4. 万国日曜学校大会
ばんこくにちようがっこうたいかい
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殊に万国日曜学校大会の来会者には、男子よりも婦人が多いといふことである。婦人は何処の国でも同じ事で、却々取扱方の六ケしいものである。それ等の人々が大会を終へて各其本国へ帰つてから、日本に往つて見たが、碌々眠ることもできず、パンも噛れず、牛乳も飲めなかつたなぞと、土産話の序に言ひ伝へられでもしたら、折角骨を折つて万国大会を日本に開いても、之によつて日本を紹介する便を得るどころか、却つて従来贏ち得た日本の評判までも悪くする事になる。それでは、甚だ困るから、日本に万国大会を開く事だけは御引受するが、来会者の数を制限して成るべく少数とし、又来会者は之を買切りの汽船に搭乗せしめて、日本来着後もホテルに宿泊せず、其汽船を宿泊所とし、そこから東京の大会に出席するやうに取計つてもらいたいものだといふのが、私よりハインヅ及びワナメーカーの両氏へ依頼に及んだ件である。これに対して、両氏とも承諾の旨を答へられたが、同時に又私共の間には、いろ〳〵と道徳上に就ての談話もあつたのである。
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- 万国日曜学校大会(世界日曜学校大会)
- デジタル版「実験論語処世談」(14) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.60-66
底本の記事タイトル:二一三 竜門雑誌 第三三八号 大正五年七月 : 実験論語処世談(一四) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第338号(竜門社, 1916.07)
初出誌:『実業之世界』第13巻第10,11号(実業之世界社, 1916.05.15,06.01)