公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第29巻 p.221-223(DK290067k) ページ画像
明治37年10月21日(1904年)
是日栄一、陰暦九月十三日ニ当ルヲ以テ、王子飛鳥山別邸ニ於テ、後ノ月見ノ宴ヲ開キ、中村秋香ヲ請ジ、一族ノ婦人ヲ招キテ歌会ヲ催ス。
竜門雑誌 第一九八号・第三二―三四頁 明治三七年一一月 ○後の夜のまとゐ(DK290067k-0001)
第29巻 p.221-223 ページ画像
竜門雑誌 第一九八号・第三二―三四頁 明治三七年一一月
○後の夜のまとゐ
○飛鳥山なる曖依村荘において後の月のまとゐ開きける時
兼題
十三夜月
栄一
きはみゆく田の面も白く見ゆるまて
さえわたりたる長月の影
兼子
ゆたかにもみのる田毎の稲の穂を
しつかにてらすなか月の影
歌子
八束穂の色つく小田にくまもなし
年ある秋のみよの月影
てりそはんまかきの紅葉園の菊
いつれ奥ある月の影かな
琴子
- 第29巻 p.222 -ページ画像
折々は雲の絶間をもれ出てゝ
さすかけみよと月のてるらん
孝子
足ることを知りてむかへはけふの月
心にみつるひかりなりけり
咲き初めしまかきの菊に秋ふかき
今宵の月そひかり添へける
光子
てりまさん影と思へはなかなかに
こよひの月そたのしかりける
秋の田のみのりを多みてる月を
今日そのとけく賤も見るらん
○飛鳥山なる別墅に中村大人を請しまゐらせうから打ちつとひて後の月見しける時
栄一
契りおきし夜をなかつきと待ちわひし
君をむかへて月を見るかな
○其夜あやにく空に雲立ちおほひければ
秋香
村雲を月にかへても見るよかな
またれまたれし後の夜の空
まちまちし後の此月村雲の
かゝれはこそはあはれ世の中
栄一
晴れすとも夜を長月の影ならは
雲うすれゆく空を待たまし
歌子
影見せぬ月そさすかにうらめしき
満ちたらへるをのそみこそせね
秋香
心すむ月のまとゐの歌かたり
みそらの影はさもあらはあれ
歌子
空はいさまとゐに匂ふ言の葉の
花の千くさに月そやとれる
○家尊の大人の開かせ玉へる月のまとゐにはんへりて
敦子
面白き月のまとゐに秋の夜を
長月としも思はさりけり
○かすならぬ身の此まとゐにはんへることのうしろめたくて
たちまよふ心の雲も秋の夜の
月のまとゐにさはりもやせん
- 第29巻 p.223 -ページ画像
○家尊の大人の昔にも立ちまさるはかりすくよかにならせ玉ひてかゝるまとゐ開かせ玉ひけることのうれしくて
歌子
雲はれてうれしくあふく月の影
かくてそみよも長つきの空
ふけにける秋としもなく我かあふく
月の面はのうらわかきなか
琴子
大空にたゝよふ雲のあともなく
はれたる後の月のさやけさ