デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

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公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

2編 実業界指導並ニ社会公共事業尽力時代

2部 社会公共事業

1章 社会事業
4節 災害救恤
2款 水害救恤
■綱文

第24巻 p.588-593(DK240074k) ページ画像

明治31年10月22日(1898年)

是年九月、北海道地方ノ水害甚シ。是日栄一、豊川良平・大倉喜八郎等ト共ニ発起人ト為リ、義捐金募集ニ尽力ス。


■資料

渋沢栄一書翰 尾高幸五郎・八十島親徳宛 (明治三一年)一〇月三〇日(DK240074k-0001)
第24巻 p.588 ページ画像

渋沢栄一書翰  尾高幸五郎・八十島親徳宛 (明治三一年)一〇月三〇日
                    (八十島親義氏所蔵)
○上略
外ニ一事申上候ハ、渡辺勘三郎より申越候北海道救恤之事ハ、発起人と相成候事同意之由、芝公園十六号妙定院と申寺院ニて杉田定一氏即現長官まて至急書状ニて御申遣相成候様御取計可被下候
渡辺氏へも為念其段御申遣し有之度候
○中略
  十月三十日
                       渋沢栄一
    尾高幸五郎殿
    八十島親徳殿
○下略


東京経済雑誌 第三八巻第九四六号・第七〇六頁 明治三一年九月二四日 ○北海道被害地総代の陳情(DK240074k-0002)
第24巻 p.588-589 ページ画像

東京経済雑誌  第三八巻第九四六号・第七〇六頁 明治三一年九月二四日
    ○北海道被害地総代の陳情
北海道今回の水害は実に同道未曾有の惨状を呈し、家屋・田畑の流失人命の損害無数なるが、右陳情の為め道庁よりは杉田長官を始め、又総代委員としては北海道同志倶楽部員浅羽靖・森源三の諸氏何れも出京し、一方には内務省其他に向け、又一方には民間有志の間に立て、目下頻りに運動中なるが、陳情及請願の要旨は略々左の如しと云ふ
一、破壊の箇所は明年春季融雪の場合に於て再び惨状に罹るの虞あり
 - 第24巻 p.589 -ページ画像 
故に此の秋末迄には是非共復旧及び防禦の救急工事を要する
一、全道中最好の農作地は殆ど全部の被害に付明年の収穫期迄の食料に差支るの虞あり、而して又道庁にては既に一通りの救助を与へたるも、今後は他に救済の道無之きに至りしを以て其方法を立つる事
一、罹災窘窮の人民を四方に離散せしめず、多年間資本と労力とを注入したる土地に安堵せしむるの方法を立つる事
一、一時有志者の義捐を募集したるも、本年は未曾有の不漁なりしを以て此の上再募集の見込なきに至りし事
一、鉄道・道路・橋梁の破壊流失の為め、食料其他需給品の運搬上一大不便を来し、折角の義捐金も多く運搬費に要せられ、救済の目的を達すること能はざる事


中外商業新報 第五〇一四号 明治三一年一〇月二三日 北海道水災被害民救恤義捐金の募集(DK240074k-0003)
第24巻 p.589 ページ画像

中外商業新報  第五〇一四号 明治三一年一〇月二三日
    北海道水災被害民救恤義捐金の募集
杉田北海道庁長官は昨二十二日午後五時府下の紳士及び新聞記者数十名を帝国ホテルに招待し、先づ杉田長官より水害の概況、救恤費の国庫支出及び治水計画等に就て演説し、此際来会者の助力に依り被害民救恤義捐金を募集したき旨を陳述し、次に白仁内務参事官は水害当時の実況及被害民救恤に関する詳細なる演説を為し、終て食卓に就き、近衛公爵は来賓を代表し謝辞を陳べ、豊川良平氏は食後義捐金募集に就て充分協議したき旨を述べ、別室に於て来会者一同にて種々凝議する所ありし末、当日の来賓中より近衛公爵・園田実徳両氏を挙げ杉田長官と万事打合せの上義捐金募集発起人の選定其他に就て尽力することゝなり、各新聞社は募集に就て充分便利を与ふることに協議纏り、午後十時散会したる由


中外商業新報 第五〇三五号 明治三一年一一月一八日 北海道水災救助に関する義捐金募集広告(DK240074k-0004)
第24巻 p.589-590 ページ画像

中外商業新報  第五〇三五号 明治三一年一一月一八日
    北海道水災救助に関する義捐金募集広告
曩に九月霖雨の為め石狩国を中心とし、本道各地の河川皆汎濫して遂に未曾有の大洪水となり、鉄道破壊し電線断絶し市街村落田圃悉く浸水し、山丘崩れ家屋流れ死傷百を以て算ふ、其僅に身を以て免れし者と雖、流離惨状、住するに家なく饑寒に泣き道途に迷ふ者挙て算ふ可らず、吁又何等の惨状そや
今や時将に北風凛烈ならんとするの候、況や北海寒威猛烈の期に向はんとするに方り、一朝洪水の害を被ふりて着るに衣なく、食ふに粟なく、現に饑寒に瀕しつゝある者其幾千万人なるを知らず、此に於て此海道庁及有志の輩、業既に多少之か救済の方策を講し、日夜賑恤救済のことに尽力すと雖、官規自ら制限あり、亦本道有志の協同救済も一時焦眉の急を救ふに過きすして、到底能く救助の大目的を達するを得す、是を以て不肖等発起人となり、汎く大方の志士仁人に愬へ義捐を仰き、以て救恤の方法を尽さんとす、冀くは大方の志士仁人よ、不肖等の微衷を容れ、本道無告の窮民の為に、義財を投せられんことを敢て謹告す
  明治三十一年十一月

 - 第24巻 p.590 -ページ画像 

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     井上角五郎 池田謙三   日報社     日就社     豊川良平  大倉喜八郎  渡辺洪基    加東徳三 発起人 加藤正義  横山孫一郎  高島嘉右衛門  園田実徳     梅浦精一  毎日新聞社  福原有信    近藤廉平     阿部泰蔵  浅野総一郎  斎藤修一郎   渋沢栄一     渋沢喜作 (イロハ順) 



一義捐の金額は新聞紙上に掲載す
一義捐金は日本橋区江戸橋際百十三銀行東京支店に宛、北海道水災義捐金若干として御送金を乞ふ、但し領収証は同銀行より差出すこと
一義捐金は適宜金額取纏次第発起人より北海道庁長官に送附し、被害者に配付方依頼すること


風俗画報 第一七六号・第三一頁 明治三一年一一月 北海道の水害(畑山恒馬)(DK240074k-0005)
第24巻 p.590 ページ画像

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〔参考〕東京経済雑誌 第三八巻第九四七号・第七六三―七六四頁 明治三一年一〇月一日 ○北海道水害統計(DK240074k-0006)
第24巻 p.590-591 ページ画像

東京経済雑誌  第三八巻第九四七号・第七六三―七六四頁 明治三一年一〇月一日
    ○北海道水害統計
其筋の去る十七日正午までに調査したる所に拠れば、今回の北海道水害は石狩国を最大とし、十勝・日高・胆振・渡島の諸国之に亜ぎ、北見・釧路両国最も少し、即ち国別の統計は左の如し、但し此他天塩・千島両国にも多少の被害あるべけれど、未詳の為め之を欠如したりと知るべし
         石狩     渡島    胆振    日高     十勝    釧路    北見     総計
流失家屋    七八一      四   二六〇   一〇一    二九三     ―     ―  一、五四九
浸水家屋 一〇、〇二三  二、八九六   五九五   四三〇  二、四〇二    二五    三二 一六、六三六
溺死人員    一五六      四    八二    二九     二一     ―    四四    三五三
 - 第24巻 p.591 -ページ画像 
負傷人員      七      ―     ―     ―      二     ―     ―      九
溺死家畜    二〇八      ―    一八    七三     六八     ―     九    四七六
破損道路      九      ―     ―     四      ―     ―     ―     一〇
破損橋梁     一八      一     ―     ―      八     五     ―     三六
破損堤防      三      ―     ―     二      ―     ―     ―      五
被害田畑 一〇、六二七    二一〇     ― 二、二五四      ―     ―     ― 一三、〇九一
救助人員 三二、二七三    三四〇 一、一一九   一九八  六、〇〇〇     ―     ― 三九、九三九



〔参考〕東京経済雑誌 第三八巻第九五〇号・第九二九頁 明治三一年一〇月二二日 ○北海道の水害統計表(DK240074k-0007)
第24巻 p.591 ページ画像

東京経済雑誌  第三八巻第九五〇号・第九二九頁 明治三一年一〇月二二日
    ○北海道の水害統計表
北海道の水害(九月六・七両日)は十九支庁中十四支庁の管下に亘りたり、今其の被害統計を左に掲ぐ
  浸水家屋        二四、一六三
  床上浸水        一八、三三五
  床下浸水         五、六二八
  流失家屋         一、八一四
  潰家           一、三四三
  半潰家            三九五
  溺死人            二四一
  圧死人              七
  負傷者             四三
               町
  田       一、五四八・七五〇〇
  畑      五四、五三八・九一〇九



〔参考〕中外商業新報 第四九九〇号 明治三一年九月二三日 北海道の水害と拓殖事業(DK240074k-0008)
第24巻 p.591 ページ画像

中外商業新報  第四九九〇号 明治三一年九月二三日
    北海道の水害と拓殖事業
北海道に於ける過般の水害は同道未曾有の災変にして、其損害は実に莫大なるを以て、折角発達の機運に向へる移住拓殖事業に一頓挫を来たすの虞あらんかと憂ふるものも有る由なるが、元来重なる水害地は石狩川の本支流其他各河川の沿岸地にして、他の原野地よりも割合に地味沃饒なるを以て、従来の移民は多く是等沿岸地を好みて開墾し、其の極、樹木の濫伐、堤防の侵墾等を妄りにせし故遂に斯かる大氾濫を見るに至りたるものなれば、其の被害の沿岸地方に甚しかりしは止むを得ざるの結果として、扨て右肥沃の沿岸地は概ね開墾地若くは貸付地となり、尺寸の地も残こさずして、此両三年来拓殖の方向は他の大原野に向ひて歩を進めつゝあるものなれば、過般の水害は沿岸の住民に対して少なからざる損害苦痛を与へしには相違なきも、今後の移住業に妨害を与ふることは無かるべく、却つて当局者及ひ移住者に対し森林乱伐其他の弊害を矯むるの鑑戒となるべしといふ



〔参考〕中外商業新報 第四九九二号 明治三一年九月二七日 北海道水害救恤費五十万円支出の確定(DK240074k-0009)
第24巻 p.591-592 ページ画像

中外商業新報  第四九九二号 明治三一年九月二七日
    北海道水害救恤費五十万円支出の確定
北海道の水害に関し、罹災民救助並に鉄道・土木等の復旧工事費の緊急支出を求むる為め、過日来杉田北海道庁長官其他の有志者等上京し
 - 第24巻 p.592 -ページ画像 
当局大臣を訪問し陳情中なりしが、杉田長官は当初百万円位の支出を仰ぐ希望なりしも、同庫に余裕存せざる為め結局閣議に於て国庫剰余金中より五十万円を支出し、北海道水害救恤費に充つことに確定し、去る廿二日上奏せしに昨廿六日御裁可となりたる由、尤も五十万円中三分の二は罹災民救恤費に充て、残額は鉄道及土木復旧費に充てらるべしと云ふ



〔参考〕東京日日新聞 第八〇九二号 明治三一年一〇月一日 北海道被害民の請願(DK240074k-0010)
第24巻 p.592 ページ画像

東京日日新聞  第八〇九二号 明治三一年一〇月一日
    北海道被害民の請願
北海道の水災被害民は左の三件を請願する事に決し、不日五名の委員を上京せしむる由
 一、災害地町村衛生・教育費の国庫補助請願の事
 一、災害地鍬下年限一ケ年延期請願の事
 一、救助米を来年六月迄継続支給請願の事



〔参考〕中外商業新報 第四九九六号 明治三一年一〇月一日 北海道水害善後策の交渉(DK240074k-0011)
第24巻 p.592 ページ画像

中外商業新報  第四九九六号 明治三一年一〇月一日
    北海道水害善後策の交渉
北海道の水害救済及復旧費は総計百四十五万余円を支出する筈にて、其内五十万円は本年十一月迄の救済費及土木費として此程裁可を経、五十四万七千円は本年十二月迄の救済費及土木費として目下内務・大蔵両省間の交渉に属し残り六十一万円は明年一月以後の救済費及土木費として追加予算に編入し第十三議会に要求する予定なるが、此金額に就ては内務省と北海道民の間に異論なきも土木工事の方法に付きては意見を異にし、北海道陳情委員は目下内務省と交渉中なる由なるが陳情委員の意見を聞くに、拓殖事業の進歩するに随ひ河川の水流を妨くる草木を伐採するか如き細事は自然に行はるゝも、一歩を進めて河川の土石等を浚渫し以て排水力を増加する迄の工事は、応急の策として施さゝるへからす、然るに北海道人民か除害費として請求する金額八十万円に対して、前記百四十五万円の内より僅々十万円の除害費を支出するに過きされは、到底排水力を増加すること能はすといふにある由



〔参考〕中外商業新報 第四九九九号 明治三一年一〇月五日 北海道水害補助費第二回支出金(DK240074k-0012)
第24巻 p.592 ページ画像

中外商業新報  第四九九九号 明治三一年一〇月五日
    北海道水害補助費第二回支出金
北海道水害救済及土木費支出に付、杉田同長官より請求せし総額百四十五万余円の内十一月迄の分五十万円は既に支出することに決し、尚ほ十二月の分五十四万七千円は過日来内務・大蔵両省の交渉中なりとの事は去一日の紙上に記し置きしが、大蔵省は請求額の二十三万三千円を削り三十一万四千円を支出するに決したれば、近日の内閣議に上るべき筈なりと聞けり



〔参考〕中外商業新報 第五〇〇〇号 明治三一年一〇月六日 水害救済費の追加予算(DK240074k-0013)
第24巻 p.592-593 ページ画像

中外商業新報  第五〇〇〇号 明治三一年一〇月六日
    水害救済費の追加予算
北海道水害救済費には去一日の本紙に記する如く五十万円を支出せし
 - 第24巻 p.593 -ページ画像 
外、近々三十万円を支出して応急救助をなす筈なるが、尚其他長野・新潟・山梨・岩手等の各県に対する救済策は、所管土木監督署にて査定次第追加予算として第十三議会に要求する筈なりと云ふ



〔参考〕竜門雑誌 第一二六号・第三六頁 明治三一年一一月 風水害と国庫(DK240074k-0014)
第24巻 p.593 ページ画像

竜門雑誌  第一二六号・第三六頁 明治三一年一一月
    風水害と国庫
本年の風水害は昨年及一昨年の風水害よりも其範囲狭くして、被害の程度少なかりしと雖も、尚ほ且つ既に風水害の為めに支出したる金額は百六十万円の多きに及び、其他略ぼ内定せるものを合すれば二百七十万円となるなり、其詳細左の如し
                           円
 北海道鉄道水害復旧工事費(四月)    二二、四九二・七七二
 北海道道路橋梁水害復旧費(七月中)   二四、六〇四・五〇五
 北海道災害費(九月中)        八三一、三五六・五八二
 台湾風災復旧費(八月中)        一九、九六八・〇〇〇
 台湾風水害復旧工事費(十月中)    一一三、二六一・〇〇〇
 台湾風水害復旧工事費(十月中)    六五四、六五三・六四三
   小計(既支出)        一、六六六、三三六・五〇二
○下略



〔参考〕開道七十年 北海道庁編 第二三五頁 昭和一三年八月刊(DK240074k-0015)
第24巻 p.593 ページ画像

開道七十年 北海道庁編  第二三五頁 昭和一三年八月刊
 ○交通及び土木
    五 治水事業の進展
○上略
 北海道治水調査会の設立 然るに明治三十一年九月、本道は未曾有の大洪水に襲はれ、非常なる惨害を蒙つた。その結果治水事業の必要が痛感され、同年十月道庁内に北海道治水調査会を設け、本道治水に関する重要事項を調査せしめる事とし、又民間にても石狩治水同盟を設け、貴衆両院に請願し、その結果第十三議会にては治水予備調査費五万円の支出が可決された。仍つて三十二年五月より調査に当り、三十四年十一月に至つて、河口より上流永山村に至る間の三角測量・両岸縦断測量・濾水地区域調査等を完了し、其他各種の調査を行ひ、之を基礎として治水上の方針を定め、漸次経営施設に著手せんとした。偶々北海道十年計画の実施によつて、それは本計画の一事業として遂行される事となつた。



〔参考〕東京日日新聞 第八一一一号 明治三一年一〇月二五日 外人の義捐(DK240074k-0016)
第24巻 p.593 ページ画像

東京日日新聞  第八一一一号 明治三一年一〇月二五日
    外人の義捐
横浜居留外人は、来る廿八日午後九時山手居留地パブリツクホールに於て慈善会を開き、其収入金を北海道水災民の救助に義捐する由にて当日はパツトン夫人の演説、モリソン夫人及シヤープ氏の唱歌並に音楽等もあり、入場料は五十銭なりと云ふ