3. 予が実業界隠退の時機
よがじつぎょうかいいんたいのじき
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自分の事を申すと、或は自慢らしく思はれるかも知れませぬが、大体以上の様な訳で、己惚れではないが、自分は九仭の功を一簣にかかぬ積りである。而して孔子の此の章の訓へを遣り遂げたやうな心持がする。
併し、私は実業界を隠退はしたけれども、決して無為にして余生を送らうとは思はない。それで今日でも及ばずながら社会公共の為めに微力を尽して居る次第であるが、天命を完うする迄は、国家社会の為めに自分の出来るだけの努力をしようと心掛けて居るのであります。
- デジタル版「実験論語処世談」(53) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.433-435
底本の記事タイトル:三一五 竜門雑誌 第三九六号 大正一〇年五月 : 実験論語処世談(第五十二《(三)》回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第396号(竜門社, 1921.05)
初出誌:『実業之世界』第18巻第4号(実業之世界社, 1921.04)