5. 大西郷は偽らぬ人
だいさいごうはいつわらぬひと
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まづ西郷さんの容貌から申上げると、恰幅の良い肥つた方で、平生は何処まで愛嬌があるかと思はれたほど優しい、至つて人好きのする柔和なお顔立であつたが、一たび意を決せられた時のお顔は又、丁度それの反対で、恰も獅子の如く、何処まで威厳があるか測り知られぬほどのものであつた。恩威並び備はるとは、西郷公の如き方を謂つたものであらうと思ふ。
- デジタル版「実験論語処世談」(6) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第6(渋沢青淵記念財団竜門社, 1968.11)p.677-685
底本の記事タイトル:一九九 竜門雑誌 第三三〇号 大正四年一一月 : 実験論語処世談(六) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第330号(竜門社, 1915.11)
初出誌:『実業之世界』第12巻第16号(実業之世界社, 1915.08.15)