4. 大久保卿に反抗す
おおくぼきょうにはんこうす
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依て私は諮問会議の席上に於て、大久保卿に対し、自分の反対意見を述べたのであるが、総じて財政は「量入為出」を以て原則とせねばならぬ、国家の財源が豊かになりさへすれば「為出量入」の方針を取るも敢て妨げなきに至るやも知れざれど、当時は未だ斯る状態に国家の資源が発達して居らぬ、然るに、歳入の精確なる統計も未だ分明せざるに先ち、兵事は如何に国家の大事なればとて、之が為一千五十万円の支出を匆卒の間に決するなぞとは以ての外のことで、本末顛倒の甚しきものである。宜しく統計が出来上り、歳入額の明白になつた後に於て、徐ろに事の軽重を詮衡し、之に応ずる支出額を決定すべきである、といふのが私の述べた意見である。
- デジタル版「実験論語処世談」(4) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第6(渋沢青淵記念財団竜門社, 1968.11)p.664-668
底本の記事タイトル:一九五 竜門雑誌 第三二八号 大正四年九月 : 実験論語処世談(四) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第328号(竜門社, 1915.09)
初出誌:『実業之世界』第12巻第14号(実業之世界社, 1915.07.15)