10. 君子道に志すや強し
くんしどうにこころざすやつよし
(66)-10
子曰。君子而不仁者有矣夫。未有小人而仁者也。【憲問第十四】
(子曰く。君子にして不仁なる者あるか。未だ小人にして仁なる者あらず。)
本章は小人は道を学ばざるを言つたものである。君子は位の高い人ではなく行の高い人で、所謂道を学んで善に志すものである。小人は君子と反対に道を学ばず善に志さぬものである。「有矣夫」はあるあらんをかけた辞で、婉曲の言ひ表はし方である。(子曰く。君子にして不仁なる者あるか。未だ小人にして仁なる者あらず。)
君子は道を学び善に志すと、或は方正端厳に過ぎては不仁に至ることがある。故に君子で仁でないものもあるかも知れないと言ひかけて小人には仁者はないと結んだのである。之れは君子の道に志すことの強く、小人の然らざるを明瞭せしむる為である。
- キーワード
- 君子, 道, 志
- 論語章句
- 【憲問第十四】 子曰、君子而不仁者有矣夫。未有小人而仁者也。
- デジタル版「実験論語処世談」(66) / 渋沢栄一
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底本:『渋沢栄一伝記資料』別巻第7(渋沢青淵記念財団竜門社, 1969.05)p.575-592
底本の記事タイトル:三六六 竜門雑誌 第四三一号 大正一三年八月 : 実験論語処世談(第六十四《(六)》回) / 青淵先生
底本の親本:『竜門雑誌』第431号(竜門社, 1924.08)
初出誌:『実業之世界』第20巻第9,10号,第21巻第1-3号(実業之世界社, 1923.09,11,1924.01,02,03)