デジタル版『渋沢栄一伝記資料』

  詳細検索へ

公開日: 2016.11.11 / 最終更新日: 2022.3.15

3編 社会公共事業尽瘁並ニ実業界後援時代

1部 社会公共事業

9章 其他ノ公共事業
1節 記念事業
10款 伊藤博文関係 2. 伊藤博文公記念会
■綱文

第49巻 p.109-115(DK490033k) ページ画像

昭和5年5月5日(1930年)

是日、華族会館ニ於テ、当会発起人総代会開催セラレ、栄一、発起人ニ加ハル。


■資料

伊藤公記念会書類(DK490033k-0001)
第49巻 p.109-110 ページ画像

伊藤公記念会書類             (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
    伊藤博文公記念会旨趣書
春畝伊藤公逝キシヨリ駒隙一過二十星霜ヲ閲セリ、歳月愈々久ウシテ其ノ流風余韵永ヘニ竭キス、天下ノ人其ノ名ヲ欽シ其ノ徳ヲ慕ヒ今日ニ至ルマテ景仰禁スル能ハサルモノアルハ何ソヤ、公ノ志、東亜百年ノ為ニ謀リ其ノ身ヲ以テ平和ノ犠牲トナリシヲ以テナリ。
公ハ夙ニ経世ノ才ヲ懐キ、維新三傑ノ志ヲ継テ、新帝国ノ建設ニ努力シ、封建ノ制ヲ打破シテ郡県ノ政ヲ敷キ、進テ憲法政治ノ扶植ニ貢献シ、日本ヲシテ世界的雄邦ノ伍伴ニ列セシメタリ、而シテ吾人カ最モ公ニ多トスル所ハ、其ノ炯眼常ニ世界ノ趨勢ニ注キ、其ノ経綸終始東亜ノ大局ニ存シタルニ在リ、公カ日本ノ経世家トシテ其ノ範ヲ垂レタルノミナラス、世界的政治家タル所以ノモノ未タ嘗テ此ニ在ラスンハアラス。
公カ前半ノ生涯ハ、新日本ノ建設ニ貢献シ、後半ノ生涯ハ東亜大局ノ為ニ努力シ、朝鮮統監トシテハ最モ公正寛裕ナル精神ヲ以テ朝鮮ノ康寧ト人文ノ啓発トヲ図リタリ。
公カ晩年ノ心血ハ殆ント挙ケテ半島統治ノ上ニ傾注セラレタリ。其ノ至誠ハ朝鮮ノ上下ニ感孚シ、其ノ勲績ハ長ヘニ山河ト共ニ朽チス。中外其ノ徳ヲ懐ヒ、其ノ高風ヲ欽スルモノ豈ニ偶然ナランヤ。
公ハ統監ノ職ヲ辞セリト雖モ其ノ志ハ未タ曾テ一日モ半島ヲ忘レス、老躯ヲ提ケテ朔漠ニ入リ、日・清・露三国ノ為ニ東邦問題ヲ解決セントスル途上ニ於テ端ナクモ不慮ノ難ニ遭ヒタリ、公ノ詩ニ云フ「眼底乾坤堪瘞骨英雄何処不家郷」ト、公ハ死セリト雖モ其ノ在天ノ霊ハ長ヘニ東亜平和ノ鎮護タルヲ信シテ疑ハサルナリ。吾人ノ同志玆ニ胥謀リ、公ト甚深ノ因縁アル朝鮮ニ於テ形勢ノ地ヲ卜シテ寺院ヲ建立シ、公ノ冥福ヲ追修シ、以テ長ク君国鎮護ノ一大道場タラシメントス。伏シテ乞フ、江湖内外ノ志士仁人此ノ勝業ニ随喜シテ賛襄援助ヲ賜ヘ、至嘱

    伊藤博文公記念事業ノ要項
一、本会ハ故大勲位伊藤博文公ノ徳風ヲ敬仰シ、赫々タル勲業ヲ永ク記センタメ、京城ニ寺院ヲ建立シテ公ノ冥福ヲ追修スルト共ニ、思想界ノ善導ニ貢献スル処アラントス。
二、寺院建設ニ要スル資金ハ総額四拾万円トシ、汎ク大方篤志家ノ寄附ニ仰ク。
三、寄附者ノ芳名ハ寺院ニ於テ永久ニ保存ス。
 - 第49巻 p.110 -ページ画像 
四、寄附金ノ募集期間ハ昭和五年六月末日マテトス。
  昭和五年五月
                 伊藤博文公記念会
              東京市芝区桜田本郷町十七番地
                朝鮮総督府出張員事務所内
                    電話銀座四二七八 四二七九番


伊藤公記念会書類(DK490033k-0002)
第49巻 p.110-112 ページ画像

伊藤公記念会書類             (渋沢子爵家所蔵)
謹啓
先刻ハ御電話頂戴仕り生憎処用外出中ニテ失礼申上候、仰せに従ひ早速別紙伊藤博文公記念事業に関する趣旨書其他関係書類御手許に差出候条、何卒宜敷御取計相願度先ハ右当用まで得貴意候也
 尚ほ東京方面の寄附ハ数日前より勧誘いたし居候処、既に御寄附御申込を頂き候主なるものは
  満鉄会社   弐万円    郵船会社    五千円
  三井男爵家  弐万円    第一銀行    五千円
  岩崎男爵家  弐万円    麦酒会社    三千円
  鍋島侯爵家  二千円    服部金太郎殿  弐千円
  朝鮮興業会社 弐千円    大橋新太郎殿  弐千円
等に有之目下御申込を受け居候次第に御座候、何分にとも宜敷御願申上候
  昭和五年五月廿六日
                伊藤博文公記念会
                   東京市事務所 
    渋沢子爵家
     御事務所
        御中
(別紙、謄写版)
    伊藤博文公記念事業
      発起人総代会協議事項
昭和五年五月五日華族会館ニ於テ、伊藤博文公記念事業ニ関スル発起人総代会ヲ開催シ、左記ノ事項ヲ協議シ夫々決定致シ候間、此段御報告申上候也
    報告事項
 一、本記念会設立ニ関スル準備打合ノタメ、昭和五年四月二十八日総督府出張所ニ於テ世話人会ヲ開キタリ
 二、寺院建築敷地ノ件
   伊藤博文公ニ縁故浅カラザル京城府内形勝ノ官有地約   坪譲与方申請ノ予定ヲ以テ、目下慎重ニ選定中ナリ
 三、寺院ノ建築様式
   専門技術家ニ於テ目下慎重ニ調査考案中ナルモ、大体ニ於テ永久保存ヲ期スルタメ鉄筋コンクリート・煖房装置工事等極メテ堅牢ナル諸工事ヲ施行スル見込ニテ、様式ハ別紙設計図ニ披ラントス(絵葉書○略ス参照)
 - 第49巻 p.111 -ページ画像 
 四、朝鮮側寄附金募集ノ状況ハ各道ニテ引受ノ分、八万余円ハ既ニ夫々各地ニ於テ募集ニ著手シ、他ノ十二万円ハ主トシテ大口ノ分ニ仰グコトトシ殆ント其ノ大部分ハ既ニ申込済ミナレバ、朝鮮ニ於ケル募集金ハ予定ノ二十万円ハ見込確実ナリトス、尚ホ朝鮮ニ於ケル二十万円募集ノ件ハ昭和五年二月十三日附朝鮮総督ノ認可ヲ受ケタリ
      協議決定事項
 一、記念会設立ノ趣旨
   故大勲位伊藤博文公ノ徳風ヲ敬仰シ赫々タル勲業ヲ永ク後世ニ記念スルタメ、朝鮮京城府内形勝ノ地ヲ卜シテ一大寺院ヲ建設シ、公ノ冥福ヲ追修シ併テ思想界ノ善導ニ貢献スル処アラントス(別紙旨趣書記載ノ通リ)
 二、事業資金ヲ金五十万円ト定メ其内訳ヲ
    寺院建築費      二十万円
    寺院設備費       五万円
    寺院基金        十万円
    祭典費其他事務費   十五万円
   トシ内参十万円ヲ内地ニ於テ爾余ノ二十万円ヲ朝鮮・満洲・台湾及海外ニ於テ募集スルコト
 三、寄附申込ノ受附期間ヲ昭和五年六月末日マデトスルコト
 四、本会ノ名称ヲ伊藤博文公記念会ト名附ケ、内地及朝鮮ニ事務所ヲ設置ス、左ノ如シ
    東京事務所
      東京市芝区桜田本郷町一七朝鮮総督府出張所内
    朝鮮事務所
      京城府南山町日本赤十字愛国婦人会本部内
 五、本記念会ノ事業遂行ニ付キ常務委員若干名ヲ依頼ス
 六、本記念会ノ諸務ヲ処理スルタメ左ノ通リ依頼スルコト
   (一)、会計監督
                  佐々木勇之助
                  大橋新太郎
                  馬越恭平
   (二)、資金募集係
               主任 室田義文
                  山下亀三郎
                  倉知鉄吉
                  木村雄次
                  池辺竜一
                  入江海平
   (三)、庶務係
               主任 小宮三保松
                  小田倉啓
                  阿部充家
                  漆間真学
 - 第49巻 p.112 -ページ画像 
 七、本日ノ発起人総代打合会ニ於テ開陳セラレタル各位ノ意見ヲ取纏メ、寄附金募集其他事業着手ニ関スル具体方法ヲ協議スルタメ五月六日正午総督府出張所ニ於テ第二回世話人会ヲ開クコト


伊藤公記念会書類(DK490033k-0003)
第49巻 p.112 ページ画像

伊藤公記念会書類             (渋沢子爵家所蔵)
(印刷物)
                      (別筆朱書)
                      5年8/4参千円申込
謹啓
時下益々御清康之段奉敬賀候、陳者予而得貴意置候伊藤博文公記念事業に関しては、其後漸次各般之準備を整へ既に実行に着手致居候次第にて、之れ偏に御高庇に頼る儀と存し深く奉感佩候、就而は該事業進捗之関係上曩に御懇願申上置候御寄附金之儀、此際至急取極め申度存候間御繁用中誠に恐縮奉存候へ共、何卒右御寄附金高御決定の上御指示相煩し候事を得ば幸甚不過之候、先は右御懇願迄如斯御座候 敬具
 追て別紙寄附金申込用紙○略ス封入致置候間、金高御記入御指示奉願上候
  昭和五年六月 日
      伊藤博文公記念会
            世話人
         伯爵 児玉秀雄   室田義文
            小宮三保松  倉知鉄吉
            池辺竜一   入江海平
            外波内蔵吉  門野重九郎
            頭本元貞   鍋島桂次郎
            長岡外史   漆間真学
            小田倉啓   串田万蔵
            山下亀三郎  山県三郎
            小山善    有賀長文
         子爵 秋元春朝   阿部充家
            鮫島武之助  木村雄次
           会計監督
            馬越恭平   佐々木勇之助
            大橋新太郎


伊藤公記念会書類(DK490033k-0004)
第49巻 p.112-115 ページ画像

伊藤公記念会書類           (渋沢子爵家所蔵)
(謄写版)
    伊藤博文公記念事業発起人総代芳名
      東京ノ部           (順序不同)
        発起人総代
               公爵 徳川家達
               公爵 山県有道
               侯爵 木戸幸一
               侯爵 井上三郎
               侯爵 小村欣一 (未回答)
 - 第49巻 p.113 -ページ画像 
               侯爵 西郷従徳
               伯爵 清浦奎吾
               伯爵 伊東巳代治
               伯爵 山本権兵衛
               伯爵 牧野伸顕
               伯爵 高義敬
               子爵 石黒忠悳
               子爵 渋沢栄一
               子爵 金子堅太郎
               男爵 山本達雄
               男爵 倉富勇三郎
               男爵 団琢磨
               男爵 林権助
               男爵 大倉喜七郎
               男爵 郷誠之助
               男爵 古河虎之助
                  一木喜徳郎
                  俵孫一
                  荒井賢太郎
                  鎌田栄吉
                  元田肇
                  中橋徳五郎
                  水野錬太郎
                  湯浅倉平
                  関屋貞三郎
                  土方久徴
                  宮尾舜治
                  鈴木島吉
                  児玉謙次
                  馬場鍈一
                  有吉忠一
                  徳富猪一郎
                  久原房之助
                  有賀長文
                  木村久寿弥太
                  串田万蔵
                  佐々木勇之助
                  末延道成
                  藤山雷太
                  馬越恭平
                  根津嘉一郎
                  大川平三郎
                  森広蔵
                  藤原銀次郎
 - 第49巻 p.114 -ページ画像 
                  門野重九郎
                  大橋新太郎
                  服部金太郎
                  山下亀三郎
                  鍋島桂次郎
                  中村芳治
           会計監督
                  馬越恭平
                  佐々木勇之助
                  大橋新太郎
           世話人
                  室田義文
                  小宮三保松
               伯爵 児玉秀雄
                  山下亀三郎
                  倉知鉄吉
                  有賀長文
                  鮫島武之助
                  外波内蔵吉
                  鍋島桂次郎
                  門野重九郎
                  小山善
                  串田万蔵
                  木村雄次
                  池辺竜一
                  入江海平
                  小田倉啓
                  長岡外史
               子爵 秋元春朝
                  頭本元貞
                  阿部充家
                  漆間真学
                  山県三郎
         朝鮮ノ部
           発起人総代
               子爵 斎藤実
                  南次郎
               侯爵 朴泳孝
               子爵 尹徳栄
               子爵 閔丙奭
               子爵 権重顕
               男爵 李允用
               男爵 韓昌洙
                  加藤敬三郎
 - 第49巻 p.115 -ページ画像 
                  有賀光豊
         南満洲ノ部
           発起人総代
                  仙石貢
○下略