公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15
第45巻 p.480-483(DK450176k) ページ画像
昭和3年3月3日(1928年)
是日栄一、阪谷芳郎トノ連名ニテ、東京銀行倶楽部ニ於テ、東京帝国大学ニ新聞学講座設置ノ件ニ関スル発起人会ヲ催ス。
新聞学講座設置ノ件書類(DK450176k-0001)
第45巻 p.480-482 ページ画像
新聞学講座設置ノ件書類 (渋沢子爵家所蔵)
(封筒表書)
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我国近来ノ思想的動揺ハ識者ノ等シク憂フル所ニシテ、之ガ対策ニ腐心シツヽアルガ、其間ニアツテ新聞紙ガ最モ有力ナル指導機関ナルコトハ世人ノ信シテ疑ハザル所ニ有之候 然ルニ此重要ナル機関ヲ運用スベキ新聞記者志望者ニ、須要ナル知識ヲ授ケ其人格ヲ陶冶セシムベキ施設ヲ有セザルハ、昭代ノ一大欠陥ニシテ実ニ遺憾千万ニ存候、欧米諸国ハ既ニ二十年以前ヨリ此点ニ注意シ、主要ナル大学ニハ皆専門ノ新聞学部・新聞研究所・新聞講座等ヲ設置シテ其効果実ニ見ルベキモノ有之候、故ニ小生等ハ我国ノ最高学府タル東京帝国大学ニ新聞講座ヲ創設シテ、新聞記者志望者ノタメ指導研究ノ端緒ヲ開カレンコトヲ希望シ、有志互ニ醵金シテ、コヽニ其基金ヲ寄附致シ候、当局ニ於テモ有志者一同ノ微衷ノ存スル所ヲ察セラレ、何卒新聞学講座創設ノ途ヲ講ゼラレ度此段御願申上候
欧米諸大学に於ける新聞学施設
一、概観
欧米諸大学に於ける新聞学に関する施設を、最近の調査により総括的に記載すれば、左の通りである。
一米国
洲立綜合大学に属せる新聞学部 二八
洲立単科大学に属せる新聞学科 一七
私立大学に属せる新聞学部乃至新聞学科 四一
計 八六
二 独逸(国立大学のみ)
理論学部(我国の文、理学部)に属せる
新聞学科 七
法経社会学部に属せる新聞学科 五
右両学部共通の新聞学科 五
計 一七
其他英・仏・瑞・伊・チエツコの諸国は、各新聞学部乃至新聞科を有する一大学乃至二大学を有し、露・蘭・白・葡等の諸国は専門学校程度の新聞記者養成所を有す。
二、著名なる大学
一米国 ミズリー大学・コロンビア大学・ウイスコンシン大学・紐育大学・ワシントン大学等
二独逸 ライプチヒ大学・ミユンヒエン大学・キヨルン大学・伯林大学等
三其他 ロンドン大学・チユーリヒ大学(瑞)・リーユ大学(仏)・ローマ大学(伊)等
三、組織
学部を形成せるものと、学部内の一学科をなせるものとは、組織に大小の差別がある。一例として米独両国にて、最も有名なるもの一つ宛を挙げてみる。
ミズリー大学(米) 教授・助教授・助手、合計十五名
ライプチヒ大学(独) 同上 七名
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四、施設
米・独両国に於ける施設は欧米諸国の基礎をなせるものなれば、此両国の型を概括的に記す。
米国型 記者養成を目的とし、人格の養成、技術の訓練を行はしむ。課目は新聞歴史・新聞概論・新聞論理の外に、各専門部面の実際的練習をなさしめ、実習新聞を発行するもの多し。(ミズリー大学の日刊コロンビアン・ミズリアンの如し。)
独逸型 新聞学研究を目的とし、其応用として、一般大学生に新聞歴史、本質論、新聞政策等を聴講せしめ、研究室に於て研究指導及記者志望者の指導をなす。
集会日時通知表 昭和二年(DK450176k-0002)
第45巻 p.482 ページ画像
集会日時通知表 昭和二年 (渋沢子爵家所蔵)
十月十五日 土 午後壱時 小野秀雄氏来約(事務所)
渋沢栄一 日記 昭和三年(DK450176k-0003)
第45巻 p.482 ページ画像
渋沢栄一 日記 昭和三年 (渋沢子爵家所蔵)
二月十九日 晴夕曇 寒気強シ
○上略 午前十時小野秀雄氏来訪、曾テ協議シ来レル新聞学専門ノ科目新設ノ事ニ関シテ種々ノ協議ヲ為シ、書類ヲ点検ス○下略
○中略。
二月二十四日 晴 寒気厳ナラズ
○上略 小野秀雄氏ノ来訪ニ接シ、帝大学校ニ新聞紙記者ヲ養成スル科目ヲ置クコトニ関シテ、爾来ノ運動継続ニ付種々協議ス○下略
(増田明六)日誌 昭和三年(DK450176k-0004)
第45巻 p.482 ページ画像
(増田明六)日誌 昭和三年 (増田正純氏所蔵)
二月廿九日 水 晴 出勤
○上略
本日の来訪者
1小野秀雄氏 新聞研究の件で、来三月三日正午銀行倶楽部で、発起人《(会脱カ)》を開きたいとの阪谷男爵の言伝を持つて来た
○下略
○中略。
三月三日 土 晴 出勤
○上略
午後三時阪谷男爵の御催で、日本倶楽部に於てマグネシアブロツク会社設立の件に付き人を集められたので、夫れニ出席する積で居た処へ簗田𨥆次郎・小野秀雄両氏来訪にて、新聞講坐を東京帝大に設くる事に就て其基金を醵集する為め、来十日京浜の重なる実業家を集むるニ付き、其人名を選定して呉れとの依頼であつた、子爵よりも同様の申付があつたので、急き四十名を選定書き出した、為之遂ニ右ニ出席ニ時刻を失し、乍不本意欠席の旨を電話で通知した
○下略
新聞学講座設置ノ件書類(DK450176k-0005)
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新聞学講座設置ノ件書類 (渋沢子爵家所蔵)
拝啓、益御清祥奉賀候、然者予テ御承知ノ新聞研究ノ件ニ付、一度発起人会ヲ開キ諸事御打合申上度、来ル三月三日午前十一時半麹町区永
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楽町東京銀行倶楽部ニ御集リ願度、此段御願申上候 敬具
昭和三年二月廿九日 渋沢栄一
阪谷芳郎
追テ当日粗飯用意致置候、御出席ノ有無御一報願度、又当日ハ左ノ諸氏ニ御出席願置候
岡田良平氏 三土忠造氏
上田万年氏 三上参次氏
徳富猪一郎氏 杉村広太郎氏
太田正孝氏 伊藤正徳氏
本山彦一氏 簗田𨥆次郎氏
(次第不同)
新聞学講座設置ノ件書類(DK450176k-0006)
第45巻 p.483 ページ画像
新聞学講座設置ノ件書類 (渋沢子爵家所蔵)
昭和三年三月三日午前十一時半於東京銀行倶楽部
(太丸・太字ハ朱書)
○岡田良平氏
欠三土忠造氏
○三上参次氏
欠上田万年氏
欠徳富猪一郎氏 国民新聞
欠杉村広太郎氏 朝日新聞
○太田正孝氏 報知新聞
○伊藤正徳氏 時事新聞
○本山彦一氏 日々新聞
代松内則信氏
○簗田𨥆次郎氏 中外商業
○渋沢栄一
○阪谷芳郎
○小野秀雄
以上十三名
内 出席九名
欠席四名