デジタル版「実験論語処世談」[52a](補遺) / 渋沢栄一
3. 挙世滔々として功利に奔る
きょせいとうとうとしてこうりにはしる
[52a]-3
之を今の時代に比較すると、其間文物制度が異つて居り、時勢が非常に違つて居るから、直ちに取つて以て今の時代に当て嵌めて説き明かすことは難かしいが、要するに人格が高潔にして徳も高く、而かも達識の人を指して之を聖人と称へる事が出来よう。然し今の世に果して聖人に比すべき人が居るであらうか。挙世滔々として功利に奔り、道徳は漸次頽れんとして居る傾向のあるのは、実に遺憾千万の事と言はねばならぬ。
- デジタル版「実験論語処世談」[52a](補遺) / 渋沢栄一
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底本(初出誌):『実業之世界』第17巻第12号(実業之世界社, 1920.12)p.98-101
底本の記事タイトル:第九十二回実験論語処世談 / 子爵渋沢栄一
*「渋沢子爵談片」はp.101に別枠のコラムとして掲載されたもの。