デジタル版「実験論語処世談」(65) / 渋沢栄一

11. 善人国を治むれば成功す

ぜんにんくにをおさむればせいこうす

(65)-11

子曰。善人為邦百年。亦可以勝残去殺矣。誠哉是言也。【子路第十三】
(子曰。善人、邦を為むること百年。亦以て残に勝ち殺を去るべしと。誠なるかなこの言や。)
 本章は、善人であつても国を治むることが久しければ、能く成功することが出来ると言はれたのである。
 而して此処に言つて居る善人と云ふことは、前の述而篇にある善人と同じ意味で、仁に志して悪意のない人を云ふのである。故に聖人の如く完全な人でなくとも、国の為に尽さうと云ふ志のある人が長くその位に居れば、少くとも残暴の俗を去り、人を殺戮するが如き暴逆のことをなさしめなくてもよいと古語にあるが、之れは誠にその通りであると孔子が言はれたのである。

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デジタル版「実験論語処世談」(65) / 渋沢栄一
底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.561-575
底本の記事タイトル:三六五 竜門雑誌 第四三〇号 大正一三年七月 : 実験論語処世談(第六十三《(五)》回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第430号(竜門社, 1924.07)
初出誌:『実業之世界』第20巻第4-8号(実業之世界社, 1923.04,05,06,07,08)