6. 桜田事変の有村氏
さくらだじへんのありむらし
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如何なるものを「義」と観るかといふ事に関しては、それぞれ其人其時代によつて観る所を異にするだらうが、井伊大老にして果して違勅等の所為があつたとすれば、有村治左衛門が之を刺すを義なりしとて、当然避け得らるべき所を避けずに、万延元年の桜田事変に於ける水戸浪士の仲間入りをしたのは、生を軽んじ義を重しとしたものと云はねばならぬ。
- デジタル版「実験論語処世談」(8) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.2-7
底本の記事タイトル:二〇二 竜門雑誌 第三三二号 大正五年一月 : 実験論語処世談(八) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第332号(竜門社, 1916.01)
初出誌:『実業之世界』第12巻第18号(実業之世界社, 1915.09.15)