1. 論語の死学ならざる所以
ろんごのしがくならざるゆえん
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孔子の教への中でも、仁は最も重きを置いた貴いものであるから、孔子は何人に対しても却〻「仁」を許さなかつた。「其仁に当るか」というても、孔子は容易に之れを容認されなかつた。而して前回に説いた処の顔淵の問に対する孔子の答へは、正面から、広く王道の立場から仁を説かれたのであるが、仲弓の同じく「仁」を問へるに対しては、他の答へを以てせられた。見様によつては、第二流の門弟に対する答へとも言へるし、第二段の説明とも解釈する事が出来よう。
- デジタル版「実験論語処世談」(61) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.501-507
底本の記事タイトル:三四五 竜門雑誌 第四一六号 大正一二年一月 : 実験論語処世談(第五十九《(六十一)》回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第416号(竜門社, 1923.01)
初出誌:『実業之世界』第19巻第5・6-8号(実業之世界社, 1922.06,07,08)