6. 綿密と粗忽は知れる
めんみつとそこつはしれる
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誠に面白い逸話だと思つたので、今日でも猶ほ忘れずに覚えてゐるのだが、佐藤一斎が初見の時に人に相すれば大抵誤まりの無いものであると説いてるのも、それから孔夫子が「君子は坦にして蕩々たり、小人は長に戚々たり」と仰せに成つたのも、結局その帰する所は一で善い人間か悪い人間か、君子か小人かといふことぐらゐは、一度遇つて少し談話でもして見れば、何んとなく直ぐ其れと直覚し得らるるものだ。
- キーワード
- 綿密, 粗忽, 知れる
- 論語章句
- 【述而第七】 子曰、君子坦蕩蕩。小人長戚戚。
- デジタル版「実験論語処世談」(44) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.340-345
底本の記事タイトル:二八三 竜門雑誌 第三七〇号 大正八年三月 : 実験論語処世談(第四十四回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第370号(竜門社, 1919.03)
初出誌:『実業之世界』第16巻第3号(実業之世界社, 1919.03)