デジタル版「実験論語処世談」(66) / 渋沢栄一

3. 人によつて之れを器にす

ひとによってこれをうつわにす

(66)-3

子曰。君子易事而難説也。説之不以道不説也。及其使人也。器之。小人難事而易説也。説之雖不以道説也。及其使人也。求備焉。【子路第十三】
(子曰く、君子は事へ易くして説ばし難し。之れを説ばすに道を以てせざれば説ばず。其の人を使ふに及んでや、之れを器にす。小人は事へ難くして、説ばし易し。之れを説ばすに道を以てせずと雖も説ぶ。其の人を使ふに及んでや、備を求む。)
 本章は、君子は道を好むが、小人は然らざるを説いたものである。
 君子には事へるに容易であるが、之れを悦ばしめることは難い。何となれば、之れに対するに道に適つたことでなければならぬからである。即ち阿佞諛好利慾は君子の好まざる所であるが、而も之れを使ふにその長所を見てするから事へ易い。之れに反して小人は之れに事へることは甚だ難いが、悦ばしむることは容易い。何となればその為す所が道に適つて居らずとも、利慾や諂諛を悦ぶからである。而して其の心が刻薄であるから、人を責むるに必ず完備を以てするから使い難いのである、と説いたのである。

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デジタル版「実験論語処世談」(66) / 渋沢栄一
底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.575-592
底本の記事タイトル:三六六 竜門雑誌 第四三一号 大正一三年八月 : 実験論語処世談(第六十四《(六)》回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第431号(竜門社, 1924.08)
初出誌:『実業之世界』第20巻第9,10号,第21巻第1-3号(実業之世界社, 1923.09,11,1924.01,02,03)