11. 論語は世界各国語に翻訳さる
ろんごはせかいかっこくごにほんやくさる
(62)-11
之を伝へられた日本に於ても、皇太子稚郎子の学ばれたのを嚆矢として、文武天皇大宝元年の学令に鄭玄何晏注を用ゐよとあり、其後幾多の学者が各方面より論語を釈義し、之れに関する所説を公にし、今に伝へられて居るものが頗る多い。更に論語は啻に東洋のみならず欧米に於ても之れが翻訳せられて、一般に孔子の遺訓が読まれて居る。現に英人ジエームス・レツグが上海及びロンドンにて発行せし英訳論語を始めとして、ウイルヘルムの論語独訳、ワジリーフ及びポーポフの露訳論語、クーヴリユーの四書羅甸訳、マーシマンの孔子聖典、シルレル及びシユツツの孔夫子聖訓、ダヴイツト・コーリーの四書英訳など私の記憶にあるもののみでも尠くない。斯くの如く論語は世界の各国語に翻訳されて伝へられて居るのである。
- デジタル版「実験論語処世談」(62) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.507-515
底本の記事タイトル:三四六 竜門雑誌 第四一七号 大正一二年二月 : 実験論語処世談(第六十《(六十二)》回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第417号(竜門社, 1923.02)
初出誌:『実業之世界』第19巻第7-9号(実業之世界社, 1922.07,08,09)