11. 尊徳先生の興国安民法
そんとくせんせいのこうこくあんみんほう
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二宮先生は相馬藩に招聘せらるゝや、先づ同藩に於ける過去百八十年間に於ける詳細の歳入統計を作成し、この百八十年を六十年宛に分けて天地人の三才とし、その中位の「地」に当る六十年間の平均歳入を同藩の平年歳入と見做し、更に又この百八十年を九十年宛に分けて乾坤の二つとし、収入の少い方に当る坤の九十年間の平均歳入額を標準にして藩の歳出額を決定し、之により一切の藩費を支弁し、若し其年の歳入が幸にも坤の平均歳入予算以上の自然増収となり剰余額を生じたる場合には、之を以て荒蕪地を開墾し、開墾して新に得たる新田畑は開墾の当事者に与へることにする法を定められたのである。これが相馬藩の所謂興国安民法なるものであつた。
- デジタル版「実験論語処世談」(6) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第6(渋沢青淵記念財団竜門社, 1968.11)p.677-685
底本の記事タイトル:一九九 竜門雑誌 第三三〇号 大正四年一一月 : 実験論語処世談(六) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第330号(竜門社, 1915.11)
初出誌:『実業之世界』第12巻第16号(実業之世界社, 1915.08.15)