デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

昭和6年6月6日（1931年）

是日栄一、アメリカ合衆国人ロバート・エヌ・リンチノ死去ヲ悼ミ、同夫人及ビウォレス・エム・アレグザンダーニ弔電ヲ発ス。

渋沢栄一電報控　　ロバート・エヌ・リンチ夫人宛昭和六年六月六日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　　　（別筆）
　　　　　　　　　　六日飛鳥山邸に於て申上済み
　　　　　　　　　　桑港郵船会社支店長並アレキサンダー氏へも夫れ夫れ電報を発すべしとの御指図ありたり
　桑港
　　ロバート・ニユートン・リンチ夫人様
　　　　六月六日　　　　　　　　　　　　　　　渋沢
突然御良人ノ訃ニ接シ哀悼措ク能ハズ、衷心ノ同情ト深厚ノ弔意トヲ表ス

 - 第40巻 p.623 -ページ画像 

渋沢栄一電報控　　ウォレス・エム・アレグザンダー宛昭和六年六月八日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　桑港
　　商業会議所
　　ウオレス・アレキサンダ殿
　　　　六月八日　　　　　　　　　　　　　　　渋沢
リンチ氏ノ死去ニヨリ、日米親善ノ有力ナル指導者ヲ失ヒ悲痛措ク能ハズ、貴下並リンチ夫人ニ対シ深厚ノ同情ヲ表ス

渋沢栄一書翰控　　ウォレス・エム・アレグザンダー宛昭和六年九月七日
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　（渋沢子爵家所蔵）
　　　　　　　　　　（栄一鉛筆）
　　　　　　　　　　昭和六年九月七日小畑氏持参にて即日一覧　栄一
　加州桑港
　　商業会議所
　　ウオレス・エム・アレキサンダー殿
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　東京
　　　昭和六年九月七日　　　　　　　　　　　渋沢栄一
拝復、八月五日付尊書正に落手拝誦仕候、然ば御親友ロバート・エンリンチ氏の急逝と排日移民法修正運動の関係とにより、予て御計画の御旅行御中止の止むなきに至り候趣拝承仕候、実は先般御来遊の御通知に接し候以来拝光の機を鶴首罷在候義に付、今回の御通信を得て真に遺憾千万に奉存候、乍去移民法修正の為年来貴台を扶け来れる故リンチ氏の後継者を得ざる今日、数ケ月の御外遊を許さゞる事情拝察仕候のみならず、日米両国の永久的親善なる大目的達成の為には私情を犠牲に供すべきは当然の事と存じ、寧ろ貴台の御決意に賛同仕候次第に御座候
過般華府に開催せる、合衆国商業会議所移民委員会に御列席被遊候趣拝承、東西に御奔走の義拝謝の至に候、同委員会に於て種々御協議の結果移民歩合率適用を決議せられ候由、真に御勤労の至りに御座候と同時に、貴台の御尽力に対し満腔の謝意相表し候次第に御座候、排日移民法修正運動が、政党政派を超越せる合衆国商業会議所によりて開始せられ候は意味深重にして、本修正案が中央議会に提出せらるゝ日も遠からざるべくと期待罷在候次第に御座候
右貴答旁得貴意度如此御座候　敬具
　　○右英文書翰ハ同日付ニテ発送セラレタリ。
　　○第三十五巻所収「日米関係委員会」昭和四年十月四日ノ条参照。