デジタル版「実験論語処世談」[52a](補遺) / 渋沢栄一
7. 思想界混乱として帰嚮に迷ふ
しそうかいこんらんとしてききょうにまよう
[52a]-7
所謂思想界一般の気風は、今や混乱して帰嚮する処を知らぬ有様である。之と共に犠牲的精神とか、忠恕、謝恩等の感念が漸次薄らぎて今や其の跡を絶たんとしてゐる。「吾れ已むぬるかな」とは決して言はぬけれども、今にして大に顧る処がなければ、或は後日に悔を貽すことなきを保し難きを以て、為政者は勿論、一般世人は今日於て大に考ふ可きであると思はれる。
- デジタル版「実験論語処世談」[52a](補遺) / 渋沢栄一
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底本(初出誌):『実業之世界』第17巻第12号(実業之世界社, 1920.12)p.98-101
底本の記事タイトル:第九十二回実験論語処世談 / 子爵渋沢栄一
*「渋沢子爵談片」はp.101に別枠のコラムとして掲載されたもの。