デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

明治22年4月16日（1889年）

是日栄一、当委員会ニ出席シ、麹町三丁目焼失跡道路取拡ノ件・牛込区肴町外二ケ町焼失跡道路取拡ノ件・芝区芝車町五十九番地払下ゲノ件・神田区駿河台東紅梅町十五番地先道路取拡ノ件・築港ニ関スル品川湾及隅田川水底地質調査ノタメノ費
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用支出ノ件ニ関スル議事ニ与ル。

東京市区改正委員会議事録　　第二巻・第二二一―二二八丁
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（東京府文庫所蔵）
東京市区改正委員会議事録第二十九号
　　明治二十二年四月十六日午後第一時三十分開議
　　　　闕席　桜井勉　　　　須藤時一郎　　藤田茂吉
　　　　　　　福地源一郎　　角田真平　　　和田維四郎
　　　　　　　鬼頭悌次郎　　若宮正音　　　前田利充
　　　　　　　長与専斎　　　沼間守一　　　古市公威
　　　　出席十三員（鉄道及築港ニ関スル臨時委員ノ出席ヲ要セス）
○委員長曰　是ヨリ議事ヲ開カン
　　　書記左ノ訓令等ヲ朗読ス
　　訓第三一〇号
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市区改正委員会
　　別紙東京府知事伺麹町三丁目焼失跡処分之件、其会議ニ付シ候条意見申出ラルヘシ
　　右訓令ス
　　　明治二十二年四月十六日
　　　　　　　　　　　　　　　内務大臣　伯爵　松方正義
　　（別紙）
　　　　道路取拡之儀ニ付伺
　　当府麹町区麹町三丁目ノ内、一昨十三日夜焼失ニ罹リ候場所ハ、市区改正審査会ニ於テ第三等道路ニ決定ノ路線ニ係リ候ニ付、該方案ニ依リ別紙図面淡紅色ノ通取拡候積ヲ以テ、費用概算候処金五千弐百七拾九円五拾七銭弐厘ヲ要スルノ見込ニ有之候間、二十二年度市区改正費中焼失跡改正予備費ヲ以テ施行致度候条、別紙調書相添此段相伺候也（別紙調書ヲ略ス）
　　　明治二十二年四月十五日
　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　男爵　高崎五六
　　　　内務大臣　伯爵　松方正義殿
　　　○麹町区麹町三丁目一番地ノ内道路取拡之図（附図第三）。
○二十五番芳野曰　焼失セサル家屋ニシテ取毀ツヘキモノアルヤ
○十八番伊藤曰　然リ、裏手ノ方ニ少々取毀タサルヲ得サルモノアリ
○七番武藤曰　拾弐間ニ拡ムルニヤ
○十八番伊藤曰　否ナ、拾間ナリ
○七番武藤曰　此図面ニ示セル点線外ノ地所ハ、不用ノ分ナルヤ
○十八番伊藤曰　然リ、其不用ニ属スル地所ハ甚タ僅々ニシテ、一邸地ヲ為スニ足ラサルヲ以テ、已ムヲ得ス全地ヲ買上サルヘカラス、而シテ其不用地ハ隣地主ヘ払下クルノ見込ナリ
○七番武藤曰　何レヘ出ル道ナルヤ
○十八番伊藤曰　麹町三丁目ヨリ招魂社ニ出ル道ナリ
○五番田口曰　原案ニテ可ナリ
○七番武藤曰　焼残リタル家屋ノ移転料算出方ハ自分ニ相分ラス、如
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何ナル標準ニ拠ラレシモノナルヤ
○十八番伊藤曰　他ノ比例ヲ以テ之ヲ算出セリ、何レニ致セ今朝焼失シタルモノヲ今日ノ議会ニ提出スル位ナレハ、其調査ノ至急ヲ要セシハ勿論ナルヲ以テ、未タ充分ノ調ヘトハ云ヒ難ク、実際ニ至レハ多少増減アルヘキモ、先ツ此位ナレハ差シタル相違モアルマシト考フ
○十九番銀林曰　地所買上代モ或ハ少々高価ナランカ、先ツ此位ニナシ置カサレハ実際ニ臨ミ差支ナキヲ保セス、或ハ拾弐三円ニテ買ヒ得ラルヽモ知ルヘカラス
○七番武藤曰　拾八円ヨリ超過セサルヤ
○十八番伊藤曰　是非拾八円ノ内ニテ買上ルノ見込ナリ
○七番武藤曰　地位ハ電灯会社ヨリ向側ノ方優等地ナラン
○十九番銀林曰　否ナ、却テ下等ナリ
○二十五番芳野曰　原案ニテ可ナラン
○委員長曰　然ラハ原案ニ決スヘシ
　　　書記左ノ訓令等ヲ朗読ス
　　訓第三一七号
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市区改正委員会
　　別紙東京府知事伺牛込区岩戸町焼失跡処分ノ件、其会議ニ付シ候条、意見申出ラルヘシ
　　右訓令ス
　　　明治二十二年四月十六日
　　　　　　　　　　　　　　　内務大臣　伯爵　松方正義
　　（別紙）
　　　　道路取拡之義ニ付伺
　　当府牛込区牛込肴町今暁焼失ニ罹リ候場所ハ、市区改正審査会ニ於テ第三・四等道路ニ決定ノ路線ニ係リ候ニ付、該方案ニ依リ別紙図面淡紅色之通取拡候積ヲ以テ、費用概算候処金七千三百四拾七円四拾壱銭ヲ要スルノ見込ニ有之候間、二十二年度市区改正費中焼失跡改正予備費ヲ以テ施行致度候条、別紙調書相添此段相伺候也（別紙ハ省ク）
　　　明治二十二年四月十六日
　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　男爵　高崎五六
　　　　内務大臣　伯爵　松方正義殿
　　　○牛込区肴町外二ケ町道路取拡之図（附図第四）。
○七番武藤曰　屈曲ヲ直スニヤ
○十八番伊藤曰　俗ニ箪笥町抽斗横丁ト唱フル側ニシテ、一方ハ高ク一方ハ低キ土地ナリ、殊ニ焼失セサル所モアリ、加フルニ山手ノ道ハ強ヒテ直線ニナスヲ要セサル筈ナルヲ以テ、此処ハ現在道路ヲ利用シ取拡クル積リナリ
○七番武藤曰　両側共ニ拡ケテハ如何
○十八番伊藤曰　然カスルトキハ多額ノ金ヲ要スルヲ以テ、先ツ焼失場所ノミ取拡クル積リナリ
○五番田口曰　北角ハ寺院ナランカ、此所ノ道路ハ甚タ狭ク不便少ナ
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カラサルニ依リ、今少シク取拡ケテハ如何
○十五番桐原曰　壱坪拾五円ハ高キニアラスヤ
○二十五番芳野曰　神楽坂上ノ商業ハ頗ル繁盛ニシテ、先ツ銀座ノ竹川町辺ト甲乙ヲ争フ位ナラン、故ニ壱坪拾五円ハ決シテ高価ニアラサルヘシ
○十九番銀林曰　牛込区中ニハ此地ノ右ニ出ツルモノナカルヘシ
○七番武藤・五番田口並曰　原案ニテ可ナリ
○委員長曰　別ニ異議ナクハ原案ニ決ス
　　　書記左ノ訓令等ヲ朗読ス
　　訓第三一一号
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市区改正委員会
　　別紙東京府知事伺芝区芝車町道路敷廃止ノ件、其会議ニ付シ候条意見申出ラルヘシ
　　右訓令ス
　　　明治二十二年四月十六日
　　　　　　　　　　　　　　　内務大臣　伯爵　松方正義
　　（別紙）
　　　　道路敷払下ノ儀ニ付伺
　　芝区芝車町五十九番地二筆間道路
　　一地坪百四十坪四合五夕
　　　此払下代金四百弐拾壱円三拾五銭　一坪ニ付金三円
　　右ハ所有地間ニ介在セル道路ニシテ、不用ニ有之趣ヲ以テ、払下之儀接続地主ヨリ出願ニ付取調候処、申出之通相違無之、該路線周囲ハ願人所有地ナルノミナラス、行止ノ道路ニシテ絶テ通行人モ無之、且ツ市区改正ノ設計上ニ於テ道路ヲ廃シ可然場所ニ有之候間、願意聞届前書代金ヲ以テ払下、成規ノ通リ地種組替方取計該代金ハ市区改正費ニ組入候様致度、別紙図面相添此段相伺候也
　　　明治二十二年四月十二日
　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　男爵　高崎五六
　　　　内務大臣　伯爵　松方正義殿
　　　○芝区芝車町ノ内廃道敷之図（附図第五）。
○七番武藤曰　車町トハ何レノ辺ナリヤ
○十九番銀林曰　泉岳寺ノ前通ナリ
○五番田口曰　原案ヲ可トス
○委員長曰　異議ナクハ原案ニ決ス
○五番田口曰　本郷ノ射的場ヲ取崩シ、目下地均シヲ致シ居レリ、故ニ此辺ニ新道ヲ設クル積リナラハ、至急取調ヘラルヽ様致シタシ
○十九番銀林曰　早速取調フヘシ
○十八番伊藤曰　前会二十五番ノ発議アリシ神田錦町学習院跡地改正道路敷買上ヲ取調ヘシニ、如何ニモ多額ノ費用ヲ要シ、今後焼失跡買上代等ヲ支出スル能ハサルニヨリ、幹事会ニ於テ之ヲ見合セタリ此旨報道ス
　　　書記左ノ訓令等ヲ朗読ス
　　訓第三一二号
 - 第28巻 p.115 -ページ画像 
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京市区改正委員会
　　別紙東京府知事伺神田区駿河台東紅梅町十五番地先道路取拡ノ件其会議ニ付シ候条、意見申出ラルヘシ
　　右訓令ス
　　　明治二十二年四月十六日
　　　　　　　　　　　　　　　内務大臣　伯爵　松方正義
　　（別紙）
　　　　道路取拡之儀ニ付伺
　　当府神田区駿河台東紅梅町十五番地先道路ハ、狭隘ニシテ不便不尠候ニ付、幅員六間ニ取拡ケ相成度、就テハ該敷地ニ係ル建物移転料及工費共寄付致度旨、地先地主ヨリ願出候ニ付、遂調査候処右ノ如ク取拡候得ハ大ニ便利ヲ得、且ツ市区改正ノ計画ニ適合シ該事業ノ補足トモ相成、他ニ支障ノ筋無之ト認候間、願意聞届申度、別紙図面相添此段相伺候也
　　　明治二十二年四月二日
　　　　　　　　　　　　　　東京府知事　男爵　高崎五六
　　　　内務大臣　伯爵　松方正義殿
　　　○神田区駿河台東紅梅町十四十五番地々先道路取拡之図（附図第六）。
○十九番銀林曰　是ハ稲荷神社ノアル所ニシテ、玉垣抔モアリ、随分費用ヲ要スレトモ、移転料及工費等ハ願人ニ於テ寄付スルトノコトナレハ、此際之ヲ取拡ケ置方可ナラン
○二十五番芳野曰　稲荷神社ノ前ノミナルヤ
○十九番銀林曰　然リ
○七番武藤曰　水道橋ノ方迄取拡クルコトハ出来マシキヤ
○十九番銀林曰　此辺ハ人家稠密ナレハ、之ヲ取拡クルニ随分費用ヲ要スヘシ
○二十五番芳野曰　原案ニテ可ナラン
○委員長曰　別ニ異議ナキヲ以テ原案ニ決ス、而シテ品川湾及ヒ隅田川水底地質調査ニ関シ農商務省ヨリ照会ヲ得タレハ、一応其書面ヲ朗読セシムヘシ
　　　書記照会書ヲ朗読ス
　　三月六日付第三十一号ヲ以テ品海築港御計画ニ付、品川湾及隅田川水底地質調査之儀御照会ニ拠リ、同月十四日付第一九三六号ヲ以テ及御回答置候、爾後当省主務官ヨリ市区改正委員肝付海軍大佐ヘ問合候処、品川湾及隅田川間ニテ干潮以下十五尺乃至三十尺ノ錐鑿掘二十七ケ所施行可相成考案ニ有之、依テ尚ホ実地ニ就キ検定セシメ候処、三十尺乃至五十尺ノ錐鑿掘十二ケ所施行スレハ築港ニ関スル地質ノ如何ヲ知ルニ十分ナリトノ見込ニ有之、右十二ケ所ニ対スル費用予算セシメ候処、一ケ所ニ付平均金四拾六円ニテ、合計金五百五拾弐円ヲ要シ候ニ付テハ、該金額ハ市区改正費ヨリ支出相成度、此段及御照会候也
　　　明治二十二年四月十二日
　　　　　　　　　　　　　　　　農商務次官　岩村通俊
　　　　東京市区改正委員長　芳川顕正殿
 - 第28巻 p.116 -ページ画像 
　　　追テ御参考ノ為メ、其職方ヨリ差出候費用予算書写壱通相添申候也（予算書写略之）
○委員長曰　此費用ハ市区改正委員会費中ヨリ支出スルノ外ナカラン之ヲ委員会費ヨリ支出スルニハ、東京府知事ニ於テ常置委員ニ諮問スルナルヘシ
○五番田口曰　最初ハ費用ヲ要セサル筈ニハナカリシヤ
○十九番銀林曰　農商務省ニ於テ調査スル序モアレハ、此調査ヲ引受クルヘシトハ申シタルモ、　別ニ費用ヲ要セスト迄ハ申サヽリシナリ
○七番武藤曰　調査ヲ依頼セシ以上ハ其費用ヲ出スハ当然ナリ
○委員長曰　地質調査ハ本会ヨリ依頼シタルモノナレハ、其費用ハ出サヽルヲ得サルヘシ
○二十五番芳野曰　此等ノ如キモノアルカ故ニ予算費ヲ予分ニ見込置キシモノナレハ、費用ヲ出ス方当然ナリ
○委員長曰　異議ナクハ照会通リ取計フコトヽ為スヘシ
　又曰　二十二年度市区改正費収入支出予算ハ、区部会ニ於テ決議ノ末其筋ノ認可ヲ得タル旨、東京府知事ヨリ報告アリタレハ此旨報道ス、本日ハ是ニテ散会トセン
　　于時午後第二時二十五分
　　　○是日ノ議事ニ於テ栄一ノ発言ナキモ、欠席者中ニ栄一ノ名ナキタメ出席セルモノト認ム。