 同土煉          二五〇  二五〇   三〇〇       三〇〇   増 弐割 鳶人足     三〇〇       三〇〇   三五〇  三〇〇  三二五   増 八分三厘 土方人足         二五〇  二五〇   三五〇       三五〇   増 四割 平人足          二三三  二三三   二七五       二七五   増 壱割八分 塗師職          四五〇  四五〇   五〇〇       五〇〇   増 壱割壱分 木挽職          四五〇  四五〇   五五〇       五五〇   増 弐割弐分 大鋸切杣         三七五  三七五   五五〇  五〇〇  五二五   増 四割 畳職      五五〇  四五〇  五〇〇   五五〇  四五〇  五〇〇   増 減ナシ 建具職     五〇〇  四五〇  四七五   五五〇  四五〇  五〇〇   増 五分壱厘 穴彫大工         五三〇  五三〇   五三〇       五三〇   増 減ナシ 指物師     五〇〇  四〇〇  四五〇   五〇〇  四〇〇  四五〇     同断 錺職      五五〇  四五〇  五〇〇   五五〇  四五〇  五〇〇     同断 桶職      五五〇  四五〇  五〇〇   五五〇  四五〇  五〇〇     同断  以下p.824 ページ画像  水道井戸人足       三五〇  三五〇   四五〇  四〇〇  四二五   増 壱割壱分四厘 植木職     三〇〇  三〇〇  二七五   三五〇  三〇〇  三二五   増 壱割一分八厘 煉化積職    五〇〇  四五〇  四七五   六〇〇  五九〇  五九五   増 弐割五分弐厘 同手元          二七〇  二七〇   三〇〇       三〇〇   増 壱割壱分 同手伝          二五〇  二五〇   三〇〇       三〇〇   増 弐割 




前表ニ由テ之ヲ観察スルニ職業ノ性質ニヨリ其賃銀騰貴ノ割合ヲ同フセザルモノアリト云トモ皆上進ノ状ヲ示シ、其統計ノ上ニ就テ之ヲ見ル時ハ恰モ諸物価ト反対ノ結果ヲ呈スルモノヽ如シ、夫レ昨春以来今春ニ至ル迄銀米ノ低落如此夫レ甚シク、諸物価モ亦之ニ随テ幾分ノ低落ヲ致シタルニモ拘ラズ諸職工ノ賃銀独リ益々騰貴ノ実ヲ示スモノハ何ソヤ、想フニ職工賃銀ノ如キ他ノ諸物価ノ如ク速カニ銀米以落ノ影響ヲ感スルコト能ハザルニ因ルモノナラン、請フ試ニ之ヲ論ゼン
蓋シ我国ノ現状ニ就テ之ヲ見ルニ銀米価格ノ浮沈動揺スルニ当リ百般ノ貨物皆之ニ随伴セザルモノナキハ前項已ニ開申スルガ如シ、然レトモ其影響ヲ受クルニ於テハ各々固ヨリ其遅速ヲ同フセザルモノアリ、銀米ノ浮沈高低スルニ当リ直チニ之ニ随伴スルモノハ、雑穀・酒・醤油・薪・炭等ノ品類ニシテ其他ノ貨物之ニ次キ、最後ニ至リテ職工ノ賃銀始テ其影響ヲ感ズルモノナリ、今試ニ之ヲ左 ○下段ニ図解セン
抑モ物価騰貴ノ順序ハ概ネ第一図ニ示スガ如クシテ、而シテ其低落ニ際シテ職工ノ賃銀独リ騰貴シタル時ノ場合ハ即チ第二図ニ示スガ如シ此図ニ拠レバ銀米ノ価格乙点ヨリ最高点ニ達シ、復タ漸ク低下シテ甲点ニ達スルニ当リ、職工ノ賃銀ハ丙点ヨリ上向シテ漸ク乙点ニ達スル
        ○物価騰貴之塲合
  第一図 金銀貨、米穀、酒油@類、呉服太物、薪炭、其他ノ貨物、職工之賃銀 最高点 乙 甲 最低点 丙
        ○物価下落之塲合
  第二図 金銀貨、米穀、酒油ノ類、呉服太物、薪炭、其他ノ貨物、職工之賃銀 最高点 乙 甲 最低点 丙
モノトス、是近時銀米諸物価ノ低落シタルニモ拘ラス職工之賃銀特ニ騰貴ヲ致シタル所以ナリ
由是視之曩キニ銀米諸物価ノ騰貴スル時ニ当リテヤ其利益ヲ得タル者ハ農商ニシテ、諸職工ハ却テ困難ヲ受ケ、今ヤ物価ノ低落スルニ際シ其状況全ク前日ト相反シ、其困難ヲ受クル者ハ農商ニシテ、諸職工ハ此困難ヲ感スル事少キカ如シ、然リト云トモ久シク商業ノ萎蘼スルヤ其余響ハ早晩諸職工ニ波及スルヲ免カレザルモノナレバ、若シ此不景気ヲシテ数月間ヲ経テ回復スルノ期ナカラシメバ、竟ニ諸職工モ亦困難ヲ見ルニ至ラン事ハ今日ニ於テ断言シ得ル所ニシテ本会ガ最モ憂慮スル所ナリ
第九 商品出入之多寡(但販売在荷ノ多寡)
 - 第17巻 p.825 -ページ画像 
本項ニ就テ之ヲ審案スルニ、当市場ニ集散スル万般ノ貨物ニ就キ其出入ノ多寡在荷ノ増減ヲ悉ク調査スルガ如キハ実際得テ能クスベカラザルヲ以、暫ラク本会ガ発兌スル商況報告中重要ノ品類ニ就キ其出入貯蔵高等ヲ調査シ以テ本項ノ答案ニ供ス

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   項目                輸入                              輸出                               貯蔵     目次  十四年三月    十五年三月     比較増減        十四年三月         十五年三月    比較増減         十四年三月    十五年三月     比較増減 品名 米     一一〇、一三八石  一一三、八九七石  △  三、七五九石   消費   八一、〇一八石   八六、三九七石  △  五、三七九石   一六三、三〇〇石  三四一、〇〇〇石  △ 一七七、七〇〇石 〆粕      五、八一八個   一六、六〇三個  △ 一〇、七八五個        一〇、〇〇八個   一一、四七六個  △  一、四六八個    八〇、五四三個   一七、五六九個  △  六二、九七四個 干鰯    一四二、七五九個   五九、六二二個  ○ 八三、一三七個        九二、二〇四個   三四、五四二個  ○ 五七、六六二個   一一六、九九二個   四四、一二〇個  △  七二、八七二個 畳表     一四、七五一個   一二、六三七個  ○  二、一一四個             ……        ……         ……         ……        ……          …… 塩     一二二、二〇〇俵  一一三、一〇〇俵  ○  九、一〇〇俵   消並出 一二一、八〇〇俵  一〇二、八〇〇俵  ○ 一八、四〇〇俵    二五、五〇〇俵   一三、〇〇〇俵  △  一二、五〇〇俵 砂糖     四六、七二六個   四五、九八二個  ○    七四四個        三三、七七三個   三三、〇一一個  ○    七六二個    一二、一一一個   二三、七一五個  ○  一一、六〇四個 繰綿      二、六七七本      七七二本  ○  一、九〇五本         二、一九六本    一、二一一本  ○    九八五本     三、五七四本    一、八五二本  △   一、七二二本 酒地廻リ    一、六二一樽    一、四八三樽  ○    一三八樽   消並出   二、〇五〇樽    二、七〇〇樽  △    六五〇樽       四六一樽    七、〇二〇樽  △   六、五五九樽 酒下タリ   二八、七六〇樽   四二、八〇二樽  △ 一四、〇四二樽   同    四四、七〇〇樽   三一、六八八樽  △ 一三、〇一二樽     七、一〇九樽   七九、〇六一樽  △  七一、九五二樽 



 前表比較増減ノ欄内ニ於テ数字ノ上ニ△印ヲ付スルモノハ増加ヲ示シ○印ヲ付スルモノハ減少ヲ示ス
前表ニ就テ之ヲ観察スル時ハ一二貨物ヲ除ク之外ハ皆出入共ニ其減少ヲ呈シ、貯蔵高ニ於テ其増加ヲ見ル、以テ其運転渋滞ノ状況ヲ察スルニ足レリ、今実業者ノ報道スル所ニ拠レバ凡ソ商品ノ何タルヲ問ハズ其販売高ハ昨年ニ比シ概ネ幾分ヲ減少セリト云フ、即チ玆ニ市場ニ於テ売買ノ多キ一二ノ貨物ニ就キ実業者ノ胸算ニ従テ其販売高ノ増減ヲ掲ク、庶幾クバ全般商況ノ盛衰ヲトスルニ足ラン歟
   水油     減 凡二割
   醤油     減 同二割
   材木     減 同五割
   石油     殆ド増減ナシ
   種粕     減 同四割
第十 舟車賃銭之昂低及其景況
今本項賃銀ノ昂低ヲ論ズルニ当リ先ツ各港ヨリ東京迄メ《(ノ)》運賃ヲ調査スルニ滊船・風帆船共之ヲ前年ニ比シテ凡ソ平均百分ノ五ヲ低落シ、其他艀船運賃ノ如キモ亦之ニ準ジテ低落セリ、即チ其割合左ノ如シ
    各港ヨリ東京迄米穀百石ニ付滊船運賃比較表

 - 第17巻 p.826 -ページ画像 

図表を画像で表示各港ヨリ東京迄米穀百石ニ付滊船運賃比較表

          明治十四年一月ヨリ三月迄平均   明治十五年一月ヨリ三月迄平均   差額   割合            円                円               円   割分厘 神戸ヨリ東京迄   六〇               五五               五   ・八三 下之関ヨリ 同  一〇〇              一〇〇              ……    …… 長崎ヨリ  同  一二五              一二五              ……    …… 石之巻ヨリ 同   七二               六八               四   ・五六 函館ヨリ  同  一二五              一一八               七   ・五六 




    各港ヨリ東京迄米穀百石ニ付風帆船運賃比較表



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          明治十四年一月ヨリ三月迄平均   明治十五年一月ヨリ三月迄平均   差額   割合           円                円               円    割分厘 神戸ヨリ東京迄  四五               四二               三    ・六七 下之関ヨリ 同  七五               七一               四    ・五三 長崎ヨリ  同  九〇               八五               五    ・五六 石之巻ヨリ 同  六二               五八               四    ・六五 函館ヨリ  同  九〇               九〇              ……     ……           円                円               銭 東京艀賃百石ニ付  三               二・八〇            二〇    ・七五 




抑モ前表ニ示スガ如ク滊船風帆船トモ其運賃昨年ニ比シテヤヽ低落シタルモノハ要スルニ商業不振ノ為メ市場貨物ノ運転自ラ減少シ、随テ船舶ノ需用緩弛シタルニ職由セズンバアラズ、然レトモ船賃之減差諸物価低落ノ割合ノ如ク甚タシカラサルモノハ、想フニ我国船舶之数猶之ヲ貨物ノ数量ニ比シテ其割合甚ダ少キニ因スルモノナラン歟、次ニ陸運車馬賃銀ノ如キハ之ヲ昨年ニ比スルニ全ク高低ナシト云フト雖トモ、此等ノ賃銀タル従来通運会社ト各地方トノ約束ニ定マルモノナルガ故ニ、他ノ物価ノ銀米ニ附随スルガ如クナラザルモノアリ、即チ此ニ現今ノ賃銀ヲ表出スル事左ノ如シ

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  各道                     荷車 一里平均   馬 同上   人足 同上   人力車 同上                           銭               銭 東京ヨリ東海道通リ大阪ヲ経テ長崎迄       一二・四〇     同上     五・九〇    同上 肥前轟木ヨリ肥後熊本ヲ経テ鹿児島迄       一一・五〇     同上     八・一〇    同上 陸前街道東京ヨリ宇都宮仙台ヲ経テ青森迄     一二・二〇     同上     八・一〇    同上 中仙道東京ヨリ京都迄              一二・七〇     同上     七・六〇    同上 岩代福島ヨリ羽前山形羽後秋田ヲ経テ陸奥青森迄  一三・二〇     同上     八・一五    同上 甲州街道                    一二・〇〇     同上     九・〇〇    同上 陸羽浜街道                   一二・四五     同上     八・三〇    同上 京都ヨリ越前福井ヲ経テ加賀金沢ニ至ル      一〇・〇〇     同上     五・五〇    同上 




一賃銭之外手数料トシテ一割ヨリ一割五分(地方ニヨリ差異アリ)継立所ニテ領受候事
一雨雪悪路ノ節ハ一割ヨリ五割迄増賃之事
一夜継ノ節ハ一倍迄増賃ノ事
第十一 総論附貿易盛衰之景況
以上ノ各項ニ叙述スル所ヲ以テ近時ノ商況ヲ概論スレバ総テ衰頽ニ傾向スト云ハザルベカラズ、而シテ其因依スル所ヲ察スレバ実ニ銀米ノ下落ニ根スルガ如キノ観ヲ為スニ付、本会ハ特ニ銀米下落ノ原因ヲ詳説シテ全般ノ総論ニ充ントス
夫レ銀米ハ諸物価ノ標準ニシテ其昂低ノ方針ナリ、故ニ銀米騰貴スレハ物価随テ騰貴シ下落スレハ亦随テ低降ス、是独リ目下ノ現状ニ就テ
 - 第17巻 p.827 -ページ画像 
之レヲ証明シ得ヘキノミナラス既往ノ成蹟ニ徴シテ亮カナル所ナリ、昨年三四月頃銀米ノ漸ク低落スルニ当リテ商務局長閣下ハ其原因ヲ本会ニ垂問セラル、当時本会ハ米価ノ下落ヲ以テ其出場高及ヒ貯蔵高ノ増加ニ帰シ、其出入ノ増減ヲ表出シテ以テ之ヲ証明シ、又銀貨ノ低落ヲ以テ輸出ノ輸入ニ起過《(超カ)》シタルニ根スルモノトシ、其出入貿易額ヲ統計シ、且ツ聊カ本会ノ意見ヲ副記シテ以テ之ニ奉荅シタリキ、今ヤ本会ガ其原因ヲ論定スルモ亦此要理ニ外ナラズト云トモ、更ニ溯リテ其遠因ヲ推究スレバ則チ我国ノ通貨不換紙幣ノ制タルニ付、其貨物ノ消長スルニ従テ自ラ伸縮スル事能ハザルニ帰セザルベカラザルナリ
蓋シ真正ノ貨幣ハ其市場貨物ニ対シテ過多ナルトキハ必ズ他ニ流出シ減少スル時ハ他ヨリ吸入シテ其権衡ヲ保ツ事、猶蒸気機関ノ安全弁ガ其滊力ノ増減ニ従ヒ自ラ開閉シテ之ガ平均ヲ保ツガ如シ、然ルニ不換紙幣ハ自ラ伸縮スルノ力ヲ有セザルガ故ニ、一且其貨物《(旦)》ニ対スル割合ニ消長アル毎ニ必ズヤ貨物ノ呼価ニ著シキ高低変動ヲ生セザルベカラズ、左レバ明治十三年前後銀米価格高低ノ分カルヽ所ニ就テ之ヲ見ルニ其針路ノ傾向ハ全ク此要理ニ背カザルヲ知ルニ足レリ、顧フニ明治九年以来十三年ニ至ル迄銀米ノ価格騰貴シタルモノハ通貨ノ増加シタルヨリ生ズル所ノ結果ニシテ、爾後本年ニ至ル迄右両品価格ノ漸ク下落シタルモノハ亦通貨減少ノ致ス所ナリ、然リ而シテ昨年秋冬ノ際ヨリ本年ニ渉リ米価ノ特ニ低落シタルモノハ想フニ前年騰貴ノ反動ナルベシト雖トモ亦他ニ近因ノ存スルアリテ之ヲ助成シタルニ由ラズンバアラズ、何ゾヤ納租徴収期限短縮シタルノ一事即チ是ナリ、夫レ物価ノ騰貴セントスルニ方リテハ其所有者ハ勉メテ之ヲ貯蔵スルノ念ヲ生シ、其下落セントスルニ方リテハ皆競フテ之ヲ放売セントスルハ世人ノ常情ナリ、故ニ明治十二三年米価ノ騰貴スルニ方リテヤ農家ハ一般競フテ之レヲ貯蔵シタルヨリ全国各地苟クモ米ノ市場ト称スルノ地ハミナ其供給ノ乏シキニ苦シムノ景況アリ、於是乎米価ハ諸物価ニ先ツテ特進シ、所謂格高ト云フカ如キノ勢ヲナセリ、爾後数月ニシテ諸物価ハ漸ク騰上シ略一年ヲ経テ米価ト平準ヲ得ントシタルガ故ニ、農家ハ其衣食其他日用品ノ購買ニ向テ更ニ其費途ヲ増シ其生計ノ要費多額ニ至リタレハ漸ク其貯蔵米ヲ売出スノ念ヲ生シ、随テ売レバ随テ下落スルノ景状ナリキ、然ルニ彼ノ改正納租徴収法ハ田方税三千余万円ノ巨額ヲ昨年十一月一日ヨリ、本年二月廿八日ヲ期シ之ヲ徴収スヘキモノニシテ、其期限前年ニ比スレハ殆ント一ケ月ノ短縮ナリトス、而シテ旧法ニ於テハ其期限四月迄ニシテ猶五月一日迄猶予ノ時間アリシモ改正法ニ拠レバ全ク此ノ如キ猶予ノ時間ナキヲ以テ実際ニ於テハ殆ド二ケ月ノ短縮ナリト云フモ可ナリ、是ヲ以テ農家ハ米価ノ騰貴ヲ待ツニ由ナク之ヲ放売シテ以テ其徴収ニ応セザルベカラス、況ンヤ其時期ハ恰モ新暦ノ年末ヨリ旧暦ノ大節季ニ渉リ都鄙金融ノ切迫ニ際スルオヤ、是ヲ以テ金融急促ニシテ利息騰上ス、金利已ニ騰貴スレハ益々米価ノ下落ヲ促シ、米価下落スレハ農家ハ益々之レヲ放売シ、互ニ相主伴シテ非常ノ低価ヲ発セシメ、今日ニ於テハ世人ヲシテ米価ノ格安ヲ唱ヘシムルニ至レリ、是レ本会カ彼ノ納租徴収期限ノ短縮ヲ以テ米価下落ヲ助成シタリト為ス所以ナリ
 - 第17巻 p.828 -ページ画像 
更ニ一歩ヲ転シテ米価騰進ノ時況ヲ回想スレバ、我国ノ米産ハ比年豊収ヲ重ネ其産出額ハ年々益々多キヲ加ヒタルニモ拘ラス却テ其価ノ騰貴シタル、紙幣流通額ノ増加ニ随テ特ニ他ノ物品ニ先ツテ其呼価ヲ騰上シタルニ外ナラズ、加之曩キニ減租ノ特典アルアリテ農民大ニ余裕ヲ生シ、其ノ貯蔵力ハ遂ニ市場米穀ノ供給ヲシテ大ニ減少セシムルニ至レリ、農家ノ富増進スルヤ已ニ如此シ、其購買力ヲ増長スルハ亦自然ノ勢ナルニ付、近年輸入品ヲ首トシ其他各般ノ商品田舎地方ニ向ツテ非常ニ販路ヲ拡張シタリキ(明治十二年中本会ガ関税局ノ御下問ニ対シ調査シタル復申書ヲ参観スベシ)
輸入品ノ需用ヲ増加スルヤ勢直チニ円銀ノ需用ヲ繁劇ナラシメサルヘカラス、是レ曩キニ銀価大ニ騰進シテ壱円八十銭以上ノ高点ニ達シタル所以ナリ、然ルニ昨春ニ至リテハ米価次第ニ低落シタルモ、諸物価ハ猶依然トシテ高価ヲ保維シタルヲ以テ農家ノ状況ハ禍福全ク前年ト相反シ、頓ニ其収得ノ減少シタルヨリ大ニ其購買力ヲ減殺セラレ、日用必需ノ品類ト雖トモ猶之レヲ買ハサラン事ヲ勉ム、於是乎田舎地方ノ商況ハ盛衰一変シテ各般ノ商品ミナ其販路壅塞シテ到ル所貨物ノ渋滞ヲ見サルナキニ至レリ、故ニ彼ノ輸入品ノ如キ関税局ノ月表ニ拠レハ昨年ニ比シテ敢テ甚シキ減少ヲ見ザルモ、其着港スル所ノ貨物多クハ外商ノ倉庫ニ停滞ス、是レ蓋シ近日各開港場ノ輸入貿易衰頽ノ景況ヲ呈シタル所以ナリ
翻テ輸出貿易ヲ観察スルニ其首位ヲ占ムル所ノ生糸ハ昨年中横浜ニ提出シタル高合計三万八千七百余個ニシテ、之レヲ十三年度ノ額ニ比スレバ壱万余個ノ増加ヲ致セリ、蓋シ如此巨大ノ増加ヲ発シタルモノハ内地織機場ノ不景気ナルカ為メ其ノ販路ヲ輸出ニ求メタルニ由ルモノニシテ、当時内外生糸ノ商況ハ前年ニ比スルニ敢テ活溌ト云フニアラスト雖トモ、已ニ今日ニ至ル迄其取引ヲ完結シテ我ニ得タル所ノ銀貨無慮一千余万円ニ出テ、而シテ現ニ横浜市場ニ残在スル三千余個ノ生糸ニ至リテモ早晩之ヲ売却スヘキモノトス、夫レ如此一方ニ於テハ輸入衰頽シテ銀貨ノ需用ヲ減シ、又一方ニ於テハ生糸売却ノ為メ銀貨ノ供給ヲ増シタルヲ以テ貿易ノ状況漸ヤク一変シテ終ニ銀貨ノ下落ヲ惹起シタル所以ナリ、如斯銀米昂低ノ因由スル所ヲ論究スレバ諸物価之ニ追随スルノ理由復タ更ニ言ヲ俟タズシテ明カナルベシ、然ルニ今日諸物価低落ノ割合銀米ニ比シテ甚シカラザルモノアルハ想フニ前項ニ略述シタルガ如ク、銀米下落ノ傾向急劇ニシテ未ダ之ニ随伴スルノ時間アラザルニ因ラズンバアラズ、蓋シ前年銀米ノ騰貴スルヤ漸ヲ以テシ、而シテ諸物価ノ影響ヲ受クルモ亦漸ヲ以テ其進路ヲ騰貴ニ取リ、終ニ銀米ト平準スルヲ得タリト云トモ近時其下落ノ如キハ極テ急劇ナリシガ故ニ他ノ物価之ト其歩ヲ同フスルニ遑アラザルニ因ザルヲ得ンヤ、請フ左表ニ就テ之ヲ証明セン
 因ニ曰ク、銀貨高低ノ表面ニ示スガ如ク明治十三年一月以来其価位漸次騰上シ、三四月ノ交ニ及ンテハ其勢甚ダシカリシガ、此際政府ハ頻リニ防禦ノ策ヲ施コサレタルヲ以テ爾来殆ト四ケ月間ハ稍々上進ノ勢ヲ挫キタリシガ、其十月ニ至リ防禦ノ力弛ムヤ否ヤ其価位ハ忽チ復タ上進シテ非常ノ高点ニ達セリ、故ニ此進度米価ノ高低ト同シカラザルモノアリ、請フ覧閲ニ注意アラン事ヲ
 - 第17巻 p.829 -ページ画像 
従明治十三年一月至同 十五年三月 米価高低一覧表 第一段 第二段
従明治十三年一月至同 十五年三月 銀価高低一覧表 第一段 第二段
 - 第17巻 p.830 -ページ画像 
前表ニ拠レバ明治十三年一月以来銀価高低ノ大勢ハ分テ之ヲ二段ニスベシ、即チ昨年三月迄ヲ第一段トシ(上進ノ傾向)爾後本年三月ニ至ル迄ヲ第二段トス(下落ノ傾向)而シテ第一段ニ於テハ其間多少ノ変動ナキニ非ザリシモ要スルニ漸次上進ノ勢ヲ保持セリ、斯クテ第二段中其低落スルニ当リ昨年十二月ニ至ル迄ノ一節ニ於テハ時ニ多少ノ浮沈ナキニ非ザリシモ、極メテ静穏ノ傾向ヲ示セシガ本年一月以後ノ一節ニ於テハ其価位俄然劇降シ、即チ今日ノ変況ヲ見ルニ至レリ、又明治十三年一月以来米価高低ノ大勢ヲ見ルニ銀価ト同シク之ヲ分テ二段トスベシ、即チ同年十二月迄ヲ第一段トシ爾後今日ニ至ル迄ヲ第二段トス、此第一段ニ於テハ其価位漸ク騰上セシガ第二段ニ入リテヨリ漸ク其価位ヲ低向スルノ状ヲ示セリ、然レトモ昨年十一月迄ノ一節ニ於テハ其低落ノ度甚ダ平穏ノ傾向ヲ保維シ、本年一月以後ノ一節ニ於テハ其価位俄然劇降ノ変況ヲ呈スル事亦銀貨ト異ナル事ナシ、左レバ明治十三年十二月ヨリ翌十四年一・二月ノ交ニ至ル迄ハ銀米高低ノ分カルヽ所ノ関鍵ナリト謂フベシ、而シテ昨年初春ノ交ヨリ十一二月頃迄銀米漸ク低落ノ勢ヲ示シタルヲ以テ此際銀米ノ影響ヲ受クベキ商品ハ亦皆漸ク其価位ヲ低向シタルヤ明カナリ、然ルニ本年一月ヨリ以後銀米ノ下落急劇ニ出テタルニ当リ諸物価ハ直チニ銀米ノ急進ニ随伴シテ其平準ヲ得ルニ遑アラザルナリ、是銀米ト他ノ商品ト其高低ノ割合ヲ同フスル能ハザル所以ナリ
夫レ諸物価ノ標準タル銀米ニシテ其高低常ニ如此ノ急劇ニ出ツル時ハ商業ノ混乱実ニ少小ナリトセズ、之ヲ匡正スルノ法忽ニスベカラザルナリ、蓋シ近時商況ノ変動多ハ因ノ合成シタル結果ナルベシト云トモ溯リテ其遠因ヲ討究スレバ我国現行ノ貨幣制度未ダ完整ニ至ラザルニ因ラズンバアラズ、若シ其レ其真因果シテ此ニ在リトセバ将来如此変動ノ市場ニ再発セザルハ決シテ保スベカラザルナリ、願クハ貨幣ノ制度漸ク改良ニ趣キ市場流通貨幣ヲシテ伸縮自ラ補フノ妙用ヲ有シ、此急劇ノ変動ヲ永ク市場ニ見ザラン事是本会ガ常ニ切望スル所ナリ