1. 孔夫子を嘲弄せる質問
こうふうしをちょうろうせるしつもん
(7)-1
或謂孔子曰。子奚不為政。子曰。書云孝乎。惟孝。友于兄弟。施於有政。是亦為政。奚其為為政。【為政第二】
(或る者孔子に謂ひて曰く、子何ぞ政を為さざる。子曰く、書に孝を云へり。惟れ孝に、兄弟に友に、有政に施すと。是も亦政を為すなり。何ぞ其れ政を為すを為さん。)
との章句がある。孔夫子に質問を致したといふ「或る者」の誰であつたかは、素より之を知るべき由も厶らぬが、兎に角、当時の社会に相当有力な人物であつたらしく、孔夫子を一つ皮肉つて苦めてやらうとの魂胆から、稍〻嘲弄の意味合で、斯る質問を発したものかと私には存ぜられる。(或る者孔子に謂ひて曰く、子何ぞ政を為さざる。子曰く、書に孝を云へり。惟れ孝に、兄弟に友に、有政に施すと。是も亦政を為すなり。何ぞ其れ政を為すを為さん。)
- キーワード
- 孔子, 嘲弄, 質問
- 論語章句
- 【為政第二】 或謂孔子曰、子奚不為政。子曰、書云、孝乎惟孝、友于兄弟、施於有政。是亦為政。奚其為為政。
- デジタル版「実験論語処世談」(7) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第6(渋沢青淵記念財団竜門社, 1968.11)p.685-690
底本の記事タイトル:二〇〇 竜門雑誌 第三三一号 大正四年一二月 : 実験論語処世談(七) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第331号(竜門社, 1915.12)
初出誌:『実業之世界』第12巻第17号(実業之世界社, 1915.09.01)