4. 賢者何処にあるか
けんしゃいずこにあるか
(69)-4
子貢問為仁。子曰。工欲善其事。必先利其器。居其邦也。事其大夫之賢者。友其士之仁者。【衛霊公第十五】
(子貢、仁を為さんことを問ふ。子曰く、工は其の事を善にせんと欲せば、先づ其器を利くす。其の邦に居るや、其大夫の賢者に事へ其の士の仁者を友とす。)
本章は、仁を修むる方法を説いたのである。(子貢、仁を為さんことを問ふ。子曰く、工は其の事を善にせんと欲せば、先づ其器を利くす。其の邦に居るや、其大夫の賢者に事へ其の士の仁者を友とす。)
子貢が孔子に仁をなす方法を問ひたるに、孔子は、工匠は其の仕事精巧なるを得ようとせば、先づこれを用ゐる器具を利くしなければならない。国に居つて、その国の大夫に仕へようとするならば、その賢者に仕へ、其の士の仁者を友とするのがよいと教へた。
この事は誠によいことに違ひないが、事実今日の世の中にはないではないか。孔子は或は何処かにかうした賢者があつて言つたのかどうか、なかつたとせば余りに無理である。何か此処に意味があるかと思ふ。つまり比較的のことであつて、若し賢者がなければ、仁をなすことも出来ぬから、時を俟つのがよいと云ふのかも知れない。
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- 賢者, 何処
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- 【衛霊公第十五】 子貢問為仁。子曰、工欲善其事、必先利其器。居是邦也、事其大夫之賢者、友其士之仁者。
- デジタル版「実験論語処世談」(69) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.623-626
底本の記事タイトル:三七四 竜門雑誌 第四三四号 大正一三年一一月 : 青淵先生説話集 : 実験論語処世談(第六十七《(九)》回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第434号(竜門社, 1924.11)
初出誌:『実業之世界』第21巻第10号(実業之世界社, 1924.10)