2. 渡米の精神論語に発す
とべいのせいしんろんごにはっす
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私は常に孔夫子が論語に説かれてある所によつて、去就進退を決することに致して居る者故、私の渡米が果して予期せらるる如き効果を実際に挙げ得るや否や、素より今に於て逆睹し得べきでは無いが、成敗を論ぜず、一身の利害を顧みず、兎に角取り急ぎ明春の加州議会前に渡米して、在米同胞諸君の御利益を計り、国威を失墜せず円満に多年の懸案を解決し得るよう、及ばずながら微力を添へるのが私として当に尽すべき国民たるの義務で、御奉公の一端を果す所以であらうかと存ずるのである。
- キーワード
- 渡米, アメリカ, 精神, 論語
- 論語章句
- 【為政第二】 子曰、非其鬼而祭之、諂也。見義不為、無勇也。
- デジタル版「実験論語処世談」(9) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.10-13
底本の記事タイトル:二〇四 竜門雑誌 第三三三号 大正五年二月 : 実験論語処世談(九) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第333号(竜門社, 1916.02)
初出誌:『実業之世界』第12巻第19号(実業之世界社, 1915.10.01)